割と多忙なリネットさんの一日 ◆iJ3v4UsY9Q


リネット少佐。
元ゼークス帝国第8師団所属、ファーイースト地区特殊先行調査部隊隊長。
二つ名は『破壊神』。
その名が示すとおり、その戦い方はまさに一騎当千。
歩兵一人を倒すのに、わざわざグレネード弾を使うという暴れっぷりだ。(オーバーキルとも言う)
ついこの前も、調査部隊に何故か戦車を編入させるといった暴挙に出たが――まあ、それは置いておこう。
そんな彼女だが、今は紆余曲折を経てカルディア――ミストの家に居候をしている。
今日は、彼女の一日を追ってみよう。



すごいよ!メロディさん番外編
 ~割と多忙なリネットさんの一日~



AM8:00

リネットの朝は早い。
彼女の一日はまず、家主のミストを叩き起こすことから始まる。
「ミスト殿。もう8時だぞ。早く起きるんだ」
「うぅ~……もう少し、あと5分だけ~…」
「そう言って5分後にきちんと起きるような人間なら、既に活動を開始しているはずだ。
 さあ、早く」
「あぅ~……」
そう喚いて、顔まで布団をかけてしまう。
ミストの体をゆさゆさと揺らすが、一向に起きる気配は無い。
「……あくまでも抵抗する気か。仕方あるまい……。
 ミスト殿。これからあなたに3秒の猶予を与える。3つ数えるまでに起きなければ、この場で頭をブチ抜く。よいな?
 では、1」

 ドォン――

雲ひとつ無い青空に、ド派手な銃声が響き渡った。
「……2と3は、どうしたんですか…?」
震える声でリネットに問いかける。
偶然寝返りをうっていなければ、本当に頭をブチ抜かれるところであった。
「はて、なんのことやら」
素知らぬ顔で散弾銃(装填されているのはスラッグ弾だが)を肩に担ぐリネット。
「…………」
ここ数日、彼女と暮らしてみて、ミストはある結論に至った。
リネットは戦争ボケだ。
元軍人なのだから当然と言えば当然なのだが、平和に慣れすぎたミスト達にとっては、あまりにも刺激が強すぎた。
今のようなやり取りは、まだ序の口である。



例えば三日前――
女湯を覗こうとしたザッハが、危うく撃ち殺されそうになった。
(メロディは発砲許可を出したのだが、ラグナが必死になって止めていた)

例えば二日前――
女湯を覗こうとしたカミュが、危うく撃ち殺されそうになった。
(メロディは発砲許可を出したのだが、ラピスが必死になって止めていた)

例えば昨日――
男湯を覗こうとしたメロディが、危うく撃ち殺されそうになった。
(番台の特権なのだから、咎められる理由は無いと本人は言っていた。
 ちなみにラグナが訓練弾による発砲を許可したが、誰も止めに入らなかったそうだ)

よくよく考えてみれば、全て風呂関係である。
彼女には何か、風呂に対する並々ならぬこだわりでもあるのだろうか?
「……どうした? ミスト殿」
不審に思ったリネットが声をかけてくる。
「へ? あ、いえ。なんでもないです。そんなことより朝食にしましょう、朝食。
 今日の朝ごはんは~っと……」
今日も騒がしい一日になりそうだ。
冷蔵庫からカブを取り出しながら、そんなことを思うミストであった。



AM10:00

朝食後、日課のロードワークをこなしたリネットはカミュズファームへと立ち寄った。
「マスター、いちご牛乳を頼む」
「……いや、マスターじゃなくて、カミュです。
 っていうか、うちは牧場だから、そーいうのは置いてないんですけど…」
「む、そうなのか」
お目当てのいちご牛乳が無いことを知り、心底残念そうな顔をするリネット。
「……分かった。ならばコーヒー牛乳をたのむ、アムロ殿」
「アムロじゃなくてカミュです。
 ……いや、だから。そういうのは置いてないって…」
「そうか。ならばフルーツ牛乳を頼む、ジュドー殿」
「ジュドーじゃなくてカミーユ! ……あ、間違えた、カミュです!
 っていうか、人の話し聞いてる!? ここ牧場だから! 普通の牛乳しか置いてないから!」
「む……そうなのか。それならそうと、早く言ってくれ」
「さっきからそう言ってるっての……!」
「仕方あるまい、酒場にでも行くとするか」
そう言い残し、颯爽と牧場を後にするリネット。
「……つーか、酒場って12時開店のはずじゃ…」
今日も騒がしい一日になりそうだ。
そう思いながら、カミュは机に突っ伏した。




PM1:00

リネットは海に来ていた。
今日の夕飯を調達するためだ。
しかし……。
「……まったく釣れんのう」
「そうだな」
偶然会っためいと、並んで釣り糸をたらすが一向に魚が連れる気配が無い。
かれこれ1時間は糸をたらしたままだ。
「……本当に魚がいるのか?」
「魚は気まぐれじゃからのう。気長に待つとしよう」
「むう……」
あごに手を当てひとしきり考えた後、何を思ったのかグレネードランチャーを持ち出すリネット。
「生憎だが、私は待つのが嫌いでな。……すまないが、私の好きなようにやらせてもらう」
「せっかちな女と早過ぎる男は嫌われるぞ。……というか、おぬし一体何をするつもりじゃ?
 そんなものを持ち出して……」
めいの問いには答えず、海面に向かって発砲。
そして数秒後……。

 ボオォ……ン――

激しい爆発音と共に、巨大な水しぶきが上がる。
「……綺麗じゃのう…」
空に映し出された大きな虹を見、めいは呟く。
「うむ、大漁だ」
一方リネットは、満足そうに海面を眺める。
爆発のショックで失神した魚達が、プカプカと力無く浮かんでいた。
「……のう。これは釣りと言うより、もはや漁ではないか?」
「なに、捕ってしまえば同じだ」
「いや、それはそうかもしれんが……その、もっとこう、風情というものが…」
「……すまないが、私にはイマイチ理解できん」
「じゃろうな」
今日も一日、大変だな。
半ば諦めたようにため息をつき、めいはそんなことを思った。



PM4:00

結局、3時間近く釣り(漁?)をしてしまった。
長時間潮風に当たっていたため塩まみれになってしまった身体を綺麗にするため、
リネットはギガントの湯へやってきた。
まずは店の裏手に回る。
――よし、今日は覗きを働く不届き者は居ないようだ。
念のため仕掛けておいたトラップの様子も見る。
――異常無し。
そのことに満足したリネットは、ようやく店の中へと入っていく。


「……あ~…いらっしゃいませへぇ~……」
無気力にもほどがあるメロディが居た。
「……どうしたのだ? メロディ殿…」
「あ~……少佐ぁ~…こんにちわでありますぅ~…」
机にあごを乗せたまま、気だるそうに話す。
「随分と疲れているようだが……何かあったのか?」
「……ラグナが…ラグナがぁあぁ~……」
ぶわ~っと幅の広い涙を流すメロディ。
「何……? まさか、ラグナ殿の身に何か!?」
「ラグナが、昨日から口利いてくれないんですよぉ~!」
思わずずっこけそうになるリネット。
「……なんだ、そんなことか…」
「そんなこととは何ですかぁ! あたしにとっては、死活問題なんですよぉぉ!!」
滝のように涙を流すメロディ。
普通なら、多少は同情でもするべきなのだが……。
「自業自得だな。昨日、あんなことをするからだ」
あんなこと。とは、ズバリ覗きである。
ラグナの入浴シーンを番台からコッソリ眺めていたところ、偶然店に入ってきたリネットに見つかり
危うく射殺されかけたのだ。
「ごめんなさいぃ~。出来心だったんですぅぅ……」
「私に謝られてもな……。そもそも、覗く必要などなかろう。夜になれば幾らでも――」
「……甘いっ!」
バンッ! と机を叩きリネットを指差す。
今にも「意義あり!」と叫びだしそうな勢いだ。
「甘い! 甘すぎますよ少佐! リラックスティーにいちご牛乳投入するよりあまーい!!
 いいですか!? 湯煙に見え隠れする純白の肌! 見えそで見えない禁断の領域!
 これがまたそそるんじゃないですか!!」
「貴様はオヤジか」
「でも……でも禁断の領域に踏み込んだ代償は、あまりにも大きかった……。
 ラグナぁ~! カムバーック!」
よよよ、と泣き崩れるメロディ。
見かねたリネットはメロディに歩み寄り、そっと肩に手を置く。
「よし、分かった。メロディ殿には特別に、夫婦喧嘩によく効く薬を教えてやろう」
「いえ、まだ夫婦じゃないんですけど……ちなみに、薬っていうのは…?」
「まあ、単刀直入に言うと……性交だ」
「直球ストレート!!!?」
それもかなりの剛速球だ。
「? 何を驚く必要がある。いつものように、ばーっと押し倒してパパッとやればよかろう」
「あれ!? いつの間にやらそんなキャラにされてんの、あたし!!?」
「違うのか?」
「違います! 全っ然違います!!」
「そうなのか。それは失礼した」
深々と頭を下げるリネット。
「お詫びと言ってはなんだが、私も協力しよう。幸い、動きを封じるための道具ならいくらでもあるが……」
「全然分かってないじゃないですか! しかもソレ余計嫌われる!!!」
もうこの人に相談事をするのはやめよう。
心からそう思うメロディであった。




PM11:00

帰路に着いたリネットが異変に気付いたのは、ミスト牧場の前を通ったときだった。
ラグナの家から、くぐもったような声が僅かに聞こえてきたのだ。
(……敵襲か!?)
持ち前のぶっ飛んだ思考を発揮したリネットは、散弾銃片手にラグナの家へと突撃を敢行する。
「御用改めである! 神妙にしろ!!」
ドアを蹴破り、銃を構える。
が――。
「はわわわわ!!?」
「ちょ……なんてタイミングで入ってくるんですかリネットさん!?」
ほとんどの人は予想できたと思うが、そこに居たのはラグナとメロディだけであった。
何をしていたかは、あえて語るまい。
「……む、すまない。屋内に侵入する場合は、入り口からのエントリーは避け、
 外壁に穴を開けて突入するのがセオリーだったな」
「いや、そっちじゃなく! っていうか、穴開けたら怒りますよ!!?」
「冗談だ。……いや、まさか実行しているとは思わなかったのでな。本当にすまない」
申し訳なさそうに頭を下げ、玄関口へ向かう。
「しかし……」
不意に口を開き、ぽつりと呟く。
「ラグナ殿が上とは、珍しいこともあるものだな」
「大きなお世話です!! っていうか、何で知ってんですか!?
 普段僕が下って何で知ってるんですか!!!?」
もうこの人ヤダ。
泣きそうになりながらそう思うラグナなのであった。



PM11:40

「ふぅ……」
今日も充実した一日だった。
机に向かって日記を書いていたリネットは、満足そうな笑みを浮かべた。
「今日も随分と暴れてきたようですね、リネットさん」
微笑みながら日記を覗き込むミスト。
「む……別に、暴れていたわけではないぞ。普段どおりにしていただけだ」
「普段どおり……ですか」
普段があれでは、周りの人間はいい迷惑だろう。
ミストはリネットの元部下達に、深く同情した。
「さて、そろそろ就寝せんと、明日が辛いな。
 ミスト殿。明日は2秒で撃ち抜くので、そのつもりで」
「大丈夫ですよ。しっかり目覚まし時計用意しておきますから」
「うむ、良い心がけだ。では、おやすみ。ミスト殿」
「ええ、おやすみなさい」
でもまあ、何の変哲も無い毎日に、多少の刺激はあってもいいかもしれないな。
そう思いながら、苦笑いをするミストであった。

さあ、明日も頑張ろう。




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