若気の至り?

「や、ランちゃん、こんにちわ」
「………………」
今日こそは、と隙をついて声をかけてみても、彼女は真っ赤になって逃げるのみ。
「……」
ここ数日の行動で何か至らない点があったのだろうか、と彼はまた首を傾げる。

「しっかしアレだな……ピート、お前ランちゃんにはいつ渡すんだ?」
「んぐ……カイ、渡すって何だよ渡すって」
「ん〜なもん青い羽根に決まってるだろ?」
牧場生活3年目の夏、悪友と言っても良いカイに痛い所を突っ込まれてピートは少々口ごもる。
「直ぐにでも……と言いたいけど……」
「なんか問題あるのか?実は病院のエリィさんのがツボだとか?」
やきもろこし(トウキビ提供:ピート)を囓りつつ、カイは更に問いかける。
「いやメイド服は好きだけどあの娘はちょっと……」
「料理上手な娘が良いなって言ってたもんな、お前」
エリィの料理についてここで振れるのは避けよう、スプーンの先を溶かすようなスープは最早スープでは無い、つーか食い物ではない。
また彼の趣味でもある「メイドさんは髪がロングのストレートであってこそ」というのも分厚い壁になっているようだ。
「最近話しかけても真っ赤になって顔背けるだけだし、なかなか話す機会がなぁ……」
「お前それ……いや気付いてないなら良いや」
そりゃ照れてるだけだろ、と呆れかえりながら、カイは3本目のやきもろこしに手を伸ばした。
やってられるかって単語を背中にくくりつけて。

さて、問題のランは、と言えば……。
「ラン、おいラン」
「………」
父ダッドの呼びかけにも答えず、店に置いてあるぶどう酒の並べ替えをしていた、因みに本日11回目。
「……あかんなこりゃ」
大きく溜息を吐くと、父は娘の頭を軽く叩いてやる。
「はっ……あ、なに?」
「ラン、悪いがピートの所にコレ届けてくれるか?」
「へ?」
ピートの名前を聞いた途端茹で蛸のように真っ赤になる愛娘を見て、ダッドは「ウチの娘、見る目があるのかないのか……」と内心で呟く。
それでもそう言う相手に物持って行けというのは彼なりの気遣いなのか……
(とりあえずトトカルチョは勝ちたいからな)
只の野次馬根性かもしれない。

手鏡を覗き込んで変なところがないかチェックすること3度、夕日の中でランはようやくその家のドアをノックする。
「はい……ってラン」
「や……や、ピートくん……これ、お届け物」
父からの頼まれ物を押しつけるように渡した娘は、なかば逃げるように彼に背を向け。
「あ……」
「あ」
不注意だったのか不運だったのか春の女神様の悪戯か……

ばしゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ

ランは、水たまりに向かって盛大にスッ転んでいた。

1時間後、ピートの家、風呂場。
お湯から出て、用意して貰ったバスタオルに身を包む。
「えっと……」
着替え貰ってくるからそれまで着てて、というメモと一緒に置いてあったのはピートのパジャマ。
ちょっと頬を染めながら、袖を通す前にかるくパジャマを抱きしめて臭いを嗅いでみる。
干していたのか、お日様の臭いに混じって、微かにピートの臭いもする。
それを抱きしめたまま、ベッドに寝転がり、おもわずころころと転がる。
ころころ
すんすん
くんくん
ぎゅ〜
ころころ
………はっ  Σ( ̄□ ̄;)
十分堪能したところで不意に我に返ってはっとなる。
(人様のベッドの上で寝間着だきしめてごろごろしてなにやってんだアタシは〜〜〜〜っ!?)
髪を下ろし、タオルを巻いただけという扇情的な姿で耳まで真っ赤になって悶えるラン。
まぁ間の悪い時、というのは続くもので
「ピートくん、いる?取り敢えず入るわよ?」
(この声は……エリィ!?)
慌てて隠れる場所を探すがそんなものが簡単に見付かるはずもなく、帰って物音を立ててしまう?
「……?ベッドルームにいるの?」
ひょいと戸口からエリィの顔が飛び出て……そのまま固まる。
「………」
「………」
「………」
「……」
「…えっと、その……ごめん……」
そのまますすすっとフェードアウトしていくエリィ
(まってちがうのごかいなの〜〜〜〜〜〜〜っやましいことは何もないの〜〜〜〜〜〜っ)
嗚呼心の声は届かない。
「……と、とりあえず何か着ないことにはかえって変な風に見られるよね」
無茶苦茶あせりながら手近にある身体を隠せる物を手に取り、身につける。

そして……
ピートは途方に暮れながら自宅の扉を開けた。
手には持ってくるはずの替えの服はなく、ただ一枚「ガンバレ」と書かれた紙が握られて居るのみ。
(ガンバレったってなにをどう頑張れば……)
延々とループしてきた命題に答えが出ることは無かった。
なぜならば
「あ、おかえり、料理できてるよ?」
裸にエプロンのみというある意味ツボな格好のランが、振り向きながらそう言っていたから。
どちらかというと大きめの、エプロンの端から零れそうな胸、形の良いお尻。
ピートの理性に無茶苦茶なダメージが押し寄せてくる。
「お風呂も沸いてるけどどっち先に……」
皆まで言わさず、ピートはランを背後から抱きしめていた。
「え……えと……あの……この手のお約束の決めセリフって、言ったっけ?」
言っていない、とこの盛り上がった空気に水を差すのも難だと思い、ピートは黙ったまま、優しくランの唇に自分のそれを重ねた。

「んぅ………ん……」
初めの数秒、驚いていたランだが、直ぐに目を閉じ、自ら求めるようにキスをし続ける。
頬には軽く朱が差し、開かれた瞳は潤む。
「はぁ……ピート……くん……」
急かすように、焦らすように、ランは思い人の名を呼ぶ。
男というのはそう言う攻撃に弱いもので……。
「ラン……」
「うん……ん……」
もう一度だけ、キスを交わすと、ピートはランを抱き上げ、ベッドルームに入り込む。

ぽふっ……
そんな音でも立てたかのように、ランの身体はベッドに寝かされる。
「ぁ……」
背中に回されたピートの手が、身につけているエプロンの紐を解いた動きを感じ取り、ランは小さく身を竦める。
「変じゃ、ないよね?」
「うん、綺麗だ……」
それ以上は何も言わず、ピートはエプロンを取り払う。
「ぁんっ」
裏地が乳頭を軽く擦り、ランは思わず声を漏らす。
「感じた?」
「ばか」
悪戯心からなのか、無粋な事を聞くピートにランは軽く拗ねてみせる。
「もっと、感じさせて?」
「うん…」
すっかりピートの目に晒されたランの素肌。
年の割には大きな胸も、柔らかな恥毛も、全てが晒されているのだから何を今更、だが。
それでも恥ずかしそうにしている辺りは、初体験の乙女故、か。
その場の流れとはいえ、ここまでくれば隠す事もできず、かといって堂々と見せることが出来るほど己に自信があるわけでなく……腹の辺りで所在なさげに組まれている腕が、またなんともピートの理性を揺さぶる。

「ふぁ……」
甘い嬌声を上げ、ランの腕がピートの頭を自分の胸に押しつけるように抱きすくめる。
その拍子に思わず乳頭を銜えてしまったピートは、丁度良いからとばかりに舌先で乳頭を転がすように愛撫する。
「あぁ……んっ……」
甘い声はより強くなり、僅かなりとも動く腰をピートの腿に擦り付けて疼きを誤魔化す。
秘所からはその度に愛液が流れ出て、ベッドに大きな染みを作る。
それに気付いたピートは、そこに手を伸ばすと指の腹で押すように何度か刺激してみた。
「ひゃっ!?」
腕の中で、ランの身体が敏感に震えたことを確認すると、指を一本、その中に差し入れてみる。
「はっ……ひぁっ……!?」
突然胎内に感じた異物感に、ランは何度か身悶える。
その度に、内壁が指を擦り、快楽を伴った刺激となってランの身体を支配しようと走った。
「指だけでこんなに……ランって結構えっちなんだね」
「ばかぁ……女の子なら……こんな事されたら誰だって……」
後半は最早言葉にならなかった、間を置いて軽く息を整えると、ランは不安げにピートの瞳を覗き込む。
「……そんな女の子、嫌い?」
「ランは、大好き」
微妙に答えになっていない、それを誤魔化すように、ピートは更に愛撫を続ける。
既にランの我慢は限界、理性が崩壊し絶頂に上り詰めるまでほんの一押し、と言ったところだ。
それを判っているのか、ピートのそれははち切れんばかりに膨れあがり、時としてランの秘所に擦りつけられる。
「ピートくん……いい……よ?」
両足を限界まで大きく広げ、ランは覚悟を決めたことを彼に伝えた。

十分に塗れたそこは、ピートの膨張を半分まではすんなり受け入れた。
なにか薄いものにぶつかった感触を感じて、ピートはランを見る。
ランは何も言わず、ただこくりと頷くと身体の力を全て抜いた。
ここが最後の一押し、とピートは少しだけ力を込めて腰を押し進め……。
「……っ」
その痛みに、ランの表情が小さく歪む。
「ピートくん……」
目の端に涙を浮かべ、微笑んで、彼女は最愛の男を見る。
「おかえりなさい……」
「……ただいま」
何故そんな言葉が口をついたのか、どちらにも判らない。
しかしそれは、今の二人の心を表現するのに、最良の言葉だと思えた。
「動くよ?」
「うん」
ゆっくりと半分ほど引き抜き、又差し入れる。
その度にランの口からは息が漏れ、その表情に赤みが増していき、締め付けも強くなる。
「や……これ……すごぃ……」
擦れるたびに愛液が溢れ、締め付けは強くなる。
ランが果てるのも時間の問題だった。
「ひぁっ……イくぅ……いっちゃうよぉ……っ」
「ラン……もう……」
ぬちょぬちょという水音混じりの音は、いつの間にか乾いた音に変わり、お互いが身体の全てを使ってお互いを感じていた。
「ぴーと……く……いっしょに……ひゃぅっ!!」
絶頂を迎えようとする身体をどうにかくい止めながら、ランはピートの腰に足を絡ませる。
「……!!」
一際大きく突き上げたかと思うと、ピートはランの最奥で果てた。
「は……ふぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
それと一緒にランも、絶頂の高みへと突き上げられていた。

「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……………ふぅ……………」
繋がったまま、二人は暫し息を整える。
「ラン……その……」
胎内に射精してしまったことを詫びようと、ピートが口を開きかけた時、ピートの勃起が締め付けられるように圧迫された。
「ご……ごめん……その……なんて言うか初めてで気持ちよくって……」
真っ赤になり、ゆるゆると腰を動かしながら、ランが小さく呟く。
「歯止め……効かないのぉ……」
その言葉を肯定するかのように、イったばかりの身体が大きく動く。
「いっぱいイかせてぇ……明日、動けなくなるまでぇ……」
その言葉は耐え難い誘惑の如くピートに刺さり……
「あ……ふぁぁっ!!」
ぬかずの2ラウンド目が、始まった。


それから1週間後、ランとピートの婚約を聞いたカイは「やっとかよ」と苦笑しつつ、悪友を冷やかすためにその住居に向かう。
そこでは……。
「……危険日、だったの?」
「うん(にこにこ)」
そこでその日何が話されていたのか、カイは知らない。
ただ……
「女って恐いな」
と呟くだけである。

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