今日は学校が午前で終わりだった。
席に座りながら、不変を演じつつ時計が終了を示すときを今か今かと待つ。
放課後には部活もなにもない。
友達から何か食べて帰ろうと誘われたが、財政的な問題でキャンセルしておいた。
早く家に帰って、やっと生まれた危機感をどう抑えるかを考えようと思っていた。
そして、家。
ネットも、テレビも、本にも対策は書いてはいない。
当たり前だ。
寝て起きたら男性器が付いているなど、ありえる話ではない。
あるとしたら、一度交わるとかいった、もはや現実とは乖離している方法。
しかも今朝、本格的に疑問を持つよりも、自慰をしてしまった。
女性では味わえない快感を感じられたのは貴重な体験とも思うが。
本当にいいのだろうか。
制服から部屋着になる途中で、下着を脱ぎ、自身を露出させる。
と、思案を破るチャイムの音。
誰かが扉の前にいるようだった。
「すいません、周姫…います?」
「…節」
相手の声は聞こえたが、周姫の声は相手には聞こえないようにする。
助けと恐れ、両方含まれた怯える声。
普通の女性ではない自分を見られたら、きっと嫌われてしまう。
それに、自慰時に思い浮かべていた人物は、扉の前に立つ人。
別に周姫は同性愛者ではない。
なのに。
それなのに、想ってしまった過去。
「周姫、いるの?」
「…節…」
「いる?鍵して…ないね、入るよ」
今度は自らを偽ることに失敗。
つい、高くしてしまったようだ。
節と呼ばれた少女に気付かれ、扉が開いてしまう。
日常と非日常を別けた箇所。
「だめぇ―――!」
「周姫!?」
突然の叫び声に、壊す勢いで扉が開かれた。
外の空気が内部と混ざる。
その中に曹節はいた。
まさか周姫に危険が迫っているのかもしれない。
そう考えたのだろうか、扉を閉めて声がした部屋へと一直線へと走ってくる。
足音が奏でる亀裂の数瞬。
曹節が部屋へと足を踏み入れた時、周姫は朝のようにベットに腰を降ろしながら下半身を露出させている。
緊迫しながらも、ヒビが入った空気。
息をきらした曹節の目がしっかりと捉えている。
本来ならありえるはずもない、周姫の股間に聳える自身。
曹節は自身と周姫をたっぷりと見てから、しっかりとご近所迷惑にならない程度の声の大きさを計算してから叫んだ。