僕に楯突いてきた黒曜中のトップを倒したものの、決して無事とは言えない状態だった。
情けない…僕ともあろう人間がこんな奴の愚策にはまって深手を負うことになるとはね。
らしくない。
『沢田綱吉を人質にした』
そんな一言で体が思うように動かなくなるなんて。
だが、赤ん坊やいつも群れている奴らが付いていながらそんな事態になるはずないし
あの子自身、仮にも僕に一撃入れた人間だ。
こんなやつらに攫われたりするはずないとそう結論付けたのはもう随分と攻撃を受けたあとだった。
これでとりあえず二度と手を出してこようなんて考えないだろう。
見せしめにトップと側近は必要以上に痛めつけてあるしね。
それにしても何だか眠たい。
さっきからフラフラして仕方が無い。
ここのところ情報集める為に昼夜問わず駆け回っていたツケだろうか。
もうこの学校に僕に刃向かう程の人間なんて残ってないし少しだけなら仮眠しても問題ないだろう。
雲雀はそう考え、比較的ガラスの破片などが散らばっていない所に腰を下ろす。
壁に背を預け、目を瞑ると驚くくらいの早さで眠気が襲ってくる。
意識が落ちる直前にあの子が本当に無事かどうか…
そんな疑問が頭をよぎるけど何故か指一本動かすことすら出来ない。
耳元で呼ぶ声が聞こえる。
煩い
体を揺さぶられる。
寝ているのに起こしたら咬み殺すよ？
体を抱きしめられる感触。
暖かい…
そこでやっと意識が覚醒すると視界に広がるのは、泣きそうな表情の沢田綱吉であった。
「雲雀さん！大丈夫ですか？！」
「…」
「雲雀さん…？」
あぁ、やはりこの子は大丈夫だったようだ。特に何処か怪我をしている様子も無い。
だがさっきからずっと泣きそうだ。まさか見えないところに怪我でも…？
そこまで考えて雲雀は、いつの間にかツナの腕の中に横たわっていた体をガバッと勢い良く起こした。
そしてツナの肩を掴み
「何処か怪我でもしたの？」
「え…？」
「したの？してないの？」
「えと、オレはしてないですけど…」
とりあえず怪我はしていないと聞きホッとする。
「あの、雲雀さんこそ大丈夫なんですか？」
「何が？」
「えっ？いや、あの…出血酷いじゃないですか」
鳩が豆鉄砲でも食らったような表情でツナは言う。
そう言われて自分の体を確認してみたら確かに酷いと言われても仕方ないほどの出血だ。
けれども、これは己が流した血よりも、黒曜中の生徒に流させた血がほとんどだ。
「あぁ、問題ないよ。僕の血じゃないから」
「あ…そう、ですか」
一瞬、あまりの血の量に複雑そうな表情になるが、その後、ホッとした顔を覗かせる。
先ほどまでは泣きそうになって、大きな瞳から涙が零れそうだったのに、安心したような顔で微笑んでいる。
泣き顔も好きだけど、やっぱりこの子には笑顔の方が似合ってる。
「良かった…本当に。雲雀さん血まみれで倒れてたから、大怪我でもしたのかと思いましたよ？
いつもならすぐに起きるのに、何度呼んでも起きてくれなくて…」
雲雀の腕を掴んでいるツナの手が震えている。
「…ちょっと眠かったから寝てただけだよ」
「そんな血まみれで寝てたら普通驚きますよ！」
「僕が死ぬわけ無いでしょ？」
「そりゃ…雲雀さんは確かに強いですけど、でも万が一って事だってあるかもしれないし…」
そう言ってまた泣きそうになっている。
自分の為に泣いてくれるのかと思うと妙な高揚感でゾクゾクするが、泣いて欲しくないと思うのもまた事実だ。
「そこに正座して」
「ふぇ？」
「正座。そこに、そう」
雲雀はそんなツナの太股の上に頭を乗せて寝転がる。
「ひ、雲雀さん？！」
慌てて立ち上がろうとするツナの両手を下から引っ張って、浮きかけてた腰を地面へとストンと落とす。
「君のせいでこんなに怪我したんだから、僕が起きるまでこのままで居てね」
起こしたら…わかってるよね？と念を押して、雲雀はまた眠りにつく。
瞳を閉じてても、手に取るようにわかる慌てように思わず口元が上がる。
本当に…らしくない。
一人の人間の言動にこんなに一喜一憂するなんて。
反省
本当にらしくないですよね。なんだよ、この偽雲雀はー！！自分でも反省中です。
世のヒバツナブームに乗っかろうとして大失敗しています。雲雀さんって書きやすいのか書きづらいのかわかんないや。
雲雀さんの話を書くと何故か背景が黒以外にありえないとか思ってしまうんですが…（苦笑）
ちなみに雲雀さんは本当に眠たいだけで、出血の為貧血起こしているわけではありません。
あの雲雀さんがそんなに攻撃食らうはずありませんよ。一撃入れただけでも褒められることですから。
標的63で雲雀さんの美しい顔に傷が出来ないよう祈ってます！！