「うぅ……さ、寒い」

今日は朝からどんよりと重たい雲が空一面に広がっていた。

季節は冬。いつ雪が降ってもおかしくはない時期だ。
初雪はいくつになってもワクワクして楽しみなのだが、どうにも寒いのは苦手だ。
それに朝起きた時に空が暗いと気分までつられて暗くなってしまう。

寒くても布団の中でもぞもぞしていたら、スパルタな家庭教師に蹴り起こされた。
これ以上抵抗しても良い事はないので大人しく布団から出る。やっぱり寒い。

授業の途中で生徒の一人が外を見て「雪だ!」と叫ぶ。
みんなもその声に反応して外を見る。「寒いなぁ」とか「積もるのかな」とかみんな思い思いの事を喋っている。
さすがに暫くしたら先生に注意されて静かになったが。

放課後になり、部活の山本(雨や雪の日は室内での筋トレになるらしい)に別れを告げて獄寺と2人帰路につく。

 

「とうとう降ってきたねー」

 

ツナは自分の口から出る白い息を見ながら言う。

 

「そーっスね。10代目は雪嫌いなんスか?」

「んー…嫌いじゃないよ。けど寒いのはちょっと、ね。獄寺くんは?」

「オレは…昔は嫌いでしたね、あまりに真っ白で」

「白が嫌いだったの?」

「あー…昔、イタリアに居た頃、マフィアになりたくて毎日のようにいろんな組の奴に喧嘩売ってて…
まぁ、ガキでしたからボコボコにされて追い返されるのがオチでしたけどね」

 

苦笑しながら肩を竦める獄寺が続ける。

 

「ある日あんまりにもオレがしつこかったんで本気でやられた事があったんスよ。
で、気がついたら路地裏に血塗れになって放って置かれてて…。
その時に雪が降ってきたんです。動けないオレの上に積もる程に。
それ見てたら自分のやっている事が酷くちっぽけに思えてきて、無性に雪が腹立たしくなって…
あー何かうまく説明できてないっスね」

「…何となくわかる、かな。オレも学校で嫌な事あった時、帰り道で派手に転んじゃってさ。
その時にやっぱり雪が降ってきたんだけど、周りが真っ白になっていく中、
一人だけ汚れてて凄く惨めな気分になったんだ。
何ていうか雪が綺麗すぎて、自分が汚く見えたって言うか…。
だからそれ以来雪が降りそうになると楽しみな反面、思い出してちょっと憂鬱になったりするんだよね。
それにこの空の色がどんよりとしてて重たい気分になるし。きっと雪って言うより空の重さが嫌いなのかな。
…って獄寺くんとはスケールの違う話で悪いけど」

 

へへっと照れたように笑うツナに獄寺は慌ててそんなことないっスと首を振る。
2人してシンシンと降る雪をしばらく見上げていたが、くしゅんとツナが小さなクシャミをする。

 

「大丈夫ですか、10代目?!こんな寒いのに引き止めてしまって申し訳ありません!」

「大丈夫だよ。それにしても本当に寒いね〜」

 

手を擦り合わせて熱を得ようとしていると獄寺が失礼しますと言ってツナの手をそうっと握り、息を吐きかける。
そしてすっぽりとツナの手を包み込み暖める。

「わ…っ、獄寺くん、そこまでしてくれなくても…!」

「いいえ、これで10代目に風邪を引かれてしまっては大変ですから」

 

そう言って何度も息を吐きかけてはツナの手を擦り暖めてくれる。
そんな光景を間近で見る羽目になったツナは恥ずかしくて目線を泳がせる。
そして空をふと見上げてあっと声を出す。
獄寺がツナの目線を辿って空を見上げるが、一面の曇り空から雪が相変わらず降っているだけだった。

 

「どうしたんですか?」

「あのね、同じ色なんだよ」

「え?何がです?」

 

ツナが何を言いたいのかわからず思わず聞き返す。

 

「空の色と獄寺くんの髪の色だよ」

 

言われて改めて自分の髪と空を比べると確かに灰色のような似た色をしている。
ツナはふふっと嬉しそうに笑っている。

 

「確かに似てますけど…どうしたんですか?そんな嬉しそうに」

 

イタズラを思いついた子供のように笑い、未だにツナの手を握ったままの獄寺の手をグイッと引っ張り、
つんのめって前のめりになった獄寺にちゅっと軽くキスをして告げる。

 

―――獄寺くんと同じ色だと思えば、この空も好きになれるかも。

 

 

 

 

 

 

反省

最近あまりの寒さに耐えかねて書いてしまいました。ツナへの愛で雪が溶ければ良いのに(脳みそが溶けたかのような発言だ!)

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