「すご〜い………これが、海………」
視界一杯に広がる大海原。海というものを間近で見たことの無い彼女にとって、目に映るもの全てが新鮮に見えた。
「うふふ、せっちゃんは海を見るのは初めてかしら?」
彼女をせっちゃん、と呼ぶ女性。名は周姫。かの大提督だった周瑜の娘である。
「うん。でも周姫ちゃん、船なんて動かせるんだ…」
彼女の名は曹節。かの乱世の奸雄と言われた男、曹操の次女。
「私は小さい頃からお父様に教えられたの。その気になればもっと大きな船も操縦できるわ。」
周家の娘と曹家の娘。そんな偉大な父を持つ二人が舟遊び…と言う割には随分と簡素な手漕ぎの船。
傍から見れば場違いな光景だが、それまでにはちゃんとした経緯があった。




「こんにちは〜」
ここは夏真っ盛りの江東。わたしはその一角にある豪邸を訪ねた。
「いらっしゃい。もうそろそろ来るんじゃないかと思って待ってたのよ。」
彼女は周姫ちゃん。わたしの一番のお友達。
でも住んでいる場所は離れているから、そう頻繁に会うことは出来ない。だからこうして直接会えるのはとても嬉しい。
「こんな暑い中に、遠方から大変だったでしょ?」
「うん、ここに来るまででもう汗びっしょり…」
「うふふ、そうだと思った。今日はせっちゃんをいい所に連れてってあげる。」
「いい所?」
「私のお気に入りの場所なの。特別にせっちゃんにも教えてあげる。」



「周姫ちゃんの…お気に入りの場所…?」




「さ、着いたわ」
周姫ちゃんが連れてきてくれた場所、それは家の裏にある小さな小島。
人の手が加えられている様子も無く、誰かが住んでいる形跡も無い。
「うわぁ……」
思わず溜息が漏れてしまう程、島からの景色に見入ってしまった。
「ふふ、実際に降りてみるともっと綺麗よ。」
そう言われると陸からの景色も見てみたくなる。わたしは靴を脱いでそっと浜辺へ脚を伸ばした。
「あっ、深いところもあるから気をつけ……」
注意する声が聞こえる頃には、わたしの右脚は海へと着水していた。
「きゃっ!?」
脚が着く場所だと思っていた場所は地盤が緩く、わたしの足首まで飲み込まれた。
既に体重を預けていたためそのまま体勢を崩し、そのまま海へ…
「せっちゃん!」
慌てて周姫ちゃんが手を差し伸べる。わたしは藁にも縋る思いでその手を掴んだ。――――が。
「えっ」
二人分の体重が一箇所に集中してしまったため、船は大きく傾き、
『きゃああああぁぁ!!』
二人の身体は、真夏の海へと投げ出された。


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