カイル×ジュリア

カイルは今夜も一人、温泉に浸かっている。
他に客はいない。
彼は毎晩日付の変わるころ、大抵寝る前にやってきた。
仕事終わりに温泉に入るなんて、おかしい?何と言われても、これは仕方無かった。
ここで疲れを取ってもう一働き、というのも良いのだろうけど、風呂から上がって再び汗をかく気にはなれなかったのだから。
それにしても、温泉は素晴らしい。
一日働いてすっかり疲れ、寒風に冷えた体が、湯船のへりに寄り掛かって目をつむっていると、文字通り回復していくようだ。
働くのは辛く感じることもあるが、仕事終わりにここに来れば、どんな日でも総括していい日だったと思えてしまう。
こうしてお湯に浸かっている間は、心地良くて何も考えずにいられる。
あるいは、この体を包んでくれている温泉の素晴らしさについて延々と思いを巡らせたり。
あるいは、自分の上がるのを待ちながら、店主の少女は壁の向こうで何をしているのか、と考えたり…。


ジュリアは、雑誌を読みながらのんびりとカイルを待っていた。
彼が上がったら店仕舞いだ。
毎日最後の客であるカイルの為に、こんな時間まで店を開けている。
まあ、ただ鍵を開けて一階にいればいいだけなんだけれど、疲れたカイルのために、毎晩しっかり待ってあげていた。
こうして律義に習慣化しているのは、親切心によるものだと思っている。
そうでなければお風呂屋や自分のイメージのため。
それ以上、他意は無い。多分。


「あ、ジュリアさん、あがりました」
「うん」
カイルの入浴が終わると、ジュリアは立ち上がり、彼を見送る。
「ジュリアさんは寝る前に入らないんですか?」
「わたしは、おみせをあけるまえのいちばんさいしょにはいるのよん、もういっかいはいるときもあるけどねん」
ジュリアがお客にさきがけて入り口の扉に手を掛け、ぐっと、その軽い体重でもって引っ張る。
扉が開くと、外の冷えた空気が入ってきた。
ジュリアの痩せた体には、冷気は少し負担になる。
もっとも、彼女自身は乾燥の方が恐ろしいと常々言っていたが。
「ジュリアさん、寒いですから、ここでいいですよ」
「うん」
せっかくカイルが気に掛けたのに、ジュリアは返事だけして外に出てしまう。
「くらいわね」
「そうですね…」


外の通りは、街灯がその周りだけを黄色っぽく浮かび上がらせていて、その外は目を凝らさなければ真っ暗。
通りの向こう、街灯の途切れた先は、急に暗くなって薄気味悪い。
光と一緒に、海からくる風も吸い込まれていくようだ。
その風は抑揚無く音も無く、通りの向こうに流れ込み続けている。
遠く聞こえる波音の他は、何の音も無い。
こんな時間では、街の住人も皆寝ているだろう、どの窓にも明かりは無い。
不思議な感覚だ。
深夜の街に、こうして二人並び立って、暗闇を眺めている。
カイルと。


「それじゃあ、僕はこれで」
寒さに肩をすくめるジュリアを気遣って、カイルが切り出した。
「そうね。くらいから、ころばないようにねん」
「大丈夫ですよ、慣れてますから」
帰り際、カイルは、ジュリアに向き直る。
「ジュリアさん…」
「?」
緊張した面持ちで、ジュリアを見つめる。
「なあに?」
「また…、明日も来ていいですか?」
「あら、まいにちきてくれてるじゃない。もちろんいいわよ、ふけつなカイルはすきじゃないからねん」
「あ…、はい…」
今のは、カイルなりの精一杯の意思表示だった。
自分達の仲は、少なからず特別な関係だ、と彼自身は思っていたので、ジュリアの気持ちを確かめたかった。
だからわざわざあんな聞くまでもないことを口に出して、反応を窺ったのだ。
これでも言葉にできる限界で、言葉少なではあったが、態度とシチュエーションに乗せて、自分の気持ちが分かるように言ったつもりだったのだが…、やはり回りくどかったか、どうやら額面通りに取られてしまったようだ。
「じゃあ、ジュリアさん、おやすみなさい」
カイルは少し落ち込んだ様子で、それでもジュリアには笑顔を作りながら、帰り道へ向けて、一歩後ろに下がった。
「うん、おやすみ…、カイル」
カイルはジュリアに背を向けると、とぼとぼと帰り道を歩いていく。
その背中を、ジュリアはずっと見つめていた。
寒い中真っ直ぐ立って、カイルが角を曲がるまでずっと見つめていた。
それからジュリアは小さくため息をつくと、家の中に入った。
さすがに薄着で長く外に居過ぎたか、体が震えている。
やっぱり、もう一回お風呂に入ろう。







脱衣所に入ると、湯気をたっぷり含んだ暖かい空気がジュリアの顔に触れる。
寒いところから来て、この空気に触れるときの幸福感といったらない。
嬉しそうに服を畳むと、風呂場へ踏み入る。
しかし、これからというところで、玄関から何か音が聞こえた気がした。
ジュリアは一気に緊張した。
誰かがドアを開けて入ってきた?
まさか、こんな時間に、一体誰が。
カイルか、それとも、別の…。
夜中でもあったし、気のせい、ということも十分有り得たが、ジュリアは元々慎重で気が小さい方だ。
いつもは外向けの鷹揚さの陰に隠れて、人にはあまり感じさせないが。
とにかく安全を確認しないことには気分良くお風呂に入れなかったので、ジュリアは急いでバスタオルを纏うと、ドアの様子を見に行った。
こういう時、やはり一人暮らしの女の子は心細い。
何も無ければ良いのだが、万が一、万が一何かあった場合、ジュリアには身を守る方法など無いのだから。
体を震わせながら、脱衣所の陰に身をかがめて、その向こうの様子を窺おうとする。
誰も居なければそれでいい。
そうだ、きっと気のせいだったのだろう。
そうしてジュリアが陰から周りの様子を確認しようとしたとき、その目の前に、人の影が現れ、視界を覆った。
ジュリアはそれを見上げるかたちで、現れたものが家に入って来た人間であるとすぐに気付き、そしてそれがカイルであることに気付いた。
カイルもジュリアに気付いた様で、驚いた顔をしている。
悪いところに出くわした、というような反応だ。
ジュリアは、床に尻餅をついてしまった。
「あ……、う……」
ショックのあまり、咄嗟に声が出なかった。
突然の事で驚いた、ということもあったが、何より、裸を思い切り見られてしまったことにショックを受けていた。
もちろん、固く巻かれたバスタオルが、太股から胸元までを隠してはいる。
普通の女の子なら、このくらいのことで、そこまで酷くうろたえはしないだろう。
けれど、ジュリアは、着飾るものの無い自分の姿を見られることに、相当なショックを受けていた。
元々ジュリアは人一倍、自分の色々なものに自信が無かった。


唯一自分の目、つまりファッションセンスにだけは絶対の自信があったから、可愛い洋服が似合うように、自分の身体を病的と言ってもいいくらいに磨いた。
でもそれは着飾って初めて生まれる自信でもあり、服が無ければ自分の身体なんかに何の自信も持てなかった。
そして、自分のだめな部分が表出したときの周囲の反応を、ひたすら悲観的に、悪夢の様に想像していった。
だから、ジュリアにとって纏うものの無い自分の体など、総て恥部でしかなかった。
そして、それを見られたことに本気でショックを受けていた。
もちろん、固く巻かれたバスタオルが、太股から胸元までを隠してはいる。
普通の女の子なら、このくらいのことで、そこまで酷くうろたえはしないだろう。
けれど、ジュリアは、着飾るものの無い自分の姿を見られることに、相当なショックを受けていた。
元々ジュリアは人一倍、自分の色々なものに自信が無かった。
唯一自分の目、つまりファッションセンスにだけは絶対の自信があったから、可愛い洋服が似合うように、自分の身体を病的と言ってもいいくらいに磨いた。
でもそれは着飾って初めて生まれる自信でもあり、服が無ければ自分の身体なんかに何の自信も持てなかった。
そして、自分のだめな部分が表出したときの周囲の反応を、ひたすら悲観的に、悪夢の様に想像していった。
だから、ジュリアにとって纏うものの無い自分の体など、総て恥部でしかなかった。
そして、それを見られたことに本気でショックを受けていた。
というのは、しかしジュリア自身の評価だ。
本当は彼女の身体は、白くしなやかで、美術品の様に美しかった。
少なくともカイルは目を奪われていた。
タオルからのぞく脚や、肩や、首筋の美しさに、思考を吹き飛ばされた。
そして自分が手に入れようと欲していたもののあまりの美貌に、改めて度肝を抜かれていたのだった。
そのせいで、彼女の状態に、すぐに気付いてあげられなかった。
「あ……、す、すいません、驚かせちゃって。あの、忘れ物しちゃって……」
カイルは我に返ると、慌てて弁解した。
しかし、落ち着いたカイルは、なんだか複雑な気持ちだった。
ジュリアが自分を見て、恥じらいもせす、ただただ怯えていたからだ。


自分の気持ちが実らない可能性を感じて、焦りが強まっていく。
美しい彼女が手に入らないかもしれないことに、自分は耐えられないだろう。
「ううん、だいじょうぶ。ごめんね、びっくりしちゃって」
落ち着き払ったジュリアの反応に、カイルは顔をしかめた。
「き、きがえてくるね……」
そう言って立ち上がり脱衣所に戻ろうとしたジュリアの手首を、カイルが掴んだ。
「えっ……?」
状況を理解できない彼女を、カイルは乱暴に押し倒した。
「きゃ」
カイルは覆い被さるようにして、ジュリアを見つめる。
何が起こっているのか、何が起ころうとしているのかに、ジュリアは思い及んでいなかった。
いつも街の皆に使っているような人の善い言葉は引き出せても、内心では落ち着きは取り戻せていなかったからだ。
「な、なに……」
「ジュリアさん、どうしていつもそういう態度なんですか……」
「え……?」
カイルは、再び怯えたように自分を見るジュリアを悔しそうに睨みながら、低い声で言った。
「僕がこんなに、いつも好きになってもらおうとしてたのに、好きになってくれてると思ったのに……!本当は分かってたんじゃ無いんですか……、ジュリアさんは、いつも何も分からないみたいな振りして……」
「な……、なにいってるの……」
その訴えは、彼にとっては悲痛なものであったが、ジュリアに分かってもらえるようなものではなかった。
「僕は……、僕はこんなに好きなのに……!」
それは、その言葉は、正しい使い方をすれば、すぐにでなくとも、二人を幸せにしてくれる筈の言葉だった。



カイルは、ジュリアの纏うバスタオルに手を伸ばす。
「あ、や!だめ!やめて!」
何をされるか理解したジュリアは必死に抵抗したが、彼女の細い腕では、ほとんど何の抵抗もできない。
バスタオルが拡げられ、ジュリアの裸体が空気に触れる。
その肌は寒さで鳥肌が立ち、薄い胸の先も固く立ち上がっている。
ジュリアは、目に涙を浮かべながら小刻みに体を震わせている。
引きつった顔に、今にも涙が流れていきそうだ。
カイルに掴まれている腕だけが嫌に暖かい。
「ジュリアさん……」


カイルは固く閉じたジュリアの秘部に触れようとする。
そこはカイルの指一本でさえかたくなに拒もうとした。
恐らく自分でもこれ以上のことはした事がないだろう。
「やだ……やだ……っ」
嫌がるジュリアの声など聞こえないように、カイルは指に力を入れていく。
割れ目にあてがわれた指は、ゆっくりと、周りの肉ごとめり込むように押し入っていく。
「っ……あ!い……あうっ!」
カイルがジュリアの中を押し拡げようとした途端に、ジュリアに痛みが走った。
とてもカイルの勝手な愛撫に耐えられるような状態ではなかった。
さっと血の気が引いていく。
「い、いやあぁっ!だめ!ゆるしてえっ!」
ジュリアは必死に叫び声を上げて、更に奥へ進もうとするカイルの手を止めようとした。
「いや……、もうやめてよ、カイル……」
泣きそうな声で、カイルに訴える。
「……どうしてそんなに嫌がるんですか?」
「だって、だって……、こんなことして、もし、あかちゃんできちゃったら、わたし……」
「……」
ジュリアが、上手く言葉にできない状態でやっと口に出せたのが、そこまでだった。
カイルはついに最後まで気付けなかったが、ジュリアが本当に恐れていたのは、純潔を奪われることではなく、妊娠。
それによって、ジュリアが今まで辛い思いをして守ってきた自分の体型に、取り返しのつかない変化が現れるかもしれない事。
ジュリアを支える唯一のものが壊される事を恐れていたのだった。
その思いは、カイルには届かなかった。
「そんなの……僕、ちゃんと責任取りますから……」
カイルは大きく膨れ上がった自分のものを取り出すと、ジュリアの秘部に押し込もうとした。
「や……っ、だめよ、こんなの、カイル……ああ、ああっ」
ジュリアは再び痛みに襲われる。
尚もカイルが、みしみしと音を立てながらジュリアの中に入っていく。
「いや、あ!ああっ!あう、ううっ、ああ、ああああぁっ!」
涙が溢れ出した。

膜を突き破り、それはジュリアのさらに奥へ達していた。
「あ、う……っ、ジュリアさん……っ」
カイルは快感の中にいた。
力を抜けばすぐに絶頂に達してしまいそうな中で、ゆっくりと腰を動かしていた。
「あぐ、ふ、う……っ」
ジュリアは視界が揺らぐ程の痛みとショックで、涙を流し、呻き声を上げていた。
足の間が熱い。
血が流れ出ているのが分かる。
二人の体が擦れ合い、溢れた血液がジュリアの白い肌を赤く汚した。
逃げる事も、我慢する事もできない痛みの中で、ジュリアは揺さぶられ続けた。
「う、あ……、ジュリアさん……、僕……っ」
「あう、ううっ……」
「くう……っ!」
カイルが絶頂に達し、精液がジュリアの中に吐き出される。
全て入り切らずに溢れ出そうな程の量の精液を腹の中に残され、ジュリアは涙を流しながら床に力無く横たわっていた。
下腹部には擦れた血の跡が、秘部から太股にかけては幾筋も乾いた血液が線をつくっていた。
「はあ、はあ……っ、ジュリアさん……」
「ふ、う……っ、うう……」
ジュリアは、全てが終わって、堪え切れず泣き出してしまった。
裸で、仰向けのまま、両手で顔を覆い、小さく声を上げて。
「……」
カイルはその光景を見て、自分の犯した罪に気付いた。
せめてもの謝罪のように彼女に上着をかけると、逃げる様に出ていった。
家の中にはいつまでもジュリアのすすり泣きが響いていた。



次の日、風呂屋が開けられることはなかった。

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