確かな絆・夢の先にある幸せ カイル×セシリア
「ふぅ…さすがにちょっと飲みすぎたかな」
ヴィヴィアージュ公園のベンチに座り、カイルは夜風を浴びていた。
人口の少ないこの町では結婚式は一大イベントである。
特に、世代の関係上ここ数年間は結婚式は行われていなかったこともあり、披露宴は大いに盛り上がりを見せていた。
ターニャは剣舞を舞い、ダグラスは樽を素手で粉砕し、ゴードンは説教をはじめ、ヘリチャコスは大宇宙のごとき胃袋を見せつける。
…余りに盛り上がりすぎて、もはや主役達をほっぽりだしてどんちゃん騒ぎの様相に突入してはいたが。
そんな中、カイルは同世代第一号の幸せを掴んだことで、皆の羨望と祝福を一身に受けてしこたま飲まされていた。
中でも、酒の席でのレイの豹変ぷりはカイルにとって予想外であった。
日ごろは常に控えめなレイであったが、一度酒が入ると人が変わったように陽気になるのである。
そしていつもの笑顔はそのままに、しかし有無を言わさず酒を勧めてくるのであった。
その強引さは、彼がアリシアの弟であることを思わせずにはいられないものだった。
結果、カイルはすっかり酔わされてしまい、一人席を抜け出して酔いを醒ましていた。
「大丈夫ですか? カイルさん」
不意に横手から声がかかる。
カイルが振り向くと、そこにはカイルの妻となった少女、セシリアがいた。
「ふふ、私も抜け出してきちゃいました」
そういって、セシリアはカイルの横に腰掛けた。
「ずいぶんと沢山お酒を飲んでいましたけど、大丈夫ですか?」
心配そうに聞いてくるセシリアに対して、カイルは笑顔で無事を示す。
「うん、ちょっと飲みすぎちゃっただけだから。しばらく休めば大丈夫だよ」
「そうですか。よかったです」
セシリアは安心したようにいうと、カイルに寄り添ってその肩に頭を預けた。
秋の夜風はすでに肌寒くなっていたが、触れ合った部分は暖かかった。
「本当に、夢みたいです…。カイルさんとこうやっていられるなんて…」
「うん…。僕もだよ」
カイルは一度言葉を切ると、感慨深げに続けた。
「今日は本当にいろんな事があったから…。セシリアと結婚することができて、こうしていられるのが夢みたいだ」
改めて思い返してみれば、ここ数日はカイルにとって本当に波乱の日々だった。
…ジェイクとの対決に敗れたこと
…一度はセシリアの為に身を引こうとしたこと
…知らされたセシリアの想い、そしてぶつけられたマナの想い
…自分の弱さ、そして自分の本当の気持ちに気づかされたこと
それらを思えば、セシリアと結婚し、今こうしていることがまるで奇跡のように思える。
そうして、二人はしばし心地よい沈黙の中、満点の星空を見上げていた。
「そういえば、前にもこうやって一緒に星を見た事がありましたよね」
セシリアは上を眺めたまま、カイルに語りかけた。
「あの時、お星様にお願いしたんです。いつか、カイルさんとずっと一緒にいられますようにって」
「僕もだよ。僕もセシリアと一緒にいられるようになりたいって思ってた」
セシリアと星空を眺めたあの日、カイルは星の明かりに照らされるセシリアの横顔を本当に美しいと思った。
今思えば、それまでカイルの中にあった淡い気持ちが恋だと気づいたのはあの瞬間のことだったかもしれない。
「本当ですか? 嬉しいです」
カイルも同じ気持ちだったという事が分かり、セシリアは破顔した。
「それじゃあ、お願いを叶えてくれたお星様にお礼を言わないといけませんね」
「そうだね。一緒にお礼をしよう」
セシリアの提案に、カイルも笑顔で応じる。
二人は目を閉じて手を合わせ、星々に感謝の想いをはせた。
「…それに、町の人たちにも本当に感謝しなきゃ」
祈りが終わると、カイルは言った。
「僕がこの町に来てもう半年以上になるけど、僕は今まで本当にこの町の住民になれたのかずっと不安だったんだ」
「え…?」
カイルの予想外の言葉に、セシリアは不思議そうに聞き返した。
「僕は昔の記憶がないから、自分がどういう人間だったかもわからない。自分の故郷がどこなのかもわからない…」
「もし自分に記憶が戻ったら、その時はこの町を出て行くことになるのかもしれない…。そう思ったら、僕は本当にこの町の住民だって自信を持てなかったんだ…」
「カイルさん…」
カイルはアルヴァーナに来てからの時間こそ短かったが、まるで旧知の仲のように町の人々の中に溶け込んでいた。
自分達の前でもいつも明るく、一生懸命生きていたカイルがそのような不安を抱いていたとは、セシリアは思いもしなかった。
「でも、今日こうやってセシリアと結婚できて…。町のみんなも心から祝福してくれて…。僕は本当に嬉しかった」
カイルは一度言葉を切ると、心配そうなセシリアに微笑みかけた。
「これからセシリアと一緒にこの町で暮らしていくと思うと、僕もやっと本当の意味でこの町の住民になれたと思えたんだ」
もちろん、過去の記憶を知りたいという気持ちは今でも消えてはいない。
だが、今のカイルには守るべきものがある。これからセシリアと共にこの町で紡いでいく新しい生活がある。
失われた自分の過去の穴は、これからの始まる幸せな未来で覆い被せていけばいい。
カイルは、もう過去に縛られるのはやめようと決意したのだ。
「カイルさん、これからは私が家族です…。一緒に暮らしていきましょう…この町の人たちと一緒に…」
セシリアはカイルの腕を取ると、優しく抱きしめた。
カイルはセシリアのその温もりに、安らぎに満たされる。
「そうだね。これからずっとよろしくね、セシリア」
「はいっ! カイルさん」
笑顔のカイルに対して、セシリアも満面の笑みで応える。
しばし微笑みあう二人であったが、ふとそこでセシリアが思いついたように言った。
「あ、でも夫婦になれたのにカイルさんっていうのも変ですよね」
「そう? 今まで通りだし、特におかしいとは思わないけど」
「カイルさん、っていうのは何か他人行儀の気がするんです」
カイルは特に気にしていないようであったが、セシリアは不満のようである。
「それなら、カイルとか? まあ、セシリアの好きなように呼んでくれていいんだけど」
「うーん…。カイルさんは私のだんな様ですから、呼び捨てにするのもちょっと…」
セシリアはしばし考え、少し恥ずかしそうに言った。
「あの…それじゃあ、あなたって呼んでもいいですか?」
頬を染めるセシリアに、カイルも思わず赤くなる。
「あなた、かぁ。ちょっと照れくさいね」
「…ダメ、ですか?」
照れたカイルであったが、カイルとしてもそう呼ばれるのが嫌なわけではなかった。
それに、残念そうなセシリアの顔を見ると、ダメといえるはずもなかった。
「セシリアがそう呼びたいならもちろん構わないよ」
「本当ですか!?」
セシリアは一転して満面の笑顔になり、カイルに抱きついた。
カイルもしっかりと抱きしめる。
そこにある温もりが、改めて二人の絆を感じさせた。
そうしていると、やがて二人を呼ぶ声が聞こえてきた。
主役が抜け出した事に気づいた町の人々が、二人を探しているようだ。
「みんな僕たちを探してるみたいだし、そろそろ戻ろうか」
「はい、あなた♪」
そして、二人はしっかりと手をつないで、喧騒の輪の中へと戻っていったのだった。
やがて、楽しい時間もあっという間に過ぎ去り、披露宴はお開きとなった。
宵も更け、二人はカイルの家へと帰ってきていた。
ここからは夫婦二人水入らずの甘い時間のはじまり。そう、嬉し恥ずかし新婚初夜である。
記憶がないとはいえ、カイルにもその意味することは分かっていた。
…とはいえ、どこまでもウブな二人である。
二人は寝室のベットの側で、緊張にカチンコチンになって向かい合っていた。
「あ、ええと…? しようか…セシリア…?」
「は、はい…あなた…」
カイルは自分がリードしなければと思うものの、そもそもカイル自身(恐らく)未経験者のため、なにをしていいやらわからない。
とりあえず、抱きしめてみればいいのでは…?
そう思い、セシリアの肩に手をまわそうとするが…
「ひゃっ!」
「わわっ! ごめん!」
セシリアの肩にカイルの手が触れた瞬間、セシリアが緊張の余りびくんっと痙攣し、カイルはあわてて手を離す。
「あっ…ご、ごめんなさい」
「僕こそ…っ、ごめんね…?」
二人して謝りあってしまう。
お互い苦笑し、そしてリトライ。
カイルはおずおずとセシリアを抱き寄せると、包み込むように抱きしめた。
腕の中に感じる温もり、至近距離で見詰め合う瞳と瞳。
その愛しさが、カイルの緊張を優しく溶かしていく。
「…ん…っ」
愛しさに導かれるように、気付けばカイルはセシリアに優しく口付けをしていた。
セシリアは一瞬驚いた素振りを見せたが、すぐに眼を閉じて応じる。
ついばむ様な優しいキス。二度目のキスはミルクの甘い味がした。
顔を離し、見つめあう二人。
頬を染め、はにかむセシリアがたまらなく愛しい。
その想いが、カイルを更なる行動へと突き動かす。
「ぅんっ…ン…っ…ちゅ…っ…」
今度は奪うように深く口付けると、セシリアの口内に侵入する。
戸惑いながらもカイルの舌に絡ませるセシリア。
熱くて甘い、とろけるようなキス。
二人の舌がホットチョコレートになってしまったよう。
「んっ…はぁ…っ」
唇を離すと、名残を惜しむように銀の糸が引いた。
胸を焦がす想いが、二人の情欲に火をつける。
カイルは、セシリアの身体をまさぐっていた。
優しく、そこにある存在を確かめるようになでまわす。
「脱がすよ…?」
「はい…」
カイルが言うと、セシリアも目を閉じてうなずいた。
おずおずと、お互いの衣服を取り払っていく。
やがて、二人は一糸まとわぬ姿で向かい合う。
「…ごめんなさい」
不意に、セシリアが謝った。
「…え?」
思わず聞き返すカイルに、セシリアは申し訳なさそうに続ける。
「ごめんなさい…私…小さくて…。アリシアさんくらいあれば、よかったんですけど…」
確かにセシリアの身体は、お世辞にも発育がいいとは言えなかった。
マナと並んで、アルヴァーナ女性陣のなかでは最低ランクに属している。
オトメロンの如き豊満さを誇る彼女の友人とは比べるべくもなかった。
だが、カイルにはそんなことを考える余裕など全くなかった。
目前のセシリアの裸身から目が離せない。
「綺麗だ…」
手を伸ばし、セシリアのつつましげな乳房に触れる。
「あっ…」
戸惑いの声をあげるセシリアだったが、カイルは気にせずまさぐり続ける。
「綺麗だ…本当に可愛いよ…セシリア…」
愛する人が一糸まとわぬ姿でいる、その興奮にカイルは何も考えられなくなる。
愛しさと、触れたいという想いのみがカイルの思考を埋め尽くしていた。
「あ…はぁ…んっ…ぁっ…」
カイルの言葉と愛撫に、セシリアの心も高まっていく。
心地よさに任せ、控えめに甘い声をあげ始めた。
セシリアの甘い鳴き声がカイルの理性を灼いていく。
カイルはセシリアを抱き寄せると、そのままベッドに押し倒した。
セシリアに覆いかぶさり、自身のモノをその花弁に当てる。
セシリアの花弁は既に潤っており、くちゅりと音がして先端が触れた。
「挿れても…いいかな…?」
カイルはセシリアの瞳をじっと見つめ、聞いた。
「はい…」
セシリアもその意味を察し、静かににうなずいた。
カイルは意を決し、少しずつ挿入を始める。
「くっ…」
だが、セシリアの中はとても狭く、なかなか進むことが出来ない。
先端が埋没しただけでもきつく締め付けられる。
力を入れて一気に進めようにも、セシリアの苦しげな声がカイルをためらわせる。
セシリアを出来る限り苦しめないよう、慎重に前進するカイルであったが、やがて壁に突き当たる。
女性にとって、処女の証を散らされることは激しい痛みを伴うということはカイルにもわかっていた。
「あなた…来てください…」
カイルがためらっていると、セシリアから声がかけられた。
「いいの…?」
戸惑いながら聞き返すカイル。
それに対して、セシリアは苦しげな表情を抑えながらも精一杯微笑み、しっかりと答えた。
「来てください…最後まで…。あなたと一つになりたいんです…」
その言葉に、カイルも迷いを断ち切った。
「わかった…。いくよ…」
カイルはうなずくと、一気に処女の証を突き破った。
「あ…! あぁっ…!!」
セシリアの悲鳴と同時に、カイルのモノが根元まで入った。
熱い…!
何よりもまずカイルが感じたのは、熱さだった。
セシリアの胎内の熱に、自分のモノが熔けてしまうように感じる。
自分という存在のすべてが、セシリアに包み込まれているようだ。
そのまま動き出そうとしたカイルであったが、セシリアの表情を見て、動きを止めた。
セシリアはカイルを心配させないよう、必死で声を抑えて痛みに耐えている。
カイルはセシリアの健気さに心を打たれた。
「どうぞ…あなた…。私は大丈夫ですからお好きなように動いてください…」
セシリアはカイルが自分を気遣って動きを止めていることに気付き、先ほどと同じように先を促す。
だが、カイルは首を振った。
「ダメだよ。セシリアはすごく辛そうだ。僕は、セシリアと二人で一緒に気持ちよくなりたい」
自分がこれほど気持ちよいのに対し、セシリアは苦痛を堪えている。その何と不公平なことか。
カイルは少しでもセシリアの苦痛を和らげたかった。
そうして、カイルはセシリアの身体を優しく愛撫しはじめた。
乳房を揉みしだき、その先端にキスをする。
「あっ…! くすぐった…ぁっ…はあぁ…」
その刺激に、再び甘い吐息を漏らすセシリア。
その反応に安心したカイルは、セシリアの唇を奪うと、そのまま全身をついばむ様に口づけていく。
「あぁ…あなた…やさし…い…です…」
セシリアも全身でそれを受け止め、切ない声をあげる。
カイルの優しさが胸を熱くする。
花弁はさらに蜜をあふれさせ、二人の結合部を熱く潤す。
カイルはその蜜をすくい取ると、花弁の上の芽を刺激した。
「やっ! そこはっ…! あぁぁっ!」
身体を突き抜ける強烈な刺激に身を震わせるセシリア。
だがカイルは構わずに愛撫を続ける。
セシリアはそれを受け、声を上げてしどけなく乱れていた。
そして、いつの間にか、カイルは腰を動かしていた。
「あっ! ぅあっ! ああ…っ!」
一突きごとに、先端がセシリアの胎内を刺激し、甘い声が上がる。
「あなた…っ! あなたぁ…っ!」
その声がカイルの脳を熔かし、さらに腰の動きを強めさせる。
もう止まらない…! もう止まれない…!
愛しさが理性を灼き尽くし、情欲の高まるままお互いを求め続ける。
「はあぁ! あなたっ…! わた…し…もう…もぅ…だめ…ダメです…っ!」
セシリアが息も絶え絶えに限界を訴える。
膣内が痙攣するように収縮し、カイルを追い立てる。
「僕も…もう…!」
カイルもとっくに限界に達していた。
ラストスパートとばかり、セシリアの最奥を突き上げた。
「セシリアぁっ!!」
「ぁあっ! あなた…! カイル…っ…さ…んっ…!!」
お互いの名前を叫んだ瞬間、カイルの想いが奔流となって爆発した。
「ああああああぁぁぁあぁぁぁぁっっっ!!!」
胎内にほとばしる熱さに、セシリアも同時に絶頂を迎えた。
背筋を反らせて大きく痙攣させ、叫び声をあげる。
意識が弾けとび、視界が白く染まった。
しばし後、二人は並んでベットに横になっていた。
セシリアはカイルの腕を枕に、甘えるように寄り添っている。
お互いの体温が、先ほどとは違う意味でたまらなく心地よい。
「あなた…。私、本当に…本当に夢みたいです…」
セシリアは眼を閉じたまま、カイルに語りかけた。
「こんなにあなたに愛してもらって…本当に幸せです…」
セシリアはそこで言葉を切ると、カイルの存在を確かめるように擦り寄った。
「でも…幸せすぎてちょっと怖いんです…。眼が覚めたら、これが全部夢だったら…そう思うと…」
「夢なんかじゃないよ」
カイルは不安げなセシリアの言葉をさえぎると、その頭を抱き寄せて、優しく撫でた。
「僕はずっとセシリアの側にいるよ」
セシリアの瞳を真っ直ぐ見つめながら、カイルは言葉を重ねる。
「これからは、僕がずっとセシリアを守っていくから…。だから大丈夫、怖くなんかないよ」
「はい…」
頭に感じる優しい感触が、その言葉が、セシリアの心を安らぎで満たしていった。
そしていつしか、安らかなまどろみが二人を夢へと誘っていく。
「おやすみ、セシリア。愛しているよ…」
「私もです…あなた…」
窓から差し込む月の光が、二人を包み込むように優しく照らし出していた。
(完)