だが今、目の前の朱治は穏やかに微笑んでいる。
もう我慢が出来なかった。父はもういない。恐らく、彼女が女だということを知っている者は誰一人として
いないのだろう。
その仮面をひきはがしてしまいたい。卑しいその本性を曝け出させて、屈服させてやりたい。
どうして、親父には隠さなかったことを、俺には隠すんだ。俺には、心からは従えないというのか…?
「朱治、右目に睫毛が入ったみたいなんだ。取ってくれないか」
そういうと、何の疑いもなしに彼女は孫策の顔に自分の顔を近づけて瞼に触れようとした。その一瞬の隙をついて、
孫策は彼女の後頭部に手をまわし、ぐいと引き寄せると突然唇を奪った。
くぐもった声が聞こえた。驚いているのだろう、舌を捻じ込むと怯えるように身動ぎした。
「何びびってんだ。親父とはあんなことしてた癖に」
体を離し、開口一番にそう言うと、朱治は目を見開いて後ずさった。両手で顔を覆い、声にならない声を上げている。
見る見るうちにその顔色が青ざめていくのがわかった。
「わ、若、何を仰って……」
起き上がりつつ、やれやれ、というように孫策は言った。
「今更ごまかすなんて、案外素直じゃないんだな」
「私は…そんな…あっ!」
口ごもる朱治に苛立ち、その胸に触れた。いつもは服で隠しているが、その手触りは紛れもなく女性のものだった。
「ほら、やっぱり」
「あ…あ、あ…!」
青ざめていた顔が今度は、見る間に紅潮してきた。
「お願いです、若。このことは誰にも言わないでください!」
「言わない?何をだ?お前が女だってことをか?それとも、お前が本当はとんでもない淫乱だってことをか?」
「違う…、違います…!」
「何が違うんだよ」
苛立ち、その小さな手を掴むと、服の上から無理矢理いきり立った男根を掴ませた。
「ひっ」
怯える宿将に、孫策は心の中で呟いた。
親父のものはあんなに嬉しそうに握り締めていたのに、どうして…。
それは苛立ちとも悲しみともつかない不思議な感情だった。
「なあ、君理」
甘えるような声で、字で呼んだ。
「分かるよな、俺、お前を見てたらこうなっちゃったんだ。お前が悪いんだぞ…?」
「う、うぅ…」
煮え切らない返事をする朱治の肩口に、じゃれつくように頬ずりをした。
「してくれるよな?親父にだってしてやれたんだから」
「う…ん…、は、はい。わ…かりました…」
蚊の鳴くような声で彼女は答えた。握り締めていた手を外し、少し伸びをしながら口付けてきた。
舌が入り込んでくる。案外積極的だった。それはわざと粘着質な音をさせながら孫策の口内を攻め立てていった。
ふと思い立ち、孫策が彼女の局部に服の上から触れてみると、ぬめりでずるりと指が滑った。
「んんっ!」
突然敏感な部分に触れられ、思わず朱治は口を離してしまった。
「わ、若!」
「へえ、まだ何もしてないのにもうこんなになってるんだ。乗り気じゃないふりしておいて、実はしたかったんだな?」
「そういう訳では…」
目線を逸らし、恥ずかしがりながら朱治はそういうが、孫策にはそれが期待に打ち震えているようにしか見えなかった。
「親父が死んでからどうしてたんだ?他にお前が女だって知ってる奴なんていないだろう」
言いながら、一枚一枚服を脱がしていく。恥ずかしがってはいるが、抵抗するようすはなかった。
「どうしてたって…」
最後の一枚を脱がし、一糸纏わぬ姿にすると、なるほど、服を着た状態では分かりづらかったが、手のひらに収まるくらいの
小さな胸があらわになった。
ゆっくりと指先で揉むと、喉が鳴った。顔を近づけ、舌先でつついてみると、ぴくぴくと体が震えた。
「一人でしたりしたのか?」
「え?!」
唇をあてがい、音を立てて吸うと、朱治は身を仰け反らせて鳴いた。うっすらと浮いたあばら骨をなぞりながら
すでに屹立している胸の先を舌で転がし、甘噛みする。
「あん、だ、駄目ぇ!」
引き剥がそうとして朱治は孫策の頭を押さえつけようとする。が、力で彼に敵うはずもなかった。
執拗に歯で挟まれ、ぐりぐりと圧迫されるたびに胸が痺れるような感覚がした。
朱治は、はじめ孫策に迫られた時に、ひそかに心に決めていた。
出来るだけ早く彼を満足させて、ことを穏便に済ませてしまおうと。
本性をさらけ出してしまう前にすべて終わらせてしまおうと。
だがその決意は早くも崩れようとしていた。もぞもぞと、朱治の右手が動いた。その指先は
自らの秘裂に辿り着くと、くちゅくちゅと音をたてながらその部位を摩擦し始めた。
「何してるんだ」
その時、力強い手でその右手を押さえつけられた。孫策がこちらを睨みあげていた。
「やっぱり一人でするのが好きなんだな…まったく、親父もいやらしい将を配下にしたもんだ」
朱治は、恥ずかしさに消え入りそうになりながらも、本能に押し流され、押さえつける手を無視して
自慰に耽ろうとしていた。
恥じらいと、気持ちよくなりたいという欲望が拮抗していた。
孫策が力をこめてぐいと引っ張ると、抵抗むなしく朱治の手は簡単に持ち上げられてしまう。
請うような彼女の顔を見上げたあとで、孫策は既に濡れそぼっている秘所に顔を近づけた。
「え、若…?」
そしてそのまま、何の躊躇いもなしにそこに口をつけ、舌先で擽った。