ピート×ナミ
「ナミさん、>>223さんがキャラ濃いってさ」
マークは相変わらずいきなり変な事を言う。
結婚してから早三ヶ月、
これからはパソコンで牧場経営の時代だ、家計簿付けるのが楽になるぞと
タカクラが結婚祝いにこの機械を買ってくれたのはいいが、
ある日機械が壊れた際、サラリーマンに修理してもらった際
イントラネットという装置を付け加えたらしく、夫はそれを使って小説を読むようになった。
あたしも初めは本屋に行かなくても本が読めるようになっていたので
とても喜びながら宮部みゆきの連載を読んだりしていたのだが、
ふとあいつがどんな小説を見ているのかブックマークを見てみた時、
『牧場物語のエロパロ』と書かれたページがあったので
あいつもついにエロ本を読めるようになったかと
しみじみ喜びながらページをめくってみたのだが…
その…村上龍ばりのというか、
あまりにもアダルトメインのお話ばかり見つかったのだ。
ミネラルタウンという町にやって来た青年の話や、
この忘れ谷を舞台にした話(内部告発か?)、
さらにはファンタジー世界のお話で受難体質の少年が
散々異性に責められる小説ばかりあって。
童顔の少年というだけでも私のタイプなのに、
それが時に優しく、時に激しく責められるとなると
あたしはついついキーボードに鼻血を垂らしていた。
自分にはそんな趣味があったのかと改めて
自己の性癖の恥ずかしさを
悔い改めながら。
後でキーボードの血痕が見つかり
ピートにこうやって茶化されっぱなしになったわけなんだけど…
「ナミさん、>>238さんがキャラ濃いってさ。」
「わかってる…あたしにもこんな趣味があるとは…」
しかし、どうにもあの小説は忘れられない。
ラグナという少年を責めてる女性を
自分に置き換えてしまうのだ。
いわゆる、感情移入って奴。
「ナミさんがショタコンだなんて、
初めて知ったよー」
そうか。少年好きの事をショタコンというのか。
茶髪で、優男で、けどどこか愛くるしくて。
そういった感情の呼び名を初めて知った。
けど。
「やっぱり変態だったんだねー」
ピートのこの一言がカチンと来た。
確かにショタコンだから変態なのは反論は出来ないけど、
何故だかこいつには言われたくない。
それにそういう意味ではピートだって…
「…んただって、あんただって!」
思わず、叫んでいた。
「少し触られただけで凄く感じるじゃない!」
ピートが赤面するのに時間が掛かるほど、大きな声で。
「それは、変態じゃあないの?」
大きな声に驚いたピートに、
耳元で追い討ちを言葉でかけてやった。
その手際のよさは、自分でも異常だと思った。
叫んで彼が怯んだ隙にベッドに押し倒し、
ひそかにベッドの下に隠してたファー付きの手錠を彼の両手に付ける。
この間、僅か三秒足らず。
服は脱がせなかったけどまあいいだろう。
これから脱がしつつたっぷり遊べるのだから。
「ちょ、ちょっと何するのナミさん」
「うるさい、おとなしく…しろ」
無理矢理口づけをしてマークを黙らせる。
こいつの顔がますます赤くなるのを真近に見て、あたしは異常に興奮してるのがわかった。
「ピート!」
「はい!」
両手を上に縛られながらも、コイツは懸命に答えようとする。
怯えてるのに強がろうとするのがますます可愛く見えて、
アタシは二度目のべロチューをしてやった。
「さっきは散々変態呼ばわりしてくれたよね?」
「だ、だってナミさんが…ひゃっ!」
さっ、と羽ペンを取り出し、
マークの腕を掌から二の腕までゆっくりと愛撫してやる。
「アタシが変態なら、じゃあアンタだって…」
羽が動くたび、マークが堪えた声を出す。
早くもなく、遅くもなく。
ただ往復するだけの羽の動きがコイツには当たりだったようだ。
「…!んっ!」
あたしの体の下で、微かにあたしと同じ心臓の音が聞こえる。
脈が早まるだけじゃなく、
ただ感じるだけじゃなく。
その感覚がただうれしい。
「あんただって、変態じゃん。」
そう言い切った時、背中に何か込み上げるものがあった。
ピートを征服したような、
支配欲というのが満たされたような。
「違う、ナミさん。違うんだ」
微かに喘ぎながら、ピートが声を出した。
「何が違うの?」
今度は喉の下をくすぐりながらピートの言葉を待つ。
こいつを、屈服させたい。こいつを、あたしの虜にしてやる。
あたしじゃなきゃ生きられないような、
そんな体に…
「…きな人、だから」
小さな声ながら、けど確実な答えを。
「好きな人だから、感じるんだ…!」
こいつは、言ってのけた。
呆然としてるあたしに、ピートは言葉を続ける。
「ナミさんが、好き、だから」
顔をますます赤くして。
「好き、じゃなきゃ、こんなに、ならない、よ」
そういって、繋がれたままの両手で私をぎゅっと引き寄せる。
胸と胸がくっつく感触。ゆっくりと、心臓の音が大きくなる。
「ナミさんだから、こんなにどきどきしてるんだ」
ピートのその一言が、最後の引き金を引いた。