タバサ独白→ラグナ
カルディアの街の外れにある牧場の片隅に墓がある。
今その前に一人の女性がいる。
ラグナ様、貴方が旅立たれてから幾度目の春でしょうか。
近頃昔のことをよく夢に見ます。
夢の中の貴方はあの頃、出会った頃のままで、ジャコリヌ様やお嬢様、それに街の人たちも。
ふふ、ご存知ですかラグナ様、貴方がお作りなったルーンブレードとルーンシールドは
今ではノーラッド王国騎士団の団長に代々伝えられる国宝になっています。
それに関係しているのかは知りませんが、私たちの家にはよく騎士見習いの方がやってきます。
勇者ラグナの暮らした家というのは彼等にとっては聖地だそうです。
ラグナ様、今では貴方たちのことを語り合えるのはセシリアとだけです。
彼女はいたいけな少女の頃からは考え付かないほど(勿論あの頃は可愛らしかったという意味ですよ)お綺麗になりました。
今でも時折街の若者にプロポーズされています。
もっとも毎回すげなくふっていますが。
ええ、セシリアはニコル様のプロポーズ以外は受付ないということです。
勿論、私もラグナ様以外からの殿方からのプロポーズは断っていますよ。
ラグナ様、貴方にプロポーズされてからの日々は毎日日向にいるような暖かさでとても幸せでした。
ラグナ様、いえ、あなた……、私さびしいです。
あなたも、あなたとの子供も、私たちの孫も、私を置いていってしまう。
寂しいです。
こんな気持ちを味わうなら、人に交わらなければよかったと何度思ったことでしょう。
ええ、ええ、けれど……交わらなければあなたと会えなかった。
大丈夫、あなたとの思い出、お嬢様との思い出、街の人との思い出、全てを抱きしめて私は生きていきます。
この身が朽ちて、あなたに会いにいけるまで。
ノーラッド王国に属する街の一つカルディア。
その街の外れに牧場が存在する。
その牧場こそ、かつてゼークス帝国の侵略を退けた勇者ラグナの牧場である。
そこには今でも、ラグナと愛を交わしたエルフが住まい、訪れるものに勇者ラグナの真実を語っている。