「君、だれ…?」

「なまえ」

「え?」

「なまえは?」

「いや、ってか君こそ…この部屋にどうやって入ってきたの?」

 

ツナが目の前に突如現れた少年――見た目は小学生くらい――に質問して肩に触れようとしたところ…

 

「いってーーーー!ちょっ、何で噛み付いてるの?!」

「他人にさわられるのがキライだから」

「だからって突然噛み付かなくても………じゃなくて!君は誰で、どこから入ってきたの?!」

「人になまえをたずねる時は自分がまずなのるものだよ」

「あ、そうか…って、人の家に勝手に上がってきた人に礼儀に関してとやかく言われる筋合いはないから!」

「きみがいれてくれたんでしょ」

「はぁ?」

「ぼくは別にだいじょうぶだったのに、勝手にカバンに入れてここまでつれてきたでしょ」

「カバンに…入れた?俺が君を…??」

「もう忘れたの?」

 

はぁと心底呆れたように溜息を零す少年だが、ツナは神に誓っても誘拐なんてした覚えは無い。
ましてやツナが学校に持っていってるカバンはA4のプリントが何とか入る程度の、お世辞にも大きいとは言い難いサイズ。
間違っても人なんて入らない。こんな中に入るのは小型の動物くらいのものである。

 

「ん?小型の動物…?あー!そうだ、さっきの猫は…?!」

「なに?」

「や、そこらへんに黒い子猫いなかった?濡れたままで長い時間放っておいちゃったから風邪ひくかも…」

「だから、なに?」

「え、と…?」

 

会話が全く通じない。子猫の居場所を聞いてどうしてこの子が返事をするんだろう。

いや、ありえない。そんなメルヘンで非現実的な事がある日突然降って沸いたかのように起きるはずがない。
そういう事は漫画の中とかだけの出来事であって、現実に起きるなんてそんなわけがない、が。

 

「まさか…君が、さっきの子猫…なの?」

「だから最初からそう言ってるでしょ」

 

今度こそ本当に呆れたように嘆息してみせる。
幼い容姿だが冷めた表情が不思議と良く似合う…じゃなくて。

 

「嘘、でしょ?」

 

呆然と呟くツナの言葉に若干ムッとしたように少年は睨んでくる。

 

「初対面の人間にうそなんてついて僕になんのメリットがあるのさ」

「そりゃ、そうだけど…。でも、いきなり猫が人間になるなんて普通じゃないから…!」

「…」

 

暫し思案顔になるがスタスタとツナの真正面に近付いてくるといきなり口を大きく開けた。
白くて綺麗な歯並びの中に左右にやたらと尖っている歯があった…。

 

「…八重歯?」

「に見える?本当に?さっき僕にかまれたところ見てみなよ」

「わ、わっ…!」

 

言われたとおり見てみるとかなり傷が深く出血していた。
確かにいくら八重歯が尖っていたってこんなに深い傷ができるとは思えない。

 

「で、でも…どうして猫が人間になれるの?」

「さぁ?できるからできる、としか言いようがないけど」

 

八方塞だ。こんな異常事態に見舞われて一体どうすれって言うんだろう。
その時小さくクシュンと聞こえた。

 

「…よし!考えるのはまず後にしてお風呂に入ろう!」

「げんじつとうひ?」

「うっ、ちょっとそれもあるけど…でも、本当に風邪引いたら困るから。
君が風邪引いたら普通の病院に連れて行って良いのか獣医連れて行った方が良いのかもわかんないし」

「まぁいいけどね」

「じゃあ、そうと決まったら…あ、そうだ!それで君の名前は?」

「なまえをたずねるなら」

「あー俺から名乗るのが礼儀だったね。俺は沢田綱吉。友達とかからはツナって呼ばれてるよ。で、君は?」

「雲雀恭弥」

「猫なのに苗字もあるんだ…ってか鳥?」

 

少年――雲雀恭弥――はジロリとツナを睨みつける。

 

「何かもんくでもあるの?」

「いや、別に文句ってわけじゃ…。ただ変わってるなーって思っただけ。
ごめんな、人の名前をとやかく言うなんてつけてくれた人に対しても失礼だったよね」

「…べつに」

「ん、ありがとう」

 

ツナが笑うと雲雀は一瞬驚いたような顔を浮かべたがツナは気にせずに雲雀を伴って風呂場へと向かった。

 

あとがき
名前出すのにすんごい時間かかりました…。
設定とかきちんと考えないで打ってるので後でオチに困りそう…;;
2006/4/25

 

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