ラグナ&ロゼッタ
ラグナ…。
ミストとラグナが話している姿を見ながら、出荷箱の中身を確認する私。
いつも見る光景が、私の心がその痛みで苦しんでいることがわかる。
私だってラグナと話ぐらいする。
だけど、いつもラグナとミストが話している姿をみて、私から話しかける日々。
なんだか、ミストの楽しみを奪っている気がして、罪悪感が横切る。
ラグナはいつも洞窟でできた、一番できがいいカブをミストに渡している。
ラグナはきっと、きっとミストのことが好きだから、当たり前かも。
ラグナ…。
今も、出荷箱の中身を取りに行って、ラグナと一言挨拶をして、家に戻っている。
お父さんに今日の出荷箱の内容を言い、物を小分けして跡は業者に渡せば今日の作業はこれで終わり。
ご飯の支度までまだ時間がある。
私は何も考えずに、そのままベットに頭を突っ込む。
やわらかい羽毛布団が私の体を沈ませる。
もう、このままずっと寝ていたい…。
ラグナと顔を逢わすだけでも、最近辛くなっているきがする。
無理に笑顔を作って、何もないように装うことなんてもう、嫌。
「ロゼッタさーーーん!!!」
「きゃあ!」
私はいきなりの大声に驚いて、跳ね起きる。
起きた私の目の前にはラグナがいた。
え、海老みたいに背中をそるように跳ね起きちゃったノ。うぅ恥ずかしいよ。
私は一呼吸して心を落ち着かせる。
そのまま私はベットに腰を落として、ッキとラグナを睨めつける。
「い、いきなり脅かさないでよ! びっくりしたじゃない!」
「さっきからすぐそばで、ロゼッタさんロゼッタさんって言ってましたよ?」
「ぅ、いやでも! 女の部屋に音もなく入ってくるなんて!」
「ちゃんとしっかりノックしましたよ。それはもうジェフさんに止められるぐらいぐらいに、ついさっきこってりと怒られましたよ」
「そもそも誰の許可を得て入っているの?! 私、女だけど!!」
「ロゼッタさんに逢いたくて、ジェフさんに許可をもらいましたよ」
私に、逢いに…? ラグナが?
「な何で私に逢いにきたの?」
思わず疑ってしまう。だってあなたはミストのことがノ。
「これをロゼッタさんに渡しにきたんですよ」
ラグナの手には焼きたての焼きとうもろこし。私の大好物。
「うまく焼けたんですよ。食べてください」
「わ、私に?」
「はい。とびっきり良いトウモロコシが手にはいって、ついつい張り切っちゃいました」
「め、めずらしいじゃん。ありがと」
私はラグナから焼きとうもろこしをいただいた。
うわ、すっごい大きい焼きとうもろこし。
ずっしりあって粒がすっごい大きい。
む、ご飯前だけど、これは食べたいかもノ。
じっとラグナは私を見ている。
…そんなに、見つめないで。あなたが見つめていいのは、ミストだけでしょ?
「あの、何? 見られていると恥ずかしいんですけど」
「ごめんなさい。で、できれば食べた感想がほしんですよ」
少し赤みをましたラグナは、独り言のように小さく言った。
「ちょっと顔赤いけど、もしかして風邪?」
ぐっとラグナに私は顔を近づけて様子をみう。
「え、いや大丈夫です!! 元気ですからほら、是非食べてください!」
「ノなんか怪しいな。っま元気そうだし、ありがたくいただきます」
本当は大きな口でかぶりつきたけど、ラグナがいるから恥ずかしいから見えないように気をつける。
…そんな心配はいらなそうね。このとうもろこし、顔の半分ぐらい隠れるぐらい大きい。
それでも気をつけて小さく口をあけて、焼きとうもろこしを食べた。
一口に含んだだけでもわかるこのおいしさ。
甘いバターとひとつひとつ粒が大きいコーン。
一度茹でてバターをぬって焼いてまたバターをぬって焼くという二度焼き。
しっかりと焼いてあるけど、粒の形を崩してないから、じゅわっと口いっぱいにトウモロコシのうまみがあふれてくる。
「どうですか?」
嬉しそうに私の顔覗き込むラグナの顔。
とっても美味しいはずの焼きとうもろこし。
だけど、ラグナの顔をみたら、涙が私の頬を優しくなでた。
「あ」
思わず声がでた。
「ロゼッタさんどうしました?!」
私を心配してくれるラグナに、さらに涙が出そうになった。
ぐっと力を入れて堪える。
ラグナはミストのもの。だから甘えたくない。
「もう、ラグナ! おいしすぎよこれ!」
「・・・へ?」
「このひとつひとつ粒がそろっていて尚且つでかいし、この絶妙な焼き加減! もうこれすごすぎ!!」
「え、あ。はい。ありがとうございます」
ちょっと言い過ぎちゃって引いちゃったかな。
「もーおいしすぎて、涙出ちゃったし」
私は嘘っぽく大げさに言って、涙をぬぐう。
「けどようやくロゼッタさんが、僕が作ったものを食べてくれて嬉しいです」
「へ? ようやくってもってきたのこれが初めてじゃない」
「いつも出荷箱を取り行くロゼッタさんに、イチゴとか渡してましたけど、ロゼッタさん出荷箱にいれちゃうですよ」
え。そういえば、出荷箱の中身確認しているときって、集中しちゃってて周り見てないことが多い。
そんなことしちゃってた?! 私!?
「そ。そうだっけあははは」
うかつ私・・! せっかくラグナが作ってきたのに、なんてことしちゃってたんだろ…。
「これからもっといい焼きとうもろこし作ってきますね」
「あ、うん。がんばってね。期待しているよ」
「はい! それはもう毎日しっかりともってきますね」
ラグナは嬉しそうに返事をする。
毎日…? このでっかい焼きとうもろこしを?
「…私を太らせる気?」
う、と唸って困るラグナ。
「そ、そんなわけじゃないですよ! ただ美味しそうに食べるロゼッタさんをみたいだけですよ!」
「それを太らせるっていうのよ!」
「あ、すいません! すいません!」
本気でラグナは頭を下げる。
「うふふっ。冗談冗談だよ」
私は思わずラグナのかわいらしさに笑ってしまう。
「っま。期待しているわよ」
「はい。いい焼きとうもろこしをもってきます」
私は時間を見る。ご飯仕度までまだまだ時間がある。
「それじゃあもう少し畑を耕してきます」
もう行っちゃうの…?
「うん。すこし早いけど、おやすみ」
「おやすみなさい」
ラグナは私の部屋から出て行った。
流石にでかいけど、ご飯までまだ時間あるから、食べちゃおっと。
やっぱりおいししい。
たぶん、大きさとか作り方とかじゃなくって、ラグナが作ったおいしんだと思う。
ベットの上で私はラグナがいなくなった場所を見る。
「ねえ、ラグナ。あなたが誰かを好きになったら、私は何も変わらずあなたに笑顔をあげるわ」
一口、焼きとうもろこしを食べる。
「そう、何も変らない笑顔だよ。無理やり作った泣きそうな笑顔」
おいしい。おいしすぎるよ。
「私はね。ホワイトストーンの伝説は憧れているのは知っているよね」
小さいころ、毎日図書館に行ってご飯になるまでよんでいたっけ。
「いつかあの伝説のように、私も幸せになりたいの」
あまりにも熱心に読みすぎて、本をボロボロにしちゃったっけ。
「だけどね、ラグナ以外。ラグナしかホワイトストーンは絶対に受け取らないわ」
お父さんにこってり怒られて、必死にお手伝いして新しい本を仕入れてもらったっけ。
「だって、もう、私はあなた以外の人を好きになれないからノ」
それからなんか、その本を読むのが恥ずかしくって、もう図書室でその本を読んでないよね。
「ごめんね。ごめんなさい。ごめんなさい、素直になれなくって、ごめんなさい」
また涙が、優しくなだめるように優しくなでる。
また一口。
少ししか食べてないのに、胸が一杯になってくる。
さっきからもう涙が、止まらないよ。ねぇ、ラグナ…。
目をこすり、もう一度ラグナがいた場所を見る。
そこには当たり前だよね。ラグナの姿はいない。
いつもどうりにあの素敵な笑顔とともに、私に挨拶をするラグナが私の頭をよぎる。
いつかしらないけど、あふれ出ていたこの気持ち…。
「ありがとう。ありがとう、私の大好きな ラ グ ナ 」
私は焼きとうもろこしを胸に体を丸めて、静かに泣いた。