ビアンカその後 ラグナ×ビアンカ

山の空気は日に日に純度を増し、冷たくなっていく。
青空は遥か高く、秋のやわらかい陽の光が、開けた牧場に溜まる様に注いでいた。
ラグナは朝から、畑の野菜の収穫をしていた。
ここにもじき冬が来る。
あともう何度収穫できるだろうか。
ビアンカは、寒くないのだろうか、薄着にマフラーだけ巻いて、椅子に座ってラグナの働くのを眺めていた。
椅子はまた家の中から運び出して来ていた。
それどころか、ラグナまで動員してテーブルも運び出していた。
さらに勝手に温かい紅茶まで淹れて、それを飲みながらラグナを眺めていた。
「あぁー、おいし。でも暇ねえ」
あたたかなため息は、寒くなり始めの空気に白く漂い、ほどけるように広がって消えていった。
秋の陽は一日ごとに沈むスピードを早めていく様で、今日の陽もまた、気付けば傾き始めていた。
それを見ていると、木枯らしが一筋。
ビアンカは一瞬身を固くし、目をつむってやり過ごした。
そして、木枯らしを追うように目を遣ると、あの、前にここに来た時の「あの事件」のことが思い出された。
ビアンカと、ラグナに起こったあの事件。
本当にあれは事件だった、と、今になって思う。
あの日、あの後、朝まで彼の家にいた。
そして、何だか寝てるうちに、前の夜のことも随分昔の事のような気になってきて、それどころかラグナとは相当長い付き合いのような気にまでなっていた。
実際は一回きりなのだけれど。
いや、一回きりってそういう事ではなくて、そうだけどそういう事ではなくて、「その」後から、ぐっとラグナと親しくなれた気がしていた。
それで何か勘違いをして、どうもーまた来るわー、みたいな事を言って簡単に帰ろうとしたのだった。
そうしたらラグナが、送りますよ、とか言ってついてきた。
それで二人で、何だか黙りながらビアンカの家まで歩いていると、途中でタバサに出くわした。
何やら袋を抱えていた。
何かと思ったが、帰ってから取りあげてみたら、中身はもち米だった。
完全にバレていた。
あるいはタバサの狙った通りになったのか。
余計な気回しというか、もう、いやがらせかと思った。

顔が赤くなるくらい恥ずかしかったのだけれど、さらにそこで、昨晩のことが正に昨晩のこととして蘇ってきてしまった。



その感触だったり、ついにやってしまった、という何とも言えない気持ちだったり、まさか私が、というショックや、そう、達成感のようなものも。
ただ、ラグナと、というところに、ショックをやわらげる何かを感じていた。
それでもあんまり恥ずかしかったものだから、タバサに文句を言った。
あまりにも手際が良いものだから、やる事が早すぎる、と言った。
そうしたら、「それはお嬢様じゃないですか」と逆襲された。
さらに、昨晩のことを根掘り葉掘り、事細かに聞き出された。
もう自分で言うのも恥ずかしくて恥ずかしくて、逃げ出そうとした。
しかし、タバサはどこまでもついて来るし、話術が巧みだったので、結局ほとんど始めから終わりまで言わされてしまった。
本当に恥ずかしくて、話し終わる頃にはベッドまで逃げていって、両手で顔を隠して丸くなっていた。
タバサは一言聞き出す度に喜んだりはしゃいだり、少女に戻ったようだった。
そういう事でとにかくビアンカとラグナは、タバサ公認の仲、ということになった。
けれど、家の中で顔を合わせる度に何だかんだとからかわれるものだから、ついにたまりかねて、こうしてラグナの家に逃げて来たのだった。
昼前、タバサがジャコリヌスの昼食を作っている時間を見計らって、ラグナの家に行くことにした。
ちょっといい服を着て、マフラーだけ巻いて。
部屋のドアを音を立てずに開け、ゆっくり忍び足で階段を降りた。
玄関で調理場のドアに向かって「出掛けてくるわね」と言った。
すると、階段の陰からタバサがゆらりと現れた。
隠れていたのだ。
どのくらい長くかは知らないけど。
「あぁ〜ら、お嬢様。どちらへお出掛けですか?」
「ひっ!」
「ええ、いいですよ。あ、お泊まり!ええ、ええ、いいですよ。なら夕ご飯はいりませんね。」
「あ、あああの……」
「じゃあお嬢様、今夜も」
何故かここでタバサがにやりとした。
「頑張ってくださいねぇ〜、ウフフ」
「(なんで私そんなエロ女みたいになってるの!?)」
ものすごいやらしい微笑みを浮かべながらタバサが近付いて来る。
「し、知らない!」
と言ってビアンカは逃げるように玄関を飛び出した。
そうしてビアンカはラグナの家まで来たのだった。


陽は沈みに入ったが、まだ赤らむ程ではない。
その前にラグナの作業も終わった。
「寒くなってきましたね。家に入りましょうか」
「そうね」
冷たくなった紅茶を飲み干すと、ビアンカは、ラグナと二人懸かりでテーブルを家に運び込んだ。
「えーと、何か温まるもの……あ。」
ラグナが何か困ったような声を出した。
「どうしたの?」
「あの、何か温まるものでも、と思ったんですけど、またシチューが……。」
見ると、ガス台にシチューの鍋が乗っている。
「……いいわよ、シチュー、好きだし」
「いいですか?じゃあ、そうしましょう」
ラグナは、調理場に行き、シチューを温め始めた。
ビアンカは、いつかのようにラグナを待っている。
手は膝の上、黙ってラグナの作業するのを見ている。
やがて温められ、かき混ぜられたシチューの香りが部屋に広がり始めた。
この香りも、あの事を思い出させた。
あの日、この部屋で起こった事を。
「どうぞ、できました」
ラグナの手により、テーブルにシチューが二皿並べられた。
いただきますを言った後、二人黙って一口目を口に運んだ。
ラグナはビアンカの様子を窺う。
「……どうですか?」
「もう、ゆっくり食べさせてよ」
「あ、すいません」
「……おいしいわよ」
「本当ですか!」
「ええ、何だか前よりおいしい気がする」
それは、前より寒かったのもあったかもしれない。
単純に、前に一度食べていくらか味に慣れたからかも知れない。
けれど、それ以上に、ラグナはあれから練習したようだった。
おそらく今日シチューがあったのも……。
照れ隠しにか、ラグナが口を開いた。
「あの、あれから、何かありましたか?」
ビアンカは、ああ、そうそう、タバサが……、と思い立って、はっとした。
「い、いえ、別に……」
「そうですか。タバサさんに何か言われませんでしたか?」
「だっ、大丈夫よ。何で?」
「こういう事になってしまったから、家の方には言わないと、と思って」
「あ、そうね、そのうちね」
──そうだ、タバサったら、お泊まり頑張って、なんて言ってたわね。
天の邪鬼が出てしまった。
すっぱり帰る事にした。
シチューを食べ終わると、ビアンカは立ち上がった。
「ごちそうさま。そろそろ帰らないと」
「おかわりいいんですか?」



「ええ」
あまり話してると、また前みたいに帰りたくなくなる気がして、急いで家から出ようとした。
「あ、ちょっと待ってください」
呼び止められ、つい立ち止まってしまった。
ラグナは立ち上がり、歩いてきた。
何をするのかと思ってビアンカが動けないでいると、突然抱え上げられてしまった。
驚いているうちに、ベッドに座らされた。
ラグナも隣りに座った。
「……するの?」
「だめですか?」
「うん……じゃあ、……キスだけなら」
「……分かりました」
それだけして、お礼を言って帰るつもりだった。
ラグナはビアンカを優しく抱きしめ、唇を合わせるだけの緩やかなキスをした。
ビアンカは静かに目をつむり、されるがままになった。
しかし、いつまでたってもラグナは唇を離そうとしなかった。
ビアンカが恥ずかしくなってきて離れようとしても、ラグナは離さなかった。
「んー!」
もがけば唇の感触が強く感じられ、心臓の脈打つのが早くなっていった。
それをラグナに聞かれていると思うと、それもまた恥ずかしかった。
顔が熱い。
一秒ごとに意識が飛んでいく。
頭が沸騰しそう。
ようやく離れた時は、頭がぼうっとして、涎を垂らしていた。
途端に顔を覆ってベッドにうつぶせた。
自分の乱れた姿が恥ずかしくて仕方無かった。
呼吸が乱れて、大きく息をしていた。
すると、ラグナが覆いかぶさってきた。
手がうつぶせになった胸の辺りに滑り込み、服の上から撫でられた。
「あっ、ずるい……」
そのまま抱き起こされ、襟元を開かれて手を入れられた。「ひぁっ!」
ラグナの手が冷えていて、驚いて声が出てしまった。
ラグナは構わずに指を這わせる。
「したくないですか?」
ラグナは、ビアンカを自分の方に向き直らせて、聞いた。
「だ、だって……」
ビアンカは赤い顔で、目を逸らしてどもったが、そこにラグナはもう一度キスをした。
そのまま体を倒し、キスを続けた。
唇を離すと、ビアンカは力が抜けたようになって、ラグナを見つめていた。
ラグナは仰向けになっているビアンカの膝を立てて、スカートを捲り上げた。
「あ……、何、してるの……」
ビアンカにはスカートで見えなかったが、ラグナはビアンカのタイツと下着を捲り、そこに指を突っ込み、掻き回した。
「あぁっ!?」


見えなかったが、ビアンカにも、自分のどこに何が入っているかは分かった。
「あっ、あ、ああ……」
「こういう風にされるの、好きですか?」
気持ち良さそうにしているビアンカを見てラグナが言った言葉は、ビアンカをまた真っ赤にした。
「……っ、し、知らない……」
「そうですか……」
そう言うとラグナは指を引き抜いた。
「あ……」
ビアンカはスカートの向うを見ようとしたが、その時、同じ場所に舌が挿し込まれた。
「あ!や!あっ!」
そのままラグナは執拗にその中を探った。
「うぁっ!あ!ああぁっ!」
小さく声を上げながら、ビアンカはシーツを掴んでのけぞった。
「ビアンカさん……いいですか?」
「あぁ……っ、ま、待って、服、汚れちゃう……」
そう言うとビアンカはベッドから降り、服を脱ぎ始めた。
そのしぐささえ、しとやかで美しかった。
その身体は随分華奢で、薄暗くなった中でも白い肌がまばゆかった。
ラグナの意向により、頭のリボンは残された。
ラグナはビアンカが服を脱いでいるのを大人しく待っていたが、ビアンカが服を畳んでいると、誰かがドアを叩いた。
ビアンカは驚いてベッドに上がり、ラグナにしがみついた
数回ノックした後、ミストの呼ぶ声が聞こえた。
「ラグナさん、いますか?」
ビアンカはまた真っ赤だ。
幸い、秋の日暮れの早いのが留守を演出してくれていた。
いや、ミストはそれでも入ってきかねない。
二人が静かにしていると、窓からミストが顔を出した。
部屋を見回して、真っ直ぐこちらを見た。
ビアンカはもう涙目になっていた。
しかし、ミストは顔色一つ変えずにこちらを見ている。
どうやら、まだ明るさの残る外からは、家の中の様子がいくら目を凝らしても全く見えないようだった。
ミストは、ラグナが寝てはいないかとベッドを見ようとしてみただけだった。
それに気付いたラグナはビアンカに襲いかかった。
ビアンカを寝かせ、閉じていた足を開いた。
「や、やぁっ、恥ずかしい……」
「大丈夫です、見えてません。でも、声を出したら入ってくるかもしれませんね。鍵は開いてますから」
それでビアンカは怯えて、口を両手で塞いだ。
それを見てラグナは、ビアンカを待っていた自分のものを、ビアンカに無理矢理挿し込んだ。
「────!」
声にならない小さな悲鳴が漏れた。


ビアンカは口を押さえながら首を横に振ったが、ラグナは腰を動かし続けた。
「んっ!んんっ!」
ビアンカは必死に声が出ないように口を押さえたが、どうしても声が漏れてしまう。
ビアンカが窓を見ると、ミストがこちらを見ていた。
どうしても、裸の自分達を、繋がっているところをじっくりと見られているとしか思えなかった。
「(だめ、見てる……っ)」
もう何も考えられなかった。
やがてミストはあきらめて帰っていった。

「もう声を出しても大丈夫ですよ」
「ぷはぁっ、ラグ、ナぁ……ああ!ああぁっ!」
「何ですか?」
意地悪をして、動きを強めながら聞いた。
「私、あっ!もう……っ!あっ!あっ!あ!」
そこでビアンカは、ラグナに手を伸ばし、自分からキスをした。
ラグナとのキスが気持ち良かったのだろう。
そして、絶頂に達する時にもう一度それを感じたかったのだろう。
そうして、二人は一緒に絶頂に達した。


「はあ……、またしちゃった……」
しばらくして、落ち着いたビアンカが呟いた。
「だめなんですか?」
ラグナが笑いながら聞いた。
「だめよ、来るたびやってるなんて……」
「したくないんですか?」
「う……」
「もう一回しましょうか」
そう言ってラグナはビアンカの方に手を伸ばした。
「だっ、だめ!」
ビアンカは起き上がった。
「そ、そう、これから帰れば間に合うわ!うん!」
そう言うとビアンカは服を着始めた。
さっさと着替えを済ませると、
「じゃあね!また来るね!」
と言って、足早に帰っていった。
しかし実は、脱いだ服をきれいに畳んでいたせいか、タイツを穿き忘れていた。
結局、そのせいでタバサにからかわれる事になるのだった。





おわり

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル