すごいよ!メロディさん 〜血のバレンタイン編〜

諸君、バレンタインデーをいうものを知っているか?
牧場物語の世界では冬の感謝祭と呼ばれているこの日は、女性が意中の男性にチョコレートを送り
想いを告げる日として有名だ。
そして、その前日には全国のデパートでチョコレート戦線ができるという。
そこはまさに女たちの領域。
己のために欺き、裏切り、昨日までの親友にも敵意を向ける。
それはここ、カルディアでも同じであった。



こんな日に寝坊するなんて!
メロディは焦っていた。
今日は冬の月5日。
明日の感謝祭のため、朝一番でチョコを買おうと思っていたのだが、うっかり寝坊をしてしまったのだ。
肩で息をしながら酒場の扉を開けようとする。
が、しかし……
「あ、あれ……?」
開かない。
鍵がかかっている。
今日は木曜日なので、この時間なら店は開いているはずだ。
先日ろ過機が故障してしまったため、
風呂の湯を温泉の素でごまかしていたのがバレてしまったのだろうか?
……いや、違う。
(そういえば、マスターが風邪ひいてて……)
そうだ。マスターが風邪をひいて寝込んでしまったため、今年は雑貨屋でチョコを販売をするのだった。
メロディは踵を返し、雑貨屋へ猛然と走った。


雑貨屋へ入ったメロディは、ロゼッタへの挨拶もそこそこに商品棚へ向かった。
チョコレートは……
「……あった!」
最後の一個。
よかった、間に合った。
安堵の息をつきながら手を伸ばそうとしたその時。
何者かの手が、視界に割って入ってきた。
「……ん?」
思わず顔を上げると、そこにいたのは……
「あ、メロディさん。こんにちわー」
ミストだった。
ミストは屈託の無い笑顔でメロディを見つめる。
「メロディさんも、チョコですか?」
「へ? ……ああ、うん。そうだけど…ミストも?」
「はい。でも困りましたね、一個しかありません。どうしましょ?」
「ホント、まいったわね〜。どうしよ?」
あごに手を当てて黙考するメロディ。
そう、既に戦いは始まっているのだ。
相手の思考を読み、いかにして出し抜くか。
それはミストも同じだったようで、二人とも背後からどす黒いオーラが出ている。
冬の月5日12時現在、雑貨屋の片隅に小さなバトルフィールドが形成された。
これは演習ではない。繰り返す、これは演習ではない。


「……本当にまいりましたね」
最初に沈黙を破ったのはミストだった。
「実はですね、ジョニーがどうしてもチョコが食べたいって言ってて……あ、あたしの従姉弟なんですけど。今年4才の」
ウソだ。
小さな子供を引き合いに出して、相手の同情を誘おうという作戦だろう。
その手には乗るかと言わんばかりに、メロディも言い返す。
「あたしはねぇ、ダニエルが死ぬ前にどーしてもチョコが食べたいって……あ、あたしのおじいちゃんなんだけど」
「あなた家族いないでしょ」
痛恨の一撃。
カウンターで、しかも一番触れて欲しくないところにクリティカルヒットを叩き込まれてしまった。
ミストの容赦ない一言でメロディのハートは既にボロボロ。
と同時に、彼女の中で何かがキレた。
「大概にしなさいよ、カブ電波。頭からカブ引っこ抜いてただの電波にしてやろーか?」
思わず語気を荒げるメロディ。
この一言がトリガーになってしまったらしく、ミストもプッツンしてしまう。
「そっちこそいい加減にしてくださいね、アバズレ魔女。
 どうせ夜は風呂場で運動会なんでしょう。人には言えないサービスで生計立ててるんでしょう」
「違いますぅ! 昼間に地道に採掘で稼いでますぅ!
 でも許可証はフィルに偽造してもらいました! ゴメンなさい!」
「あら、じゃあ、未だに乙女なんですか?
 ダメダメですね」
「アンタだってそーでしょーが!! いちいち腹立つわね!!」
と、まあこんな感じで二人がキャットファイトを繰り広げていると
突然背後から新たな声が聞こえてきた。


「あの……お二人とも、何をしていらっしゃるのでしょうか?」
声の主は、先ほどこっそり話題に上がったフィルだった。
手には、いつの間にか商品棚から持ち出したチョコを持ち、心なしか嬉しそうな目で二人を見ていた。
「あたぱぁぁぁ!!!」
突然ミストが奇声を発しつつ、フィルの手からチョコを取り上げ商品棚に戻す。
「きゃっ! い、いきなり何を……!」
「つかぬ事を聞くけど……フィル、あのチョコどうするつもりだったの?」
「それは……明日は感謝祭ですから。ラグナさんのためにチョコを作ろうかと……」
ぽっ、と顔を赤らめるフィル。
そんな彼女に向けられた言葉は、あまりにも無常だった。
「ダメ、却下、ゴーホーム」
おまけで親指を下に向けるメロディ。
「ど、どうしてですか〜!?」
「どうしても、です。カブ神様の名にかけて、チョコを譲るわけにはいきません」
「あたしも。風呂屋の主人として、チョコを譲るわけにはいかないわ」
「わ、私も、ラグナさんに病気を治してもらった恩があります!
 ですから……」
その言葉を聞き、ミストとメロディは冷ややかな目をフィルに向けた。
「病弱じゃないフィルさんなんて、フィルさんじゃありません」
「そうね。病弱じゃないフィルなんて、福神漬のないカレーみたいなものよ」
「勢いに任せて言いたい放題ですね……
 というか、カレーは単体でも美味しいですよ?」
「分かってないわねぇ。いい? カレーっていうのは、寂しがり屋なのよ。だからいつもご飯と一緒にいるわけ。
 そこに福神漬が入ってくることで三角関係のもつれが発生。有り得ない超反応によって絶妙なハーモニーが奏でられるのよ」
「そんなギスギスしたハーモニーなんていりません」


そしてメロディのカレー談義(八割はカレーうどんの話だったが)が始まって20分が経過しようとした頃。
またしても新たな声が三人にかけられた。
「……さっきから何をやってんですか? 三人とも…」
「何って……え? あ、ラ、ラグナ!?」
声の主は、なんとラグナだった。
彼は困ったような顔で彼女らを見、そしてその手にはしっかりと

     チ ョ コ レ ー ト が

握られていた。
「あー、えっと、ラグナ。そのチョコは……?」
恐る恐る尋ねるメロディ。
それに対するラグナの答えは、あまりにも簡潔だった。
「ああ、これですか?
 いや、急に甘いものが食べたくなって……はは」
「……もしかして、もうお会計済ませちゃった…?」
「ええ、もう終わりましたけど……あの、もしかして、マズいことしちゃいました?」
不安そうに聞いてくるラグナ。
「……いや、いい。もういいの…」
先ほどまでの覇気はどこへやら。
負のオーラに包まれてしまったメロディは、そう答えることしか出来なかった。
「……?
 えーっと、それじゃ、仕事の続きがあるので、僕はこれで」
何か釈然としないものを感じたまま、店を出るラグナ。
それと同時にその場にくずおれる三人。
来年は絶対早起きしよう……。
そう心に誓う三人なのであった。



「ふぅ……自分用のチョコ、キープしといてよかったわ…」

第一回チョコレート争奪戦
勝者:ロゼッタ

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