すごいよ!メロディさん番外編 〜例え事故でも事実は事実編〜◆iJ3v4UsY9Q
悪夢だ。
ラグナはそう思った。
ひとまず、現在の状況を確認してみよう。
「…………」
右では、やたら不機嫌なメロディが腕を絡めている。
「えへへ〜♪」
対して左では、上機嫌なセシリアが背伸びをして腕に抱きついてきている。
「…………」
うん。おかしい。
ありえない。
一体何をどうしたらこうなるんだ?
事の発端は冬の月、30日。
気まぐれでトロス洞窟に行ったのが、そもそもの間違いだったのかもしれない。
「……ふぅ。そろそろ戻ろうかな」
モンスターをばっさばっさとなぎ倒し、収集品をたっぷり集めたラグナは自宅へ戻るべく、
エスケープのスペルブックを開く。
「……ん?」
その時、足元で何かが煌めいた。
腰を下ろし、それを拾い上げてみる。
「うわぁ……」
思わず感嘆の声を上げる。
それは石だった。
宝石と見紛うほどの白を蓄えたその石は、雪の中でもなお映え、美しく輝いていた。
「綺麗な石だなぁ……。なんて名前なんだろ?」
どこかで見たことがあるような……。
そう思ったのだが、結局思い出せない。
大方、この村に来る前に、どこかの宝石店で見かけたりしたのだろう。
「……あ。だとしたら、何か記憶の手がかりになるかも…」
本人も最近忘れかけているのだが、彼は記憶喪失なのだ。
何か記憶につながりそうなものであれば、是が非でも詳細が知りたい。
「うーん……せめて名前さえ思い出せれば…」
ウンウンと唸るが、思い出せないものは思い出せない。
「……あ、そうだ!」
と、そこで閃いた。
いるじゃないか、石好きの純情天使が。
「セシリーなら、何か知ってるかも……」
そう呟き、エスケープを唱える。
目指すはカルディア図書館だ。
――これが、ラグナが犯した二つ目のミスだった。
「セシリーなら、外で遊んでくると言っていましたよ」
ラッセルにそう言われたラグナは、セシリアに会うべく公園へとやってきた。
「え〜っと……あ、いたいた。おーい、セシリー」
「あ、ラグナお兄ちゃん〜!」
いつも通りの無邪気な笑顔で、セシリアがとてとてとやって来る。
「……あれ? 珍しいね、セシリーが一人でいるなんて。ニコルは?」
「ニコルはね〜、風邪ひいて、ずっとおうちで寝てるの〜」
「あらら、そうなんだ」
「ねね、ラグナお兄ちゃん。一緒に遊ぼうよ〜」
絶好の遊び相手を見つけたセシリアは、心底嬉しそうにラグナの腕を引っ張る。
「ああ、いいよ。でもその前に、セシリーに聞きたいことがあるんだ」
「うん?」
ごそごそとポケットの中をまさぐる。
「えっと……ああ、あった。この石なんだけど、セシリー、知ってるかな?」
そう言って、先程拾った石を見せる。
「え……っ?」
突然セシリアの動きが止まった。
顔を紅潮させ、おずおずとその石を手に取る。
「…………セシリー?」
「あ、あのあの、ラグナ、お兄ちゃん……?」
ひどく動揺した様子でセシリアが尋ねる。
「これ……セシリーに…くれるの……?」
「え……?」
ラグナは少し逡巡し――
そして最大の大ポカをやらかした。
「……うん。セシリーが欲しいのなら。
でもその代わり、その石のこと教えて――」
「うれしい〜! セシリー、ラグナお兄ちゃんのお嫁さんになれるんだね〜♪」
「……へ?」
さすがにラグナも、まさかそれがホワイトストーンだとは思っても見なかった。
そして勘違いをしたセシリアが家に押しかけてき、それを聞きつけたメロディが突撃を敢行した結果がこれである。
「人生って、どうなるか分からないですねぇ……」
「自業自得でしょ」
むすっと顔を膨らませたメロディがぼやく。
「そもそも、なんであたしじゃなくてセシリーちゃんなのよ……。
フツー、真っ先に彼女に渡すものなんじゃないの? そーいうものは…」
「いや、だから。何か記憶の手がかりになるかと思って……」
「そんなものどーだっていいのよ。今は前を向いて歩いていけばいいの」
「すいません、人の過去を全面否定しないでください」
随分な物言いである。
子供相手にやきもちとは、大人げない。
「ね〜ね〜、メロディお姉ちゃん〜」
しかし、セシリアはそんなことなど知ったこっちゃない。
上機嫌でメロディに話しかける。
「な、なにかな……?」
引きつった笑顔で応対するメロディ。
この時の彼女は、まさか直後に核弾頭級の爆弾を投下されるとは、微塵も思っていなかった。
「えへへ〜。この丸いの、いいでしょ〜」
そう言ってセシリアが取り出したのはホワイトストーン。
なめとんかこの小娘。
情け無用でセシリアに掴みかかろうとするメロディを必死にラグナが押さえる。
「ストップストーップ!! 落ち着いてくださいメロディさん! 相手は子供ですよ!!」
「止めないでラグナ! この女だけは、この女だけわぁぁぁぁ!!!!」
鬼のような形相で喚くメロディ。
さすがにセシリアも脅えて、泣き出しそうになりながらラグナから離れる。
「そもそも、原因はラグナなのよ!! なんなの!? もしかしてロリコンなの!? そうなの!?」
「Mでロリコンって一体何なんですか僕は!? 人として最悪じゃないですか!!!」
「最悪よ!! ふたまたなんてかけて!! あーもうドメスティックバイオレンスぅぅ!!」
「あだだだだ!! もげるもげる! 腕もげる!!」
ラグナの腕をへし折らんとばかりにパロ・スペシャルをかけるメロディ。
しかし、愛しい夫(仮)がそんな目にあっているのを見て、セシリアが黙っているわけがなかった。
「メロディお姉ちゃん。ラグナお兄ちゃんをいじめたら、めー、だよ」
「めー、はアンタの方でしょ! 人のもの取ったら泥棒なんだからね!」
ラグナから飛び降り、セシリアに向かって怒鳴るメロディ。
本当に大人げない。
「ふえ〜ん! ラグナお兄ちゃん〜、メロディお姉ちゃんがいじめてくるよ〜」
と、泣きながらセシリアはラグナにしがみつく。
「大人げないですよ、メロディさん。相手は子供なんですから……」
「騙されちゃダメよラグナ! その子、下心丸出しでハァハァ言ってるわよ!!」
「何を言ってんですか。セシリーがそんなことするわけ……」
「ラグナお兄ちゃぁん……はふぅ…」
「…………」
何も言わずにセシリアを引き剥がす。
「……そういうことは、あと十年経ってからニコルにしてあげようね?」
「え〜」
不服そうな声を上げるセシリア。
ラグナはため息をついた。
「……ところで、メロディさん。お店のほうはいいんですか?
もう三時になりそうなんですけど……」
「……今日は休業にする…」
膨れっ面でメロディは言う。
「……いや、休業ってあなた…」
「いいの! 休むって言ったら休むの! 店主はあたしなのよ! 文句ある!?」
びしっ、と人差し指を突きつける。
ラグナはありません、と答える代わりに首を横に降った。
「でも、せめて休業の看板くらい出してきたほうがいいんじゃないですか?
何も知らない人が来たら、困るでしょうし……」
「う〜……分かったわよ…」
妙なところで、きっちりしているメロディであった。
「で、でも! あたしが居ないからって、ラグナに変なことしたら許さないからねっ!」
ずびしっ、とセシリアを指差して家を出て行くメロディ。
幼女相手に「変なこと」と言うのもおかしな話ではある。
「……はぁ…」
改めてため息をつくラグナ。
今日は厄日だな。
そう思った彼だが、まさかこの後、さらなる災難が降りかかるとは思ってもみなかった。
「えへへ〜」
嬉しそうに、セシリアが抱きついてくる。
「ラグナお兄ちゃんと二人きり〜♪」
「……セシリーも、そろそろ帰ったら?
ラッセルさんも心配してると思うよ?」
「大丈夫〜。今日は〜、ラグナお兄ちゃんの家に泊まるって言ってあるから〜」
「ああ、なるほど。それなら安心ってオィぃぃぃぃぃぃ!!!?」
思わずノリツッコミをするラグナ。
何考えてんだあの人は。自分の娘がどうなってもいいのか?
「ダメ! 絶対ダメ! 十年早い!」
家へ送り返すため、セシリアの手を引こうとしたその時。
「――!?」
突然左半身が動かなくなった。
右肩から倒れ、仰向けに転がる。
「え……?」
何が起こったのか分からなかった。
とりあえず身体を起こそうとするが、何故か力が入らない。
「えへへ〜」
何故か笑顔でラグナの顔を覗き込むセシリア。
手に何か持っている。
(……針?)
裁縫針くらいの大きさだろうか。
それをセシリアが持っているのだ。
「……あの、セシリー? それなに?」
「これはね〜、めいさんが『ごしんよう』にって、くれたの〜。どんな男でもイチコロなんだって〜」
「……うん、間違えてるね。『イチコロ』の意味、取り違えてるね。あと『護身用』の意味分かってないね」
先程抱きつかれたときに刺されたのだろうか。
こちらに気付かれること無く、このような事をやってのけるとは。
(セシリー……恐ろしい子…っ!)
いや、一番恐ろしいのは、こんなとんでもないものを子供に渡すめいの方だな。
などと考えている間に、ついに全身が動かなくなってくる。
毒が周りきってしまったか。
「ラグナお兄ちゃん」
セシリアが声をかけてくる。
ラグナがこんな状態になっているにもかかわらず、彼女は――何故か、少し嬉しそうだった。
「セシリーね、セシリーね、トルテお姉ちゃんと一緒に、お嫁さんになるためのおべんきょう、いっぱいしたんだ〜」
……なんとなく、言い知れぬ不安がよぎった。
「だからね〜」
セシリアが顔を近づけてくる。
うん。とりあえず、トルテは後で極刑に処そう。
ラグナはそう心に誓った。
「ラグナお兄ちゃんも、だいまんぞくしてくれると思うんだ〜」
子供というのは、時に残酷なものである。
こちらの事情など、お構いなしなのだから。
「……っ…。……………っ!?」
いや、それ以前に――。
(……ち、窒息する…っ!)
何故か鼻を摘まれた上でキスをされてしまった。
もちろん呼吸は不可能。
なんとかそのことを伝えようとするが、身体が動かない。
大ピンチである。
(あ、コレ殺されるな……)
死を覚悟したその時、ようやくセシリアが離れた。
「えへ〜。ラグナお兄ちゃんと、ちゅーしちゃった〜」
「……どっちかと言うと、人工呼吸に近かったような…」
ぐったりしたラグナが呟く。
うん、大丈夫。今のは人工呼吸だ。
キスなんかじゃあ、決して無い。
そう自分に言い聞かせる。
「それじゃ〜次は〜、ごほうししてあげるね〜」
そう言って視界から消えるセシリア。
頭に血の回りきっていないラグナがその言葉を理解したのは、既にズボンを半分ほど下ろされた頃だった。
「……って、ちょっと待ったぁぁぁぁぁ!!!」
「ふぇ?」
と不思議そうな顔をしながらも、服を脱がす手は止めない。
仕事の出来るタイプだ。
結局、下半身を真っ裸にされてしまう。
「うわぁ……」
顔をほんのり紅く染めたセシリアが呟く。
「あれ!? なんかすっごいデジャヴ!! っていうかマジでやるの!?」
「だって〜。もうラグナお兄ちゃんとセシリーは、めおとなんだよ〜?」
「だーかーらー! それは勘ちが――」
「えいっ」
キュッ
「うわわっ!!?」
根元を力強く握られ、上擦った声を上げる。
「うわ〜、ラグナお兄ちゃんすごい〜。どんどんおっきくなってくよ〜」
ラグナのモノを握り、無邪気に弄ぶセシリア。
子供は加減を知らないから困る。
「や、やめ……ぅあぁ!」
ある程度身体の自由は戻ってきたものの、酸欠にもかかわらず大声を出してしまったせいで
意識が薄れ、まともに身体に力を入れることも出来ない。
最早、されるがままだ。
「えへへ〜。もっと気持ちよくしてあげるね〜」
ラグナのモノが半勃ちになったのを確認すると、セシリアは彼の股間に顔を埋めた。
右手で亀頭を執拗に責めつつ、根元の部分を重点的に舐る。
「ぁ……はぁ…っく…!」
自然と漏れてくる声を、必死に抑えるラグナ。
(……これ…メロディさんより……上手い…!?)
本人に聞かれたらぶっ飛ばされそうな意見だが、明らかにセシリアの方が技術力は上だ。
伊達に「おべんきょう」してきたわけではない、ということか。
(というか、なんて事教えてんですかトルテさん!!)
怖い。あの眼鏡の下に隠された素顔が。
そうこうしているうちに、限界が近づいてきたようだ。
「んむ……ちゅ…ふぁ。……すごい…、ラグナお兄ちゃんの、びくびくしてるよぉ…」
そう呟き、スパートをかける。
先程より激しくモノをしごき、先の部分を舌で責め立てる。
「ふぁっ!? ぁ……出…っ!」
激しい背徳感に苛まれながら、ラグナはセシリアの顔に精を放った。
「あぅっ!? ……ぁ…ラグナお兄ちゃん…すごい。
いっぱい、気持ちよかったんだね……」
「……ぅ……うぅ…」
正直、泣きたい気分だった。
好きな人以外にこのような行為をされてしまったこともだが、それ以上に
こんな小さな子供に、好き放題にされてしまった、ということにだ。
「随分とお楽しみのようね」
「楽しいわけ、ないじゃないですか…むしろ屈辱……って、え?」
聞き慣れた声。
ラグナは錆びたブリキの人形のように、そちらへ顔を向ける。
「…………」
鬼神がいた。
「ず……随分と、遅いお帰りでしたね……」
「……頭に『カ』のつく牧場主がね。何故かあたしの部屋に入り込んでたから、ぶちのめしてたのよ。
それはそうと……」
後ろ手に玄関の鍵を閉め、メロディは言う。
「……これは、どーいうことかしら?」
「ああああああ、あの、メロディさん!? こ、これは事故なんです事故!!」
必死に現状を否定しようとするラグナ。怯えるように部屋の隅に退避するセシリア。
しかし、例え事故でも事実は事実。
やったことには変わりない。
「………リ………れ……ん……」
ぶつぶつと呟きながら、何故か自分の服に手をかけながらラグナの元へ迫るメロディ。
「あ、あの、メロディさん? お、落ち着いて、落ち着いてください。話せば分かりますから。
というか、なんで脱いでるんですか? なんか物凄く嫌な予感がするんですが……」
「今セシリーちゃんにされたこと……全部忘れさせてやるんだからー!!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!!! …………アッ――!」
翌日、ミストがラグナ宅を訪ねると
焦燥しきったラグナ、顔を真っ赤にして目を回しているセシリア、
そして何故か無駄に肌の張りが良いメロディが居たとかなんとか。
「ふんふ〜ん♪ やっぱり、ラグナを満足させられるのはあたしだけね〜♪」
「……はぅ〜…大人って、すごい…」
「うぅ……僕って、こういう役ばっかり…」
終われ