すごいよ!メロディさん 夜中に火遊びするとオネショするから気をつけて編


怪談。それは夏の風物詩。
ここスプリングラビットでは、トルテ主催の怪談大会が行われていた。
「これは……ラグナさんがこの町に来る……前に起こった話なんですけど……」
これでもかと言わんばかりに顔の影を強調して話を始めるトルテ。
心なしか嬉しそうだ。
「あれは……今日のように……蚊の多い夜でした……。
 お兄ちゃんと……川原で花火を…しているうちに……いつの間にか…暗くなってて……」
固唾を呑んでその話を聞くのは、ラグナ、ミスト、ロゼッタ、メロディ、フィル。
特にフィルとメロディはこの手の話には極端に弱いらしく、先ほどからラグナの服の裾を掴みっぱなしだ。
「ラ、ラグナさん……勝手にどこか行っちゃダメですよ…?」
「ラグナぁ……いきなり消えたりしたら、承知しないわよ…」
「いや、その……僕、ちょっとトイレに行きたいんですけど…」
『我慢しなさい(してください)』
涙目でそんなことを言われては、勝手に動くわけにもいかない。
しかしこちらも既に暴発寸前だ。
既に顔が青ざめてきており、嫌な汗もかいている。
店主のセバスチャンに援軍を頼もうかと思ったところで、おもむろにロゼッタが口を開いた。
「くだらないわね……。どいつもこいつも怪談なんかにハマっちゃって。
 幽霊なんているわけないでしょ」
「ロゼッタさん、服が変色してるんですけど」
速攻でツッコミを入れるラグナ。
平静を装っていたロゼッタだが、内心穏やかではなかったらしく、大量の冷や汗を吸った服は
有り得ない色に変色していた。
「みなさん怖がりですねー。まだ話は始まったばかりですよ」
と、にこやかに言うミスト。しかし――
「……じゃあなんで、さっきからあたしにくっついてるのよ」
「ロゼッタを一人にしておくと、あまりの怖さに泣き出しちゃうんじゃないかと……」
「それはアンタでしょーが!!」
黒カブだのカブ電波だの言われているミストだが、やはり彼女もオンナノコ。
怪談には弱いようだ。


そんな彼女らをよそに、トルテの話は続いていく。
「急いで帰ろうと……今の…ラグナさんの家の前を……通ったんです…。
 そうしたら……突然辺りが明るくなって……ふと牧場を方を見ると……
 無数の青白い光が……」
服を握る手に力を入れるメロディとフィル。
一方ラグナは股間に全神経を集中させた。
ヤバい。そろそろ限界。
持って30秒か。
今まさにデッドオアアライブを彷徨っているラグナだが、そのことにトルテが気付くはずもなく
怪談は続いていった。
「よく見たら……光の真ん中に……誰かいるんです……。
 わたくし、怖くなって……すぐ離れようと…思ったんですけど……
 どうしても気になって……聞いてみたんです…何をしているのかって……
 そうしたらその人……ニヤッと…笑って……こう言ったんです……」

あ ま り わ た し を お こ ら せ な い ほ う が い い

『いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
ついに我慢できなくなったのか、泣き叫びながらラグナに抱きつくフィルとメロディ。
しかし辛抱たまらん状態になっていたのはラグナも同じであり、二人を引きずったまま猛然とトイレへ向かう。
「放して! 放してください二人とも!! もう限界なんです! 爆発しそうなんです!!」
「あたしも限界ぃ!! もうダメぇぇぇ!! 心臓爆発するぅぅぅ!!」
「ラグナさんっ!!! 行かないでくださいラグナさん――――っ!!!」

「……若いっていいですねぇ…」
カウンターから一部始終を見ていたセバスチャンが、微笑みながらそう呟いた。

「……はぁ…」
ようやく家に着いたラグナは、深いため息をつく。
ヒドい目に会った。
ここまでサスペンスな気分を味わったのは、初めてグレーターデーモンと対峙した時以来だ。
未だに痛む股間を押さえながらキッチンへと向かう。

  コンコン

「……ん?」
寝る前にホットミルクでも飲もうと、鍋に火をかけたところで誰かが玄関をノックしてきた。
こんな時間に誰が?
ふと、先ほどのトルテの話を思い出す。
(急いで帰ろうと……今の…ラグナさんの家の前を……通ったんです…)
(よく見たら……光の真ん中に……誰かいるんです……)
「……いやいや、無い無い無い」
必死にその可能性を否定するラグナ。
しかしこんな時間に人が尋ねてくるのは、あまりにも不審だ。
先日洞窟で拾ったロングソードを手に、最大限の注意を払い玄関を開ける。
「……あ…。こ、こんばんわー…」
不安げな目でこちらを見るメロディが居た。



「とりあえず座っててください。飲み物は、ホットミルクでいいですよね?」
テーブルに着くよう促されたメロディは、無言のまま椅子に腰掛け、帽子を取る。
(……どうしよう)
ここにきて、メロディは自分があまりにも大胆なことをしていることに気が付いた。
トルテの話があまりにも怖かったため一人で眠ることが出来ず、ついついここへ来てしまったのだが……。
よくよく考えれば、こんな時間に一人暮らしの男の家へ来るという行為の示す意味……。
それが分からないほど、彼女は無垢ではなかった。
自然と顔が赤くなってくる。
というか、件の話の舞台はこの牧場だったのだ。
そのことを思い出すと、今度はどんどん顔が青ざめてくる。
一人で勝手に赤くなったり青くなったり、大変である。
しばらくすると、マグカップを二つ手にしたラグナがやってくる。

「はい、どうぞ。……それにしても、こんな時間にどうしたんです?」
そう尋ねるが、メロディは一向に答える気配が無い。
手にしたマグカップをじっと見つめるだけだ。
「…………。
 あの……もしかして、膜は取らないほうがよかったですか?」
「え? ……あ、ううん。違うの。
 ……まあ、来た理由なんてどうでもいいじゃない。なんとなく来たくなっただけよ」
そう言って微笑んだメロディは、何故か少し苦しそうだった。
その顔を見て、ラグナは一つの結論に至る。
「えーっと、もしかして……。
 さっきの怪談話、まだ引きずってるとか……?」
メロディの表情が強張る。
どうやらビンゴだったようだ。
「し……仕方ないでしょ…。一人じゃ怖いんだから…」
「……ぷっ」
思わず吹き出してしまった。
「ち、ちょっと! 何も笑わなくてもいいでしょ!」
「ゴ、ゴメンなさい。そういうつもりじゃ……」
こんな時にこんな感情を抱くのは、いささか不謹慎ではあったが……
普段のアグレッシブな彼女からは想像できない今のメロディを見て、つい可愛いと思ってしまった。
「……大丈夫ですよ」
優しく微笑みかける。
「幽霊なんていませんから。それに……」
そっとメロディの髪を撫ぜる。
「何かあったら、僕が護ってあげますよ」
「……っ」


胸の鼓動が高鳴り、顔が紅潮してゆく。
不思議な感覚がメロディを襲った。
暖かい、柔らかい何かが胸の奥を締め付けるような……そんな感覚。
何かが体の奥からこみ上げてくるような気がした。
「……なーんて…今の台詞は、ちょっとクサかったですね。あはは…」
急に気恥ずかしくなったラグナは、メロディから手を離そうとする。
「あ……待って!」
とっさに声を上げるメロディ。
「え……?」
「……もう少し…」
消え入りそうな声で、彼女は言った。
「……もうしばらく、このままでいて…」
「……分かりました」
再び彼女の髪を撫ぜる。
言いようのない安らぎを感じながら、メロディは目を細めた。



どれほどの時間、そうしていただろうか。
不意にメロディが口を開いた。
「あの……ね…。ラグナ……」
「はい?」
ラグナの位置からではメロディの表情は窺えなかったが、何やら緊迫した雰囲気だけは伝わってきた。
「あたし……その…。
 もしかしたら、ね……ラグナのことが……」

  コンコン

突如、ノックの音がした。
来客のようだ。
「……ちょっと見てきます」
名残惜しそうにラグナはメロディから手を離す。
先日強化してもらったばかりのシルバーハンマーを手に、ゆっくりと玄関を開ける。
「こんばんは、ラグナさん」
そこには何故かフィルがいた。



どうやらフィルも、トルテの怪談のせいで寝付けなくなってしまい、ここへ来たようだ。
(何で僕の家なんだろう……)
そんな疑問を抱きつつも、フィルをテーブルへ着かせ、彼女の分のホットミルクを作りにキッチンへ向かう。
一方メロディはというと……。
「…………」
「……あ、あの…。なんでしょうか……?」
ものすごく不機嫌そうな目でフィルを睨んでいた。
「……最悪…」
「え?」
「空気読んでよ……もう」
「はぁ……。よく分かりませんが、申し訳ありませんでした」
すっかり興が冷めてしまった。
もはやホットではなくなったホットミルクを口にし、メロディはふと窓の外を見た。

……見なきゃよかった。

そう思ったが、時既に遅し。
先頃のトルテの言葉が思い出される。

(急いで帰ろうと……今の…ラグナさんの家の前を……通ったんです…。
 そうしたら……突然辺りが明るくなって……ふと牧場を方を見ると……
 無数の青白い光が……)
見様によっては幻想的に見えるかもしれないその光景は、彼女にとっては恐怖以外の何者でもなかった。
フィルもその光景を目の当たりにしてしまったらしく、二人して声にならない悲鳴を上げる。
「ど、どうしました!?」
ラグナが血相を変えて飛び込んできた。
「いいいいい今、ひひひと、人魂が……っ!」
声を震わせながら、メロディが窓の外を指差す。
しかしそこには人魂などは無く、吸い込まれそうな闇が広がっているだけだった。
「……何もいませんよ?」
「で、でも今確かに……っ!」
そこまで言って気付く。
フィルがキッチン側の窓を見たまま固まっていることに。
恐る恐る、二人はキッチンのほうを見た。

……見なきゃよかった。

まず最初に、ラグナはそう思った。
青白く、巨大な光が、確かにこちらへ向かってきている様が見えてしまったのだ。
「―――〜〜っ!!!」
もはや悲鳴すら上げることが出来なくなっていたメロディはラグナにしがみつく。
と、そこでラグナはあることに気が付いた。
(……? あれって、もしかして…)
その光に、ラグナは見覚えがあった。
徐々に疑惑が確信に変わっていく。
「ごめんなさい、すぐ戻ります!」
そう言い残し、ラグナは家を飛び出す。
メロディとフィルも、必死になってラグナの後を追った。

(間違いない。あれは……)
ラグナは先程の光の位置へ向かう。
……居た。
人一人包み込めそうな青白い光が、ふわふわとその場に留まっていた。
ラグナはその光に向かって叫んだ。

「……コラ! 勝手に小屋から出てきちゃダメだろ!」

やっとの思いでラグナに追いついたメロディとフィルは、その光景を見て首をかしげた。
「……小屋…?」
「ねえ、フィル。あれってもしかして……」
人魂の正体。それは……
『……ツンドレ?』
最近、トロス洞窟によく出没するようになったモンスター、ツンドレ。
なるほど、確かにあのモンスターを、夜中に遠くから見れば人魂に見えないことも無い。
幽霊の正体見たり枯れ尾花、といったところだろうか。
二人は安堵の息を漏らした。
「そ、そうよね……。幽霊なんているわけないわよね……あはは…」
「そうですよね……。ふふ…人騒がせな子ですね……」
これで、幽霊騒動は無事に解決するはずだった。
はずだった。
フィルが、余計なことさえ言わなければ……。
「それにしても、ラグナさんはモンスターが好きなんですね。
 あんなにたくさんのツンドレを飼って……」
「……なんのことですか?」
メロディとフィルの表情が凍りついた。
「何って……その……。この子以外にも、ツンドレ飼っていますよね? ラグナさん…」
「いえ、ツンドレはこの子だけですよ。というか、モンスター自体この子しか飼っていませんし……」



数拍置いて、怒声とも嬌声とも人の声ともつかない声がミスト牧場に響き渡った。

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