グレイ×クレア春

そうだ、クリフと遊ぼう。
夏も近づくある夕方、クレアはふと思い立った。
…クリフ「で」遊ぼう、かな…と、思わず口元が緩む。
自分が少しずつ牧場の仕事にも、この町にも慣れていると思っていた。
ダッドの店に入り、ランやダッドににっこり挨拶してから2階へ上がる。
リックがひらひらと手を振ったので手を振り返した。
クリフの泊まっている部屋をノックしてドアノブを回すと、すぐに開いた。
「鍵かけとかないの?」
「いちいち開けんのめんどくさいから…」
答えた声はクリフではなかった。
はっと息をのみ、クレアは「ごめんなさい…あの…人違い…」
そう言って扉を閉めようとした。
「クリフなら、もうすぐ帰ってくると思うけど」
ぶっきらぼうに言う声。
誰だっけ。クレアはちょっと考えた。
「あ…サイバラさんとこの。ここに住んでるの?」
「グレイだよ」
いつも黙々と鍛冶屋で働いている後ろ姿しか見たことがない気がする。
案外キレイな顔だな、と思ってじっと顔を見つめると
グレイはふい、と横を向いた。少し赤くなっている。
「サイバラさんとあんまり似てないね」
間が持たなくてクレアが話しかける。
「たりめーだ」
「将来似るのかな?」想像してくすくすとクレアは笑った。
「俺はあんなにはならねぇ…ように頑張る」
サイバラの鍛冶屋では動物のブラシやベルや牧場生活に必要なものを購入したり、
道具の改善をお願いしている。
「でも、サイバラさんの跡継ぎなんでしょ?」
クレアが聞くと
「まだ全然ダメだっていわれてるけどな」
ぶすっと横を向いたままグレイが答えた。
「大変なんだねぇ」
サイバラの店に行ったことは何度もあるけど、グレイとこんなに話をしたのは
初めてだな、とクレアは気づいた。


「それより、こんな時間にフラついてていいのかよ」
と、グレイが言った。
「え」とクレアが聞き返すと
「あ、クリフだっけ…俺、下で時間潰してようか?」
グレイがはっとして赤くなった。
「グレイも…もともとこの町の人なんだよね…?」
なんだか信じられなくて、クレアが思わず聞いた。
グレイは帽子を目深に被り直し、俯いた。
「いや、生まれは違う」
いつも答えは短い。
じゃ、グレイは…とクレアが思ったとき、グレイが呟いた。
「そういうの、苦手なんだよ」
あわてて「俺修行中だしそんなことにかまけてる暇ないし」と
早口で付け足す。
あはは、とクレアが笑う。
「そういうの、って、何?」
悪戯っぽく聞いてみた。
「…知らない…知ってても言わない」
「そう…なんだ」
逆に驚かされた。なんとなく、気が削がれてクレアは「クリフによろしくね」
とそれだけ言って、ダッドの店を後にした。

もう、日が落ちていて、夜風が心地よかった。

それから数日。クレアはざっか屋で買い物をしたついでに図書館へ寄った。
調べたいことがあったのだ。そこに、グレイがいた。
マリーにこんにちは、と言ってからグレイに話しかけた。
「本なんか読むんだ」
「悪いかよ」
「どんな本読んでるの?」
「いろいろ…マリーはいつも良い本をすすめてくれるんだ」
そう言って笑った。これまでに、見たことのない、笑顔。
「へぇ」
調べ物をしている間中、クレアの頭からその笑顔が消えなかった。
あんなこと言ってたけど、マリーと仲良しなんじゃない。
あんな顔できるんじゃない。
何よ何よ何よ。


…結局、あいつもこの町の人間なんだ。
その夜クレアはなかなか寝付けなかった。
寝ても覚めても、その時のグレイの笑顔がちらつく。
鍛冶屋サイバラに行ってサイバラさんと話をしていても上の空で
一生懸命黙々と働いているグレイばかりに目をやっていた。

もやもやがずっと晴れない。
月曜日、図書館が閉まっている日の午後、ダッドの店に行く。
案の定グレイがベッドに腰掛けて暇そうにしていた。
「牧場はいいのかよ」
「…うそつき」
グレイが目を見開く。
「なんだよ、いきなり」
「マリーと仲が良いんでしょ」
少し考えてからグレイが答える。
「…悪くはないよ」
「好きなの?」
「誰が誰を?」
…もしかしてグレイって鈍いのかな、とクレアは思う。
「グレイが、マリーを」
わざと「が」と「を」を強調して言った。
「うん」
あっさりとグレイが答える。
「そういうの、苦手だって、言ったくせに」
クレアはまくしたてた。
「どーせあんたもマリーとよろしくやってんのよね。
口ではなんとかいいながらさぁ。あーマリーだけじゃないか。
この町の人間ならみんなそーよね。誰でもいいのよね。
誰でもいいくせにあんなこと言って。私とはできないって言うの?」
グレイがきょとんとしている。
クレアは涙目になっている。
「あの…大丈夫か…?」
そう言って、心配そうにクレアの顔を覗き込んだ。
「あのさ、マリーのことは、あくまでも
友達として、好き、って意味」
言葉を選びながらグレイが話す。


「クレアさんの言いたいこと、俺はわかってるかわかんないけど、
俺はその…そういうこと…あんまり興味がなくて…
ホントにその…誘われても…そんなに…やりたいと思わないっていうか…」
最後の方は口ごもる。
クレアはなぜかホッとした。
そのくせ思っていることと違うことを口にする。
「ホントに?言うことと下半身は別物なんじゃないの〜?」
「別に…信じてもらえなくてもいいけど…」
そう言ってグレイは帽子を被り直す。
あわてて、クレアは言った。
「うそうそ!信じる!信じるよ!」
ふと、グレイが聞いた。
「それでさ、なんか用じゃないの?」
「えーと…」
「まさか、これが用?」
クレアがしまった、という顔になる。
もっと真面目に働けとか、精進しろとか言われそうな気がしたからだ。
「クレアさんて、変わってるね」
グレイはそれだけ、ぽつりと言った。
クレアは思わずくすくすと笑って、
「グレイに言われたくないよ」と、グレイの隣に座った。
そのまま、グレイの肩に頭を乗せる。
「こんな普通にお喋りって最近あんまりしてなかったな」
と呟く。
「楽しいね」
そう言ってそのままグレイの方に顔だけ向けた。
何かにぶつかった。
唇だ。
唇が、唇に。
「ごめ…っ」
慌ててグレイが身を引く。
クレアの心臓は早鐘のように鳴っている。
「…あの、私もそういうつもりじゃ…」
ごめんなさい、と口にしようとした。
グレイの唇がクレアの口を塞ぐ。
グレイの手がクレアの頭を包んでいる。手が大きいな、とクレアは思って目を瞑る。
どちらからともなく、唇を甘噛みした。
唇だけで相手の唇をそっと挟む。下唇の端から端まで。上唇の端から端まで。
グレイの舌がクレアの口に入ってくる。



まるで歯を一本一本調べるように、丁寧に舌を動かす。
自然にクレアの舌が絡む。かわりばんこに舌を吸う。
ちゅっ、ちゅっ、と音をたててキスを繰り返す。
ぼぅっとした頭で、クレアは必死に言葉を絞り出す。
「本当にこういうことしたことないの?」
グレイは答えない。
「ごめんね…」
どちらとも無く謝って、もつれ合ってベッドに倒れ込む。
グレイの帽子がどこかへ飛んだ。
グレイがキスを落とす。
耳に、うなじに、首筋に、鎖骨に。
「ひゃんっ」
少しの刺激でも反応してしまうようになった自分が恥ずかしい、とクレアは思った。
「ごめん…あの…俺もそういうつもりじゃ…」
「ううん。…いいよ…」
クレアがグレイのつなぎを脱がせて、下着だけにする。
グレイが丁寧に、クレアのオーバーオールのボタンを外す。シャツのボタンを上から順に外す。
腕を取ってゆっくりとシャツから腕を抜かせる。
そのままクレアの腕を取っていったん向かい合わせに座らせる。
シャツを脱がせ、もう一度キスをした。
「本当に…いいの…?」
グレイが囁く。クレアはちゅっ、とキスをして承諾の意を示す。
背中に手が回った。ブラのホックがはずれる。
ブラを横に置いてグレイが胸にキスをした。
丁寧に、丁寧に乳房を触る。時々、ちゅっ、とピンクの突起にキスをする。
両手で乳房を触りながらグレイがクレアの唇を再び吸った。
グレイの指が乳房の突起を捏ねる。両方に同じように刺激を与えられて、
クレアは艶っぽいため息をついた。
優しいキスをして、グレイがクレアのショーツを脱がせる。
少しだけ触ったが何も言わず、グレイもトランクスを下ろす。


「入れるよ…」
不器用に、グレイが入ってきた。
緊張しているらしいことが手に取るようにわかる。
ぎこちなく前後に動く。
「…キス…して…?」
クレアが強請るとグレイがキスをする。
「ん…」
ゆっくりとグレイがクレアの奥を突く。
「んんっ。んんっ」
絶頂の手前で快感に揺られる。
ずっとこうしているのもいいかも、とクレアは密かに思う。
「あっ」
急にグレイが引き抜こうとする。クレアがぎゅっとグレイの首に腕を回した。
「いいよ」
「でも…中で出る…」
「出して」
んんっ、と力を入れてグレイがクレアの奥の最も敏感なところを突いた。
「あっ…んん…っ」
クレアの肉襞がグレイを締め付ける。首に回されたクレアの腕に力が入る。
どくん、と脈打ってグレイはクレアの中で自分を解放した。
グレイはそっとクレアから身体を離そうとした。
しかし、クレアが首にしがみついたまま離れない。
「ね、どうして中で出そうとしなかったの?」
「別に…理由なんかないけど…」
やっぱりグレイは言葉が少ない。
もっといろいろ聞きたくてクレアは口を開いたが、少し考えて、止めた。
そのかわり、軽く、キスをした。
絡めていた腕をグレイから外し
「これで私たちも仲良しなのかしら?」
と聞くとグレイから
「うん…そうだね…友達だよ」
と返って来た。自分でそういう風に話を振ったはずなのに、
この町では、セックスに深い意味なんかないってわかってるはずなのに、
もう恋人だとかそういう立場になることはないと思っていたのに、
グレイの口から「友達」という言葉が出て、クレアの心臓が跳ねた。


「そうね…友達、よね」
何事もなかったかのように服を着ているグレイ。
やっぱり慣れているのかな、とか、他には誰とやったんだろ、とか、
そんなことばかり考えながらクレアものろのろと服を着て、手を振った。
「じゃ、またね」
またね、というのを強調して部屋を出た。
ダッドの店を出てから思わず走った。牧場まで息もつかずに、全速力で走った。
何もかもを投げ捨ててこの町に来たのに。
それでもまた振り捨てたいものができているのかと思いながら。

一方、グレイはしばらく部屋で立ちつくしていた。
クリフが帰って来て声をかけられて始めて、我に返った。
クレアさんは、この町に来たばかりだ。しかも独りで。
クリフも似たようなものかもしれないが、クレアさんは女性だ。
…しかも綺麗だった…そう思ってグレイはぶんぶんと頭を振る。
勿論、他の男の話が耳に入っていないわけではない。みんな知っている。
それでもなぜか、心配になる。誰かにこれ以上何かされたら嫌だと思う。
それが嫉妬という感情だと言うことにグレイは気づかない。

クレアは独り、ベッドに寝転んで自分の唇をそっと触った。グレイのキスを思い出す。
「…変なの…」

グレイもクレアもまだ、気づかない。
それぞれの気持ちに。

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