「ん……ぁ」
軽く合わせただけの唇が、そのまま滑るように頬から首筋へと蠢く。
柔らかな肌に吸い付きながら、ゴテゴテと身を飾りつける正装を手早く脱ぎ去っていくと
内から程良く鍛えられた体躯が姿を現した。

引き締まった胸板へと手を伸ばしながら、少し掠れたような陶然とした声で大虎が呟く。
「ああ、あんたはほんと……素敵だよ。色んな意味でね」
すっと指先が筋肉の溝を辿る。
「はは、くすぐったいよ。じゃあお返しだな」
顔を上げ、薄い夜着の前を肌蹴させると柔らかく天を向く双丘が零れ出る。
二つの房の間に顔を埋め、片手でやわと全体を揉み上げるようにすると、大虎の声から噛み殺した喘ぎが漏れた。
「ふぅ……ん、にゃ、あっ……」

まるで猫みたいだ。
心の中で小さく笑みながら、更に夜着を大虎の体から剥がしていく。
滑らかで、月の光に白く浮かび上がる裸体を自分の体で包むように再度覆い被さると、
既にむくと持ち上がり始めた肉棒が彼女の腿を擦った。
「ふふ、あんたの……もう……」
勝気な瞳が、谷間から見上げるように視線を上げた全jのそれと絡まった。
「そうだな、さっきは可愛かったが今はとても綺麗だ」

しかし、その言葉にふ、と大虎が顔を逸らす。
いや、正確には窓から見える丸く大きな月に目を向けた。
哀しげな、それでいてどこか怒りすらも感じさせるような強張った表情に、
全jは愛撫の手を一旦止めて手を伸ばす。
掌を被せるように頬を包むと、そこでようやく我に返ったという風に視線を戻した。


「また、朱公主の事を考えていたのかい?」
静かな声であったが、大虎はびくりと肩を震わせて首を横に振る。
「そ、んな訳ないでしょ!なんで私が小虎の事なんか」
「ほら、やっぱり考えてた」
頬を引くようにして顔を正面へ向けさせ、ぺちと小さく指を動かして叩く。
「別にそういう訳じゃ……」
「嘘は良くないね。あー、嫉妬しちゃうな」
そういうと顔を胸の谷間にぐっとうずめ、二の腕の部分で自分の顔を乳房が挟み込むように押し付けた。
熱い吐息がその隙間から押し出されるように大虎の首へかかる。
「ただ……ちょっと、月が綺麗過ぎただけよ」
布団に預けていた左手で敷布をきゅっと握り締め、呟く。

白く煌々と輝く丸い月は、窓の外に見える池の水面で醜く歪む。
そのいびつな形が自分の心みたいで、目が離せなくなった。


いつからあの子を虐める事しかしなくなったのだろう。
ある時、お父様は私も小虎も両方好きだと言った。
小虎も、お父様と私を両方好きだと言った。
でも、私は私だけを好きでいてほしかった。


……誰に?




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