「獄寺君、誕生日おめでとう!」

 

その日はオレが生きてきた14年間で、
最高の誕生日となった。

9月9日

オレの誕生日である。
イタリアから日本に来て、初めてこの地で迎える誕生日。

イタリアに居たころは、誕生日なんて大して意味のないものだった。
だが、今はこの世に生まれてきたこの日を感謝したい。

この日本で命を懸けて守りたいと思う人ができた。
この方と出会えただけで、一生分の誕生日プレゼントに相当するだろう。

そんな愛しい人はみんなが祝ってくれた後に、こっそりと二人だけでまた祝い直してくれた。

 

 

 

 

今日は10代目のお宅で10代目、リボーンさん、山本、ハル、後はいつものチビ達がいつの間にか来てオレの誕生会となった。

正直14歳になって誕生会なんて照れくさかったけど

 

『今日は獄寺君の誕生会するね!』

 

なんて、あまりにも嬉しそうにしている10代目の顔を見ていたら、そんな気持ちなんて吹き飛んでしまった。

山本やハル、そしてチビ達からのお祝いにちょっとだけ感動したりしつつ、
結局はいつものようにアホ牛が暴れたりで、ドタバタしながらの解散となった。

 

 

 

 

 

片付けを手伝っていると、妙に10代目がソワソワしている。

 

「10代目?どうかされたんですか?」

「あー…あのね?さっきはみんなが居たから渡しそびれたんだけど、実は誕生日プレゼントがあるんだ…。
良かったら貰ってくれる?」

「え!オ、オレにプレゼント?!そんな悪いっスよ!誕生会までしてくれたのに…。それだけで充分です」

「…要らない?」

 

少し眉根を寄せて見上げてくる。

 

「いや、あの…正直に言えば、欲しいです。けど、部下であるオレが…」

「獄寺君はオレの恋人でもあるでしょ?それでも、貰ってくれない…?」

 

そんなわけありません。


あっさりと意見を翻し10代目の小さな手からプレゼントを戴く。

開けても良いか確認してから
綺麗にラッピングを破らないように慎重に開ける。
中に入っていたのは香水だった。

 

「ありがとうございます!へー、オレ結構香水集めてるんスけど、見たことないないっスね」

「ん、その…世界に一つしかないと思うよ?」

「え?」

「オレが作った」

「えぇ?!こ、これ10代目が作ってくださったんですか!!」

「って言っても、市販の手作りセット使ってだけどね」

「いえ、それでも10代目がオレの為に作ってくださったんですから…!すげー嬉しいです、本当にありがとうございます!!!」

 

10代目は照れたように顔を俯けると

 

「学校で煙草の臭いさせて先生に目つけられてるから、
これで少しは煙草の臭いもわからなくなるかと思ってさ。良かったらつけてみて」

「はい!では、早速…」

 

手首にシュッとかけて匂いを確認する。

 

「…どう?オレあまり香水ってわからなくて…気に入らなかった?」

「いえ、とんでもないです!すっげー良い匂いですね」

「そっか、よかったぁ…」

 

ホッとした表情の10代目。
きっと試行錯誤して作ってくれたのだろう。
そう思うと胸の辺りがじわーっと暖かくなってくる。

 

今なら渡せるかもしれない。

 

「あの、10代目…実はオレも10代目に受け取ってもらいたい物があるんですが…」

「オレに?でも、今日は獄寺君の誕生日だよ?」

「プレゼントまで貰っておいて図々しいのは重々承知しているんですけど、誕生日って事で一つ我侭を許していただけないでしょうか」

 

普段は10代目の為に、何をするにしても10代目の事を最優先がモットーな獄寺が、
我侭を許して欲しいなんて…あまりの珍しさにツナは獄寺の誕生日なのに良いのかなという思いより、
その我侭がどんなものなのか気になって頷く。

 

「本当は…来月の10代目の誕生日にお渡ししようかと思っていたのですが、多分きっかけがないと渡せてなかったと思うので…」

 

そういって何かあればすぐに渡せるようにと、常備していた物をポケットから大事そうに出す。
ラッピングをされた小さな袋。
その中には二つのシンプルな指輪が入っていた。

 

「あの、こちらを10代目に貰って欲しいんスけど…」

「…これって、ペアリング?」

「はい。あ、あの別にお嫌でしたら貰って頂かなくても…!!」

「そんなことないよ!ありがと…うわ、どうしよう、すごいうれしーかも…」

 

凄く嬉しそうに片方の指輪を手にとって喜んでくれる10代目を見て、オレは心底ホッとした。

人目がつくところで手を握ったり抱きしめたりすると怒るから、10代目はこういう自己主張する物を嫌うかと思っていた。
きっと困った顔をされるものだとばかり思っていたのだが。
もし困った顔を少しでもされたなら、いつか来るその日まで自分で大切に持っていようと考えていたのだが…
さきほどの嬉しそうな顔にそんな心配も吹き飛ぶ。

 

「獄寺君、ありがとう!」

「いえ、オレの方こそ貰ってくださってありがとうございます」

「あはは、何だか可笑しな日本語だよ、それ」

 

オレの言い方が可笑しかったのか10代目はクスクスと笑ってる。
が、途端に顔を曇らせて

 

「あ、でも学校に持っていったら没収されちゃうよね…?」

「そうですか?オレは特に何も言われませんが…」

「そりゃ、普段から注意しても睨み付けたりするから…恐くて言えないんだよ。
流石にオレがつけてたら注意されちゃうだろうなぁ…」

「そんなこという奴はオレが…!」

「ダ、ダメだよ!…ん〜、何処かにあったと思うんだけど…」

 

そういって10代目は机の中をゴソゴソ探してシルバーのチェーンを探し当てる。

 

「あ、あった!これに通して学校に持ってくよ」

「…」

「な、何でそんなに不満気な顔になるの!?」

「いえ、別に…不満なんてありませんよ」

 

これは本当だ。
10代目に貰っていただいた以上不満なんてない。

ただ…見えない所につけてたら、折角ペアにした意味がなくなるからちょっと面白くないだけだ。

 

「あー…じゃあ、二人っきりの時は指につけるから。それじゃあダメ?」

「…ホントっスか?」

「うん。そーだ、獄寺君もいつもはチェーンにつけておいてよ」

「え?オレはいつもつけておきますよ」

「…それでも嬉しいんだけど、オレと同じにして二人だけの『秘密』にしない?」

「!!!」

 

この方は一体いくつのプレゼントをくれれば気が済むのだろうか。

 

「わかりました…!!」

 

 

 

 

 

それから数日後。

 

「なぁ、最近ツナと獄寺さー、胸の辺りに手やってるけど何か意味あんのか?」

 

山本のその質問に、オレと10代目は顔を見合わせて同時に言う。

 

『秘密!』

 

 

反省
そんなわけで獄寺誕生日おめでとう〜vいつも甘いのしか書いてないから、あんまり特別な感じはしないけど、これが私の精一杯です!
何か最近気付いたけど、自分は一つの小説に色々と萌えポイントを詰め込みすぎです。おかげで話がどんどん長くなって収集つかない…(涙)
これかなり削りましたよ。本当は途中で展開が変わるほどの分岐点とかもあったのですが、それらはまた機会があれば使ったり使わなかったり…。

 

 

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