「あ〜今日は楽しかったなぁ」
14日の夜、ツナは布団に潜り込んで一日を思い返す。 今日は誕生日ということで、学校が終わった後みんなが集まって祝ってくれた。 獄寺君がビアンキを見て倒れたり、京子ちゃんのお兄さんが乱入したり、 そうそう。ディーノさんからも誕生日には参加できなくて悪いなって電話と、プレゼントが届いたりもした。 今まで生きてきた中で一番多くの人に祝えてもらえたなー。 散々な目と言えば、そんな目に遭わせた内の一人である雲雀恭弥。 今日は学校でも会えなかったし、明日、明後日は休みだから
「雲雀さんのバカ…」 「誰が何だって?」 「ひ、雲雀さん?!」
まさしく今思い浮かべていた、雲雀恭弥その人が窓に立っていたのだ。
「で?」 「え?」 「誰がバカだって?」
笑うのは口のみで、目は全くと言って良いほど笑っていない。
「あ、いえ…!なんにも…」 「何にも言ってないなんて言わせないよ?どうして僕がバカなのかきちんと理由を説明してくれるかな」 「聞こえてるならわざわざ聞いてこなくても…」 「綱吉」 「うぁ、はい!…すいません、ただの…八つ当たりです」 「八つ当たりねぇ」 「…雲雀さん、オレの誕生日祝いに来てくれなかったじゃないですか…」
そう言ってむくれるツナを見て、雲雀は盛大に溜息をついた。
「バカは君の方でしょ…」 「なっ!ひどっ…!」 「酷いのも君の方だと思うけど?」 「…どういう事ですか?」 「君が今日誕生日だったこと、僕に一言でも言ったかい」 「え?………あー!」 「残念ながら僕は聞いてもいない事を知ってたりはできないよ」 「う…ごめん、なさい」 「まぁ、いいよ。何とか間に合ったみたいだし」
時計を見るとまだ12時にはなっていない。
「そういえば、どうして雲雀さんは此処に?」 「もちろん、君の誕生日を祝いに来たに決まってるでしょ」 「でも、誕生日だって事知らなかったって…」 「知らなかったけど、もしかしてって気付いたからね。本当かどうか確認するのに遅くなったけども、 「気付いたって、どうしてそんな事に気付いたんですか?」 「今日学校でいつも煙草吸ってる子が『張り切ってお祝いしないと!』とか言ってたし、 「そういえば、リボーン誕生日の後から見かけないと思ってたら雲雀さんと一緒に居たんですか?」 「いや、赤ん坊はさっき隣町で見つけたばかりだよ。その後すぐこっちに来たから、後は知らないけど」 「リボーンの奴なにやってるんだか…」 「さぁね。それよりも…随分豪華なプレゼントを貰ってるね」
雲雀がツナの部屋をちらりと一瞥したがツナの部屋の床には、部屋のほとんどが埋まりそうなほどの薔薇の花束が。
「まだ他の人のは開けてないんですけど、ディーノさんとフゥ太が薔薇沢山送ってくれて…。ちょっと…多すぎますけど」 「ふぅん、よかったね」 「え?」 「これだけあれば君も嬉しいでしょ」
どことなく不機嫌そうに言う雲雀。
「そりゃあ、嬉しいですけど…。どうしたんですか、急に」 「別に」 「別にって顔じゃないですよ」 「どんな顔してるって言うのさ」 「怒ってる顔に見えますけど…」 「怒ってなんてないよ」
そう言ったきり押し黙る雲雀。ツナは少し雲雀の様子を伺っていたが、意を決して話しかける。
「雲雀さん、いつもオレに言いたいことがあるなら言えって言ってますよね?
ツナにしては珍しく、少しだけ強い口調で言うと、雲雀は軽く目を開いて驚きの表情を出す。
「確かに、それもそうだね。…単に、僕がプレゼント準備できなくて腹が立っただけだよ」 「え?」 「一応、これでもプレゼントとか考えたんだけど、こんな時間だし何も準備できなかったんだよ」
ふいとツナの視線から逃れるように顔を背ける雲雀。 あの雲雀が、自分の為にプレゼントを用意しようとしてくれただなんて…!
「可笑しいなら笑えばいいよ。自分でも可笑しいと思うしね」
少し怒ったような―いや、これは雲雀なりに照れているのだろう―表情で、顔を逸らしたまま自嘲気味に呟く。
「可笑しくなんてないですよ! 「は?」 「えーとですね、オレは雲雀さんに来て欲しかったんです…。
…嬉しいことを言ってくれる。
そのまま勢いよく抱きしめてベッドに押し倒す。 トクントクンとツナの胸の鼓動を聞いて雲雀は良いことを思いつく。
「ねぇ、綱吉。どうして結婚指輪を左手の薬指につけるか知ってるかい?」 「いえ、知りませんけど…」 「左手の薬指はね、昔、心臓に直結していると考えられていたんだよ」 「心臓と?」 「そう」
ツナが不思議そうに自分の左手の指を見つめる。雲雀がそのツナの指を愛しそうに撫でる。
「この指が一番心臓に近い場所…つまり、心臓は心って意味で特別な場所、大切な場所だっていう話らしいよ。 「へぇ〜よく知ってますね」 「昔何かの本で読んだだけだよ」 「でも、そう言われてみれば心臓に一番近い気がしますね」
感慨深げに自分の指をジッと見つめていたツナの指を雲雀が自分の口元まで持ってくる。
「指輪は用意できなかったけど、今日はこれで我慢して?」
ツナの薬指をぱくりと口に含むと、根元まで深く銜え込んでガリッと咬む。
「〜っっ雲雀さん、何するんですか?!」 「指輪みたいに見えない?」
自分の指を見ると、雲雀に噛まれた痕が徐々に赤みを帯びてきて確かに輪のようになってきた。
「見えますけど、結構痛いですよ…これ」
薄っすらと涙を貯めつつも、嬉しそうに笑うツナ。そんなツナを見て、雲雀も満足そうに笑う。
「綱吉はつけてくれないの?」
スッとツナの眼前に自分の手を差し出す雲雀。ツナは雲雀の左手を両手で掲げるように持ち、
「んむぅ、やぁ、ひば、りさん…」
雲雀の指一本に翻弄されるのは癪なので、仕返しとばかりにカリッと咬む。
「そんなんじゃ痕残らないよ?」 「…痛くないですか?」 「全然」 「ん…」
今度は思い切り力を込めて咬む。
「ご、ごめんなさい!」 「これぐらい大したことないよ。…君の痕より、僕の痕の方が長い間残るだろうね」
そう嬉しそうに笑いながら、滲んだ血をぺロっと自分で舐める。
「ず、ずるいですよ」 「ならもう少し強く咬んであげようか?」
少し迷った風だったが、指を雲雀の前に出すツナ。
「ひゃっ?!」
予想していなかった感覚が背中を突きぬけ、思わず変な声があがる。
「冗談だよ。この痕が消える前に、きちんと指輪をプレゼントするから無駄に傷なんてつけないよ」
雲雀は愛しそうにツナの指にキスを送る。 翌日からツナの左手の薬指には痕が消えることはなく、暫く経った頃に、指輪がいつの間にかはめられるようになっていた。 反省 |