「ごめん、メロディ。ちょっと遅くなっちゃったけど、まだお風呂には入れる?」
もう夜も更けようかという時間帯。とっくに営業時間を過ぎたギガント温泉に、ラグナ
が駆け込みながら姿を現した。色々と重労働をこなしてきたのか、その体には煤埃や泥が
至る所についていて汚れている。今すぐにでもお湯で体を洗って綺麗になりたいのだろう。
店の主人であるメロディは既に店じまいの準備をあらかた終えていて、ちょうど今から
一日の最後の楽しみである風呂に入ろうかと、準備を進めているところだった。その手に
はバスタオルなどの洗面具一式が握られている。
「うーん、ホントはもう閉まってるからダメなんだけど。ラグナだから特別かな? 早く
ちゃっちゃって入ってくれるなら、男湯の方には入ってもらってもいいよ」
「そう? ありがとう。ならお言葉に甘えさせてもらうよ」
ラグナはメロディの返事を聞くと、にっこりと笑って男湯の方へと駆け込んでいった。
すぐに姿が見えなくなる。
「さて、私もお風呂入ってこよーっと」
その後姿をぼうっと見つめていたメロディは、自分も女湯に入ろうかと歩き始めた。が、
途中で何か考え事を始めたのか動きを止める。
「……そういえば、ラグナには色々とお世話になってるんだよね。この前にもゼークスの
連中を追い払ってもらったばっかりだし。なのに、何かお返しをしたかって言ったら――」
洗面具や着替えを持ったままのメロディの動きはそこで完全に止まってしまう。
「何もしてない、ていうかラグナ無駄に器用だから困ったりしないし、それでお返しする
機会自体がないのかな。だとすると、もしかして今って、チャンスなのかも。……その、
か、体とか洗ってあげたり、髪とかすいてあげたり」
そこでボッとメロディの頬に赤みが灯る。くねくねと体を曲げたりしながら、目を閉じ
て何かを頭の中で想像しているらしい。
「よしっ、そもそも私ってばミストやロゼッタと違って、普段からラグナと接する機会が
あるわけじゃないし、これぐらいなら、いいはずだよね?」
まるで弁解するように、そうメロディは呟くと、そこで体を反転させて店の入り口まで
歩いていった。そしてカチャリッと玄関の鍵をかける。
「ふんふ〜ん。ふぅー、生き返るなあ」
そのころラグナは体を洗ってキレイにした後、一人だけの風呂に入って鼻歌を口ずさん
でいた。湯気がこもった浴場の中、タオルを頭の上に乗せて気持ち良さそうにしている。
完全にリラックスしているのか、素っ裸で浴槽の中で手足を伸ばしきっている姿からは
どれほどの重労働をこなしていても、ラグナがただの青年でしかないことが見て取れる。
「今日はカブもたくさん収穫できたから、ミストさんも機嫌良かったみたいだし、それに
収穫箱にもたくさん入れておいたから、ロゼッタも何か驚いてたな」
ふんふ〜んと、本当に機嫌良さそうにラグナは風呂の湯を手ですくって、自分の肩へと
かける。まだ瑞々しさの残るラグナの肌はぱっと水滴を弾いて、湯船へと落としていく。
「明日もこの調子で頑張ろうかな」
そして、そんな調子でラグナが言葉を呟いた時だった。突然に、ラグナの視界に立ち込
める湯煙の向こう側から変化が訪れたのは。
「――あれ?」
最初に見えたのは白色の影で、徐々に近づいてくるにつれて、それが人であるこが分かっ
てくる。湯煙を切って歩いてきているのは若い、瑞々しい肌色の肢体を、白いバスタオル
で隠した女性だった。
「や、やっほー、ラグナ。ちゃんと浴槽には体を洗ってから入ってる?」
ピンク色の髪を普段とは違って下ろしているという違いはあるものの、その姿は見間違
えようが無い。素っ裸のラグナの前に現れたのは、風呂場の主人であるメロディだった。
「えっ? め、――メロディどうしたのっ!? ここ男湯だよね」
突然の来訪にぎょっと目を見開かせながらも、ラグナは素早い動きでタオルを腰の部分
へと移動させながら叫んだ。そして、どうしてお前がそこにいるんだと、バスタオル一枚
で、後は生まれたままの姿のメロディを凝視する。
じっと見据えられたメロディは頬をりんごのように赤くさせて、もじもじと恥ずかしそ
うにしながらもはにかんで答えた。
「あ、ほら。あのさ、最近、ラグナにはお世話になってばかりだから、ちょっとお返しで
もしてあげようかなって思って。ほら髪とか肌とか、最近の騒動のせいで荒れてきてるみ
たいだから、私がちゃんと洗ってあげるよ」
「え、……ええっ? い、いや、いいよ。髪ぐらい自分で洗えるし、それに体もついさっ
き洗ったばかりだから」
「いいから、いいから。気にしないでよ」
「え、けど、こういうのは、ほら。ね?」
恥ずかしそうにしながらも近づいてくるメロディに気圧されて、じりじりと後退してい
くラグナだったが、すぐに身動きを止められる。壁に背中がぶつかってしまったのだ。そこまで広い浴室ではないのだから、これは仕方がないことなのだろう。
そして、こうなってしまっては、例え釣竿一本でグリモアを送り返せるラグナであって
もどうしようもない。逃げ場なし、である。
「こ、こういうのでもいいのっ。いいからラグナはとっととそこに座ってよ!」
そうしてラグナはタオル一枚を腰に巻いただけの姿で、浴室用の椅子に座らされること
になったとさ。
そうして椅子に座らされたラグナだったが、何故かメロディは一向に髪を洗うような素 振りを見せなかった。ラグナの背後に立ってから、まるで動く様子が無い。
そのままじらされ続けたラグナは、遂に振りかえってからメロディに声をかけた。
「ねえ、メロディ、嫌なら嫌で帰ってくれても――って、うわっ! どこ見てるんだよ!」
が、振り返った瞬間にラグナが見たものは、ぐっと背伸びしてラグナの体のあちこちを
観察して、顔を赤くしたり紫色にしたりしているメロディの姿だった。ラグナは反射的に
初心な女の子のように体をタオルで隠してしまった。――これが悪かった。
「ちょ、ちょっと男の子の体って見たことが無かったから、それでってきゃああっ!」
タオルは一枚しかないのだから、見られていた胸板を隠してしまえば、どうなってしま
うかは押して知るべし、である。叫んだメロディの顔色が熟れたトマトのような赤色へと
変わったのをラグナが見た次の瞬間には、飛び上がるような勢いでメロディはラグナに背
を向けていた。ずばり、あれを見えないようにしたのだ。
「ご、ごめん。ラグナ。そ、その、そのね、そこまで見るつもりじゃ、なかったんだけど」
強烈に言葉をどもらせながら、謝罪の言葉をメロディは口にする。だが、それが新たな
問題を呼び起こしていることに気がついていないらしい。
風呂の入り口の方へと視線を向けたまま、もじもじと弁解をするメロディはバスタオル
一枚だけで体を隠していた。体の前側だけを覆うようにして、だ。そのメロディが後ろを
向いてしまったからには、ラグナの視界にはぷりぷりとした、形のいいメロディのお尻が
露になってしまったのである。
男の体を凝視してしまったことを恥じながら、必至に言い訳を口にするメロディの体は
何か言葉を発するたびにもじもじと揺れて、そのたびに細い体つきの割には大きめのお尻
がぷるんぷるんと揺れるのだ。
こんなものを間近で見せられては、記憶は無いとは言え健全な青少年であるラグナはた
まったものではない。ゴクリッと勝手に唾を飲み込んでしまう。そして一気にその柔らか
そうな桃尻や、その先に薄っすらと見える繁みに注意を奪われ、気がつけばギンギンに、
痛むほどに強くラグナは勃起していた。
もうこうなってしまってはタオルなど何の役にも立たない。自分が剛直を隆起させてし
まった事実に気がついて、慌ててタオルを被せようとしても、逆効果でしかない。へその
位置までそそりたった威容は布切れ一枚では隠しようがないのだ。
ラグナは焦った。この姿を見られたらどのように怯えられることか。そう考えて浴槽の
中へと急いで戻ってしまおうと風呂場の中で走り出す。もう恥も外聞も気にしていられる
段階ではなかったのだ。
だが、その行動が最悪の結果を生む。
風呂場で走るのはやめましょう。そんなニコルやセシリーでも理解している最低限の規
則を破った罰は、意外な形でラグナに訪れた。つるっと浴室のタイルの上に放置してあっ
た石鹸の上に、突き出したラグナの足が乗っかり、まるで漫画のようにラグナの体はひっ
くりかえってしまった。続く、暗転。一瞬でラグナは気絶してしまった。
「――もう、だからね、別に私は、そんな所までみたいとかじゃなくてね。ちょっとした
好奇心みたいなものがあって、それでね。って聞いてるのラグナっ――って、何コレ?」
そして言い訳の最中に振り返ったメロディが見たのは、全裸になってのびているラグナ
の、生まれたままの姿だった。
自分が生唾を飲み込む音が、こんなにも生々しいということをメロディは初めて知った。
目の前にはどういうわけだか、仰向けで気絶しているラグナの姿がある。これまでとは
違って、タオルも何も着けていない完全に裸の姿でラグナは気を失っていた。
「え、……嘘。何コレ。さっきまではもっと小さかったのに」
メロディは倒れたラグナの介抱をすることも忘れて、気がつけばそそり立つ剛直を凝視
していた。童顔の割には鍛えられていて、間近でみると鋼のような筋肉に覆われた体や、
近づくほどにくらくらと感じる男の匂いも今のメロディには霞んでしまう。
仰向けになったラグナの股間からぐんっと天井へと向かって反り上がっている一物は、
既にメロディの理解を超えていた。呼吸する事すら忘れてしまいそうになるほど、じっと
その威圧感を放つフォルムを注視してしまう。ビクビクと脈打つ血管が竿の部分に浮かび
上がっており、その先、亀頭の部分は完全に皮がめくれていて凶悪なカリが鎮座している。
そして反り返っているその剛直は、まるで生き物のように時々、思い返したかのように、
ビクッビクッとその体を痙攣させるのだ。
自分がこんなもので貫かれたらどうなってしまうだろうか。そんな想像をした瞬間に、
きゅっと自分の女性器が引き締まるのをメロディは感じた。
「どうしよう……。こんなの、きっと、入らない」
無論、メロディは処女だったが性にまつわる知識がないわけではない。男性器と女性器
の役割についても知っていた。もしも自分の想いが叶えられたならば、これの相手をしな
ければならないということだって理解していた。しかしメロディはこんなものの相手をす
ることは無理な話のように思えた。まだ、指先をそっと入れるだけでも彼女の秘奥は痛む
のだから。
「それに、……こんなに硬いし」
興味心にかられてメロディがラグナの男根に手を伸ばしてみると、隆起したその肉の杭
はじっとりとした熱を持っていて、どくどくと激しく脈打つ血液の流れが感じられた。
メロディがぎゅっと片手で握り締めてみても、びくともしない。焼いた鉄の芯でも中に
埋め込まれているではないかと思うほどに、ラグナのそれは熱くて硬かった。
「どうしよう。それに……きゃあっ!」
こんなものの相手をどうやってすればいいのか。そう思い悩んだ瞬間にメロディの右手
の中で熱い杭のような剛直が跳ね上がった。メロディの手に握られたことで反応したのか
それまでよりも盛大にビクンッビクンッと体を震わせる。
そして男根は震えるたびに血管を浮かび上がらせ、その体積を増加させていく。反り立
ちすぎたラグナのそれは既に、天井へと向けてではなく、ラグナの臍上へと向けて膨張を
開始していた。
「嘘……。またおっきくなったの? どうしよう……」
もはやグロテスクでしかないその異形に、メロディは途方にくれて泣きベソをかきはじ
めてしまいそうになった。ラグナは好きだ。けれど、こんなものは絶対に無理だ。そんな
相反する感情が胸の中で錯綜する。
「もう、私どうしたらいいのか。――あ、けど、もしかしたら」
しかし、そこでメロディの頭の中で天啓がひらめいた。風呂好きの友人であるトルテ。
彼女が以前にこっそりとかしてくれた本に、この事態を打開できそうな方法が書いてあっ
た事を思い出したからだ。
「――確か、男の子って。えっと、一回出しちゃったら小さくなるはずなんだよね」
少し間違った知識かもしれないが、メロディにとってはそれが名案に思えたのだ。
男は射精さえしてしまえば、腰の一物を小さくしてしまう。その知識を信じたメロディ
は行動にうつることにした。ドクドクとはやる鼓動を抑えて、頬を赤く染め上げながらも
床に伸びてしまっているラグナの肉棒に手を伸ばす。
指先に触れたラグナの分身は、いまだ衰える兆しも見せずにその硬度を保っていた。
「確か、こすってあげると気持ちよかったんだよね」
おそるおそるメロディは、まず最もつかみやすい形状をしたラグナの雁首へと指先を伸
ばした。そしてじっとりと湿った汗を感じるその部分をそっと握り締めるとこすりこすり
手を上下に動かす。しかし、握り方が悪かったのか、ずるりっと剥けきったラグナの皮が
動いて、皮の下に隠されていた部分が露になってしまっただけだった。よほどラグナは剛
直の手入れを怠っていたらしく、メロディが皮をずるりと下へと剥いていくと、一番深い
部分、それまで空気に触れることがなかった部分から白い汚れのようなものが現れてきた。
「ん、何かな、これ。――ちょっと臭いかも。汚れだったら洗ってあげないと」
恥垢、それに気がついたメロディは鼻をひくつかせ、むせ返るような汗と男性の匂いが
混じったそれに頬を染めたまま眉をしかめた。そのまま近くに落ちていた石鹸を取り寄せ
ると、石鹸を丹念に手で泡立ててから、その手を腫れ上がった亀頭の下へと伸ばす。
しゅこっしゅこっしゅこっしゅこっ。
メロディは洗おうとすれば反り返り、ビクビクと動きはじめる男根が自分の手から逃げ
出さないように右手で竿の部分を握り締めると、余った左手で丁寧に丁寧に亀頭の下の見
えにくい部分からすじに沿っていって剥いた皮の裏側まで指先で洗いつけていった。
一度始めてしまうと羞恥心というものはどうにかなってしまうらしく、剛直を洗う際に
ビクンッビクンッと痙攣が起こっても、いつの間にか平気でそれを押さえつけることがで
きるようになっていた。それどころか洗う邪魔にならないように右手でそれを握り締めて
いるうちに、股間から生えた剛直の根の部分の、一際青くグロテスクに浮かび上がってい
る血管のような部分を親指で強く圧迫してしまえば、それ以上は剛直が身動きができなく
なることにまで、短い期間の間に気がついていた。それに気がついてさえしまえば怖いも
のなどはなく、日頃の感謝の気持ちを込めてメロディは汚れているように見えたラグナの
剛直に泡立てた指先を絡めて、こすり付けて、丁寧に洗い尽くしていった。その途中で、
ラグナの隆起した分身がビクビクと出口を求めて小刻みに痙攣するような動きを見せたが
メロディはその時にもやはり、洗う邪魔になることがないように浮かび上がった青い筋を
親指を押さえつけることで、剛直の動きを封じた。
「ふう、これだけあらえば大丈夫だよね」
もう存分に洗い終えたと、ひとまずの満足感に包まれると、メロディはそこで一息をつ
いて両手を離した。まだ何もしていないだけなので、恐怖すら感じていたラグナの男根は
未だに硬度を保ち反り返ったままだったが、少しは役に立てたかなという充実感が先ほど
まで感じていた恐怖をいくらか和らげていていてくれていた。
「さて、最後の仕上げをしなきゃ」
泡だらけになって随分と可愛くなった(ようにメロディには見えた)男根を、すすいで
きれいにしてあげなくてはならない。そう考えたメロディは最後の仕上げをするつもりで
両手でまず最初に汚れていた雁首の部分をもみほぐしてから、お湯をかける事をした。
しゅこっしゅこっとやや力を込めて、こりこりとまだ硬さを十分に見せ付ける剛直を揉
むようにして洗っていく。メロディは本当に作業に集中していたので、それまでよりも格
段に手の中で泡に包まれる男根が痙攣していることに気がつかなかった。もしもひくひく
と逃げ場を求めて収縮を繰り返しているようなラグナの尿道口にメロディが気がついてい
たならば結果は変わったものになっただろう。
これが最後の一揉みと、メロディが勃起して赤く充血したラグナの亀頭を指でこすりつ
けた時にそれは起きた。
ドピュ ドピュ ドピュ ドピュッっ!
白濁色どころか濃すぎて黄色にも見える精液がその瞬間に噴出する。倒れたラグナの体
の横顔から覗き込むようにしてラグナの分身を洗っていたメロディの顔は、運が悪いこと
にちょうどドピュッドピュと断続的に噴き上がるスペルマの延長線上に存在していた。
まだ幼さを残したメロディの顔にビュビュッと精液が振りかけられていく。薄桃色の肌
も、ピンク色をした光沢のある髪も、粘性の極端に強い白濁液によって塗りたくられた。
「んんっ、もしかして、これって。……臭いし、べとべとする。……けど、それでも」
反射的に目を閉じていたメロディは、即座に鼻につくようナマモノ臭い匂いから、事態
を察知した。頬にべとりとついたスペルマに指を伸ばしてすくい上げた後にそれを鼻先へ
ともっていき匂いを嗅いでみる。
くらり、と。石鹸の匂いなど吹き飛んでしまうような、強烈な臭いがした。雄の臭い。
鼻が曲がるような悪臭ではあったが、それと同時に目の前のラグナが紛れも無い男なの
だと本能的に感じさせられてしまうような青臭い男の臭い。衝動的にメロディはきゅっと
股間を閉じた。
そして好奇心から、指先へと乗せた精液の一部へと舌を伸ばしてしまう。
「……にがいけど、これがラグナのなんだ」