『始まり』

目の前には長い廊下。耳に入るのは自分の足音。外では桜がひらひらと散っている。穏やかな陽気が心地いい。

一枚の紙を手に持って私は黙々と足を進めた。すれちがう人たちは知らない顔ばかり。

緊張はしている。不安に思うことはたくさんある。だけど、自分で決めたことだから。

そう、これは自分の意志。誰かに強制されたわけでも、薦めてくれたわけでもない。

どんな顔をすればいいのだろう。どんな態度をとればいいのだろう。思考はやがて困惑になり、そして不安要素へと変化する。

だけど、足は止まらない。頭と身体が上手くリンクしていない。でも、それでいいと思った。





人間の深く考え込む能力、それは生きる中で重要なウェイトを占めているもの。だが、時にそれは邪魔者にも変化する。

本当の私は、理性を保った自分なのか、それとも本能のまま動く自分なのか。

一体どちらが真実なのか。わからない。わかるはずがない。でも、それが一番良い気がしてならない。

この世には、正しく答えが出ない謎が合った方がいいのだ。




だんだんと近づいてくる目的地。心が不安と期待で入り混じる。胸が高鳴っている。そう、それはうるさいぐらいに。

だけど今、自分の目の前にあるドアをあけたとき、そんな心配はしなくなる。

ノックを二回。返事を確認し、静かに扉をあける。そう、始まりの扉を。





「すみません。仮入部したいんですけど……」





もう、大丈夫。

期待が不安を取り込む日は、そう遠くはないから。

Fin.


▼Back

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル