ラグナ×リネット 初夜
まさか自分の身に、この様な事が起こるとは。
リネットは目の前の場景を目を細めて見つめた。
笑いさざめくカルディアの人々。豪華な料理が温かな湯気を立て、グラスの中の
ワインがキャンドルの明かりを通してルビー色に輝く。
この寒い冬の最中、見るもの全てが暖かい光に包まれている…。
町の娘が駆け寄って来て、ドレスを身に纏った自分を見つめて溜息をついた。
「…何か…おかしいか?」
リネットは真直ぐに娘の目を見つめ、言った。
「え…あの……そうじゃなくって…あの…」
「トルテさん、リネットさんがとても綺麗だから…そうでしょう?」
場をとりなす様に二人の間に入ってきた男は、柔和な微笑を浮かべ、そう言った。
男は…ラグナは、リネットと同じ色の白いタキシードを身に纏っていた。
トルテは我が意を得たり、という顔で首を縦に振って必死な顔で言った。
「は…はい、そうです…リネットさん、とっても……綺麗…素敵です…」
「そッ…そうか…。いや、すまない、トルテ嬢。あ…ありがとう。…ム…」
礼を言った後、急に面映くなったリネットは右手で目を覆った。
つるりとした感触が目蓋を撫でる。
(しまった!手袋に化粧が…!)
その手袋も、今日ばかりはいつもの無骨な物ではなく、繊細なレースで縁をとった、
華奢なシルクの手袋だった。
冬が始まったばかりのある日、リネットはラグナに求婚された。
毎日、ヨーグルトやらなにやらを贈る為に自分の許に訪れていた
「元・手駒ラグナ」に対し、
「居場所の無くなった自分に同情しているのだろうか」「馬鹿らしくお人よし」
としか思っていなかった(と、自分では思っていた)リネットは、当然面食らった。
しかし、急に襲われた今まで感じたことの無い甘い感情に逆らえず、リネットは
差し出されたラグナの手の上に自分の手の平を重ねた。
頭で考えずに、心で行動するなど今まで無かった「元・少佐」は、
運命のめぐり合わせと自分のとった行動に戸惑いつつも、
心の一方で涙腺の熱くなる様な幸福感に酔いしれていた。
そして急に目まぐるしく時間が過ぎて今、結婚式・披露宴の場に立っている。
実感がいまいち湧かない。
まるで一炊の夢の様…もしかしたら今ここでドレスの裾を踏んで転びでもしたら
覚める他愛の無い夢なのかもしれない。
…それにしても、本当に何故ドレスとはこんな活動的ではない形状をしているのか。
「ラグナ殿、こう裾の長いドレスは少女時代以降着た事が無かったが…歩き難いな。」
「お姫様抱っこして帰りましょうか?」
「何を…!!?」
真っ赤な頬をしてラグナを睨むリネットだったが、ラグナはニコニコと笑って
正面からリネットの肩を抱いた。
トルテは「まあ…」と再びうっとりと溜息をついた。
新たな夫婦となった二人は、町の人々に見送られながら式場を後にする。
ラグナは、思いのほか力強い腕でリネットを抱き上げた。
「やめてくれ、恥ずかしい!」
「やめません。」
「今着ているドレスなら、歩ける!」
確かに今纏っている、披露宴の途中で着替えたドレスはウェディングドレスよりは
布地が少なく、身軽だ。しかしラグナは「いや、わかりませんよ?」と
とぼけた事を言って、リネットを離そうとはしない。それどころか、
リネットを一層強く抱き締め、幸せそうに笑った。
人々が歓声をあげる。リネットは「この男は…!」と毒づいたが、実際
彼女が恥ずかしがっているのは、いわゆる「お姫様抱っこ」をされた事ではなく
「これから、帰る場所が一緒なのだ」という事と、「帰ったらとうとう
起こってしまうであろう事件」を、自分達がベタベタと密着する事によって
町の皆に鮮烈に想像されてしまう事だった。
そんな周知の事を気にするなど無駄といえば無駄だが、今まで女性らしく
生きてこなかったリネットは、真剣にその事で心を乱されていたのだった。
「さあ、帰りましょう。」
「…」
ラグナの腕の中で憮然としてしていたリネットだが、宿屋の女主人であるアンが
「そのドレスだけじゃちょっと寒いんじゃないか?冷やすんじゃないよ!」
と手渡してくれた毛皮のケープがラグナの手でかけられると、その暖かさと
気遣いに、自分が些末なことを気にしていた事が申し訳なくなった。
(私は、祝福されているのだ…)
「ああ、帰ろう、ラグナ殿。」
沈黙。
激しい鼓動と耳鳴りが今一番大きく聞こえる音だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
怖い。
とても、怖い。
牧場の家に帰り着き、ベッドに下ろされたリネットはにわかに高鳴り始めた
心臓を落ち着かせようと腐心したが、無駄な事だった。
求婚されてから今までも、ラグナと肌を合わせたことはまだ無い。
それどころか、そもそもリネットに「経験」は無い。
理由は簡単な事で、リネットが認める様な「強い」男が今までいなかった故だ。
それだけ、軍人としてのリネットは早い頃からあらゆる面で抜きん出ていた。
ラグナの経験についてはノわからない。少し前まで軍事上の道具扱いを
していた男のそんな情報など必要としていなかったからだ。
どんな未知の戦場に出ようと動じなかった自分が。
どんな大きな傷を負っても、片目の光を無くした時にも平常心を保てた自分が。
今、破瓜を思ってこんなにも動揺している。
いや、痛みではなく、自分の中に男を受け入れるという想像不可能な行為を
恐れている。
「あの、ラ、ラ、ラグナ、殿…」
ラグナはいつしか、リネットの瞳を優しく、熱っぽく見つめていた。
あまり見つめないで欲しい。でも、見つめられるのは何か心地良い。
「ラグナ殿、私 は、 」
ラグナは有無を言わさずリネットの唇を自分の唇で塞いだ。
心臓が飛び出しそうな気がしたリネットだったが、深く、浅く唇を
吸われるうちに頭の中がとろけていく様な心地良さを感じ、
ゆっくり目を閉じた。
シルクのドレスの胸元がゆっくり手繰られていく。衣擦れの音。
滑らかな布に嬲られた乳首が敏感に反応して、きゅっと硬くなる。
そこに布が僅かに引っ掛かり、乳房を弾いた。ぷるん、と大きく揺れて
形の良い、柔らかそうな乳房が露わになった。
「ッあ……」
唐突な刺激に、無意識に甘い声が漏れる。
一息置いて、リネットはバツの悪そうな顔をしたが再びぎゅっと目を閉じた。
首筋を軽く吸ったラグナの唇が徐々に下へおりて来る。
それだけで、リネットは自分の秘部がジンジンと疼いてくるのを感じた。
(私の身体は、こういう反応が出来たのか…。)
そんな事を考えながら、襲ってくる快感に一生懸命耐えていた。
漏れる嬌声を噛み殺す度、桃色に上気し始めた乳房が震える。
するすると全ての衣服が脱がされ、リネットの裸の肉体が外気に晒された。
美しく引き締まった筋肉の上に、女性らしいふくよかさがコーティングされた
造詣を目の前にし、ラグナは心を奪われた。
リネットの方は、身構えていた(期待していた?)刺激が襲ってこないので
そっと片目を開けてラグナを見やった。
ラグナは、また真摯な熱っぽい瞳でリネットの目を見つめていた。
「こう言ったら、リネットさんはまた「やめてくれ」って怒るかもしれませんが
…とても、とても綺麗です。本当に…。」
ラグナは目を細めて、一句一句に心を込める様に囁いた。
それを聞いたリネットは、何故か泣きそうに目を潤ませた。
「ラグナ殿、私は……ちゃんと女だったみたいだ。」
はたから見たら珍妙な会話だったろう。
しかし、ラグナはリネットの言わんとしている事を汲み取って、ええ、と小さく
頷いて、穏やかに笑った。
リネットは腕を伸ばし、上にのしかかっているラグナの首に回して
自分の胸に抱き寄せた。
ラグナの頬に感じられる柔らかい感触。その中で一部、目尻あたりを突付く硬い突起。
今日だけ特別につけた香水に混じったリネットの肌の香り。
聴こえてくる速い鼓動。甘い吐息。
全てがラグナの熱情を煽った。
ラグナは顔を起こし、少々乱暴にリネットの両乳房を手の平で包むと、
指の間から覗く乳首をきつく吸い、軽く歯で噛んだ。
「あっ!あああぁッ!!」
もはや、リネットは声を抑えることはしなかった。
襲い来る快楽に身を任せ、ラグナの唇を、舌を求めた。
無意識に背中が仰け反り、月経の時とは違う、熱い液体が秘部を潤すのを感じる。
「ラグナ殿も服を…。」
促されたラグナはもどかしそうに厳重な礼服を脱ぎ、二人は裸の身体を初めて
密着させた。
(なんて心地良い…)
抱き合っているだけで、もう意識が溶けて流れてしまいそうなリネットだったが、
粘液に濡れる内腿にコツンと何か硬い物が当たって我に返った。
「あッ…」
それは、初めて見る物…屹立したラグナのペニスだった。思わず、じっと
凝視してしまう。びくびくと脈動する様は何か不気味な感じがしたが、
(これが私の中に入ってくるのか)と思うと、不思議と愛しく思えた。
手を伸ばし、そっと手の平で包んでみる。
「あ…リネットさん…。」
ラグナがビクッと身を震わせる。リネットは、その熱さと硬さに内心驚きつつ
初めて目にする状態のそれのラインを興味深げになぞってみる。
そして、指を動かすたびに反応するラグナの顔を好奇心たっぷりに見つめた。
ラグナの、どちらかと言うと幼い顔が色っぽく表情を変えるのを見たくて
指の動きは自然にエスカレートしていく。
こういう時、男がこんな無防備な顔をするとは知らなかったのだ。
そして、こんな事をしたら男がどんな行動に出るかも知らなかった。
ラグナは急にリネットの手首を乱暴に掴み、その体を組み敷いた。
「!ラグナ殿、まだッ…いや!」
柄でもない声を出してしまった自分に驚きつつ涙目でラグナの方に顔を向ける
リネット。ラグナは事を急いた自分に照れたのか、ちいさく「ごめんなさい」と言い、
手首を掴んだ手を離した。そしてその手を、リネットの下の繁みの中心に…
しとどに愛液を垂らしている部分に持っていった。
ぐちゅぅ、といやらしい音を立て、ラグナの中指が根元まで飲み込まれていった。
いったん引き抜き、また挿し入れる。それを繰り返す。
一見細く見えるラグナの指は、日々の農作業と戦闘で、関節が節くれだっていた。
「あっ…うッ…んんん……」
リネットは、指が奥深くを突く度に短く嬌声を上げた。
少し、痛い。でも。
「きもちっ…い、い…」
その声に触発されたのか、ラグナはいっそう激しく指を抜き挿ししたり、中で軽く
指を曲げてまだ硬い膣壁を擦りあげたり、掻き回したりした。
「ああぁん!んぅッ!」
リネットの反応も激しくなっていく。ラグナの指から逃げる様に、そしてラグナの
指を貪る様に腰を動かす。
家の外は冷たい冴えた空気と雪があらゆる音を包み込み、しんと静まり返っていたが、
家の中ではぐちゅぐちゅと淫靡な音が大きく響いていた。
少し前のリネットなら、羞恥心が勝っていただろう。
しかし今はただ、与えられる快楽を受け止め、さらにもっと、もっと、と貪欲に
欲していた。
リンゴが落ちて何かに気付く直前、そんな感覚も心の片隅にあったが、リネットは
その時、微塵もそれには頓着しなかったのだった。
ラグナは一度、指を引き抜いた。纏わり付く愛液が糸を引く。
リネットは脚に力が入らなくなり、横向きに倒れて大きく一息を吐いた。
「膣の中が…痙攣している…?」
自分の身体に起きた反応に気付いたリネットだったが、次の事を
考える間も無く再び快楽の波の中に引き戻された。
脚を大きく開かされ、今度は舌がぬるりと忍び入ってきたのだ。
ラグナの熱い吐息がかかる。
ピンク色の粘膜を左右に押し開かれ、奥に、奥にと舌が挿し入れられる。
これだけでも気が遠くなりそうなのに、さらにラグナは舌先でリネットの
最も敏感な部分-----クリトリスを嬲り始めた。
「リネットさん、ここ、凄く濡れて…こっちもさっきより大きくなってる……。」
上唇を舐めながら、悪戯っぽく言うラグナ。
経験の豊富な女性であったら自然に包皮が剥けて先が露出するところだが、
リネットのそれはラグナが大陰唇の上部を親指で押し上げる事でやっと、
赤く膨らんだ全貌を見せた。
吸い付かれ、舐め転がされ、尖らせた舌先できつく弾かれ、リネットは
脳髄を突き抜ける狂おしい程の快感に、我を忘れていった。
そして、小さな絶頂を何度も迎え、小刻みに収縮する「女の部分」と本能に
命じられるままに、決して自分から言う事は無いだろうと思っていた系統の
言葉を途切れ途切れながら、口にした。
「ラグナ殿、わ…たし…ラグナ殿が……欲しい…今……すぐに…」
先刻一度、無理にリネットの中に入ろうとしたラグナは今度は慎重だった。
自分のペニスを軽く掴み、「入り口」にあてがうと、まずはゆっくりと
形をなぞる様に上下に動かした。
混じり合う体液。滑りを増して、二人の、元々は同じ器官だった部分が
お互いを刺激しあった。
リネットは、薄目を開けて自分の脚の間を見る。
ラグナのペニスは、数十分前に見た時よりさらに大きく、太くなっていて、
随分と上を向いていた。
本当にコレがちゃんと入るのだろうか。しかし、怖くはない。
今はただ、それで貫かれるのを心待ちにしていた。
(家に帰って来た時、何故あんなに怖かったのだろう?)
ぼんやりと考えている間に、ラグナが低く、穏やかな声で言った。
「リネットさん、…行きます、よ?」
「………ん、」
リネットが小さく頷くと、ラグナはリネットの膝裏辺りで脚を持ち上げ、
腰をぐい、と前に進めた。
「あっ、ラッ…グ…んんんぅ!!」
お互い、途中で何か結合を阻むものがあると感じた。
特にラグナは、おそらくは年上で、世慣れしたリネットにそれがあるとは、
失礼ながら思っていなかったものだから、一瞬腰を進めるのを躊躇した。
指を挿れた時にさえ、ラグナはそれと気付いていなかったのだ。
リネットは確かに痛みを感じてはいたが、軍人だった故の妙なプライドか、
痛みがどうの、という気遣いで行為を中断されるのは今は本意ではなかった。
リネットはこれしきの事、どうでもないとでも言いたげに
「いいんだ、ラグナ殿。そのまま…」
と、ふっと笑うと、ラグナの腰を、引き締まった尻辺りを掴んで自分の
方へと引き寄せる。
次の瞬間リネットは、ひどく熱い物が自分の一番奥深くに突き入れられたのを
感じた。
同時に、所有の焼印を押されたかの様な、甘く被虐的な感情も覚えた。
ラグナは正直、少し動揺していた。
自分の体の下にいるのは、いつもの雄々しい調子のリネットではなく、
とても女性らしく、クラクラする程の色香を放つ、見た事のない
リネット。もれる喘ぎ声も、普段では想像できない位甘く、甲高い。
[それでも多分に他の女性よりなら多少低い声であろうが。]
得てして女性は多面的なものだろう。しかし…。
目尻に小さな涙を湛えて、切なげに息を吐くリネットを見て、
ラグナは腹の底から強烈な感情が沸き起こって来るのを感じた。
(リネットさん、可愛いです…。堪らない位に。)
すぐにでもリネットの中を自分で満たしてしまいたかった。
しかし、先程ペニスに感じた襞。そしてそれが弾ける感触。
(こういう時はゆっくり、時間をかけるべき、なんだよな?)
記憶が無い為、自分に経験があったかという事も不明なラグナは、
とりあえず少なく新しい知識を総動員させた。
そして繋がったまま、自分の胸の中で身を硬くしているリネットの
髪の毛を、あやす様にしばらく愛撫し続ける事にしたのだった。
腰は動かさず、時々、唇を軽く噛むキスを交えながら。
……容赦なくペニスが締めつけられているのがツライけれど。
リネットは、ラグナの指と唇から、自分を気遣っている心を感じ、
胸を熱くした。
強さ、悪く言えば粗暴さと、包み込む優しさは併せ持てる物だとは、
今まで見て来た男性からは感じられなかった。
軍人のプライドという名の無慈悲さばかりを見てきた。そして、自分も
その同族だったのだ。
でも、ラグナは。
剣聖の強さと、荒ぶる魔物とも仲間になれる優しさを持っている。
そういえば、憎い敵であろう自分をも、タミタヤの恩恵を受けられぬ
武器で傷つけるのを嫌った。
自分は国家の為と言う大義名分の基に
躊躇無くその命を、記憶を、カルディアの町を踏みにじったのに。
まさか自分の身に、この様な事が起こるとは。
リネットはこの日二度目のセリフを心の中で呟いた。
まさか、私が。男にこの様に組み敷かれ、支配されようとは。
しかも武力ではなく。完全なる無血で。[…今、流血しているのは別として。]
その上、それを至上の心地良さとして感じている。
入り口辺りに感じていた痛みも、もはや快感に変わった。
(ちょっと待て…私は、被虐趣味でもあったのか?)
少し戸惑ったが、自分とラグナの全てを受け入れてみたくなったリネットは
続きをして貰う為にラグナに瞳で訴えかけた。
…私と言うものの完全なる陥落まで、もう少し…
ラグナは、しどけない表情で自分を見つめてくるリネットに再び心を乱され、
噛み付く様なキスを浴びせた。舌を絡める度にくちゅくちゅと音がする。
そしていつしか、ゆっくりとだがお互いに腰を動かし始めたのだった。
「んッ…んふぅッ…ああん…」
リネットは、内側から大きな物で押し広げられる圧迫感と、最奥を激しく
突かれる快楽に、どんどん溺れていった。
肌が肌を叩く湿った音が、そして自分の膣から漏れる淫靡な音が、
リネットを更に興奮させていた。リネットは自分の細い指先を咥え、
与えられる快感に恍惚とした表情を浮かべていた。
そんなリネットを見てラグナも更に熱を増す。
わざと浅く突き入れて先の部分で壁を擦る。初めて指を入れた時には
まだ硬かった粘膜は、ラグナのペニスの動きに呼応して蠢くほどに
柔らかく、纏わり付く様にほぐれてきた。
また奥深くに沈める。リネットが歓喜の声を上げ、ラグナを強く
締めつける。
二人とも知った事では無いが、リネットは普段の鍛錬の結果、自然に
男を狂わせる様な筋肉の構造の下地が出来上がっていた。
「あっ!!ああぁッ!!ラグナ殿、気持ち、良い…!!んあぁッ!!」
二人はもう、周りの物全てを忘れて淫らな動きを繰り返していた。
リネットは、最初しがみ付いていたシーツから手を離し、自分の乳房を
強く揉みしだきながらラグナの激しい攻めに答えていた。
熱い体はどこに触れられてもヒリヒリ腫れているかのように感じた。
「ぁあっラグナ殿!!離れないで…もっと、ああッあッ!!」
何度も、何度もラグナの名を呼ぶ。
自分の脚を持ち上げているラグナの肩をぐっと引き寄せると、自ずと体を
かなり折り曲げた体勢になる。ペニスが更に深い場所を突いた。
「あんんっ…いい…くふぅ…んっ!」
ラグナの胸板の下でリネットの乳房が円を描いて揺れる。
硬く勃起した乳首がラグナの乳首をかすめる。
(ちょっと、ヤバい。)
ラグナは眉間に皺を寄せつつ、心の中で呟いた。
(リネットさん、まさかこんなに激しいなんて…)
ではどの様な彼女を想像していたかと言うと、特に明確なビジョンは無い。
単純に、普段の様子からはこうなると考えられなかったのだ。
ただ、リネットは陳腐な演技が出来る性格ではない。ラグナは、リネットが
自分を感じてくれている事は真実だ、と確信して何やら嬉しく思った。
(リネットさん…リネットさん…!!!)
じわじわと忍び寄ってくる絶頂の予感に堪えながら、ラグナは規則正しい
リズムで、けれども今までで一番激しい動きで、リネットの子宮を
突き始めた。下腹部や脚に散る飛沫も気に留めず。
「ふ…あああああぁ!!!」
リネットがひと際切なげに喘ぐ。
その瞬間、にわかにラグナのペニスの先をコリコリした粘膜が嬲り、リネットが
大きく背を仰け反らせた。
「ラグナ殿ぉ…わたし………!!!」
全身を痙攣する様に震わせて、リネットは必死に言葉を告いだ。
もう、絶頂が近い。
(リネットさんの、顔を見ていたい…)
ラグナが、仰け反るリネットに視線を合わすように腰を突き上げると、
ペニスが最奥と前庭を強く摩擦し、ラグナの下の繁みとペニスの付け根が
クリトリスを痛いほどに刺激した。
それが呼び水となり、リネットは「登りつめて」しまった。
膣の奥から背骨を伝い脳に至るまで、気を失わんばかりの電撃の様な快感が
走った。
「っ…あ…は…あああ……!!!!!!!」
声にならない声を上げ、リネットはラグナのペニスを今までとは違う感じで
締め上げた。ラグナからすればむしろ、搾られた、と言った方が適当かもしれない。
リネットの中で二箇所も三箇所も、強烈に搾り上げられたラグナは、自分の
絶頂が唐突に訪れたのを感じ、半ば叫ぶように言った。
「出しますッ…リネットさん!!」
力なくこくこくと頷くリネット。それを見届けたラグナは、くぐもった声と共に
リネットの中に大量の精液を放ったのだった。
「ふ…ううぅ…んん…」
先程迎えた絶頂で痙攣していた内部に、熱いしぶきを浴びて、リネットはまた
小さな絶頂を感じた。
腰を少し浮かした状態で中に射精された為、愛液と精液の混合物が背中側にも腹にも
溢れ出た。白い中に赤い物も混じってはいたが、ほんの少しの事だった。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
二人は共に肩で息をしながら情交の余韻に浸る。繋がった部分を離すのが惜しかった。
リネットは閉じていた瞳をそっと開け、自分の支配者・ラグナの瞳を覗き込んだ。
それぞれ色の違う両目はしっとり潤み、普段の気負いも険も、今は全くない。
ラグナは、少し気恥ずかしそうに目を細め、口角を上げるとリネットの瞳を
しっかりと見据えて言った。
「改めて言います。…愛しています、リネットさん。…バレバレかもですけど。」
ラグナはリネットのしなやかな体を抱きすくめたまま、静かな寝息を立てていた。
本当はリネットが先に眠るまで、彼女のほつれた髪の毛を指で梳るつもりだったらしい。
しかし射精後の気だるい疲労と、リネットに指先で愛撫される首筋の心地良さに、
いつの間にか健やかな眠りについていた。
リネットは、とても疲れていたがなかなか眠りにつく事が出来なかった。
「全く、こんな幼い顔をして…」
苦笑しながら、ラグナの堅い胸板をいとおしげに撫でる。
そして、ぽつりと言った。
「私は、本当にバカだ…。」
リネットは、自分からペニスが引き抜かれる前に聞いた「愛しています」の一言を
反芻していた。「私もだ」と言えば良かったのに、胸が一杯で言えなかった…。
ただただ、子供の様に涙を浮かべ、首を何度も縦に振るしか出来なかった。
「私も、ラグナ殿を愛している。」
明らかな真実。引き金であるリンゴはラグナの一言によってリネットの目の前で落ち、
きちんと役割を果たしていた。
「私は、ラグナ殿を愛している。」
そう、本当は、ラグナに人生を変えられたあのグリード洞窟での時点から。
生きろと言われた時から…。
それなのに、女として自信の無い、臆病極まりない私は自分の愛情も
ラグナの好意も、気付かぬふりでやり過ごしていた。
「バカだ…。バカ…。ラグナ殿にきちんと言わなくては…。私の気持ち…。」
いつ、どんなタイミングで言おう。いや、それより、今訪れようとしている朝、
私はどんな顔をしてラグナ殿と向かい合えば良いのだろう。
どうしよう、どうしよう…。
リネットは、そう思い悩むうちに浅い眠りに落ちて行った。
ラグナは、部屋に漂う香ばしい空気に気付き、ぼんやりと目を開けた。
リネットが、いつものかっちりした衣装で台所に立っていた。
初めて聞くリネットの鼻歌。…あまり歌は得意ではなさそうだ。
歩く度にラグナの視線の高さで揺れる尻が、いつもより随分艶めかしく見える。
リネットが踵を返し、こちらに向き直って凛々しい口調で言う。
「起床時間だ、ラグナ殿!!」
…とりあえず、いつもの調子で接する事に決めたらしい。
我ながら、可愛くないな、とは思ったが。
「今、お弁当を作っている。顔を洗って…あ…」
リネットの視線がラグナの股間辺りの盛り上がったシーツに集中した。
男性の、無意識に起こる生理現象。
それを知らないリネットは、昨夜自分を攻めたてたラグナのものと、あの時の
自分の痴態を思い出し、真っ赤に顔を上気させた。
「ん…知らなかったぞ…。ラグナ殿がそんなにも…」
目線を逸らし、らしくもなく何やらごにょごにょと言葉を濁すリネット。
「ち!違いますよ!!??」
何か勘違いされているようなので、ラグナは慌てて言い繕った。
「あの、なんていうか、男って大概そんなモノです!!多分!!」
「そうか、理解した!」
……理解していなかった。というか、勘違いしたままだった。
それから一時間弱、リネットは服を着たまま、ラグナの上で腰を
揺り動かした。
そして、ここぞとばかりに、たくさん、言いたかった言葉を伝えた。
「愛している」「愛している」…
もちろん、オーブンの中のお弁当第一号・アップルパイはその間に
炭になってしまったけれど。
「朝勃ち」の意味を後で説明したところ、強烈なボディーブローを
喰らわされたラグナであったけれど。
まさか自分の身に、この様な事が起こるとは。
リネットは再三、同じセリフを繰り返した。
こんな幸せが。こんなに熱くて激しく気持ちの良い事が。こんな平和が…。
後日談。暖かな風の吹く春の公園での話。
「まぁ、ラグナさんの記憶、戻るものではないのですね…」
ラピスが残念そうに言った。
「そうだ。…私がやったのだ。」
その場にいたラピス・ロゼッタ・トルテ・ミスト・そして当のリネットは
一様に黙り込んでしまった。
沈黙を破ったのはミストだった。
「リネットさん、ダメです。ていうか、ダメダメです★ 貴女がそんなでは。」
「…!!」
ミもフタもない発言だった。しかし、その後に続けた言葉は厳しいだけでは
なかった。
「責任取って、貴女がラグナさんを幸せにするんです。」
それにトルテが答える。
「何か…一般的な言い方と…逆みたいな気がします…。」
「でも、リネットさんがラグナさんの新しい記憶を、しかもとびっきり
楽しい幸せな記憶を作ってあげるって、素敵な事ですね!」
ラピスが口元に手を当てて、上品に微笑む。
「とりあえず、カブの美味しさを教えてあげると幸せになれますよ。」
ミストが本気か冗談か、屈託なく笑って言う。
「カブはともかく、大丈夫なんじゃない?ラグナさぁ、前は好物を聞いても
自分の事なのに首傾げててさ、でも今は
「アップルパイが大好きになりました!」って
嬉しそうに言うのよ?!全くこっちが恥ずかしいわよ!」
ロゼッタが「やってらんないわ!」と言いつつ、目の前のアップルパイを
一切れ取り、ぱくぱくと元気の良いリズムで齧った。
「うん、実際、美味しいのよね。リネットの焼いたパイ!」
ロゼッタの食べっぷりに皆も食欲が湧いたのか、次々とパイが1ピース、
また1ピースと消えていく。
リネットは、その様子を眺めて、皆の言葉を聞いて、ふふ、と穏やかに笑った。
「あ…ラグナさんがこっちを見て…手を振ってます…」
公園の入り口のオブジェの所で、ラグナが鍬を抱えたまま大きく手を振っている。
よく見るとその手には今日作ったヨーグルトが掲げられていた。
リネット的には、ちょっとそれは恥ずかしい。
後々分かる事だが、ラグナが毎日仕事途中に帰ってきてリネットに届ける
ヨーグルトは、その日取れたミルクの一番質の良い所を選んで作った物なのだ。
結婚する前も、してからも。
道理で、いつも同じく美味しい。毎日いつも必ず一つ与えられる幸せノ。
「ほらほら、そんな小さく手を振ってないで!」
ロゼッタとラピスがリネットの手を取り、ぶんぶんと大きく振りかざした。
「ぉ…おい…」
リネットは文句を言おうとしたノが思い直し、その言葉を飲み込んだ。
そして、代わりに数十メートル先で微笑む恋人に大きな笑顔と通る声で
言ったのだった。
「お仕事、ご苦労様ーー!ラグナぽーーーん!!」
リネットを囲んでいた女の子連中は揃って脱力したが、とても幸福そうな
リネットの様子にこれから先の長い人生での幸せも感じ取り、
皆で顔を見合わせて微笑んだのだった。
今日も目に映る、全てのものが、暖かい…。
完