黒フィル
冬の月6日 「あの人の家に初めて入った、まだ胸がドキドキしている」
春の月18日「あの人にクッキーを貰った嬉しい」
夏の月7日 「あの人が別の女と歩いているのを見た、
どす黒い感情が芽生えるのが分かる」
夏の月26日「あの人が結婚するらしい」
秋の月16日「二人の仲を祝福しようと心に決める
いよいよ明日は結婚式だ」
秋の月16日「やはりあの人のことを諦めきれない
私が一番あの人のことを愛しているはずなのに」
冬の月8日「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き」
─フィルの日記
あの人の家の前に立つ、ここに来るのは去年の冬の感謝祭の時以来だ
あの時はこの家の前に立つだけで、この家の主の姿を思い浮かべ胸が高鳴った
「ラグナさん……」
だが、今は同時に如何ともしがたい感情が芽生えている、あの女のせいだ
「…でも大丈夫、それも今日までだから……」
聞こえない程度の声でそう呟くと少女はドアノブにそっと手を伸ばした
「こんにちは」
「こんにちは、フィル珍しいわねここに来るなんて」
あの女にとっては、ただの社交辞令に過ぎないだろうその言葉に私は憎しみを覚えた
…貴方が私からラグナさんを奪ったからでしょう?
喉まで出かけた言葉を飲み込む、そう…まだ後一歩……
「ラグナさんは居ますか?」
「ごめんね、今出かけているのよ」
そんな事は分かりきった事、今は洞窟で作物に水をかけている時間だ
だって私が一番ラグナさんの事を知っているのだから──
「お昼までには帰ってくると思うんだけど…」
「そうですか、では帰ってくるまで待たせてもらいますね」
愛しいラグナさん、けれど今日は会えないでしょう
でも、待っていてくださいねきっと私が……
あの女と他愛も無いお喋りをしている
その一言一言から、あの女の新婚生活がいかに幸せなものかが伝わってくる
私の幸せを奪っておきながら
「幸せそうですね」
私の中にある皮肉と憎しみを籠めてそう言う
「ええ、勿論幸せよ」
あの女はあっさりとそう言った
勿論、そう言う事ぐらい分かりきっていた
ただ、その一言は後一歩…私の良心の枷を引きちぎるのには十分な力を持っていた
おもむろに立ち上がり、準備してきた薬品をハンカチに染込ませる
「ちょ、ちょっと?どうしたの!?」
どうやら、突然のことで私のしている事を理解できないらしい
普段と違う私に気圧されて一歩また一歩と後ろへ後退して行く
私自身も妙な高揚感に支配されている、まるで夢を見ているようだ
「冗談でしょ?…なんなのよ……」
今にも、泣き出しそうな顔で狼狽しているロゼッタを見て
口元が歪んでいるのが自分でも分かった、あと少し……
「…むぐっ!?」
ロゼッタの口にハンカチを押し付ける
少し抵抗されたものの、すぐにロゼッタ大人しくなった
後は、連れ出すだけ…愛しいラグナさんがここへ来る前に……
「目が醒めましたか?」
私は平静を装って、彼女に語りかける
「え…フィル……って、何よこれ!?どうなってるの!?」
そう思うのも無理は無い、見知らぬ場所に居るだけでなく
服は脱がされ全裸な上に両手は後ろで縛ってあり
両足は大股で開かれベッドと鎖で繋がれている
「おはようございます、随分と起きるのが遅いんですね」
「いい加減にしなさいよ!何考えてるのよ!?頭おかしいんじゃないの!?」
強い口調とは裏腹に、表情から恐怖しているのが見て取れた
「ふふっ、ははっ、あははははははははは」
初めてこの女を出し抜けた、その喜びで私の胸は昂っている
ロゼッタは目を丸くして驚くとすぐに、私に対して目に見えた嫌悪の表情をする
…したいだけすれば良いのに、どうせすぐにそんな事できなくなるんだから
今の貴方は籠の中の鳥、どうせ私から逃げられない
「貴方がラグナさんと結婚してから、私がどんな気持ちだったか分かります?」
そういうと、私は服を脱ぎロゼッタの上に馬乗りになる
「分かるわけないですよね」
ロゼッタの胸から下腹部までツーッと指を走らせる
「っ……」
耐えかねてロゼッタの声が漏れる
「大丈夫ですよ、命まではとりませんから…命はですけれどね」
最初は殺そうかと思った、けれどきっと…そうしたら
きっとラグナさんは私を嫌ってしまう
「貴方がラグナさんに寄り付かなくなるように
ラグナさんではなく…私の方を見るようにしてあげます」
だから、この女の関心を私に向けさせる
最悪壊れたとしても、私にとっては関係ない
─きっと、そうなればラグナさんは私を見てくれる─
歪んだ思考に囚われ、私は何一つ疑問に思うこともなく
良心の呵責もただの一片たりとも起こらなかった
「あ、あんた頭おかしいんじゃないの!?」
股の下でロゼッタがそう言っている、そんな目で見るのは私の役目なのに
「喋って良いなんて一言も言っていません、黙ってくれませんか?」
見下した目で冷たく言い放つ、ここで喋られると思わず殺してしまいそうだから
「あ…ぅ……」
何か言おうとしたらしいが静かになった
ようやく発言権がない事を理解したらしい
「大丈夫ですよ、ちゃんと調教してあげますから」
褐色のボトルの中にある液体を口に含み、頭を両手で固定しロゼッタの唇を奪う
「ん…ぐ…!?」
両手を縛られているロゼッタではこの状況下で拒めるわけも無く
無理やり口をこじ開けられ、なすがままに口移しで甘い液体を流し込まれていく
飲ませ終えた後、暫くロゼッタは呆然としていて固まったままだった
「ごめんなさい、あなた……」
夫以外の人間それも、同性に唇を奪われたことを謝罪するロゼッタ
その態度に、優位に立つことで忘れかけていたフィルの怒りを呼び起こした
「嘘!だれの物でも喜んで咥えるくせに!!」
そう言って、ロゼッタの胸を思い切り揉みしだく
「ひゃんっ!」
想定外の刺激がロゼッタを襲う
ただ、力任せに揉まれただけなのに受けた快感は今まで
受けた中でも最上級のそれに並んでいた
「な…何をしたのよ…!?」
フィルが笑みを浮かべ、乳首を摘む
「はぁんっ!?」
「気持ちよくなれるお薬を飲んだからですよ」
そう、言いながら手はロゼッタの乳房を揉み続ける
「はぁんっ…まさか…あんっ…さっきのっ…!?」
口移しで飲まされた液体のことを思い出す
まだほとんど何もされていないのに体がいつもの行為以上に
火照っている気がする
「使わなくても良かったかもしれないですね
だってロゼッタさん淫乱ですから」
「ふ、ふざけないで…ひゃう!?」
「そんな、声を出しながら言っても説得力はありませんよ」
そう、言い放つフィルの笑顔はどす黒いまでの禍々しさを感じさせている
「気持ちよければ、ラグナさんじゃ無くても
平気で腰を振ってくれそうですよね」
「ふざけないで!」
今までで一番強い否定をする、でも所詮は強がり
無言でロゼッタの股間に左手をスライドさせる
「や、止めて…」
懇願にも似た弱々しい悲鳴、だがそれがフィルを燃え立たせる
「こんなに、濡れているじゃないの雌豚!
私からラグナさんを盗っておいてよく言えるわ!!」
淫らに濡れた股間をパンパンッと叩く
「こ、これは薬を……」
弱々しい弁明、それがフィルの恨みの炎に油を注ぎ込む
「やっぱり、それは誰でも良いということでしょう?」
また、股間をパン、パン、パンと音を立て叩く
「誰にでも股を開くくせに、ラグナさんの妻気取りして!」
ロゼッタの秘部に指を入れ激しくかき回す
「ひゃんッ!」
大分薬が効いてきたのだろう弱々しくなったロゼッタの態度に
フィルの暗い情念の炎はさらに激しく燃え上がる
「はんっ……ひゃぅ…ひぎぃっ!……」
フィルは憎しみに任せロゼッタを捏ね繰り回す
途中何度かイッた気もするが気にしない
「貴方が居なければ、ラグナさんはッ!!」
ただ燃えたぎる情念が治まるまで、本能でロゼッタを壊す
「貴方のせいで、貴方のせいで、貴方のせいでッ!!」
気がつけばロゼッタは気絶していた
「結局誰でも良いんじゃない」
秘部から左手を抜き出し、ロゼッタの髪で拭き取る
「これから、たっぷりと調教してあげますからね
もう、ラグナさんが目に入らないように…」
気絶しているロゼッタに語りかけ、フィルは目を閉じた
ラグナは困り果てていた
ロゼッタが居なくなったからだ
この田舎町で事件が起きるとは考えにくい、ならば家出だろうか
「知らないうちに、怒らせたかな…荷物も無くなってるし」
諦めかけたその時声が聞こえてきた
ロゼッタに似ていた気がする…妙な声だった気がする
その…なんというか、夜に聞いた覚えが有るような…不倫だろうか、まさか
頬を赤らめ妄想しているラグナの前に異様な光景が映り目を疑った
フィルと絡み合い、一心不乱に体を擦り付けるロゼッタの姿
…夢だろうか、そうでなければ理解できない
その姿に気付いたフィルが、こちらを向いて微笑む
「遅かったですねラグナさんやっと来てくれたんですね
ず っ と 待 っ て い ま し た よ 」
禍々しく妖艶なフィルの笑顔にラグナは背筋が凍りつくのを感じた