カイル×セシリア

「いやぁ〜、牛乳が美味しいなぁ」
「朝っぱらから俺の前で牛乳を飲むとはこれまた凝った嫌がらせだな人間」
道端で出会ったカイルとジェイクの些細な日常会話。
いつものアルヴァーナの風景だ。
カイルは今のようによくジェイクをからかってはいるが、二人はそれなりに仲が良い。
元々人間を毛嫌いしていたジェイク。カイルが自分が好いていたセシリアと結婚したことによる嫉妬も含めて、特にカイルを嫌っていた。
しかし、最近ではセシリアが好きになっただけはあると彼のことを認めいる。
少しぐらいならからかわれても怒りはしない。
「……そういえば、セシリーとはどうしてる?」
「特に変わったことはないかな。彼女は早く子供が欲しいとか言ってたけど…」
「…意外に積極的だったんだな、セシリー」
「僕も正直少し意外だよ」
二人は今ではこんな会話をして一緒に笑いあえる仲だ。
カイルと仲良くなったことがきっかけでジェイクも少しずつ人間を見直してきている。
噂では、よく町を訪れる商人のユエとも仲が良くなっているとか。
「それじゃあ、僕はこの辺で」
「ああ。セシリーによろしくな」


牧場やダンジョンでの畑仕事やモンスター達の世話。
カイルの毎日は実に忙しい。全ての仕事が終わった時にはもうへとへとだ。
それでも昔よりは確実にこの日常に慣れてきている。農業を始めたばかりのころは、家に帰ったらすぐにベッドに倒れこんでいたぐらいだ。
そんな日々での彼にとっての安らぎ、それは…
「おかえりなさい、あなた」
「ただいま、セシリア」
妻、セシリアとのひとときである。
まだ結婚してから1ヶ月も経っていない、新妻だ。
愛する夫の帰宅と同時に彼の胸に顔をうずめるセシリア、そしてその後おかえりのキスをする様は傍から見ればまさしくバカップルだ。
だが、それだけこの二人は仲むつまじい。
「じゃあ、晩御飯にしましょうか」
「うん。あ、そうそう、セシリアに手紙が届いてるよ」
「え? …これは……お父さんから結婚祝いの手紙です!」
「お父さんからの?」
「はい。カルディアは遠いし、お父さんは図書館で本に埋もれる毎日を送ってるのでいつ前に送った手紙の返事が来るかと待っていたんですよ」
早速父からの手紙を見るセシリア。その顔は実に嬉しそうだった。
…だがしかし、カイルには彼女の気持ちはさっぱり理解できなかった。
いや、理解はしたいのだが理解のしようが無い。記憶をなくしているので、父や母との思い出もないのだ。
「……あれ、そういえばお母さんからは?」
「………お母さんは……居ないんです」
「あ……ごめん」
セシリアが少しうつむき、申し訳なくなったカイルがあわてて謝る。
「いえ、いいんですよ。…実を言うと、お父さんも本当に血がつながってるわけじゃないんですよ」
「そうだったの?」
「はい。…あなたも、ご両親のことは覚えていないんですよね? …私たちは、いい親になりましょうね?」
「…ははは、そうだね」
カイルはどうにもセシリアの笑顔に弱い。
既に仕事を終えて疲れきっていたカイルだったが、彼女の屈託のない笑みを見て、その晩の行為を断れるはずがなかった。


夜も更けてきた頃、二人は寝室で向き合っていた。
少しもじもじしながら、セシリアが切り出す。
「……始めましょうか?」
「………うん」
お互い少し遠慮がちに服を脱いでいく。
やがて、下着だけになると、セシリアがカイルに抱きついた。
今までも何度か妻と交わったことのあるカイルだが、まだ肌を肌が重なるのは少し緊張する。
セシリアもそれは同じだ。しかし、同時に二人の肌を重ねるのは至福でもある。セシリアがカイルに抱きついたのもそのためだ。
「…じゃあ、よろしくお願いします」
互いの瞳を見つめてから唇を重ねる二人。十秒ほどしてから唇を離すと、カイルはセシリアをベッドに押し倒した。
まず、愛する妻の全身に少しずつ、しかしくまなく口付けるカイル。
セシリアの顔は緊張のためにこわばっていたが、幸せそうな顔でもあった。
それから、そっと彼女の胸に触れる。一瞬びくりとしたセシリアだが、すぐに彼にその身を任せた。
彼女の乳房はあまり豊満とは言えない。同じ町の住人であり、友人でもあるアリシアなどに比べれば紙っぺらのように思えることもあった。
結婚初夜ではそれをコンプレックスに思っていたが、そんなことを気にせず、自分の全てを愛してくれる夫を、彼女もまた愛していた。
気持ちの高まりから、セシリアの乳首も立ってくると、カイルはそっと彼女の背中に手を回す。
今までも毎回、彼女の緊張を和らげるためにこうしてきた。
だがしかし、これは自分の緊張を和らげるためでもあった。カイルが一番心配するのは、自分がセシリアを傷つけてしまわないかということだ。
そのため、どちらかと言えば先ほどのようにセシリアがカイルをリードすることが多い。
「…そんなに気を使わなくてもいいんですよ?」
「いや、でも…やっぱり、セシリアを傷つけたくないから…。……ん?」
ふと、セシリアの耳がカイルの目に映った。
ハーフエルフである彼女の耳は、人間のものとは違い、尖った形をしている。
「…今まであんまり気にしたことなかったけど、セシリアの耳ってやっぱり僕らと少し違うね」
「そうですね…。昔は自分でも気になってたんですけどっ…ひゃぅ!?」
いきなりカイルが自分の耳を咥えられ、セシリアが驚きの声を上げる。
「あ、まさかとは思ったけど…やっぱりセシリアって…耳弱いんだ?」
「も、もう…びっくりしました…。いきなりはやめてくださいね…?」
そう言い終わるかどうかのタイミングで、今度はセシリアのそっと耳に息を吹きかけるカイル。
「うひゃあ!」
「ははは、可愛いなセシリアは」
「……いじわる」


自身の弱点を攻められ、セシリアの顔は完全に紅潮していた。
性的な興奮も段々高まってきている。
「……あ、あの…。…そろそろ……」
「…うん」
お互いの顔を見つめあってから、二人はゆっくりとキスをした。
今度は舌と舌を絡ませる濃厚なキス。互いの舌と舌を嘗め回し、唇を濡らす。
しばらくの間、それを続けていた。…毎回、二人が繋がる前に互いの愛を確かめあうためにしている行為だ。
ゆっくりと唇を離すと、唾液の線が伸び、千切れた。
再び瞳と瞳で互いの意思を確認すると、カイルはその手をセシリアの秘所へと伸ばした。
目を閉じて恥ずかしそうにしているセシリアがたまらなく愛おしいく思え、彼女の秘所をくすぐるかのように触る。
やがて、ある程度のしめり気を感じてきた頃、カイルが口を開いた。
「い…挿れるよ?」
「はい…」
いよいよもって大詰めだ。
相手が自分の妻で、これが数度目なのだが、カイルはセシリアの下着を脱がすことに妙な抵抗感を覚えていた。
やはりまだまだ初心さは残っている。
セシリアの下着を脱がしてから、今度は自身のものを脱ぐ。
中から、硬く大きくなったモノが現れた。
セシリアが両足を開くと、それをゆっくり、ゆっくりと彼女の秘所と合わせる。
いまだにこの瞬間は心臓がバクバクする。セシリアも目を閉じて、緊張しながらその瞬間を待っていた。
…ずぶずぶと、カイルのモノがセシリアの膣内に入っていく。
セシリアの顔は、どうやら歯を食いしばっているように見えた。
「ご、ごめん! 痛かった?」
「いいえ、大丈夫です…。続けて…」
最後まで入りきると、今度は少しずつ腰を動かし出す。
ぬぷ、ぬぷ、と独特の音を立てながら自分のモノがセシリアの膣内を出入りするのには、毎回奇妙な感じを覚える。
腰を動かすスピードを徐々に早めると、セシリアは声を上げて自らに与えられる快感に身を任せた。
それがしばらく続いた後…
「で、出るっ…!」
「はい…。全部…あなたの全部、私にください…!」
次の瞬間、セシリアの膣内にカイルの精が一気に射出された。
射出された液が膣の奥へと入り込んでいく。
「あひゅう……」
体の中に広がる熱さに、セシリアは声にならない声で小さくうなった。


行為が終わってから気持ちが落ち着くのには、数分の時間を要した。
「…えっと…。…寝ましょうか…」
「うん…。…おやすみ」
二人で布団に潜り、身を寄せ合う。
毎日の中でも特に至福を感じるひとときだ。
毎晩、セシリアはこの時にカイルに頭を撫でてもらっている。
幼い頃に慕っていたラグナにもよくされていたことだが、愛する人にそれをされると、また違った安らぎを感じた。
「あの、あなた……」
「ん?」
「寝る前にもう一度だけ……」
そう言ってセシリアが目を閉じる。
それに応えて、カイルは……

セシリアの耳を咥えた。
「ひゃうぅ!!」
「ぷ、びっくりした?」
「もう……!!」
「……愛してるよ、セシリア」
「…私もです、あなた」
互いの瞳に映る顔を確認しながら、今度こそ二人はその唇を合わせた。


月の光が、セシリアの中に新たな生命が誕生したことを祝うかのように輝いていた。

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