カイ×クレア(未)

指折り数えてこの日を待っていた。
恵みの春だというのに半ば頃には気も入らずにろくに仕事もこなせなかった。
クレアがほとんど眠らないまま、長い夜はようやくあけて、朝日が昇る。
今日は一年ぶりにカイがこの街へと帰ってくる約束の日。
待ちに待った季節がはじまろうとしていた。
ようやく白みかけてきた外の様子を窓からぼんやりと眺めていたクレアはいてもたってもいられずに、
弾かれるように家を飛び出した。
カイが戻ってくる。
閉鎖的なこの街にとってそれは一大事であるがクレアにとってはもっと、
それ以上の意味を持つ日だった。
船が着く時間まではまだ随分と間があるがそれでもいい。
昨日まで潮の匂いと波の音は彼を思い出させて辛いものだったが今日は違う。
彼の匂い、彼と聞く音。久しぶりに再会したらまずは何を伝えよう。
気持ちばかりがはやり、それに考えを巡らせるだけで、彼の到着を待つ時間を過ごせそうだった。

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