「……どーしよ、コレ」
ラグナは困り果てていた。
これというのも、全てあの人のせいだ。


すごいよ!メロディさん番外編
 〜一寸のカブにも5mgのビタミン〜


「おはようございます、ラグナさん」
早朝、いつも通りミストが牧場の様子を見にやってきた。
……いや、今日はいつもと違う。
何が違うかと言うと……。
「あ、ミストさん。おは……って、何ですか、それ?」
背中に巨大なリュックを背負っていたのだ。
具体的に言えば、体育座りをしたミストが丸々一人入りそうなくらいの大きさだ。
「これはですね、いつもカブを貢いでもらっているお礼です」
言いながら、重そうにリュックを地面に下ろす。
「いや、貢いでるわけじゃないんですけど……」
「ささやかなものですが、どーぞ」
ずずい、とリュックをラグナの前にやる。
……まあいいか。断る理由もないし。
そう思い、リュックの中を見……
ラグナは絶句した。
「……あの…ミストさん?」
「はい、なんでしょうか?」
「これ……カブのお礼なんですよね…?」
「ええ、そうですよ」
「…………」
もう一度、リュックの中を見る。
お礼の品。それは『カブ』だった。
「……カブのお礼にカブ?」
「はい。お礼のカブです」
「…………」
「あ、ラグナさん。何ですかその目は。カブをなめちゃいけませんよ。カブは命の源なんですから。
 これだけのカブがあれば、世界中で飢餓に悩まされている人たちを救うことが出来るんですよ」
「たったこれだけで救えるんなら、今頃僕は救世主になってるはずなんですが……」
「ラグナさんのカブなら、あたしが毎日おいしくいただいてます」
「なんですか。出荷される端からミストさん家の食卓に並んでいくんですか?」
「いえ、出荷される前にこっそり……」
「犯罪じゃないですか」
「カブのためならなんでもしますよ」
「なんなんですか。カブの国からやってきたカブ姫ですか? あなた」
「カブ姫とは失礼ですね。カブの戦乙女、カブキリーと呼んでください」
「戦乙女っていうより堕天使ですけどね、ミストさんは」
「三段変形も出来ますよ?」
「いや、意味が分かりませんって」
どうやら、これ以上の対話は無意味なようだ。
ラグナは深くため息をつく。
仕方ない。今更いらないなんて言えるはずもないし、大人しく頂いておこう。
しかし、これだけのカブを一人で食うのはあまりにもキツい。
どうしたもんかと腕を組んで考えていると
「あ、間違っても出荷したりしないでくださいね」
……どうやら彼女は読心術の心得があるらしい。
仕方ない。酢漬けにでもして保存を……
「あ、食べるときは、なるべく生でお願いしますね。特に酢の物は絶対ダメですから」
……本当に、なんなんだろうか。この娘は。




こうして、現在に至るわけである。
「……どーしよ」
さすがに、これだけの量を一人でたいらげることは出来ない。
保管するにしても、あまり日持ちはしないだろう。
一瞬、こっそり酢漬けにしようかとも考えたが、リスクが大きすぎる。
もしバレたら、何をされるか分かったもんじゃない。
「……お裾分けだな、うん」
そう呟いて貰ったカブを半分ほど袋につめ、メロディ宅へと向かった。



「お帰りなさい、ラグナさん」
家に帰ると、何故かミストがいた。
あれほど勝手に上がり込まないでくれと言っていたのに。
「カブが気になってしかたないので、来ちゃいました。迷惑でしたか?」
迷惑です。
心の中で叫ぶ。
「ところでラグナさん、どこに行っていたんですか?」
「さっきのカブを、メロディさんにお裾分けに行ってたんですよ。
 さすがにあの量を、一人で食べきるのは無理ですから」
「…………」
何故かミストの表情が固まった。
何だ? 何か悪いことでもしたか?
「……これは予想外の事態ですね」
ミストは呟く。
「あ、あの……ミストさん?」
「実はですね、あのカブはただのカブではないんですよ。
 いつまで経ってもメロディさんとウフフな展開にならないラグナさんを、
 こっそり寝取るために用意したカブだったんです」
「さり気なく恐ろしいこと言ってませんか? というか、そういう展開にならないのは僕じゃなくて作者のせいですから。
 見えないところでは色々やってますから。
 ……というか、一体どんなカブだったんですか? アレ」
「正式名称は忘れましたけど……通称、絶倫カブです」
盛大に吹いた。
とりあえず、残っていた絶倫カブをミストの頭に叩きつけて家を飛び出る。
丁度今は昼食時だ。はっきり言って、かなりマズい。
カブを回収すべく、メロディの元へ猛然と突っ走るラグナなのであった。



翌日、ラグナが朝帰りをしたのは言うまでもない。

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