ドクター×マリー
毎週水曜日。午後になるとドクターは図書館へ行く。
ミネラルタウンの小さな図書館の本…しかもバジル氏の所有物となれば、
数も傾向も決まっていて、ドクターが必要とするような本は全くない。
それでも、ドクターは図書館へ通う。
今日も、マリーが何か本を読みながら机についている。
鍛冶屋のグレイも昼を過ぎるとやってきて、何かしら手に取っている。
「やあ、こんにちは」
そう言いながらドクターが図書館に入ると、マリーが俯く。
グレイはぺこりと頭を下げた。
ドクターは2階へ上がる。マリーがそれを目で追った。
グレイは再び本に目を落としている。
「マリーくん、ちょっと聞きたいことがあるんだが」
2階から呼ぶ声がいつもの、合図。マリーはグレイの背中に一瞬目をやる。
「はい、今行きます」
全く無関心なグレイを確認してから小さくため息をつき、マリーは2階へ上がる。
グレイが少々気まずそうな顔をしてその背中を見上げるのを、マリーは知らない。
「ドクター…あの…」
「ちょっと調べたいものがあるんだが」
本棚の奥からドクターの声がする。マリーは階段の上がり口から動かない。
「もう…こういうのは…」
マリーが蚊の鳴くような声を出す。
ぬっとドクターが本棚の陰から姿を現した。何も持っていない。
マリーの細い手首を捕まえて、
「なんなら、ここでしてもいいんだよ?グレイに丸聞こえだね?」
と囁いた。
「私は…グレイとは…」
一瞬身を引くが、後ろが階段なのでそれ以上逃げられない。
ぐっと手を引かれると、非力なマリーはドクターの腕に捕まってしまう。
「わかってる。グレイはまだ多分…」
そう言いながらドクターはマリーのスカートの中に手を入れ、ショーツの隙間から
マリーの茂みをまさぐり、
「ここを知らない」
と囁いた。
「やっ…」
「男は数をこなしてる方が良くて、女は処女の方がいいなんて、誰が言ったんだろうね?
君は頭がいいから、そういうのはナンセンスだと思うだろう?」
やはり、ドクターの方が一枚上手だ、とマリーは思う。
マリーは本ばかり読んでいて、頭でっかちだと自分でも思っている。
だから、簡単に籠絡される。
言い返すことも、腕力でねじ伏せることもできない。
ドクターはひょいとマリーを抱き上げて、さっきまでいた場所…本棚の陰へ移動する。
「その点、この町の人たちは素晴らしいよね。みんな自由に楽しんでいる」
マリーを背中から抱き締めて、言葉を続ける。
「君も、本をたくさん読んでいればわかるだろう?」
ドクターは巧みにマリーの自尊心をくすぐる。
本ばかり読んでいるマリーは、乏しい人生経験を読書によってカバーできると信じている。
ドクターはそのままマリーのブラウスの襟元を緩め、腕を差し入れる。
「社会学…生物学…君はもっと勉強できる…」
そして、ふ、と手を止めた。
「なんだ、嫌がっていたのは演技か…」
そう言って前のホックを外す。
「ちが…い…ます…私はただ…」
「ただ?」
ドクターはマリーに尋ねながら、マリーの耳たぶを優しく噛んだ。
同時に、ふっくらとした柔らかい乳房の先端を指でくりくりと捏ねる。
「ん…」
「もしかして、グレイを誘おうと思ってた…?」
マリーはもう言葉が出ない。
「今日は水曜日だから、僕が来るってわかってるのに?」
耳の後ろにキスをされて、マリーは思わず天を仰ぐ。
乳房の先端が固くなり、膨らんでいっそう敏感になっている。
ドクターは手を少しずらして乳房をそっと揉んでいる。
「君も知っているだろうけど…これはコミュニケーションなんだよ…
人間と、ほんの一部の高等なサルでしか観察されていない…
第一、子供もいないのに、こんなに乳房が大きい動物はいないね…
まるで、セックスするためにあるみたいだと思わないかい…?」
マリーが快感に必死で抗いながら、言葉を探す。
「でも…本当に好きな…人と…だけ…」
再び、ドクターが胸の突起を指で刺激する。
「…じゃ、これはどう説明する?身体が反応してしまうのは…?」
「ん…それは…」
マリーの太ももにドクターの腰のものが当たる。
ドクターがマリーのスカートを捲り上げて、ショーツの中に手を入れた。
「僕のことが好きじゃなくても…もうこんなに濡れているのは…?」
くっくっと、ドクターが笑う。
「君は、僕のことが好きではない、と理性では思っている。
でも、身体は僕のことを覚えている。
水曜日になれば僕が来て、こうやって可愛がってもらえることを、知っている。
…セックスは子供を作るためだけにするんじゃない。
こうして、快楽を得るために人間が見つけた娯楽みたいなもんだよ」
そう言って、ドクターは今度はぐっと力を入れて、マリーの中に指を入れる。
「あっ…」
マリーから切なげな吐息が漏れる。もう、膝が震えてしまって、本棚を掴んでいなければ、
立っていられない。
「今、グレイを呼ぼうか?」
ふいに、ドクターが聞いた。
「いや…です…」
指をあちこち動かされて、マリーは自分の中で何かが早く早くと叫んでいる気がした。
「どうして?」
首筋を優しく噛みながらドクターが尋ねる。
「わからない…けど…」
答えをマリーは知っている。
「今は僕がいいんだろう?」
それを見抜いたようにドクターが囁く。
「…そう…なの…」
「気にすることはないよ。正直なのが一番だ」
そう言って、ショーツを引きずり下ろす。かちゃかちゃと音をたてて、ドクターが
ズボンのベルトを外す。
言っていることは意地悪な気もするが、することは優しい。
「声を出せばグレイに聞こえるよ。…どうする?」
いやいやとマリーが首を振ると、右手をマリーの口に当てた。
マリーは本棚に手を突き、腰を突き出している。
「んっ…」
ずぶり、とドクターが入ってきた。ゆっくりと前後に動きながら、敏感なところを探る。
「イイ所も日によって違うよね…?」
こくこくとマリーが首を縦に振る。
頬が上気してほんのりと赤くなり、目のふちにうっすらと涙が浮かんでいる。
悲しいわけではない、とドクターは知っている。
「そんなに気持ち良い?」
とドクターが囁く。
「ん…」
マリーが頷いた。
ドクターが図書館に来ると、いつもマリーを呼ぶ。
そしてなかなか降りてこない。しかもお世辞にもここは堅牢な作りとは言えないので、
1階にもそれなりに物音が聞こえてくる。
現場を見たわけでも本人たちに聞いたわけでもなかったが、グレイはまた同じ気配を
感じて、天井を見上げた。
ドクターは経験豊富そうだ、とだけ思ってグレイは再び本に目を落とす。
その脳裏には、マリーではなく、つい最近この町にやってきた一人の女性が浮かんでいる。
…彼女とも…?
自分がそう考えたこと自体を不思議に思い、なかなかそのことが頭から振り払えなくなる。
今日は本どころじゃないな、とグレイは本をぱたんと閉じる。
2階の床がやたらぎしぎしと軋んでいる。
グレイはまいったな、と頭を振って本を本棚に戻した。
2階を見上げてから音を立てないように、そっと図書館を後にした。
「んんっ…んっ…あ…」
ドクターの指がマリーの口を押さえているせいでマリーの漏らす声は最低限だった。
しかし、ドクターが腰を動かすのに合わせて、じぶんでも良いところに当たるように
腰を振っていると、マリーは自分で自分を分析する。
それでも、頭で考える以上に、身体は正直に反応する。
「良いね…マリー君…今日は一段と…」
「私を…こん…なに…したのは…ドク…ター…」
マリーが喘ぎながら喋ろうとする。ドクターが笑って、腰の動きを早めた。
「やぁっ…あ…あ…あ…」
背を反らせてマリーも動く。
長い黒髪が前後にゆらゆらと揺れる。
そういえば、金髪の彼女はどうしているだろうか、とドクターが思った、その時。
「……!」
声にならない叫びと共に、マリーが絶頂に達した。
マリーがびくっと全身をふるわせて背を反らす。
ぎゅっと肉壁がドクターのペニスを締め付け、ドクターの精液を絞り出す。
まるで逃がすまいとするようだ、とドクターは思う。
どくん、とドクターのペニスが脈打って、ドクターも快感に包まれる。
マリーの脚の間から白と透明の液体が溢れだしてくる。
「あ…」
マリーの腕と脚の力が一度に抜けて、そのまま尻餅をついてしまう。
手持ちのタオルでマリーの脚を拭いてやると、ぴくぴくと脚が痙攣していた。
ドクターは、きちんとズボンを穿く。
座り込んだままのマリーが手を伸ばしたところに、ドクターの股間があった。
「そんなに好きなのかい?」
「ちが…そういうわけじゃ…ありません」
慌てて手を引っ込めたマリーにちゅっ、とキスをして、囁く。
「僕は好きだけどね?」
「みんなのことが、でしょう?それともこういうことが?」
マリーが一生懸命怒っている顔をしているが、悪い気はしていないのが手に取るようにわかる。
あえてそれには答えないで、ドクターは
「頑張ってグレイを落とすんだね」
と、笑った。