ユエの新婚初朝

「なんや、荒れとるねぇ」
 カイルが新婚生活初めての朝一番に聞いたのは、その言葉だった。
一体何が荒れているのかを問おうとして、すぐに気付く。
暴風と窓に吹き付ける雨の音。嵐である。
「今日は、家から出るのは止めといた方が良さそうだね」
 ダブルベッドから身を起こすと、窓の外を覗き見る。
普段毎日の様に見ているアルヴァーナの大地が、海水と雨水で出来た洪水で隠されていた。
「あ、ごめん。起こしてもうた?」
 カイルが起きていると思っていなかったのだろう、ユエが少し慌てた様子を見せた。
「今起きた所だよ。それに、ユエの声で起きるなら悪くないし……」
「そう? 嬉しい事言ってくれるわ〜」
 ベッドの中で、ユエがカイルにじゃれつく。カイルもユエの肩を抱き返す。
「外は大雨やけど……夫婦水入らず、じゃね」 
「うん。けど、畑がちょっと心配だなぁ」
 カイルを始めとする農家にとって、嵐は非常に恐ろしいものだ。
付け加えれば、この時バドバ山脈の畑には収穫間近の大根があった事もカイルの心配を増幅させていた。
「真面目やね、ダーリンは。そんな所も好きやけど……今日くらいは、仕事の事忘れてもええと思うよ」
「そうだね。考えてみれば、一日ずっと二人っきりって初めてじゃない?」
「そういえばそうやね。ウチら、本当に夫婦になれたんやなぁ」
 沸き上がるその実感を噛み締めている内に、ユエは一つの事を思い付く。
「ダーリン。ちょっとしてみたい事があるんやけど……目、瞑ってや?」
 ユエは両手の人差し指を胸の前で合わせて、恥ずかしそうに頼む。
「うん? ……これでいい?」
 その頼みと、ユエの様子をやや不思議に思いつつもカイルは瞼を閉ざす。
それから数秒と経たぬ間に、唇に一瞬、柔らかいものが押し当てられた。
カイルは感覚と経験で考え、それがユエの唇であると判断し目を開く。
眼前には、唇を離し頬を真っ赤に染めたユエの顔があった。
「……おはようのチュー。一度、してみたかったんよ」
 それを言うユエの表情と仕草は、夫であるカイルを魅了するに充分すぎた。
だから、カイルがそんなユエを抱きしめて唇を奪ってしまったのも、当然の結果なのだ。
ユエにとってそれは不意打ちに近いが、彼女が驚いていたのは僅かな時間だった。
カイルの舌が自らの唇に届けば、それを口内へと迎え入れる。
二人のキスはつたない動きではあったものの、確かに互いを求め合っていた。
カイルはキスを止めると、ユエと共に起こしかけていた上半身を再びベッドに倒れ込ませる。
「ユエ……いいかな?」
 それを問うカイルの手は、既にユエの寝巻き(カイルは知らないが、浴衣である)の帯に掛かっていた。
「こんなん反則やわぁ……断れへんやないの」
 苦笑するユエであったが、カイルへの愛しさからか、そこには嬉しさも混在している。
「ちょっと、意地悪な聞き方だった?」
「ええんよ。ウチはダーリンのものやし……大切にしてもらえるって、分かっとるもん」
「うん。一生、大切にするよ」
 二人が目覚めて三度目にした口づけは、両者合意の上で行われた。
まだ、慣れている行為ではない。数十秒も続けていられず、二人の顔が離れる。
だがそれで充分だった。先程よりも明確に、これから心身ともに重ね合わせようとの想いが強くなる。
カイルが手を掛けていた帯の結び目をほどく。衣擦れの音がして、それだけで二人の心拍数は跳ね上がった。
「あかん……緊張してきてもうた」
 そう言って、ユエはカイルの胸に顔をうずめる。精一杯の照れ隠しなのだろう。
カイルはユエの綺麗な藍色の髪を撫でながら囁く。
「僕も緊張してるけど……大丈夫だよ」
 根拠のない言葉だが、ユエは安心する。カイルも自分同様に緊張しているが、大丈夫と言ってくれた。
それは彼女にとって心強い支えとなるのだ。顔を上げ、カイルに向き直る。
「せやね。昨日も緊張してたけど……ダーリンが優しくしてくれたから、大丈夫やったもんね」
 やや強張った表情で、ユエは自分に言い聞かせる。カイルが今度はユエの背中をさすった。
牧場生活の中で培ったその手つきは、触れられる人に落ち着きを与える。
「ダーリン……ありがとう、もう大丈夫や」
 緊張が大分ほぐれたのだろう。顔は赤みがさしているが、ユエの笑顔は自然なものになっていた。

「良かった……それじゃ、服、脱がすね?」
「うん。いつでもええよ」
 ほどけてたわんだ帯の内側の、はだけかけていた浴衣にカイルの手が伸びる。
合わせ衿を上からそっと左右に開けば、ユエの白い素肌があらわになった。
カイルの視線もそこに釘付けになる。
「そない見られたら、ウチかて恥ずかしいわ……」
「そうかな? すごく綺麗だと思うけど……」
 カイルが浴衣の内側に腕を差し込み、背中に手を回せば、ユエもまたカイルに密着する。
「ダーリンの体、あったかいなぁ」
「それはお互い様だよ。ユエの体も、すごくあったかいし……」
 腕に抱いた愛する妻の背を、そっとなぞる。今度の手つきには、優しさだけでなく前戯れの意味合いも込められていた。
「んっ……ちょっと、くすぐったいわぁ」
「あんまり気持ち良くはないかな?」
 カイルが手を止め、やや不安そうに問う。それを見てユエは苦笑した。
「そんなわけないやろ……もっとたくさん触れて欲しいくらいや」
 手の動きが再開する。そこから伝わるカイルに抱きしめられているという事実がユエの感情を昂ぶらせた。
ユエの手が、カイルの着ているベストの留め金を外す。
「僕も、脱いだ方がいい?」
「ううん、ウチが脱がせてあげたいから……ダーリンは、ウチの事もっと好きにしててや」
 ユエがカイルのベストとシャツを捲り上げる。カイルの肉体は線こそ細いが、農業で鍛え上げられていた。
そこに改めてユエが身を寄せる。カイルはユエの背中に回していた腕を片方戻すと、ユエの胸に側面から触れた。
軽く指を沈めれば、張りと弾力が返ってくる。ん、と悩ましげに小さな声を上げてユエの体が震えた。カイルの手が止まりかける。
「ちょっと驚いただけやから……もっと大胆に触って大丈夫やで」
 カイルが頷く。もう片方の手も戻し、反対側の乳房にそれを這わせた。十指と両掌がユエの胸に重なり、それを揉みほぐす。
僅かに硬くなり始めていた乳首も、カイルの掌で転がされている内にはっきりとその存在感を表すようになっていった。
「ダーリンにそんな風にされると、ウチ、やらしい気分になってまうわ……はしたないなんて、思わんといてな?」
 不安そうな表情を見せるユエ。それとは対照的にカイルは笑いかけて答える。
「はしたないなんて事は思わないって言うか……僕としては、嬉しいくらいだけど」
「ホンマに?」
 それに答える事はせず、カイルはユエの口をキスで塞いだ。そのまま舌を出し、ユエの唇をねぶる。
ユエもそれに応じて、舌を出し、カイルのそれに絡めた。二人はお互いの舌と口内を味わう事に没頭する。
今までで最も長いキスだった。二つの顔が同時に離れ、熱い溜め息をつく。
「気持ち、伝わった?」
 ユエは蕩けたような表情で首を縦に振る。カイルはそんなユエを愛しく思う。
腕を再び背に送り、彼女を抱きしめた。二人の胸と胸が重なる。
「ダーリン……大好きや」
 その声は小さかったが、至近距離のカイルが聞き逃すはずもない。
「僕もだよ、ユエ」
 背中から腰にかけて手が降りていく。まだ閉じていた浴衣の下半身部分がそれと共に広げられる。
浴衣の全てが広がる頃には、カイルの手はユエのお尻に触れていた。その手で太股を後ろから前へかけて一周愛撫する。
その動きで、ユエもカイルの手がどこを目指しているのか察したのだろう。両脚を少し開き、迎え入れる体勢になる。
そこにカイルの手がゆっくりと入り込んだ。人差し指と中指を伸ばし、秘所に触れる。
「ちょっとだけど、湿ってるね」
「わざわざ言わなくてもええやん……」
 恥ずかしさで顔を伏せるユエ。しかし、彼女はそこで一つの事に気付く。
カイルのズボンを見れば、前の一部がテント状になっていた。そこへおもむろに手を伸ばす。
「なんや、ダーリンも興奮してくれてたんやね」
「それは……ユエのこんな姿を見たらそうなっちゃうよ」
「ウチだけがおかしいのかと思ったわ……でも、ウチを見てこうなってくれるんは嬉しいで」


 ユエがカイルのズボンと下着を下ろす。反り返ったモノが、外気に晒された。
ユエは羞恥心を持ちつつも、それを愛しそうに撫でさする。カイルはそこから伝わってくる快感に目を細めた。
「ダーリン、その表情、なんか可愛いで」
 ユエにとって、カイルは最も頼れる男性だ。その人が見せる無防備な表情は、あまりにも新鮮で刺激的すぎた。
その先を見てみたいとの悪戯心が、手指の動きを早めていく。カイルは限界が近づいてくるのを感じて訴える。
「ユエ、それ以上されたら、ちょっと……っ」
 その声を聞いてユエは慌てて手を離す。
「ごめんな、ダーリン……嬉しくてつい調子に乗ってもうた」
 ユエが肩を小さくして謝った。今度はカイルが慌てて補足する。
「えっと……すごく、気持ちよかったんだよ。だけど、今はユエと一緒になりたくって……」
 その言葉がユエの胸に響く。相手を受け入れたいとの気持ちが強くなった。
離していた手を、自分の太股に挟まれたままのカイルの手に添える。
「ウチが、しっかりダーリンを受け入れられるようになってるか、確かめてくれへん?」
「うん……分かった」
 カイルの二本の指が、秘所をなぞる。先程よりも湿り気が増し、小さな花は満開となっていた。
入り口から中指をそっと沈めれば、その中に熱がこもっている事が伝わってくる。
試しにその指を往復させてみると、ユエは可愛らしい声を上げた。
「どう? 痛かったりはしない?」
「まだ入って来る時ちょっと違和感はあるんやけど、痛かったりはせえへんし……ダーリン、来て?」
 それを聞いて、カイルはユエの秘所から指を抜く。身を起こし、下半身に纏ったものを脱ぎ捨て、体を動かす。
ユエが仰向けになり両脚を広げ、カイルがその間に割って入った。
「それじゃ……挿れるね」
 自分のモノを押さえ、ユエの秘所に指を軽く添えて、そこを沿うように腰を進める。
くちゅ、と小さな音が立つ。初々しいゆっくりとした挿入だが、確実に二人の体は繋がっていく。
「んぅ……ダーリン、入ってきとる」
 まだ慣れないその感覚は、挿入されている事を強くユエに感じさせる。
それは挿入しているカイルの方も同様だった。
暖かく包まれるような快楽に身を任せれば、すぐにでも果ててしまうだろう。
共に高まりたいとの想いが、なんとか理性を保たせている。
その綱を手放さないように、じっくりとカイルは挿入を深めていった。
二人の性器が、最奥まで合一する。
「全部、入ったよ」
「ウチの中、ダーリンで一杯になっとるね」
 二人は見つめあい、結合した感覚を味わいながら微笑む。
「動かして平気かな?」
「うん……ダーリンの好きな風に、動かしてや」
 カイルは確かめるように自らの腰を往復させる。ぞくりとした快感が生まれた。
それはユエにとっても同じだったのだろう、彼女もあ、と短い嬌声を上げる。
ユエがカイルに向けて手を差し出す。その手をカイルが握った。
平素の時であれば何気なく出来る手を繋ぐ事も、今の二人にとっては感情を昂ぶらせる行為になる。
今、カイルとユエは確かに心まで重ね合わせていた。
「ダーリン……ウチ、めっちゃ気持ちええ。幸せや……」
「ユエ……僕も今、すごく幸せだよ。だからもっと、一緒に気持ち良くなりたい」


 繋いだ手を一旦ほどき、ユエに体重をかけないように上半身を覆い被らせる。
ユエの腕がカイルの背に回った。カイルはその状態から顔だけをさらに下ろす。
何を求められているのかを察したユエが口を開き舌を出せば、カイルがそこに吸い付いた。
挿入状態でのキスは、より繋がりを深く感じさせる。
二人だけに聞こえる水音が興奮を煽った。
カイルの舌がユエの唾液を掬い取り、自分の唾液と混ぜ合わせる。
口をすぼめるようにしてそれをユエの口内に送れば、彼女はこくりと喉を鳴らして飲み下した。
そんな自分の行動を省みて、ユエがふと呟く。
「なんでやろ……恥ずかしいのに、ダーリンにはなんでもしたくなってまう」
 ふと出た言葉が、男心をくすぐる。カイルは自分の内側から欲望が押し寄せるのを感じた。
「ユエ……少し、速くするよ」
 そう言うとカイルはベッドにしっかりと手を着いた。
止めていた腰の動きが、先程よりも速さを増して再開する。
ユエの中はとろりとした蜜で一杯になっており、カイルの動きを助けた。
だんだんと安定感を得た動きが、繰り返される。
快感はじわじわと広がり、次第に耐えられないほどに強まっていく。
「うぁ……ダーリン、ウチ、おかしくなってまう」
「こっちも、あんまり余裕なくって……最後まで優しくは出来ないかもしれない」
「ここまでで充分優しくしてくれてるやん……それに、激しいダーリンも好きやで」
「ユエっ……」
 カイルの欲望が理性を上回った。抽挿が加速する。
二人の息遣い。水音。触れる肌の感触。体温。乱れた相手の姿。
それら全てが二人を後押しした。もはや止まれない。
ユエの膣内は迎え入れたカイルのモノを絞るように収縮を始めた。
そこから与えられる快感で、カイルもまた独特の電流が背筋を駆け上がるような感覚を味わう事となる。
この二人、技巧もなければ経験も薄い。にも関わらず、お互いに充足を与え合っていた。
そして偶然か必然か、絶頂をほぼ同時に迎える。
「ダーリン、ウチ、ウチ、もう限界や……ああっ!」
「こっちももう……くっ、出るっ!」
 ユエが体をびくりと震わせると、カイルがそこに覆い被さる。下半身の結合部では、射精が続いていた。
鼓動のようなリズムで、精液がユエの子宮へと送られていく。二人はその体勢のまま、しばし放心する。
お互いが落ち着くまでには、一分ほどの時間を要した。
カイルが射精した事によって硬度を失ったモノをユエの中からそっと抜こうとする。
敏感なままのユエは、それでまた少なからず反応してしまうが、声は噛み殺した。
愛液と精液が付着したモノを完全に抜くと、ユエの隣で横になる。
「おはようのチューのつもりが……もっとすごい事までしてもうたね」
 ユエは満ち足りた笑顔で、カイルに囁いた。
「うん……今日は一日、二人でのんびりしようか?」
「それがええ。ウチにとって、最高の贅沢や」
 ユエがカイルの頬に軽く口づけた。嵐の日は、まだ始まったばかりである。

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