えろいよタバサさん


 ジャコリヌス邸内の調理場で、二つの息遣いが絡み合う。
「はぁ……はぁ……」
「ん……ん、あ……ふ……」
 劣情を隠そうともしない男の荒い呼気と、押し殺そうとしても漏れ出る女の甘い吐息。
「はぁ……タバサさん……」
「んく……は、あ……ラグナ様……い、いけません……っ!」
 調理場の奥、食器棚の影となる場所で、ラグナはタバサを抱きしめていた。背後から体をこすり付けるよ

うに、きつく、強く、荒々しく。
 ラグナの両手は、タバサの胸元に伸びている。指は別の生き物のように蠢いて、お仕着せのメイド服越し

からも分かる肉の感触を貪っている。そして、その動きはタバサの官能を確実に呼び覚ましていた。
「はっ……ふ……ん、く……んー!」 
 タバサははしたなく挙げそうになった声を押しとどめようと、口元を自らの手で覆い隠す。ラグナが服と

下着の二重の防壁ごしに乳首をつまみあげたのだ。

「声、出して下さいタバサさん……」
 熱に浮かされたように、ラグナはタバサの耳元でささやく。しか羞恥で顔を染めたタバサは、固く目を閉

ざしたままふるふると首を横に振るのみ。
「隣の部屋のジャコリヌスさんや、ビアンカさんに聞かれたくないんですか?」
 こくり。
「タバサさんのやらしい声、聞かれたくないんですね?」
 ……こくり。
 声を出さずに耐えるタバサは、ただ首の動きだけでラグナの問いかけに答える。しかしだからといってラ

グナの動きが止まることなく、むしろエスカレートしてゆく。
「……でも、僕はタバサさんのやらしい声が聞きたいんです」

 胸を弄んでいた指が不意に襟元へ伸び、タバサの服のボタンを引きちぎるように外した。そしてそのまま

服を引き下げると、簡素な下着に覆われた肌が露出する。
「〜〜っ!?」
 突然のことに息をのむタバサ。そしてラグナもまた、白の下着と浅黒い肌の対比の美しさに息をのんだ。
「本当に綺麗です、タバサさん……」

 ラグナはブラに軽く指をかけて、ゆっくりと下げて始める。焦らす様に、少しづつ、下へ……
 そして一瞬の抵抗感の後にぷるりと揺れて、タバサの乳房が完全に曝された。形の整った、少し上向きの

乳房。肌と違って桜色した乳首は、既に勃っている。
 むしゃぶりつきたい衝動を抑えながら、ラグナは二つの乳房を直に揉みしだく。
 それは先ほど触れていたメイド服の絹地よりも滑らかで、どこまでも指が沈んで行きそうな柔らかさ。そ

の柔らかさだけでなく、先端部のこりこりという感触もラグナの脳を甘く蕩けさせる。
 そしてラグナが指先で感触を確かめれば確かめるほど、タバサの頭にも甘い快楽が押し寄せてくる。
「〜〜〜っ、ひゃぅ!」
 ラグナが乳首を押し潰すように摘み上げた瞬間、タバサはこらえきれずに声を上げてしまった。それ苦痛

の悲鳴ではなく、官能の嬌声だ。一度箍が外れたなら、押しとどめることなどもう出来ない。
「ひゃ、ああ! くは、ん、んんっ! や、駄目、です! そんな……強くいじった、ら……くぁっ!」
 そんなタバサの淫らな声に、ラグナの劣情は更に高まっていく。
___もっと、声を聞かせて欲しい___
___もっと、感じて欲しい___
 それは、オスに備わった自然の本能であったのだろう。だからこそ、タバサに更なる官能を呼び覚まそう

と、自然と体が動いていた。
 ラグナはタバサのメイド帽の留め紐を咥えると、一気に引き降ろした。メイド帽に抑えられていた青い髪

が解けると同時に、隠されていたタバサの耳も飛び出す。
 明らかに人間とは異なる凛と尖った耳。その耳に、ラグナは舌を這わせた。
「ひゃああああっっ!?」
 一際高く、タバサが鳴く。耳から駆け抜けた官能が、タバサの背筋を一瞬で強張らす。

 ちゃぷ……れろ……ぬる……

 複雑な陰影を描く耳のひだ。その全てをなぞり味わうかのように舌は滑り、唾液の跡を残す。ただそれだ

けで、タバサの体は射ぬかれたように痙攣してしまう。
「ひゃあああ! そんな、耳なんて、やめっ……くださ…ひっ! やぁぁぁぁっ!」

 はむ……ちゅる……こり……

 時折織り交ぜられる、抉るような舌先の動きと甘噛み。緩急をつけて襲い掛かる快感に、タバサは抗え無

い。胸への愛撫で昂まっていた官能は、耳からの快感で容易く絶頂へと押しやられた。
「あ! ひ、だ駄目……くぅあぁぁぁぁっ!」

 背骨を三日月のように反らせて快楽に打ち震えるタバサ。絶頂の波が過ぎ去ると、体中の力が抜けてラグ

ナにもたれかかる。額には汗を浮かべ、呼吸は余韻に震えて荒い。
「はぁ……ふぅ……」
 ラグナは、腕の中のタバサに囁く。
「とってもいやらしくて大きな声でしたよ、タバサさん。ジャコリヌスさんやビアンカさんにも、きっと聞

こえたでしょうね」
「……や……そんな……」
 快楽と羞恥でタバサの目じりに涙が浮かぶ。その涙滴を唇で舐め取りながら、ラグナは微笑む。
「今度は、僕を気持ちよくしてくれる番ですからね」
 タバサには、こくりと頷くしかなかった。

「さあ、壁に手をついてお尻を突き出して下さい」
「……」
 命じられた通りにタバサは姿勢をとる。羞恥に頬を染めながらも、抵抗の意思は微塵も無い。
 ラグナは満足げに頷くと、長いスカートを捲り上げてタバサの臀部を暴き出した。
「はぁ……」
 ラグナは再び息を呑む。肌と下着のコントラストと、下着から溢れそうな尻肉……どれもが美しかった。

既に蜜でべとべとになった下着を脱がすと、しゃぶりつきたいという願望が湧く。だが、それよりも優先す

べき欲望があった。
 ベルトを外してズボンを降ろすと、跳ね上がるようにしてラグナの性器が飛び出してきた。股間はタバサ

の胎を求めて臍に届くほどそそり返っている。
 もう、我慢など出来ない。
「……行きますよ」
 そう告げて、性器をそっと膣口に当てる。そして顔を背けたままタバサが頷いたのを確認すると、腰を叩

きつけるように、一気に挿入した。

「ひゃあああぁぁっ!?」
 絶叫、と呼んでも差し支えないような声が響き渡る。ずぶどろの膣内を貫いた男根が、タバサの子宮口ま

で達したのだ。
「くぅ……」
 挿入時の快感に思わず射精しかけ、ラグナの動きが止まる。しかしそれも一瞬だ。直ぐに、先程の挿入と

変わらぬ勢いで腰が動き出す。

「ひゃあああ! だ、だめぇぇっ! そんな、はげし、ひゃう、ぐっ!?」 
「そんな、大声、出すと…! ビアンカさんたち、に! 気付かれ、ますよ!」
 ぱんぱんと肉に肉を打ち付ける音と二人の声が調理場中に反響する。それは、あまりに淫猥な光景。

「いやぁぁ! こんな、ところぉ、みられたらぁっ!」
 もしも、ジャコリヌスやビアンカにこんなところを見つかったら、タバサはこの屋敷にいられなくなるだ

ろう。

『この、売女!』
 蔑みをこめて自分を罵るビアンカの姿が目に浮かぶ。その想像にタバサの体が強張り、膣もラグナを締め

付ける。
「ぐうぅ!」
 快楽のあまり、ラグナの目の奥に閃光が走る。それを奥歯をかみ締めながら耐えて、ラグナは苦しそうに

言葉を吐く。
「……あ……く……そう、なったら……僕が、ずっと……面倒を! 見て! あげます!」 
 ラグナの絶頂は近いが、タバサの絶頂もまた近い。そう察し、ラグナの腰の動きが加速する。
「ひゃぁ!」
 髪を振り、汗の玉を飛び散らしながらタバサは乱れる。一気に最高潮へ流れこみ、そして頂へとたどり着

く。
「こんな、つ、強すぎ……だ、駄目! イキます、イっちゃ……ひゃぁぁぁぁっん!!」
「く……!」
 タバサが達すると同時に、ラグナもまた腰を深く沈めて精を放っていた。

 子宮口に押し付けられた鈴口から、どくどくとあふれ出す精液。その感触に我を忘れて、二人は床に沈ん

でいった。


0分後。
 調理場の床に、ラグナは正座して項垂れていた。
(ちょっと、やりすぎた……)
 悔恨は、いつだって遅すぎる。ラグナを仁王立ちで見下ろしているタバサを、怖くて見られない。
(調理場って、包丁とかあるよなぁ)
 そんなことに気付いたら、もはや脳裏には鮮血の結末しか浮かばない。
(短い人生だった……)
 心の中、カブを持った天使が『自業自得ですから、仕方ありませんね』などと囁いてくる。ラグナは、涙も流さ

ず、声も漏らさずに泣いた。

 沈黙の時は不意に終わる。
「ラグナ様」
 タバサが、静かにラグナの名を呼んだ。瞬間、ラグナは身を固く強張らせる。その言葉の後にどんな死刑判決が

まっていようとも、せめて毅然と耐えようと。
 しかし、続いた言葉は予想外だった。
「それでは、調理場のお片づけを手伝っていただけますか?」
「へ?」
 見上げれば、そこには微笑みを浮かべたタバサがいた。服はまだ僅かに乱れているが、どこからどう見てもいつ

も通りのタバサだった。
「……あの、怒ってないんですか」
 思わず、ラグナは聞いてしまう。途端、タバサの顔が曇った。
「……怒ってないわけありません」

(しまった! カブ踏んだっ!?)
【※カブを踏む=地雷を踏むと同義】
 青褪めるラグナ。だが、タバサはすぐに笑みを浮かべる。
「ですが、ラグナ様からとても大切なお言葉を戴きましたから。どんなことも、我慢します。我慢できます」
 それはラグナが見惚れるほど穏やかで優しい笑顔だった。
「ラグナ様は仰りましたよね? 『僕がずっと面倒をみてあげます』と」
「あ……」
 そしてタバサはひざまずくと、ラグナに口付けを捧げる。まるで誓うように。
 
「ずっと面倒を見た下さいませ、旦那様……」



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