「おい恭弥、今日こそはきちんと指輪のこと説明させてもらうぜ!」 「興味無いって言ってるでしょ?そんなことよりもさっさとかかってきなよ」 「おわっ、いきなり攻撃してくんじゃねーよ!…ちっ、しかたねーな」
結局、今日もまた雲雀恭弥にボンゴレリングのことを説明できなかった。 そんなわけで恭弥が一目置いてるリボーンにリングの説明だけでも頼もうと思って沢田家まで来たのだが…。
「雲雀の事はお前に任せたんだ。責任持ってお前が教えろ」
俺の生徒がそれくらいのこともできないのかと不穏な空気を纏って銃口をこちらに向けてくる元家庭教師。
「でもなーあいつ人の話を聞こうって姿勢が全然みられないんだぜ?説明しながら戦うとあいつ意外に強くてつい本気出しちまうし…」 「どうして本気で戦わない」 「だってあいつプライド高そうだからボコボコにしたらリングの争奪戦に参加してくれなくなりそうでさー」 「…お前はどうして俺がお前をあいつの所に行かせたと思ってるんだ」 「あ?俺の方が恭弥より強いからだろ?強い奴が教えなきゃ修行になんねーし」 「その修行で手を抜いてどうすんだ。言っておくがあいつはボコボコにされたらされっぱなしで終わるような人間じゃねーぞ」 「…じゃあ本気でやっても良いんだな?」 「あぁ、遠慮なくやれ」
そういい残すとリボーンは修行の準備があるからと居なくなった。
「ディーノさん、リボーンとの話は終わったんですか?」 「おぉ、無事に解決したぜ」 「やっぱり雲雀さんのことでですか?」 「そーなんだよ。あいつ人の話を全然聞いてくれなくてさー。話そうにも突然かかってくるしでよ」 「雲雀さんですからねー」
普通の人間が聞いたら理不尽極まりない理由だが、何故だか妙に納得がいく。
「でもそれにしたって、気が付いたら手元にあった意味ありげな指輪の説明くらい普通聞くだろ?」 「まぁ、普通なら、気になりますよね」 『………』
愚問だった。あの雲雀恭弥が普通であるはずがない。俺らは二人して力なく笑う。
「ま、それはリボーンからの助言で何とかなりそうなんでな。明日には何が何でも理由を聞いて貰わないとな!」 「随分と気合が入ってますね、ディーノさん」 「当たり前だろ?事はお前の命にだって関わってくることなんだぞ?!」
突然血相を変えたディーノに驚いて思わずツナは謝る。
「す、すいません。そうですよね、俺だけじゃなくてボンゴレ全体に関わることですから、もっと俺も真剣に考えなくちゃ駄目ですよね」 「…いや、そうじゃないんだ。………だぁーもー!かっこわりぃなー、俺」 「?」
今度は頭を抱え込んでうーうーと唸り始めるディーノに呆気に取られる。
「ディーノさん?」 「あー…今のは別にお前に対して怒ったわけじゃないんだ。…ツナ、笑わないで聞いてくれるか?」 「は、はい」 「あのな…俺、凄く悔しいんだ」 「え?」 「今回のヴァリアーとの戦いのことだよ。正直、俺だってツナと共に戦いたい。ってか、できることなら守ってやりたいんだ。
そう言ってツナの首にかけてあった大空のリングを切なげに見つめる。あまりにも切なそうな顔をするので思わずドキッとしてしまう。
「なのに…!!!恭弥ときたら俺の話をちっとも聞かねぇんだぜ?!挙句の果てにかかってこないと指輪を捨てるとか言うし!」
先ほどのまでの切なげな表情から、綺麗な顔がまるで子供が癇癪を起こしてるかのように一変する。
「…っ、…ぷ、あははははは!」 「ツ、ツナ?!」
面白い話をしてたわけでもないのに、いきなり笑い出したツナにギョッとする。
「はー…すいません。何だかディーノさんが子供みたいにみえてきて…っぷ」 「ひでーな、ツナ…真剣に話してたのに…」 「確かに最初は真剣でしたけどね。最後は雲雀さんに対する愚痴にしかなってませんでしたよ?しかも立場が逆転してるみたいですし」
またしてもクツクツと笑い始めたツナにディーノは憮然とした表情でいるが、俯きながら笑いを堪えてるツナの顔にソッと手を添えて噛み付くようにキスをする。
「笑わないでって言ったのに笑ったから罰な」
そう言ってニカリと笑ったその顔は正しく悪戯っ子のそれである。 あとがき |