カイル×セシリアバカップル劇場 その1〜モンスターの背中にて〜
「アマテラス(シルバーウルフの名前)に乗ってみたい?」
モンスター小屋で夫婦一緒にモンスターの世話をしていると、セシリアが切り出してきた。
「はい。前々から一度乗ってみたいなぁ、って…」
「う〜ん…まあ、セシリアには懐いてるから平気だろうけど…モンスターの出るところまで行ったら駄目だよ?」
早速セシリアを乗せるためにアマテラスを外に連れ出すカイル。
いざセシリアを乗せよう、という時になってセシリアは仏頂面になっていた。
「……ごめん、何か気に障ることしたかな?」
「…一人では乗りたくないです」
「………二人で乗るのはさすがに危ないと思うよ?」
しばらくの間、カイルとセシリアでにらめっこ状態となる。
カイルと一緒にアマテラスに乗りたいセシリア、セシリアを危ない目に会わせたくないカイル。
どちらも一歩も譲る気配がない。
そしてアマテラスは行くならさっさと行ってくれとでもいった様子で明らかにイライラしている。
…と、カイルがすとん、とアマテラスの背中に飛び乗った。
そのままアマテラスの上からセシリアに手を差し伸べる。
「…しっかりつかまっててよ?」
「あ…。はい! ……ありがとう」
「さあ、行くよ!」
カイルの掛け声とともに、アマテラスが走り出す。
風を切って走るその姿は実に威厳溢れる…姿のはずなのだが背中の上でカイルにつかまって幸せそうな顔をしているセシリア、
なんだかんだで嬉しそうなカイルら二人のバカップルのせいでそれも半減している。
「…うわ、ここからはトリエステの森の中だ! モンスターが出てくるから引き返そう!」
「……でも、どこにも居ませんよ? モンスター」
「…あれ?」
モンスターがいるはずの場所にモンスターがいない理由。
それが自分達の乗っているアマテラス(♂・独身かつ童貞)が尊敬する飼い主とはいえ自分の上でいちゃいちゃされていることからのストレスによる、
恐ろしい形相からなるものだとは、気づくはずもなかった。
余談だが、この後モンスターの居ないトリエステの森で仲むつまじくリンゴを採っていたバカップルを見て
更に恐ろしい形相となったアマテラスのお陰で二人は平和な一日を過ごしたとか。