そして始まる新しい物語
ある晴れた春の日、その日は乙女たちが待ちに待った日である。
春の月13日。そう、春の感謝祭である…!
春の感謝祭…それはあまねく乙女たちが一年で最も輝く日である!
あこがれのあの人へ、自らの想いをチョコレートに乗せて伝えるのだ。
……そのはずが……
ここに最も輝いていない乙女(?)がいた。
今年もあげる人がいない…
その虚しさに彼女が気づかされるのは毎年の事である。
4年前、既婚者でも友人としてプレゼントすればいいよね! と思い立ってチョコレートを作ってみたが、夫婦のラブラブバリアに跳ね返
されて近寄れず、渡せずじまい。
結局父親に全部喰われた。
泣いて喜ばれたが、余計虚しくなった。
3年前、ならば町の人たちに日ごろの感謝の念をこめてプレゼントしよう! と思い立ったものの、同世代の男性は全員既婚者だった!
やっぱり近寄れず、町のおじさま達に配って歩いた。
とても喜ばれたものの、やっぱり虚しくなった。
2年前、女同士でもいいよね! と思い立って友人とチョコレートを交換し合った。
現状を再確認し、さらに虚しくなった。
去年、日ごろ頑張ってる自分へのご褒美に! と思い立って自分でチョコレートを作って食べてみた。
どうしようもなく虚しくなった。
そして今年、またこの日がやって来やがった…
そう、セレッソの花の下のベンチに一人座り、暗いオーラに包まれる乙女(?)こそ、我らが正ヒロインのマナたんである!
元々アルヴァーナにはこの風習はなく、町を挙げて花見をする日であったが、セシリアによってこの風習が持ち込まれたのは8年前の事で
ある。
チョコレートと共に想いを伝える、こんな素敵なイベントにアルヴァーナの乙女たちが飛びつかないはずはなかった。
セシリアの故郷では冬の感謝祭だったそうだが、この町では花見と融合し、春の感謝祭として生まれ変わっていた。
今では、想い人と一緒にセレッソの花を見ながら、チョコレートを渡すイベントとしてすっかり定着していた。
そのせいで…
セレッソ広場はどこを見てもカップルカップルかっぷr…
広場中に幸せな空気が満ち溢れている。ぶっちゃけハートが飛び交っている。
だが、その幸せな空気もアンデッド属性になってしまったマナにとっては毒である。瘴気である。
その空気にあてられ、大好きなセレッソの花を満喫することもできやしない。
全く、誰のせいで折角の花見がこんな甘ったるいイベントに変えられてしまったのだろうか!?
…………
あ・た・し・の・せ・い・だ!
ずーん…
マナは気持ちが沈みこんだ。
ダメだ! このままでは更に沈み込んでいってしまう…!
ここはなにか、気持ちが明るくなるようなことを考えないと!
マナは、ここ数日の微笑ましい出来事を思い返してみることにした。
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二日前、彼女が授業を終えると、教え子のラムリアが彼女の元へ近づいて来た。
何か、今の授業で分からない事でもあったのだろうか? そう思っていると…
「あの…っ! わたしにチョコレートケーキの焼き方を教えていただけないでしょうか…!」
聞けば、感謝祭でアルスにケーキをプレゼントしたいので、アルスに内緒でこっそりと教えて欲しいとのこと。
もちろん、可愛い教え子の頼みを断るはずもなかった。
放課後、自宅で彼女と一緒にケーキを焼く事にした。
「それじゃあ始めようか。メモの準備はいい?」
「はい! お願いします」
「それじゃ、まずは小麦粉を量って…」
自分の細かな注意点とかも聞き漏らさずメモし、不明点は一つ一つ質問してくる。
日ごろおっとりしている彼女とは別人のような気合の入りようだった。
ラムリアはマナも驚くほどのスピードで焼き方を習得していった。
「わたしはいつもアルスさんに助けてもらってばかりですから、今回は自分の力でこの感謝の気持ちを伝えたいんです…」
そう言って頬を染めるラムリアはとても可愛らしく、マナも微笑ましい気持ちでいっぱいになった。
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昨日、彼女が店番をしていると、元気な声と共に少女が飛び込んできた。
「マナ先生こんにちはっ! チョコレートくださいっ!」
彼女の親友のセシリーと、その娘のアリアであった。
アリアは籠にチョコレートを次々と入れていく。
「こんにちは、アリア。感謝祭に誰かにあげるのかな?」
マナが笑いながらそう聞くと、アリアは良くぞ聞いてくれたとばかりにっこりと笑った。
「パパとね、アルスにあげるの! 今日、ママと一緒に作るんだ」
アリアはそういって、さらにチョコレートを入れていく。
小さな籠がすでにチョコレートでいっぱいになっている。
「アリア、ちょっと入れすぎじゃないかな?」
それを見てセシリアが苦笑しながら言うが、アリアは意に介さない。
「ううん。大きなチョコレートをいっぱい作りたいの」
「でも、それじゃパパとアルスが食べきれないかもしれないわよ」
「パパと、アルスと、ママと、4人で一緒に食べたいの! そのために大きいのを作るのよ」
「ふふ…それじゃ、頑張って作りましょうね」
セシリアとアリアのやり取りをみて、マナは思わず頬が緩んだ。
アリアは、本当に家族の事が大好きなんだろう。
そんな一生懸命な少女を見て、マナも微笑ましい気持ちでいっぱいになった。
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なったことはなったが…
よく考えてみると、今この場においては余計自分の寂しさを引き立てているだけでは…?
ずずーん…
マナは更に気持ちが沈みこんだ。
ダメだダメだ! このままでは更に沈み込んでいってしまう…!
ここは、現状の問題点の把握と、これからに向けた対策を考えるべきだ!
マナは前向きに考える事にした。
『カイルよりずっといい男を見つけてセシリーを悔しがらせてあげようよ』
『そうね!』
アリシアとそう誓い合ってからもう8年になる。
いつか現れる自分だけの王子様のために、二人して女を磨いてきたはずだった。
だが、現状は未だに変わらず、悲しい一人身である。
そろそろ、乙女という単語にも疑問符が付くようになってきた。
15−18歳ほどで結婚するのが一般的なこの町において、自分達は超晩婚にあたる。
『売れ残り同盟』
恐ろしい単語がマナの脳裏をよぎる。
そもそも、なぜ自分には素敵な人がいないのか?
アリシアはあの性格だから当然として(←オイ)、自分は(公式発表では)世間で大人気の妹系萌えキャラのはずだ。
男性との出会いがないからだろうか?
いや、この町には同年代の男性が少ないとはいえ、旅人や商人など町を訪れる男性がいないわけではない。
実際、マナとて出会いが全くないわけではなかった。
…ある時、トレジャーハンターの青年が町を訪れた事があった。
カイルと同じ冒険者であり、カイルにはないワイルドな雰囲気を漂わせる青年にマナは心惹かれかけた。
だが…
マナは青年とトリエステの森にてデートをしていた。
いい雰囲気になってきたところで、唐突にいかにも強そうなモンスターが現れた!
おびえるマナ、マナを庇うように立つ青年!
なんて王道!
…のはずが…
「真のトレジャーハンターは、逃げ時をわきまえているヤツのことを言うんだ」
青年はマナを置き去りにして真っ先に逃げてくれやがりました。
あたりに満ちる気まずい沈黙、流れる寒い空気。
マナはモンスターに哀れみの視線で見られるという屈辱を味わった。
なお、その青年はその後、ダグラスに完膚なきまで鉄拳制裁を受けて撃沈したのは余談である。
…またある時、旅の吟遊詩人の青年が町を訪れた事があった。
彼は毎日雑貨屋を訪れ、マナに愛の詩を詠った。
甘いマスクから囁かれる愛の言葉に、最初は疎ましく思っていたマナも次第に心惹かれていった。
だが…
結婚指輪は父親のダグラスから奪わないといけないと告げた時、彼はいきなりビビりだした。
一応、決心してダグラスに対峙したものの…
ダグラスの一睨みであっさり逃げてくれやがりました。
なんというへたれ!
…………
オ・ヤ・ジ・の・せ・い・か!!
よく考えれば原因は明白だった。
ほかにもマナに近づいてきた男たちはいたが、皆ダグラスによって撃退されていた。
これはまずい…!
このままでは、自分の魅力とかいう以前に男が近づいてきてくれない!
冷静に考えれば、ダグラスのお陰で変な男に引っかからなくて済んでるような気もするが、そこは気にしたら負けである。
…とはいえ、自分がたとえこの町を出たとしてもあの父親は地の果てにでもついてくるだろう。
雑貨屋も人間関係も全て投げ出してどこまででもついてくる…!
そう思うと、そこまで愛されてる事が嬉しいようなうざったいような…やっぱりうざったかった!
手詰まり…
自分を取り巻く環境自体をすぐに改善する事は不可能、マナはそういう結論に達した。
ずずずーん…
マナはますます気持ちが沈みこんだ。
…余談だが、マナ自身は決して認めようとはしなかったが、明白な原因はもう一つあった。
八年前から女を磨き続けてきたマナであったが、全く磨かれていない八年前と何も変わらない箇所が一つ…
アリシアにあって、マナにないもの…
カイルのようなぺったん派はこの町を訪れる男たちにおいては少数派だったようだorz
いやいや待て! まだ手はあるはずだ…!
マナは気持ちを必死に立て直した。
そもそも、マナの運命の大きな分岐点、それは8年前にあった。
自分の愛した人と、自分の大切な親友との結婚式。
マナは、記憶がない事で悩むカイルの背中を大きく後押しした。
二人が結婚したのはマナのお陰、といっても決して言い過ぎではあるまい。
もちろん、あの選択は正しかったと今でも思っている。
あの時カイルの背中を押した自分を、今でも誇りに思うことができる。
…だが、それでも…
もし…あの時…非情に徹して自分の気持ちを優先させていたら…?
セシリーを失い、落ち込むカイルを自分が慰めていたなら…?
そこには、また違った未来が待っていたのではないか?
いや…まてよ?
まだ、今からでも遅くないのでは…?
たとえば…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「こんにちはカイル! えへっ♪」
「…こんにちは。マナ」
ある雨の日の午後、マナはカイルの家を訪れていた。
「雨の日はヒマなので、遊びに来ちゃった♪ 奥さんいるのに、迷惑だった?」
「いや…別に迷惑じゃあないんだけど。でも、ここのところ毎日だよね」
そう、この一週間、なぜか毎日雨が降り続き、マナは毎日カイルの家に入り浸っているのだった。
…言うまでもなく、マナがアリシアをイチゴで買収し、天候操作をさせまくっているのである。
このままでとは水路が氾濫し、町が浸水してしまうとブライたちが深刻そうに話し合っているのが聞こえたが、そんなの関係ねぇ!
「でもマナ、お店のほうはいいの?」
お茶の準備をしながらごく当たり前のことを聞くカイル。
「雨の日って仕事をする気が起きないから休みにしちゃった♪」
しれっと答えるマナ。
「いやそれ違う人だから!」
思わず突っ込むカイルであったが、マナは華麗にスルーした。
更に突っ込もうとしたカイルであったが、マナの顔を見て言葉に詰まる。
『あまりわたしを怒らせないほうがいい』
マナの笑顔が無言のプレッシャーをかけていた。
「そういえば、今日はアリアちゃんたちはいないの?」
「うん、何でも学校でやらなくちゃいけない宿題があるんだってさ」
…言うまでもなく、その宿題をだしたのはマナである。
学校の施設を使わなければできず、なおかつ時間のかかる料理を宿題として出したのだ。
そして、セシリアは平日はメイドの仕事があるため、夕方まで帰ってこない。
そう…、今ここにいるのはカイルとマナ二人っきり…!
「カイル…。あたしのとっても大事な話、きいてくれる…?」
不意に、マナはカイルに語りかけた。
「どうしたの…?」
突然場の空気が変わったことに戸惑いつつも、聞き返すカイル。
「あたし……カイルのことが好き……好きだよ! 初めて、セレッソの木の下で会ったときから、ずっと好きだったよ!!」
突然の発言にカイルは椅子ごと後ろにひっくり返った。
「いやその依頼もう掲示板から消えたんだけど! それに僕もう結婚してるんだけど!!」
後頭部を抑えながらも突っ込むカイル。律儀な男である。
「たとえカイルの気持ちがどうでも、あたしの気持ちは変わらないわ…うふふふ♪」
「いや健気そうな台詞だけど状況がおかしいから!!」
倒れたカイルににじり寄っていくマナ。
……………………
…………
……アッーーー!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…うふふふふふふ♪
妄想にふけり、怪しい忍び笑いを漏らすマナだったが、ハッと我に返った。
今のは一体なんだったんだろう…?
幸福な空気にあてられすぎて謎の電波を受信してしまったようだ。
あんまりな内容の妄想を思い出して、青くなるマナ。
これはいけない…!
これではカブ毒電波の二の舞だ。
ひとたび汚れ役が定着してしまえば、それを払拭するのがどれほど困難な事か。
先人の失敗からそれを痛いほど思い知っていたマナは、あわてて邪念を振り払った。
…が、ふと正面を見るとムーとスーがドン引きした視線でマナを見ているのに気づいた。
思わず固まるマナ。
これは、何とか誤解だということを伝えなければ…!
「あ、えっとね…?」
「マナせんせーが変な笑い方してる!!」
「こわいの〜〜!!」
だが、マナが話しかけようとした瞬間、二人は悲鳴を上げて走り去ってしまった!
オワタ\(^o^)/オワタ
今度こそ精神に重篤なダメージを受け、マナはぐったりと崩れ落ちた。
ああ…もうこのまま…灰になって大地に還っていくのだろうか…
ベンチに身を預けたまま、マナは薄れ行く意識のなかそう思った。
そのとき…
「あの、すみません…」
声が、聞こえた。
慌てて眼を開けると、そこにはナイスミドルのオジサマがいた。
状況がわからず、戸惑うマナに彼は話しかける。
「あの…ここってどこなんでしょう…?」
「え…?」
予想外の質問に固まるマナ。
「実は私、記憶がないようでして…」
そして、始まる新しい物語…!
Rune Factory3 〜 SeniorSeasons 〜
大好評のルーンファクトリーが新たなシナリオとシステムを引っさげて帰ってきた!
青年、ロリ主人公と来て、今度の主人公はオッサンだッ!!
厳しい競争型社会や、つらい会社生活でお疲れのアナタも、感情移入できること間違いなし!
さあ、アナタも牧場でスローライフを満喫してみませんか?
今作は今までとは趣向を変え、大人の男性をターゲットとしております。
選択肢を間違えると即座にシナリオが詰むシビアなゲームバランスが、あなたのプレイに大人の緊張感を与えます!
また、プレイヤーの負担を軽減するためオートセーブ機能を搭載。
そう、人生はただ一度。安易なやり直しなど利かないからこそ、一回一回のプレイに感情移入することができるのです!
シリーズ伝統のバグは今作も健在!
壁抜け・フリーズなど序の口!
セーブデータ自動削除、ソフトウェア破損、DS本体発火など、よりスパイスの効いたバグがあなたをお待ちしています。
☆新システム:ヒロインコンバートシステム
前作、前々作のルーンファクトリー1、2のセーブデータをコンバートする事で、『売れ残った』ヒロインたちが今作に登場します!
また、年齢の関係上前作では攻略できなかった未亡人たちも今作では問題なく攻略可能!
今までの作品では表現できなかった大人の恋愛をお楽しみいただけます。
さあ、冒険にでかけよう…!!
Rune Factory3 〜 SeniorSeasons 〜
COMMING SOON!
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(\(^o^)/オワレ)