ラグナ×フィル


ふっくらとした三日月が、星を引き連れ水平線から顔を出す。
それは水面を照しながら、するすると空へ昇っていく。
漂う雲の塊の、流れる隙間に見え隠れしながら、涼しげな月明りを浜辺に落としている。
その小さな浜辺は、時に暗く、あるいは砂に波に光を受けてまばゆく、波音だけを音楽に、静けさを保っていた。


そんな浜辺に細長い影が一つ。
常連の釣り客である。
低い月が、釣竿を携え只でさえ長いその影を、どこまでも伸ばしている。
釣り人──ラグナは、立ち止まって浜辺を見渡す。
この時間は、町の大人達は皆酒場だ。
しばらくの間は、まさに自分だけの空間。
ここで風景に溶け込むようにして釣糸を垂れるのだ。
ラグナは時折、自分の趣味の良さに身震いするのだった。
しかし実のところ、夜釣りのつもりがゴミばかり釣り上げ、結果として浜辺の美化で終わっていたり、獲物と騒がしく格闘し、静寂を台無しにしたりと、あまり望むような結果にはならないのだった。

ラグナは目をつむった。
月の光を浴び、波音を聞いた。
ラグナ自身も内心、求めるシチュエーションが得られないことを認めていたので、その分までこうして雰囲気に浸るのだった。
気持ちのいい風が、さらさらと前髪を弄びながら流れていく。
波音に包まれ、浮遊感に我を忘れる。


「こんばんは」
後ろから声がした。
静寂を守ったまま、自分の存在を知らせるための、控え目で穏やかな声。
ラグナは驚いて我に返る。
振り向くと、フィルが立っていた。
栗色の長い髪が風を受けて、ゆったりとはためいている。
こんなに遅くに、珍しいことだ。
にっこりといつもの笑顔でラグナを見つめている。
長い髪が、白い肌が、光を受けてやわからく輝いている。
その笑顔も、月明りの元で神秘的にさえ感じられた。
「ああ、フィルさん、こんばんは」
ラグナは、自分の行いを咎められたような気がして、また、フィルのいつもと違う雰囲気に、少し緊張していた。
「綺麗ですね」
フィルはラグナと並んで月を眺める。
「ええ」
ラグナはこっそりとフィルの横顔を見る。
フィルは楽しそうだ。
月や雲を、白く波立つ水面のいつもと違う夜の情景を、興味深く眺めていた。
同じ年代の娘と比べても随分おしとやかなフィルだが、その笑顔は近くで見ればあどけない。
彼女が元気になってから、会う度ラグナに向けてくれたあの笑顔だ。



ラグナの視線に気付いてか知らずにか、フィルは海の方へ歩き出した。
ラグナはそれを黙って見ている。
フィルは波打ち際まで行って、立ち止まった。
暗い色の髪と闇夜が溶け合うように、その輪郭をぼんやりとさせた。
フィルは月を見るでもなく、真っ直ぐ前を見ている。
そのうちに、さらに一歩踏み出した。
水面を破る音が辺りに響いた。


ラグナは驚いたが、海に入っていこうとするフィルの、足下の波立つのが月明りで輝く様子に見とれてしまっていた。
さらに一歩、二歩と進んでいく。
それでもフィルは楽しそうにしている。
今にも笑い出しそうだ。
「フィルさん……?」
ラグナははっとして、波打ち際まで駆け寄った。
何だかフィルがそのまま海へ入って行ってしまうのではないか、と心配になったのだった。
フィルは、ラグナの声に応えるように振り向いた。
足下に纏わりつく波を覗き込むようにして見る。
そしてそのまま膝を曲げ……、海の中に、腰まで浸かるようにして、座り込んでしまった。


「え……」
ラグナは口を開けて、ただ突っ立っている。
白いスカートが、水面に花のように広がる。
それが波にとらわれ、揺れる陰に、細い太股が見え隠れしている。
フィルは流れる水面に指をさし入れ、波を梳くようにしながらラグナを見つめ、
「濡れちゃった」
と笑った。
「だ、だめですよ、フィルさん!」
ラグナは釣竿を投げ捨て海に入り、フィルを抱き起こした。
また体調を崩したら心配だ。
足を入れると、海の水は、ひんやりして気持ち良かった。
「ふふ、ごめんなさい」
フィルが立ち上がると、濡れたスカートが彼女の太股のあたりにぴったりと張り付き、肌が透けて見えた。
「うわ!」
ラグナは動揺して、とりあえず目を逸らした。
フィルはそんなラグナの手を取り、砂浜の方へ歩き出した。
後ろから見ても、やはりスカートが尻に張り付いてすごいことになっていたので、ラグナはできるだけ見ないようにして付いていった。


ラグナは階段の陰まで連れていかれ、フィルはそこで、水を吸って重くなったスカートを太股から剥がし始めた。
「どうしてあんなことしたんですか」
「……どうしてでしょう?」
ラグナは真面目に聞いたのだが、フィルは相変わらず機嫌良さそうににこにこしている。



「なんだか……、嬉しくなったからでしょうか」
「嬉しく?」
「ええ、嬉しいことが起こりましたから」
「夜の海が綺麗だったからですか?」
「そうかもしれませんねえ、でもそうじゃないかもしれません」
と、はぐらかす。
フィルはスカートの端を引っ張りながら、
「何だか変な感じです」
と、裾をたくし上げ、その中に手を突っ込んだ。
「!?」
細く、白い太股が露になる。
「な、何してるんですかっ!」
ラグナは必死に見ないようにしながら訴えた。
「ん〜……」
フィルは、足に張り付く下着を丁寧に下ろしていく。
下着が足から抜けると、今度はスカートをまくり上げ、纏うものの無くなった秘部を自分で観察し始めた。
ラグナは両手で顔を覆い、よく分からないことになっている。
「ラグナさん、もう大丈夫ですよ」
それを聞いてラグナが目を開けると、スカートはまくられたままで、全く大丈夫ではなかった。
「な!ちょっと!」
再び顔を覆うラグナの手を、フィルがぐいぐいと引きはがす。
「ラグナさん……」
今度は熱っぽい表情で見つめながら、さらに近付いて来る。
「え、え……」
そのまま口を付ける、というより、ラグナの口に覆い被さらんばかりの濃厚なキスをする。
時折よだれが音を立てる。
ラグナの股間はとっくにその気になっていたが、フィルはそこに自分の秘部を擦りつけてくる。
「ん……っぐ、ぅ……」
よだれを吸い上げながらも、時折、腰の動きに合わせて切なげな細い声を出す。
突然の出来事に、ラグナは気を失わんばかりだった。
何とか状況を理解しようとするが、口や股間を襲う快感に、とても頭は回らない。
目を開ければ、気持ち良さそうに目を細めるフィルが視界一杯に入ってくる。
フィルのこんな表情は見た事がなかったが、とんでもない破壊力だ。
「ぷは」
やっとフィルが息継ぎをした。
ラグナも快感と息苦しさから開放される。


「はぁ、ごほっ、フィルさん……どうしてこんな……」
フィルも息が荒い。
「うふっ……、ラグナさん、どうでした?」
「え、いや……びっくりしました」
「気持ち良かったですか?」「え」
「ラグナさん……」
「や、それは……」
さすがに、「すごかった」とは言えない。
口ごもるラグナを見て、フィルは不満そうだ。


フィルはおもむろに膝をつき、疲れて壁に寄り掛かるラグナのズボンに手を掛けた。
「わ!フィルさん!だめですって!」
ラグナは必死にフィルを止める。
「だめですか?」
フィルはラグナを見上げる。
「だめです!これ以上は……」
「ここまでしたのに……だめなんですか?」
「だって、それは……」
「本当は、ずっと嫌だったんですか?」
「いや、そういう訳じゃ……」
ラグナはうろたえる。
フィルは、今だとばかりにラグナのズボンを下ろした。
ラグナのものが勢いよく飛び出す。
「わ……、んふふ……」
「フィ、フィルさんっ」
フィルはラグナのものをじっと見つめている。
「んむぁ〜」
口を開ける。
「だめ……!」
ラグナは必死に拒んだが、フィルは全く気にせずにそれを口に含んだ。
「あ!」
「んん〜っ」
フィルはそれが自分のものと言わんばかり、よだれを塗りたくるように口を動かした。
「うぁ、あ……」
よがるラグナを嬉しそうに見上げながら、フィルは口を動かす。
いやらしく水音を立てながらフィルが口を動かす度に、口の端からよだれが溢れ、だらだらと滴り落ちていく。
それは首筋を伝い、襟元に大きな染みをつくっていた。
ラグナは腰から力が抜け、しびれるような快感に膝が折れそうになるのを何とか堪えていた。


「フィルさんっ、僕、もう……っ」
ラグナは限界が近付いていた。
それを聞き、フィルが口を離す。
フィルはよだれを拭い立ち上がると、
「それじゃあ……、今度はこっちですね」
と言い、もう一度スカートを上げた。
「え……」
「出しちゃいたいですよね?」
「あ、の……」
「ねぇ、いいでしょ……もっと気持ち良くなりましょう……」
そう言うと、片足を開くように持ち上げた。
膝から下に砂が付いているのがいやらしく見えた。


ラグナの目の前にいるのは確かにフィルだ。
しかし、こんなにいやらしい格好や粘っこいしゃべり方をする娘ではなかった。
ラグナはもう、起こっていることの現実感の無さに、正気を失っていた。
「ラグナさんのを、わたしに下さい……」
フィルが誘う。
ラグナは言われるまま、本能のまま、フィルに襲いかかった。
腰を抱えるようにしてフィルを持ち上げ、それを突き刺した。
「あ、ぁ!あはっ……」
フィルの体が壁に打ち付けられる。



ラグナはフィルを壁に押し付けながら腰を乱暴に動かした。
フィルの秘部はラグナに犯され、震えるほどに責められながらも、ラグナを自らの奥深くまで取り込もうとした。
その中で動きを阻む様な締めつけに耐えながら、ラグナはフィルを突き続ける。
「あ、はっ、はぁっ、……」フィルは手も足も投げ出して、ラグナに揺さぶられた。
腰の動きに合わせてフィルの足が大きく揺れる。
グチュッ、グチュッ、と水音が、合わせてフィルの荒い吐息が、浜辺に響く。
「あ、あ、もっと、ラグナさ……あ、あっ!あああぁんっ!あぁっ!」
フィルの声が大きくなってきた。
彼女からは聞いた事が無いくらいの大きな声だ。
絶頂が近付いているのだろうか、締めつけもさらに強まってくる。
「ああぁー!ああーっ!」
腰を引く度、突き出す度、腰が抜けそうな快感に襲われる。
それでもフィルの声につられて、腰の動きは早く激しくなっていく。
「あああぁ、しゅごい、もっと、もっとやって、あ、ああ!」
ラグナにも限界が来ていた。
「フィルさん、もう、僕、うあ、ぁっ!」
「ああぁ!いいです、わたしに、全部出して!ああ!ああああぁぁーっ!」
そうして、二人とも絶頂に達した。
事が終わり、脈打つフィルの秘部から溢れ出した精液が、砂浜に滴り落ちた。



「ラグナさん……、すごい、気持ちよかったです」
フィルが息を整えながら、ラグナに呼び掛ける。
フィルは壁に寄り掛かるように座って、ラグナは砂の上に仰向けになっている。
「はい……」
二人とも乱れた服を直しもせずに、余韻に浸っている。
と、フィルがラグナに擦り寄り、ラグナのものをしごき始めた。
「ちょ、ちょっと、フィルさん?」
「もう一回、しませんか?」「そんな、僕もう……」
そう言いながらも、それは再び勢いを取り戻す。
それを見ると、フィルは嬉しそうにラグナにまたがった。
もの先に自らの秘部をあてがうと、ゆっくりと腰を下ろした。
「あ、ああ、気持ちいい……」
ずぶずぶとそれは飲み込まれてゆく。
「あはっ、すごい、入っちゃいますよ、ラグナさん……」
「もう許して……」
「もう一回、ね、もう一回だけ〜、あ、あぁっ……」
そうして、夜は更けていく。



おわり

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