「おっ、ツナ今帰ったぞ〜」

「あ、お帰り山本。今回は大活躍だったんだって?お疲れ様」

 

返り血を盛大に浴びている親友に労いの言葉を送る。

 

「はは、久しぶりに現場での仕事だったから、ちょっと張り切っちまった」

 

昔と変わらぬ笑顔で何て事のないように言う。

 

「とりあえず報告は後で聞くから、まずはシャワー浴びておいでよ」

「あぁわりいな。すぐに執務室に向かうからちょっと待っててくれなー」

「オレの事は気にしないでゆっくり疲れをとっておいでよ。
成功したんだから、それぐら いは構わないよ」

「いやいやボンゴレ10代目を待たせたとあっちゃ、優秀な右腕が黙ってないだろ」

「あはは、それは言えてるかも。
けど、オレからも言っておくから大丈夫だよ」

「んーじゃあ、せっかくだからお言葉に甘えさせてもらうか。
実は昨日からずっと寝てなくてなー。久々の現場で興奮しちまったみたいでさ」

「ん、それじゃあ明日改めて呼ぶよ。ゆっくり休んでおいで」

「サンキュー、ツナ」

 

ツナが横を通り抜けて行こうとすると、長く伸びた髪が歩調に合わせて揺れている。

 

「なーツナ。邪魔じゃねぇ、それ?」

「ん?…あぁ、髪の毛のこと?伸ばしてるのは後ろだけだし
視界塞いでるわけでもないから特には邪魔にならないよ」

「ふ〜ん…何か動物の尻尾みてぇだな」

 

笑って、尻尾…もとい髪の毛を握って感触を確かめるかのように弄る。
ツナが成すがままになっていると

 

「あ、もう一匹きた」

「え?」

「てめぇー!この野球馬鹿!!小汚ねぇ手で10代目に触ってんじゃねぇ!!!」

 

なるほど。

確かにそこにはツナと同じく後ろだけ髪を伸ばした獄寺が、
髪の毛を盛大に揺らしながら全力で走ってくる。

 

「あぁ、獄寺君もお疲れ様だったね」

「あ、10代目!ありがとうございます!
10代目の為ならあれぐらいなんてこたーないっスよ!」

「あれー?獄寺、お前ボスに会うより先にシャワーなんて浴びてたのか」

「たりめーだろ。10代目にあんな血塗れの姿で…って、そうだ!
お前さっさとその汚い手を10代目から離せ!!!」

「汚いってひでーな」

 

まぁ、獄寺の言う事は尤もである。
先ほどまで戦いの最前線に居たのだ。
しかも山本が得意とするのは刀。
返り血は他の銃などの飛び道具に比べて遥かに多い。
一応拭いてはいたものの、汚いと言われれば反論はできない。

 

「そりゃ悪かったな、ツナ」

「別に構わないよ。オレもまだシャワー浴びてないから
汚れたって別に洗えば良いだけだし」

「お、ツナもまだなのか。
一緒に入るか?」

 

ニカッと、出会った当時から変わらぬ笑顔を向ける。

 

「…覚悟はできてんだろうな、てめぇ」

 

一般人が見たら腰を抜かすであろう声と顔で獄寺が山本を睨み付ける。

 

「獄寺君、落ち着いてよ、ね?」

「嫌だなぁ、オレは落ち着いてますよ、10代目。
落ち着いてなかったら警告なんてしないで殺ってますから」

「あー…わかったから、まずそのダイナマイトは仕舞って。室内では禁止って言ってるでしょ?」

「獄寺、ボスの手を煩わせるなよー」

「あぁ?!誰のせいだと思ってやがる!!」

「やーまーもーとー!獄寺君をからかわないの!
それと獄寺君も簡単に挑発に乗らない!」

「だって、こいつからかうの楽しいだもん」

「っ、果たす!」

 

全然止まる気配のない二人。

 

「二人とも、いい加減にしなよ?」

 

ピタッ

 

ツナが目を細めて酷薄に微笑む。

 

「そんなに体力が余っているようなら
暫くここに戻ってこられなくなるような仕事沢山あげようか?」

 

笑顔が恐い。

 

『遠慮しておきます』

 

二人の喧嘩が収まった瞬間だった。

 

 

 

 

 

「もう、いつもいつも同じ事して良く飽きないね。
…そういう所は本当に10年前から変わってないよね」

 

何処か懐かしむような口調でツナが呟く。

 

「確かにそんなに変わってねぇかもな。
けど、マフィアだからこうじゃなきゃいけねぇなんて決まってるわけでもないしなー」

「まぁ、それはそうなんだけどね。
だからって学生時代のノリで暴れられても困るよ?」

 

ねぇ?と笑顔で同意を求められる。
目が笑っていないツナに
慌てて首を縦に振る二人。

 

「さて、いつまでも喋ってないで早く眠った方が良いんじゃないの?」

「おー、そうだな。
じゃあ、オレは風呂入って寝るわー。
ツナもずっと執務室で詰めてたんだろ?
ツナも早く寝れよー…って、獄寺が居るなら無理だろうけど。
獄寺もあんまツナに無理させんなよ?」

 

ニヤッと笑って去って行く。

 

『山本!』

 

二人の声に振り向かないまま手をヒラヒラ振る山本。

そんな山本の背中を見つめながら
少し照れた表情でお互いを見る。

 

「…じゃあ、とりあえず寝室行くか」

「あ、はい」

 

山本に面と向かって言われたせいで
妙に気恥ずかしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重厚な扉を潜ってツナの寝室に入る。

 

「獄寺君、今回は本当にお疲れ様」

「いえ、オレは大したことはしてませんよ。
…今回は山本のヤローが張り切って前線に突っ込んでいったせいで
ダイナマイトを使う場があまりなかったんスよ」

 

少し不満気に呟く獄寺を見てクスッと笑うツナ。

 

「まぁ、前線から離れている方が安全でしょ。
って、獄寺君か山本のどちらかがいつも前線を指揮してるけど」

「あのヤロー久々だからって妙に張り切ってて、
譲ってやったらほとんど一人で壊滅ですよ。
新人鍛えるチャンスだと思って何人か連れていったってのに…」

「それは是非とも見てみたかったね。
相手も可哀想に…。
いくら小規模の組織だったとは言え、
少人数どころか一人にやられたなんてね」

「同情の余地はないっスよ。
10代目の治めるシマに手出してきた方が悪いんですから。
本当ならオレが一人で潰したかったのにあのヤロー…」

 

ブツブツと文句を言ってる獄寺に思わず笑いが零れる。

 

「ふふ、とりあえず結果オーライって事で良いでしょ?
こちら側には被害無かった訳だし。
それに…獄寺君も無事だったし」

「10代目も、オレが留守の間に何もなかったようで良かったです」

 

ふわりと抱きしめる。

 

少しツナより長い獄寺の髪がさらりとツナの顔にかかる。

 

「獄寺君の髪も随分伸びたね…」

「元々オレの方が10代目より長かったですからね」

 

ツナが獄寺の縛っている髪を自分の眼前に持ってくる。
獄寺も同じようにツナの髪を自分の眼前に持ってくる。

 

『オレが何人にも害される事がないように…強く、もっと強くなれますように…』

 

二人の声が重なり
髪の毛に恭しくキスをする。

 

髪の毛から口を離し
見詰め合って微笑む。

 

「何だかすっかり恒例になったね」

「ですね。
今じゃあ、これをしないと帰ってきた気がしなくて落ち着かないですよ」

 

いつ、どちらから始めた事だったか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

ツナがマフィアのボスに就任した頃は内部の反発が強く、古参の幹部達が密かにツナの暗殺を企てていた。
しかしツナとしては先代達が築いてきたものを壊す気はなく、何とか和解の道を歩もうと努力していたのだ。

だが、幹部達はそんな考えすらも気に入らず、ツナの妥協案を悉く突っぱねた。

他のファミリーとの抗争もある中、内部でも命を狙われて心休まる時なんて一時もない。

過度の緊張とストレスで心身ともにボロボロになっていたツナが
以前よりも狙われるようになったのは当然の事だろう。

そんなある日、狙撃されそうになったツナを寸での所で獄寺が庇い重症を負った。

 

ツナは目の前で獄寺が撃たれた日の事を決して忘れはしないだろう。

 

スローモーションのようにゆっくりと倒れる獄寺。

傷口から噴出す血潮。

苦しそうに呻く声。

撃たれた痛みで浮かべた獄寺の汗でさえも思い出せる。

 

それまで下手に出ていたツナだったが、この事件が起きてすぐ
既に証拠を押さえていた首謀者である幹部達全員に制裁を加えた。

その一件でツナがボスとなることを認めれたのだが、
ツナにとっては苦い思い出である。

 

だからその時に誓ったのだ。

 

自分が守られるほど弱い人間でなくなれば、自分を庇って負傷する人は居なくなる。
その為にはもっと、強く、強くならなければと。

獄寺もそんなツナの気持ちを解ってはいるのだが、それでもツナを守りたいという気持ちもあるわけで。

だからツナに敵対する奴らを率先して倒したいしツナを守って自分も無事であるぐらいには強くならなくてはならない。

 

ツナが獄寺のシャツのボタンを外す。
右の鎖骨の下に皮膚が引きつった痕がある。

そっと壊れ物でも触るかのようにふれる。

 

「傷…残っちゃったね」

 

軽く掠めるように口付ける。

 

「オレにとっては名誉の勲章ですから、消えてもらっちゃ困りますよ」

「けど、オレが弱かったせいで獄寺君が…」

 

顔を歪めて泣きそうになるツナ。

 

「…オレの事で貴方が泣いてくれるのは嬉しいんですけどね。
でも、これはオレが貴方を守れた証拠であり、誇りでもあるんです。
だから貴方が負い目を感じる事は何もありませんよ」

「…うん、ありがとう…」

 

薄っすらと涙を湛えたまま微笑む。

 

ツナの目に溜まった涙をぺろりと舐め
互いに深い誓いの口付けを交わす。

 

 

 

 

 

『この人を守る為、オレが何人にも害される事がないように…強く、もっと強くなれますように…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

反省
何となく書いたらこんな話ができあがりました。本当はこれに続編があって獄ツナになる予定だったのですがこんなところで終了するのもありかと。
ちなみに続く話はツナと獄寺が髪の毛を伸ばしている理由とかなんですけど。ようは願掛けっていうよくある話だからまぁいいかと思って。
ってか、やっと山本が書けるようになってきた!でも、毎回獄寺に10代目に触るなって言われてるだけの気もする…いや、気付かないふりだ!
本誌にあやかって山ツナもそろそろ書きたいんですけどねー。飄々としていて書きづらいです。

追記
何とか後半もアップ。
微妙にシリアスで終わらせるかギャグで終わらせるか迷って、シリアスにしておきました。
ギャグの方はギャグってか、獄寺一人だけおちゃらけた雰囲気でツナが心新たに誓いを立てるって感じだったんですけど、
ここはやはり二人に誓ってもらった方が良いかなと思いましてこっちにしてみましたvvv

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