以前にも増して華奢に、そして豊満になった裸体が、孫策の前に惜し気もなくさらされる。
あまりの急展開に未だ槍は反応せず。どうした雄飛の時。
「…どうしたんだよ、急にそんな」
落ち着きは取り戻し始めているようで、声はさっきより幾分か低くなっている。
「抱いてほしいならそう言えば」
しかし、それは今の大喬にとっては火に注がれる油にしかならない。

「 そ う い う 問 題 で は あ り ま せ ん っ ! ! ! ! 」

大音声。屋敷が揺れるほどの怒号が、孫策の耳を貫いた。
「あなたは…あなたは戦と私とどっちが大事なんですか!!」
大喬は今自分がどんな姿をしているかも忘れて大声でまくし立てる。
屋敷中の人間が何事かと大喬の部屋へ向かって来ているのだが、そんなことはお構いなしだ。
「毎回毎回私に大流星を呼ぶように言っておきながらさっさと落城させちゃうし!
あなたはためるの簡単だから大したことないと思ってるのかも知れませんけど、しんどいんですよあれ!
大変な思いをしてやっと撃てるかなってところであなたを見るともう敵城に旗立てちゃってて!
ええ確かに文台様の威光を取り戻すのは大事ですし嬉しいことですよ!でも!…でも!!」

だんだんと大喬の声が震えてくる。目からは涙が溢れ、ぱたぱたと床に落ちていく。
「妹だって私と同じように戦に出ているのに!公瑾様はちゃんと見てくれて、しかも愛されています!
それに比べて私はどうですか!昼も夜も悶々として、欲求不満の極みですよ!!
こうしている今だって、伯符様を押し倒さないように抑えるのがやっとなんです!!」
そこまで聞いて、ようやく孫策は大喬の足元にできた小さな水溜まりに気付いた。それは、涙ではなく…
「そうですよ!今じゃもうあなたを見るだけで、声を聞くだけで、こんな風になっちゃうんですよ!」
鳴咽の比率が上がり、言葉が途切れ途切れになっていく。それでも大喬は叫んだ。
「今はまだ勝てているけれど、負けたらあなたは死んでしまうかも知れないんですよ!
義母様のことをお忘れですか!遺される私のことは、考えてくださらないのですか!」
あとは言葉にならない。ためにためた思いの丈を支離滅裂にぶちまけた大喬は、そのまま泣き崩れてしまった。




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