ヴァルツ×チェルシー(+ジュリア少々)
「こんにちは、ヴァルツさん!」
朝一番、動物屋のドアが元気にあけられた。
今日も懲りずにチェルシーがやってくる。毎度のこととはいえ、ヴァルツは
うんざりしたような顔をして、チェルシーを見る。しかしチェルシーはそんな
視線にも慣れっこなのか、一向に気にする様子もなく、いつものように牛乳瓶を
一本差し出す。
「これ、うちで取れた牛乳です!飲んでください。それじゃ!」
強引に牛乳瓶を押し付けて、チェルシーは駆け足で動物屋をあとにした。
持たされた牛乳瓶は冷たく冷えていて、喉が渇いていたヴァルツは一気に
飲み干した。濃厚でありながら喉越しがよく、それはおそらく彼女の牛への
愛情がなせる業だろう。
「アンタって、ホントにガキねえ」
台所で朝ごはんの準備をしていたジュリアが、笑いながらこちらにやってきた。
「オレのどこがガキだというんだ」
ムッとしてジュリアを睨みつけるが、ジュリアは怯むことなく腰に手を当てて
ヴァルツの帽子の下の表情を覗き込もうとする。
「嬉しいなら、素直にありがとうっていいなさいよ」
「オレは別に…感謝などしていない。ただ、喉が渇いていただけで」
「あらそう。あんまり意地張ると、他の子にチェルシー取られちゃうわよ」
「関係ない」
「意地張っちゃって。この間、あの子の牧場にマルクが来て、熱心に
話していたわよ」
そう言って再び朝食の準備に戻りかけたジュリアを、ヴァルツは追って
背後から抱きすくめた。
「こーら、離れなさい」
抗うジュリアをさらに強く抱きしめ、ヴァルツは耳元に甘い息を吹きかけた。
とたんにジュリアがびくんと反応する。
「オレのどこがガキだって?」
「朝から…、あっ、こんな、ことするのが…ガキだっていうの…んんっ」
ヴァルツはジュリアの豊満な乳房に手を回し、ゆっくりと揉む。ジュリアの胸は、
服の上からでもその存在感を主張する。ジュリアの声が、ため息で切れ切れになる。
「やめて…母さんが戻ってきたら…」
「マセルは隣で長話だろう」
ヴァルツがうなじを嘗め上げると、ジュリアは溜まらずシンクのふちに体重を
かけ、倒れそうになるのを防いだ。が、背後からのヴァルツには、おあつらえ
向きの格好である。のしかかるように背後から覆いかぶさり、手は双乳を弄び、
足はジュリアの両足を押し広げて割り込ませる。
「ダメだってば…っ、あッ!あぁ…ン!」
「隣のお坊ちゃんは、こんなことしてくれないだろう?」
「エリクは…そんな人じゃないもの」
ジュリアはエリクの気弱な笑顔を思い出し、顔を赤らめた。ヴァルツとこうした
関係を持っていることを、彼は知らない。知ったら軽蔑するだろう。でも…。
服の上からの愛撫だけで、すでに乳首はピンと立ち、ホットパンツの中に割り
込ませた指は、湿り気を帯びている。
「オレがこうしてたまにガス抜きしてやらないと、お前だって困るだろう?」
背後から自分の蜜で濡れた指をくわえさせられ、ジュリア思わず舌を使って嘗め
あげた。ヴァルツはいったん体を離して、ジュリアを正面に向かせた。愛撫で力が
入らないのか、シンクに寄りかかったままであるが、抵抗する気もないのか、
瞳はとろんとしている。
近づいて唇を重ねると、最初から積極的に応えてくる。ジュリア自ら舌を伸ばし、
強引にヴァルツの舌と絡ませてくる。
「あふぅ、ん、んんっ」
キスをかわしつつ、ヴァルツは慣れた手つきで羽織っていたシャツを脱がせ、
Tシャツを捲り上げた。形のよい乳房があらわれ、ヴァルツはツンと尖った乳首を
口に含み、空いた手でホットパンツのファスナーを下げ、下着もろとも剥ぎ取った。
ジュリアはただひたすら、ヴァルツの愛撫を全身に受け、陶酔しきった表情で
与えられる快楽に身を任せている。
口では年上ぶっていても、いざ体を重ねると、ジュリアはひたすら従順な女性である。
ジュリアの秘所は、すでにあふれ出した蜜が下着を濡らし、太ももを伝って床に
落ちそうな勢いである。指を入れても何の抵抗もなく、二本・三本と呑み込んでいく。
「ああ…っ!だ、ダメェ!そんな、いきなりィ…」
ジュリアは体を仰け反らせて叫び、ヴァルツの首にしがみついてきた。ヴァルツは
素早く自分のモノを取り出し、ジュリアの片足を高く抱え、すっかり受け入れ態勢の
整っている秘所に差し込んだ。
「んんぅーっ!ん、んんっ」
眉を寄せ、声を漏らすまいと唇をかみ締めているが、怒涛のように押し寄せる快楽に、
次第に堪えきれなくなっていく。ジュリアはヴァルツの首を掻き抱き、足を絡ませて
より深い結合を望んだ。
ヴァルツはジュリアにのしかかるように体重をかけ、激しく体を動かす。そのたびに
結合部から水音が響き、飛沫が床を、二人の肌を濡らす。
「も、ダメ…お願い、早く、一緒に…」
ジュリアの求めに、ヴァルツは再び腰の動きを早めた。ひときわ深く突き入れると、
ジュリアが声にならない悲鳴を上げる。ヴァルツは爆発する寸前にそれを抜いた。
一瞬ジュリアの顔にチェルシーの顔がダブった。ぎくりとして猛っていたものが
一気に萎れてしまいそうになる。
と、ジュリアが手を伸ばし、口にほおばる。ざらりとした舌での愛撫と生暖かい
口内の感触に、萎えかけていたそれは再び力を漲らせ、ヴァルツは一気に欲望を
爆発させた。
「んんっ!」
ジュリアは一瞬顔をしかめたものの、それでも喉を鳴らして全てを飲み込んだ。
中には出さない、というのが恋人ではない男女の決めた暗黙のルールであった。
そんなことで恋人への貞節を示そうとする女も女だが、それを受け入れてしまう
男も男であった。
しばらくは気を失ったかのように床にへたり込んでいたジュリアだが、服を調え、
床に飛び散った情欲の名残を布巾で拭っていく。そんな後姿に、ヴァルツはいつも
罪悪感を感じていた。
どちらから言い出した関係でもなかったが、ヴァルツは確かに行き場のない己の
欲望の処理にジュリアを利用しているのだ。
「ジュリア、その…」
「いいのよ。あたしだって、同罪なんだから」
ジュリアは立ち上がり、小さく微笑んだ。
「あんたの言うとおり、ガス抜きしないとおかしくなっちゃうのよ。あたしって、
そんな女よ」
「そんなことない。その、ジュリアは、素晴らしい女性だ」
「馬鹿ね。あたしにお世辞言うなら、チェルシーに言ってあげなさいよ」
そしていつものように、年上ぶってヴァルツの頬を指ではじいた。
「あの子なら、あんたが悪ぶってるだけで本当はとってもいい子だってこと、
知ってるわよ」
数日後、ヴァルツは夕方の闇にまぎれてこっそりとチェルシーの牧場に向かっていた。
別に、ジュリアに言われたからではない、ただ、牧場ってのはどんなものなのか興味が
あるだけだ。誰に聞かれるわけでもないのに、自分にそう言い訳して。
出会って二年ほどになるが、動物屋や海岸、森林で会うことはあっても、彼女の牧場に
足を踏み入れたことはなかった。
足を踏み入れるのが、怖かった。あの無垢できらきらした瞳に見つめられるのが怖かった。
自分の虚勢を、強がりを見抜かれてしまいそうで。
初めて会った時から惹かれていた。元気で健康で、明るく屈託ない少女。そんな彼女に自分は
相応しくないとあえて距離を追いてきた。だが…。
牧場まで続く坂道を登りきると、目の前には広大な畑が広がっていた。緑と土の匂いが風に
乗ってヴァルツを包んだ。昔懐かしい匂いだった。
整然と並ぶ果樹。柵の中には動物たちが放牧されており、季節の野菜が緑鮮やかに収穫を
待っている。
ヴァルツは、呆然とその景色に見とれた。これをたった一人で作り上げたのだろうか。
彼女の細い腕で。笑顔の裏に苦労を隠して…。
と、遠くから犬のうなり声が聞こえてきた。それと重なるように、か細い悲鳴も
聞こえる。チェルシーの悲鳴だと分かるや否や、ヴァルツは走り出していた。
前方の柵が一箇所朽ちており、そこから野犬が侵入したようだった。チェルシーは
鶏を数羽抱えて、地面にへたり込んでいた。
「チェルシー!」
「ヴァルツさん!?どうして…」
ヴァルツはチェルシーと野犬の間に割って入り、腰のロープを鞭のように
しならせて地面を叩いた。
「出て行け!ここは貴様のいるところではない!」
ヴァルツの気迫に押されたのか、野犬は小さく鳴いて尻尾を丸めて柵の外に
飛び出して行った。
「大丈夫か、チェルシー」
「わ、わたしは大丈夫だけど、この子たちが怯えちゃって…」
「一日小屋に入れておけば大丈夫だ」
チェルシーは、信じられないといった表情でヴァルツを見上げる。
「…たまたま通りかかっただけだ。小屋は、あそこだな」
素直になれないヴァルツは、チェルシーの腕の中で怯える鶏を受け取り、小屋に戻した。
と、柵の修理をしているチェルシーの足が真っ赤に染まっているのを見て、ヴァルツは
仰天した。
「おい!その怪我…」
「あ、転んだだけなんで、大丈夫です」
「大丈夫なわけないだろう!」
ヴァルツはチェルシーを抱え上げ、家に上がりこんだ。明かりの下で見ると、
左膝を強打したらしく泥と血で、白い足に赤黒いいく筋もの線が流れていた。
「こういう怪我から破傷風になったりするんだ。お前は女の子なんだし、
せっかくの足に傷でもついたら嫌だろう」
強引にチェルシーを座らせ、説教じみたことを呟きながら手当てをする
ヴァルツだ。
「ヴァルツさん、牧場をやるのにこのくらいの傷なんて怖がっていられないよ」
良く見ると、チェルシーの足にはいくつものかさぶたやあざがある。だが、
その傷跡は彼女を汚すどころか、まるで勲章のように光っている。
「チェルシー…」
ヴァルツは、思わずチェルシーの傷に唇を這わせた。
「きゃ…!ヴァ、ヴァルツさん、何を…」
「お前は、すごいな。オレは今までお前の何を見てきたんだろう」
「…じゃあ、今のわたしを、よく見てください」
震える声でチェルシーが言い、両手を伸ばしてヴァルツの指に絡めた。指も、
震えている。
「わ、わたし、わたしずっと、ヴァルツさんが好きでした」
「知ってる…」
ヴァルツは震えるチェルシーの指を強く握り締めた。
「オレもお前のこと、ずっと好きだった」
「し、知りませんでした」
顔を真っ赤にしながら馬鹿正直に答えるチェルシーが愛しくて、ヴァルツは
堪えきれずに立てひざをしたままチェルシーにキスをした。
チェルシーの唇は甘く柔らかく、ヴァルツは貪るように求めた。チェルシーは
戸惑いつつも懸命にヴァルツを受け入れる。彼の舌の動きに合わせて、自分も
ぎこちなく舌を絡ませてみる。必死なものだから、気持ちいいとか感じる余裕も
ないようだ。
「いいんだチェルシー、オレに任せていればいいから」
必死さのあまりなみだ目になっているチェルシーの耳元で囁いて、ヴァルツは
お姫様抱っこしてチェルシーをベッドに運んだ。
壊さないように、包み込むようにそっと覆いかぶさって、ヴァルツはチェルシーの
体中に唇を這わせた。丸みを帯びた頬、細いうなじ、美しくえぐれた鎖骨、
かすかに土の匂いのする指。そのたびにチェルシーは小さく声を上げ、次第に息を
弾ませていく。
シャツの上からそっと胸に触れると、釣り上げたばかりの魚のように体を反らせる。
「す、すまん。嫌か?」
「ちょこっと、驚いただけです。大丈夫。大丈夫だから続けて…」
そう言って、チェルシーは自らシャツを捲くり上げ、下着をずらしてヴァルツの手を
誘った。チェルシーの胸は年頃の少女にしてはいささか小ぶりではあったが、形も
整っており、触れると吸い付いて離さないほどの弾力だった。堪えきれずに片方の乳房を
手でまさぐり、もう片方の乳房に下を這わせ、赤い実のような突起を口に含んだ。
「あぁ…ん!」
チェルシーの口から切ない声が漏れ、宙を掴んでいた手が、ヴァルツの背中に回された。
二人はぴったりと隙間なく重なるように抱き合う。まるで、はじめから一つだったかのように。
ヴァルツの無骨な手がチェルシーの乳首をこね回す。はじめは平たかった乳首が、
愛撫によって色を変え、形を変える。乳輪そのものも膨れあがり、乳首も天に
向かって自己主張を続ける。
存分に胸元を堪能したヴァルツは、愛撫を重ねながら手を下に移動させた。
最初は堅く閉じられていたチェルシーの両足もすっかり弛緩し、愛撫される
まま足を開いて行く。
下着越しに秘所に触れるとかすかに湿気を感じる。チェルシーはもどかしそうに
両足をこすり合わせている。初めての感覚なのか、自分の中でどう折り合いを
つけていいのか分からないようだ。
ヴァルツは下着を覆うかのように掌で秘所を包み込み、そのままゆっくりと
上下にさすった。
「あぅ…っ、ん、んんぅ」
チェルシーが眉を寄せて初めての感覚に身を任せる。しばらく続けて行くと、
下着がじっとりと湿ってきた。そろりと指をもぐりこませると、そこは飽和の
一歩手前だった。
「やぁ…、ヤダ、んんっ、んんーっ!!」
子供のように手足をばたつかせるチェルシーだったが、やや強引に指を一本
蜜壷の中に差し入れると甲高い悲鳴を上げた。指の挿入は初めてなのか、
一本でもぎゅうぎゅうと締め付けられるほどキツイ。
「んぅ、んん、あぅ…」
指の出し入れにあわせて、体がびくんびくんと反応する。すがるものを掴むように、
チェルシーはヴァルツの首にしがみついてきた。
「イヤ…変になっちゃう。これ以上は、ダメ…ッ!」
「ヘンじゃない。当たり前のことなんだから、怖がらなくていい」
出来るだけ優しく語りかけ、頬に、唇にキスをする。チェルシーも積極的に答え、
不器用ながらも自ら舌を出して求めてくる。ヴァルツは高まる鼓動を抑えきれずに
指の動きを早める。
「あ!あ、あぁっ!ダメ、もうホントに、ダメ…ダメぇ…っ!」
悲鳴を上げ、チェルシーが糸の切れた操り人形のようにベッドに崩れ落ちた。
静かな部屋には、二人の荒い息だけが聞こえてくる。チェルシーは気を
失ったかのように目を閉じているが、ヴァルツは痛いほどに猛ったものを
開放すべく、素早く衣服を脱いだ。
「チェルシー」
優しく声をかけると、うっすらと目を開ける。まだ陶然としており、反応が鈍い。
「触って」
己の猛った分身に、チェルシーの手を誘う。彼女の温かい掌の感触に、さらに
ボルテージが高まる。それを握らせ、ゆっくりと上下させる。だんだん覚醒してきた
チェルシーは、己の行為に驚き手を離そうとしたが、ヴァルツはそれを止めた。
「続けて。こうしていると、気持ちいいんだ」
「気持ち…いいんですか?」
こわごわとチェルシーが行為を続ける。次第に手がぬるぬるとした液体に覆われる。
ヴァルツも深くため息をつき、己の限界が近いことを悟った。
必死で続ける手を止め、足を開脚させる。真ん中に割って入り、狙いを定めて己の
猛ったものをチェルシーの蜜壷に当てた。
「ちょっとだけ、我慢して」
もう彼女を思いやる余裕などなかった。ヴァルツは性急に彼女の中に進入した。
「んん…ッ!!」
指の異物感とはまったく違う、激しい痛みがチェルシーを襲った。思わず身を
よじろうとするが、ヴァルツは全体重をかけてのしかかっているので、身動き
することもままならない。
「や、あ、あぁっ、痛…ッ」
チェルシーの涙声に罪悪感を感じつつ、止まらなくなったヴァルツは一気に
その身を貫いた。立ちふさがる何かを突き破ったような鈍い音がして、ヴァルツの
ソレはチェルシーの中に納まる。
チェルシーは声にならない悲鳴をあげ、シーツをぎゅーっと握り締めて痛みに耐える。
「全部、入ったぞ」
声をかけても、息をするのがやっとのようだ。ヴァルツはいくばくかの罪悪感を
覚えつつもゆっくりと腰を動かした。動くたびにチェルシーの顔が苦痛に歪む。
分かっているのだが、高みに向かう己を止めることは出来なかった。
ゆっくりと動かして行くうちに、次第に、チェルシーの表情が和らぎ、
苦痛だけではなく、押し寄せる快楽を押えているような、そんな表情になる。
「あ…ん、あん、あぁん…ッ」
最初は声も出ないほど辛そうだったが、今では喘ぐ声を止めることをしない。
シーツを握り締めていた手が宙に伸び、ヴァルツの腕を掴んだ。そのまま這う
ように背中に回り、自らぎゅっとしがみついてきた。その表拍子に結合が
より深まり、お互いに小さくうめく。そのままヴァルツはチェルシーの背中を
掬い取って、体を起こした。結合したままチェルシーがヴァルツの足に乗る。
「自分で動いてみるか?」
目の前に現れた二つの突起を指と舌で弄りながら尋ねると、チェルシーは顔を
赤らめつつもヴァルツの肩に手を置いて、おずおずと体を上下にゆすった。
「キャ、ああ…っ!あ、あぁ、ダメッ」
ほんの数回動いただけで、ぜいぜいと喘いでぐったりとヴァルツにもたれかかった。
初心者には刺激が強すぎるか、と反省し、快楽と羞恥でヴァルツの胸に真っ赤な
顔を埋めるチェルシーの頬を両手で包み、そっとキスをした。
「まだチェルシーには早かったな」
これは今後のお楽しみということにしようと思い、自ら腰を突き上げた。
「きゃうん!」
ひときわ激しくチェルシーが反応する。向かい合って繋がっていると、
よりいっそう結合が深まり、お互いの表情も近い。突き上げるたびに切なげに
眉をゆがめて顔を振るチェルシーを見ていると、だんだんヴァルツも余裕が
なくなってきた。そろそろ限界が近づいてきている。
突き上げる腰の動きが早まり、がくがくと揺さぶられるチェルシーが自分の体を
支えきれずに後ろに大きく仰け反った。
「あ、あぁっ!」
「…くっ!」
咄嗟に抱き寄せたのと、欲望が果てたのは同時だった。二人は同時に高みを迎え、
そのままなだれをうってベッドに崩れ落ちた。
行為のあとの、鉛を背負ったような体の重さに、ヴァルツはしばらく動けないで
いたが、それでも何とか腕を伸ばして気を失っているチェルシーを腕の中に
引っ張り込んだ。涙のあとが痛々しく、唇でそっと、痕跡をぬぐう。
今度はもっと、優しくしてあげたい。二人で色んなものを見て、同じ時間をすごそう。
でも今は、こうして彼女の寝顔を見ていよう。もう少し、このまま…。
「ヴァルツさんおはようございます!これ、ウチでとれた牛乳です!飲んでください」
翌朝、いつものように、チェルシーが元気に動物屋にやってきた。
「おう、その、ありがとう、な」
まだ完全には素直になれず、もごもごと口の中で礼を言って受け取る。
それでも、二人にしか分からない笑みをそっと交わす。
朝食の準備をしていたジュリアが背後から近づいてきた。
「あらぁ〜?どうしちゃったの?素直になっちゃって」
「オレは、元から素直だ」
「何かあったの?チェルシーと?」
さすがにそういうところは鋭く、ジュリアはふふふと笑ってヴァルツを見る。
「よかったね、ヴァルツ。おねーさんは嬉しいよ」
「誰が姉さんだ、誰が」
と、ヴァルツはジュリアの首もとのスカーフに気づいた。
「なんだお前、そんなもの首に巻いて」
「母さんには内緒よ?」
不敵な笑みを浮かべてハラリとスカーフを取ったジュリアの首元には、
赤い痣が点々とついている。
「エリクったら、けっこう激しいのよね。驚いちゃった」
「……」
ヴァルツは、気弱な少年という認識しかないめがねの少年を思い起こし、
思わず赤面した。
うん、チェルシーの見えるところにキスマークをつけるのは絶対にやめておこう。
<終わり>