「なぁツナ、今日オレんち泊まりにこねぇ?」
「山本部活あるんじゃないの?」
「んー朝練はあるんだけどな。駄目か?」
「やっ、駄目じゃないよ、全然!オレは用事ないから…あっ」
「ん?やっぱ用事あったか?」
「用事じゃないんだけども…何か朝からランボが『ツナ今日帰ってくるのか?』 って何度も聞いてたから、どっか行きたいとこでもあったのかなぁって」
「…へーそうなのか」
「まぁ、ランボは明後日にでも遊びに連れて行くから、今日は山本んちに泊まりに行くよ」
「ん、わかった!オレ今日も部活あるから、7時頃に家に来てくれるか?」
「わかったー。じゃあ山本部活頑張ってね」
「あぁ、サンキューな!」
家に帰るとみんな出かけていたみたいだったので、 シャワーを浴びて準備をする。 友達(恋人でもあるが)の家に泊まりに誘われるなんて 初めての事だったから凄く嬉しい。
まだ時計は5時をまわったばかりなのに、ソワソワして落ち着かない。 手持ち無沙汰でついつい普段はやらない部屋の掃除なんてしてしまう。 けれど待ち切れずに6時過ぎくらいに山本の家に向かう。 ちょっと早いけど、おじさんとも知らない仲じゃないから、先にあがってても問題ないだろう。 そう自分に言い聞かせていそいそと家を出る。
何だかワクワクしすぎて、通い慣れた山本の家までの道がいつもとは違って映る。 山本の家の近くまで行くと、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「山本ー」
「ツナ?!」
酷く驚いてる山本に、やはり早く来過ぎたかもと少し後悔する。
「ごめん、来るの早かった?」
山本の家の都合だってあっただろうに、一人で浮かれていた自分が恥ずかい。
「あの、オレ、出直して来るね」
そう言って引き返そうとするツナを山本は慌てて引き止める。
「ツナ待てって。まだ準備終わってねーけど…ま、いっか」
「準備…?何か用事とかあったの?」
より不安な表情になるツナに山本が苦笑しながら帰らないように手をしっかりと握る。
「用事はツナにあるんだ。だから帰る必要ねぇよ」
「オレに?」
「おー。用事はは家に着いてからのお楽しみな」
訳が分からないけどとりあえず邪魔にはならないみたいなので、竹寿司に向かう。
「ちょっとツナはここで待っててくれっか?」
「あ、うん」
入口で少し待たされるが、すぐに山本が入っていいぞーと声をかけてくる。 ガラリと戸を開けるとそこには… ずらりと寿司が並んでいる。
「おーツナ君、誕生日おめでとう!」
「えっ?あ、そっか、今日オレの誕生日だっけか…」
「おいおい、ツナ自分の誕生日忘れてたのか?」
「だ、だって最近、なにかとバタバタしてるからつい…」
「はは、獄寺とかがが毎日騒いでるもんなー。それより、冷める前に食べようぜ」
「うん!…うわ〜美味しそう…!」
「お、それは武が握ったやつだな」
「え、山本が?!」
「へへ…まぁオヤジのと比べると見栄えわりぃけどな。 味はオヤジの保証付きだから大丈夫だぜ」
照れたように笑う山本。
「もしかして準備って、料理の事?」
「おー、本当はもうちょっと沢山作って、 見た目も上手くできるまでって思ってたんだけどなー。 わりぃな、きちんと作ってやれなくて」
「そんなことないよ! 凄い美味しいし、見た目だってオレから見たらおじさんが作ったのとほとんど変わらないよ!」
「マジで?あー良かったー。せっかくのツナの誕生日だから 飛び切り美味い物食わせてやりたくてさー」
「うん、本当に美味しいよ! ありがと、山本」
「何か照れんなー」
「バカ息子、あんま調子に乗るなよ。 お前なんてまだまだ半人前なんだからな」
「わぁってるよ、オヤジ」
「でも、本当に美味しいですよ?」
「かぁー武、おめぇ良い友達持ったな! 一生大事にすれよ?!」
「オヤジに言われなくてもわかってるよ」
なぁ?と意味深な目線を送ってきて思わずむせ返ってしまう。
「ツナ、大丈夫か?」
「ケホ…ん、だいじょぶ」
「はは、ツナ君不味くてむせたんじゃないのか?」
「ち、違いますって。ちょっと…美味しくて急いで食べ過ぎたんですよ」
「ひっでーな、オヤジ」
「おめぇにはちっときついくらい言っておかねぇと、ちっとも堪えねぇからな」
豪快に笑うおじさんに、苦笑する山本。 最初から最後までずっとこんな調子で楽しく食事ができた。 山本が握った寿司も美味しかったし想い出に残る誕生日だ。
食べ終わった後、山本の部屋に移動する。
「ふぅー食べ過ぎたー」
「そっかぁ?ツナほせーんだから、もう少し食ってもいいじゃねぇの?」
そう言って後ろから抱き付いてくる。
「わ、そんなことないよ。もうお腹いっぱいで入らないよ」
「まー今のままでも充分抱き心地いいけどなー」
「だ、抱き心地って…!」
「そのまんまの意味だけど? …お、ツナ顔赤いけど、エッチな事考えてた?」
「な、ちがっ!山本のバカ!」
ツナは敷いてあった布団の中に潜り込む。
「ツーナー出てこいよ」
呼んでも芋虫のように布団ごと丸まって出てこない。 山本は布団を引っ張ってその中に潜り込む。 小さく丸まっていたツナをぎゅうっと抱きしめる。
「あー、やっぱ抱き心地いいな」
「山本のスケベ…」
「ツナに対してだけな」
「…バカ…」
「ひでーな。オレの事嫌いになった?」
「………好き、に決まってるじゃん…」
「オレもツナが好きだぜ」
ますます腕の中で小さくなるツナを力強く抱きしめる。
「今日はこのまんまで寝ような」
「…うん」
「あ、そういえばツナ。今日よくすんなりオレんちに来れたな」
「どういうこと?」
「あれ?家でチビが騒いでなかったか?」
「チビって…ランボのこと? ランボなら…ってか、家に帰ったらみんな出かけてたみたいだったけど…」
「あーそっか。じゃあツナのおばさんが宥めたのかな」
「宥めたってランボを?」
「あぁ。実はな、あのチビが今日ツナの誕生日を祝うんだって張り切ってたんだよ。 んで、先にツナのおばさんに泊まりに誘って良いか聞きに言った時に、 すげー泣かれてなー。あれは流石に困ったなー、はは」
「だから、今朝ランボがあんなに帰ってくるかどうか聞いてたんだ。 あー…じゃあ明日帰ったら泣いてるだろうなー」
「明日の朝練終わったらオレもチビに謝りに行った方がいいだろうな」
「んー逆に火に油注ぐだけかも…」
「まぁ、確かにツナ独り占めできた方が嬉しいだろうなー。 ならオレはまた今度行って謝っておくか」
「ん、それが良いと思うよ」
「りょーかい。 じゃ、そろそろ眠るか?」
「そうだね。山本は明日朝練あるんだし」
「わりぃな。本当ならもっとツナと色んな事して過ごしたかったんだけどなー」
「…何でお尻触ってるの」
「ん?最後までは無理でも少しだけと思ってな」
「〜っ!山本のバカー!!!」
「あーオレ、ツナバカだからな」
そう言って、まるっきり反省のない声で返事をして、 しかし手の動きは一向に止まらない。
山本家にツナの怒号が虚しく響き渡る。
反省 ツナ誕小説3本目終了!オヤジなノリはディーノより山本の方が似合う気がしてきた…! 爽やかそうでオヤジな山本か、爽やかそうに見えてすんごい腹黒な山本が理想! ツナ誕小説残り一本!雲雀さん頑張ってネタ提供してください><