クリフ×ラン・夏

「あの子のこと、よろしく頼みますよ」
そう、カーターさんが優しく笑った。
だから、というわけじゃないけど、クリフのことは気にしてた。
毎日何をするでもなく教会に行っては宿へ戻ってくる。
「今日は何してたの?」
と聞いても、あまりはっきりとした答えは返ってこない。
ただ、教会に一日いるだけみたいだ。
そういう人もいるのね、とランは妙に感心した。
ランは町でも有名な元気娘で、一日中動き回っている。
中でも、ダッドの店の二階は宿になっていて、若者が何人か下宿にしていたから、
そこの掃除はなかなか手強いものがあった。
春にクリフが来て、夏にカイが来て、掃除をする端から汚れていく。
いくらランが掃除が好きで…というより、その後のお風呂が好きなんだけど、
と言っても、思わず
「もー!いい加減にしてよ!」
と、呟きたくなることもあった。

ある日、クリフが部屋に入らず、廊下でぼんやり猫と遊んでいたので、声をかけた。
クリフは、ちょっと困ったように笑って
「グレイとカイは仲良いから、ちょっと入りにくくて」
と言った。
そっか、三人部屋だもんね、とランは思う。
ちょうどいいや。カーターさんにも言われてたことだし。
「ね、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」
と、クリフに声をかける。
ダッドの店は外にもテーブルとチェアが置いてある。
ついさっきまで雨だったので、汚れてしまっている。
それを全部どかして、床のタイルをごしごしと洗う。
「ごめんね、汚れるけど」
「いいよ」
とクリフが笑って手を動かす。ざばざばと水で流すと、あっという間にテラスはきれいになった。
「他にもどっか手伝うところある?」
とクリフが聞いてくる。
「ううん。ないよ。ありがと!」
とランが極上の笑顔で答えるが、どうもクリフは何か他に用事を探している。
もしかして、とランが勘付く。部屋に鍵がかかってるんだな…。

「困ったな…」
と、同時に呟いた。クリフが、はっと顔を上げて
「ご、ごめん」
と慌てて訂正しようとする。あはは、とランは笑って、
「違うの違うの。私も今から」
せっかく大掃除した後だから、泉の温泉に行こうと思っていたのよね、と
言おうとして、言葉を飲み込んだ。
掃除手伝ってもらったんだから、お風呂に入りたいのはお互い様よね。
だったら。どうせなら。
「泉の温泉って知ってる?」
と聞いた。案の定、クリフは知らないと言う。
夕焼けになりそうだ。露天風呂なんて最高かも、とランは思いを巡らせる。
「温泉があるの。一緒に行かない?」
かぁっ、とクリフが赤くなった。何を考えたのかな、とランは思う。
「でも、ダッドさんの手伝いとか…」
クリフがしどろもどろになるので、またランが笑う。
「大丈夫だよ。行こ行こ。」
そう言って、無理矢理ぐいと腕を掴んだ。
「早くしないと暗くなっちゃう」
掴んだクリフの腕は思ったよりも筋肉質で、がっちりしていた。
その腕をひっぱり、温泉の方へ向かう。
タオルや石けんは温泉に一揃いあるので、手ぶらでも平気だ。

湯船は一つしかないことをすっかり忘れていた。ふりをした。
「ま、いっか!」
あっけらかんとそう笑ってランが服を脱ごうとする。
「ラ…ランさん、ストップ、ストップ!」
そう叫んで慌ててクリフが脱衣所から出ようとするのを、後ろから引き留めた。
わかっててやってみたんだけど。ランは心のなかで悪戯っぽく笑う。
「冗談だよー。ごめんごめん」
そう言ってえーと、と考える。
「私が出てるから、クリフが先に入って。」
「じゃ、ランさんは…」
「後から入るから」
クリフにとっての後、とランにとっての後、は違うんだろうな、と
ランは思うが、クリフは気付いていないようだ。


「じゃ、入って入って」
と、クリフをぐるっと回して脱衣所に押し込み、自分は脱衣所から出る。
衣擦れの音がして、脱衣所から温泉に通じるドアが開閉する音がする。
ざぶざぶとクリフが湯船に入った音がする。
ランはそっと脱衣所に戻り、自分も服を脱いでからきちんとバスタオルを巻いて、
足音を忍ばせ、温泉に通じるドアを勢いよく開けた。
「わっ」
飛び上がるほど、クリフが驚いた。
「あはは、本当に飛び上がった!」
と、ランが笑う。やっぱり。クリフが慌ててタオルを腰に巻く。
「ランさん、後って…」
「うん。今が、後!」
屈託無くランが笑う。かぁっとクリフが赤くなり、そそくさと湯船を出ようとする。
「だめだめ!」
しかめ面を作って、脱衣所に通じるドアの前に仁王立ちになり、首を振る。
「でも…」
「背中流してあげるから!お礼だよ!」
そう言って、クリフを回れ右させて、背中を押す。
「なんでそんなに元気なんですか…」
と、クリフがぼやいた。
にこにこと笑いながら、クリフを洗い場の椅子に座らせる。
「そうだ」
と言って、夕焼けの方が見えるように向きを変える。
案の定、空は燃えるような夕焼けだ。
クリフの背中に回って自分も椅子を引き寄せ、そこに座る。
「夕焼け。キレイだね」
「そう…ですね」
クリフが消え入りそうな声で答える。
「明日は晴れだね。暑くなるね」
「明日…」
クリフが繰り返す。明日。また明日が来るのかと、心が沈む。
タオルを濡らし、石けんを泡立てながらランがふと尋ねる。
「クリフは、今日は楽しかった?明日は楽しみじゃないの?」
「僕は…」
蝉の声が煩い。クリフの声が時々聞こえなくなる。
明日なんて来なければいいのに、とクリフが呟いたような気がした。
こんなに空はきれいなのに。明日はきっと良いお天気なのに。
ランは石けんの泡をたくさんつけたタオルでクリフの背中を洗う。
クリフは何を思っているんだろう。心が、とても遠くにある気がした。

…仲良くなる方法は…
クリフは、教会で囁かれたことを思い出している。
あの日。白い肌。金色の髪。ばら色の唇。
教会で祈っていても、宿で横になっていても、ふと思い出される。
…この町で仲良しの人は…
ばら色の唇が上気して朱が差していた。
…この空の下で何をしているんだろう…
彼女の牧場はここから目と鼻の先だ。会いたい、会って話をしたい、と思った。
ふいに、ランの手がクリフの脇腹をすり抜けた。
背中にタオルの感触が押しつけられている。その向こうに。控えめな凹凸を感じる。
「クリフは…悩みがあるの…?」
耳元でランが囁く。細い腕がくるりと曲がってクリフの腹を掴まえる。
「私には話せない…?」
クリフの首筋にランが顔を埋める。クリフがはっと我に返る。
「ちが…ランさん…離れて…」
慌てて逃げようとする。
「いや」
きっぱりと、ランが断り、その腕にぎゅっと力を入れる。
「なんにも、するつもりなかったの…でも…」
夕焼けがあんまりきれいで。ランにとっては、とても美しい世界だったのに。
一番近くにいる人はそうは思えなかったみたいで。
それがとても悲しくて寂しくて。
一緒にきれいな夕焼けを見て一緒に楽しいねって笑いたかったのに。
それだけで良かったのに。
クリフの寂しさだけがどんどん伝わってきて。同情なんかじゃなくて。
「本当に、背中を流すだけのつもりだったの…」
必死で言い訳を考える。
クリフがランの手を握り、そっと口づけた。
「…わかってます…」
言い訳をしないで、とクリフは願う。
「…だから、これは、僕が悪いんだ…」
絡まった腕をそっと外し、ちゅっ、ちゅっ、と音をたてながら丁寧に指にキスをする。
「僕が、したいから…」
そう言って、ランの方へ身体を向ける。夕焼けを背にする。
「…ランさんは、夕焼けを見ていて」
そっとランの顎を指でつまみ、唇にキスをする。
最初は短く。
「もう…見れないよ…」
そう、ランが言って、目を瞑る。薄い唇がクリフを誘う。

丁寧に丁寧に唇に唇を合わせる。鼻の頭、頬、瞼、額。
ちゅっ、ちゅっと音をたてて、顔に隙間無くキスの雨を降らせる。
顔を両手で包み、唇を重ねる。舌を絡めて唾液を啜る。
耳に舌を差し込み、くりくりと動かすと、ぴくりとランが反応する。
首すじに軽く歯をたてる。
ランが巻いているバスタオルをそっと外す。
控えめだが形の良い乳房の先にピンク色の突起がちょん、と立っている。
細いウェストに腕を回し、抱きかかえるようにして、乳房にキスをする。
ピンクの突起に舌を這わせると、再びランが反応する。
「クリ…フ…」
切なげに名前を呼んで、クリフの頭に腕を回す。
そのまま、クリフがランを抱えると、ランがクリフの腰に脚を絡める。
茂みがクリフの腹に当たり、下から突き上げるもののせいで、
クリフの腰に巻かれたタオルがはらりと落ちた。
ゆっくりと丁寧にランを洗い場の床に座らせる。脚はまだクリフに絡まっている。
そのまま、頭を打たないようにとクリフがランの後ろに手を差し入れて、
ランの身体をゆっくりと倒す。クリフもランに覆い被さり、再びキスをする。
クリフの首にランが腕を絡めてくる。
ランの茂みに指を入れる。クリトリスを探り、軽くつまむ。
「やん…」
そのまま指をくりくりと動かすと、ランが仰け反る。
「やだっ…あん…そこ…感じちゃう…」
クリフはランにキスをしながら、クリトリスを責める。
「やぁ…んっ…んっ…んんっ…あぁ…っ」
「ここだけでイっちゃう?」
クリフが囁くと、ランが潤んだ瞳で見つめながらうなずく。
指を動かすのを止めるつもりはない。
「いっ…やぁぁ…んっ」
振り絞るような声を出して、ランが達する。
「やだ…クリフって上手…」
そのまま、指を滑らせてスリットに侵入しようとすると、ランが止める。
「ま…待って…ね。私にも…させて…」
そう言って起きあがり、クリフのペニスを口にする。
ちゅば、と音をたててペニスの先を吸い、
「クリフだけじゃなくて、私もしたいの」
そう言って銜え込む。クリフを座らせ、四つん這いにいなって、
クリフのペニスを口に出し入れする。ちゅばちゅばと卑猥な音が響く。
「ランさん…もう…」
ペニスの先からたらりと汁が流れている。


クリフが眉根を寄せてランに頼む。
「もう…いいから…」
ちろ、とランの舌先がクリフの先端の切り込みを撫でる。
「んっ…」
クリフが必死で我慢しているのを見かねて、ランが自分から身体を横たえ、
「ごめんね」
と悪戯っぽく笑ってクリフをぐいと引き寄せた。
そのまま、耳に口を寄せ、囁く。
「ね…クリフの…入れて…」
クリフがランのスリットを指先で探り、ペニスをあてる。
ランが自分で脚を持ち上げ、クリフの腰に再び絡める。
ぐっ、とクリフのモノがランの中に侵入する。
「あんっ…」
ランが呻く。優しく、丁寧に、クリフが腰を前後に揺する。
「んんっ…あんっ…」
クリフが腰を動かす度に、ランの口から切ない喘ぎ声が漏れる。
その声を聞く毎に、クリフの腰に力が入る。
「あぁんっ…んんっ…イッちゃいそう…やぁ…ん…」
それでもまだ、奥へ奥へとクリフは己を進めて行く。
ランがクリフにしがみついてよがり声をあげる。
「クリフの…おっきいよぉ…早く…はやくぅ…」
ランにせがまれてクリフの動きが速くなる。
ひぃひぃと声にならない叫びをあげて、ランも腰を振る。
「奥に当たってるぅ…!やぁん…!すごい奥までキてる…すご…い…!」
必死で言葉を紡ぐ。必死なのは、クリフも同じで。
熱を持って絡みついてくるランの肉襞にペニスが締め付けられている。
「もうそろそろ…出そう…」
と呻いた。ランが思わず声を上げる。
「出してぇ…中に…中にちょうだぁい…!」
「ん…出すッ…」
あぁッ、とランが声にならない叫び声を上げて仰け反った。
ぶるっと全身が震え、クリフはランの奥深くに吐精する。
温かい感触がランの奥に広がる。
ふーっと息をついて、ランがぐったりと身体を横たえる。
「クリフ…すごい…」
そう言って、ぼんやりと膝をついているクリフににじり寄る。


「え…あの…」
いつものクリフと変わらない。ふふ、とランは笑った。
クリフに身体をぴったりと寄せて、キスをする。
「今度は、私の身体をキレイにして…?特に…」
ここ、と囁いて、再びクリフの指を自分の中に導いた。
もう周りは暗くなっている。
「今日は、温泉に来て良かった…」
そう呟く。
「これだけでも、私にとってはとっても良い日だったよ。ありがとう」
クリフに囁いて、クリフも同じように思ってくれますように、と願う。
まだ、今日はもう少し残っているし、と思いながら。

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