白磁のごとく美しい肌に、しかし珍しく朱に染まった表情で、手淫による奉仕を続ける馬岱。色覚が馬超を刺激し、一軍を率いる女がたどたどしく稚拙な奉仕に夢中になっている光景は、女に慣れている筈の彼の射精を早めた。
出すぞ、と声がかかる。
いまいち何が起こるか分かっていなかった女は直後、熱い欲望をもろに浴びてしまった。暇もない連戦・転戦で何十日も溜め込んだ白濁が連続して噴射し、鈴口の先にあった馬岱の顔面を汚す。
「え、ひゃっ」
どう反応すべきか分からず戸惑っていると、噴き出る精液が胸元にかかり、反射的に可愛らしい声がもれた。
着衣が肌蹴て外気に触れている身体は少し幼さが抜けておらず、それでいて成熟しつつある。おんなの性をも纏い始めていた。この若く、性に疎い女が己の子種にまみれている様に背徳のようなものを感じて、けものの欲望が加速していく。
やがて噴出が止まる。小さな眼鏡をかけたままの顔面や、やや小振りな胸元にぶち撒けられる欲望
を為す術もなく見ていた馬岱は、白濁まみれになりながらやはり茫然として、己を汚した馬超の肉の剣を見つめていた。
その様子に性欲を高めながら、馬超の耳に小さく音が聞こえた。荒い呼吸音だった。
「……欲情でもしたか?」
覚醒したかのごとく、馬岱の肩がびくんと跳ねた。
兄さん、兄さんと慕い続けてきたこの従兄の言葉は、半分は正解であった。残りの半分は未曾有の光景にただ目を奪われていただけ、というものだったが、これから抱かれ、「アレ」が自分の中で弾けることを想像して、処女の身であるにも拘わらず高揚していた。
恐怖もあるが、それより子を孕む事への絶大な期待と悦び、そして抱かれる幸福感の方が重い。
ひょっとしたら、この男を想って耽った自慰よりも……という、快楽への淡い希望もあった。
しかしまた「欲情」とは、初心な彼女には幾分直接的な表現であった。
慌てた様子で、だが羞恥に顔を紅潮させながら否定しにかかる。まだ誰にも抱かれていないのに、淫らだとは思われたくない。
「な、なな何言ってるんですかっ、ちが……ひゃんっ」
精液でべちゃべちゃの顔をして何を言うとばかりに、言葉を遮って衣の隙間から手が差し入った。
直ぐさま敏感な箇所に達する。湯のように熱く火照った、欲情の証にてのひらが濡れた。
「ふぁ……あぁっ……」
「知識はあるようだな。ついでに淫乱の素質も、か」
ゆるやかに押し倒しつつ陰部に直接手を押しつけ、円を描いて擦りながら言葉で攻める馬超は実に楽しそうだ。加虐の性癖は持ち合わせていないつもりだし、本来は饒舌でもないのだが、この従妹に限っては反応が面白い、というのは今日まで分からなかった発見であった。
「ち、ちがいます、そんなのっ」
「その顔では説得力が無い。目が濡れている……ここはもっと、か?」
「あぁっ! あ、やぁ……っ」
蕩けた思考で辛うじて抵抗の言葉を紡ぐが、裂目に沿って指が滑るとすぐに脳が快楽に流された。
知らぬうちに喘ぎがもれる。感じているのが知られてしまう。でもきもちいい。耐えられないくらい恥ずかしいけれど、はしたなく腰を振ってしまいそうだった。
被虐で喜ぶ趣味はないが、言葉で攻められる度に腰の奥、これから彼を迎えるであろう肉壁が、物欲しそうに粘液に溢れて収縮するのが感じられた。その趣向の素質は、きっと皆無だと思っていたものを。
そして恐らくそのていど、この従兄にはお見通しだろうと馬岱は思う。
自分のことについて彼が言い外したことはあまり無いし、このように肉体の反応を隠せない状況ではなおさらである。ただしそれでいて苛め続ける馬超はやはり性格が悪い、と自分の乱れを半ば他人のせいにする。
でもそんなことどうでもいい。
肉の芽と胸の先とを触れられると、ひとりでに身体が跳ねた。首筋を舐められただけで、発情した雌猫みたいに鳴いてしまった。覆い被さる従兄の体温が、息遣いが心地よい。好いた男に支配されるとは、これほどまでに甘美な感覚だったか。
やがて小さく達し、ゆるやかな絶頂に身体が緊張する。幸せな高まりであった。独りでするときの何万倍も。
「尻を向けろ」
震え、弛緩した彼女への言葉は、静かな命令であった。
きたるべき時が来たのだ。
「は……い、兄さん……」
交わりの体位が、言葉から推察された。獣のように、とのことだろう。素面なら絶対に拒否する体勢である。
だが、自分のが後ろ付きであることを考えてくれただろう――そう思うと、馬超の命令には素直に従うことができた。羞恥心も薄れかけていたし、声に焦りにも近い欲情を感じ取ったのも大きい。
寝台に身体を横たえたまま枕をかき抱き、うつ伏せになって陰部を向ける。全部丸見えだったと、あとから思い返して恥ずかしさで死んでしまいそうになる体勢であった。
「力を……抜け」
「ふぁ……い……」
達したばかりの入り口を先端で擦られて返事が乱れたが、馬超の声にあまり余裕はなかったからお互い様である。そしてやがて快楽に混じり、破瓜の痛みが、馬岱のからだを貫いた。
一生忘れないであろう痛みを受けながら、事の発端を思い出す。何故ことに及ぶに至ったか、それはやはり今日の昼のことがあったからであろう。
戦場で毒矢を受け、死に瀕して看病されていると聞いたときは、この世の終わりだと思った。
でも駆けつけるとそれは明らかな誤報で、白銀の鎧をがちゃがちゃと外しながら
「どうした青い顔して。毒でも拾うて食うたか」
と笑われた時に何と言うか、ぶち切れて。
どれだけ心配したか、どれだけ大切に思っているか、それに飽き足らずどれだけ愛しているか懇切丁寧にぶち撒けたという、最低最悪の告白の結果にしては、まあ悪くは無いのではと後から思ったけれど。
「ひゃ、やぁっ、に、兄さん、もう、こんなっ、あぁ、あぁあ……ッ!」
結局、後ろから5回、前から2回、上にさせて3回。
「嘘を吐くな。腰を振って、おいて……」
「だ、だって、こん、なっ、ふ、ふぁああッ!」
「明日は、休戦だ。たっぷり愛してやる、ぞっ」
「あ、あ、にいさ、に、にいさぁん、ま、また、やぁぁっ、し、しんじゃう……ッ!」
武力9の連突は、正直勘弁して欲しいと思う馬岱であった。