しかし、孫策伯符は生きていた
それを知り国の内乱は一気に収束した
だがその孫策伯符は影武者だった
その事実を知るものはわずかな重臣と
孫策の後室、大喬のみであった…
事実が漏れれば呉は再び揺れる
誰もがそう感じ
『こと漏れた時は漏らした者と知った者には死んで貰う』
周瑜の提案であった…
孫策の影武者とは言え現在は国王である
当然部屋は生前孫策が使っていた部屋だし
孫策の真似をして評定なども取り仕切っていた
今日もその責務を終え部屋へと戻った
「ご苦労様です、孫策様」
部屋へ戻るとニッコリ笑って出迎えてくれる大喬
真実を知った時は深く嘆いた彼女だが今では以前と変わらぬ振る舞いを見せている
女性は強いなと感じる
しばらく雑談に興じていると
大喬が小さく袖を引っ張った
これはひそかに決めた合図である
孫策伯符死亡 健在を 怪しく思い身内の中にまで
間者を放ってくるものもいるのだ
その間者に対しどちらかが気付いた時は袖を引き間者に疑われぬよう
イチャイチャするのだ
「孫策様……」
「だ、大喬…今日も可愛いぜ」
そんな意味不明な会話から抱き合いキスをする
しかし実際はキスで終了である
影武者の孫策に対する忠義と良心がその先へ行くのを咎めるのだ
だがたいていの間者は
「愛してる」を連呼する阿呆なカップルを見て姿を消したのも事実である
深いキスをする 何度目であろうか
「大喬、やはり君は最高だ」
影武者の本心であった、何度目かわからないキスだったが
その唇の感触に飽きる事は無かった
「本当ですか!嬉しい」
そう言って胸にしがみついてくる
それが芝居か本気かは影武者にはわからなかった