「っ、ディーノさん・・・」

 

耳元で熱っぽく囁き、顔を紅潮させ、潤んだ瞳で見上げ、しっとりとした口付けを頬や額に落としてくるツナ。

できることなら、この場で押し倒して、息継ぐまもなく唇を奪って、声が嗄れて、足腰が立たなくなるほど滅茶苦茶に愛してやりたいと思っているのだが。
だが、困ったことにツナは今正常な状態ではない。
俗に言う酔っ払いである。

そして何よりまだディーノはツナに片思い中でもある。

酒を飲んだら普段より口が軽くなるって言うから、ツナが自分をどう思っているのか言ってくれないかと思って
軽い気持ちで飲ましてみたのだが、まさかツナがこんなに弱いとは思ってもみなかった。

 

 

 

 

山のような仕事をさっさと終わらせて、可愛い弟分が居る日本へ急ぐ。
マフィアのボスにはおよそ向いていないであろう少年、沢田綱吉。
今はまだダメツナと言われているが、リボーンに教育されるようになってから少しずつだが成長してきている。
ツナ自身も含めて、気付いているものは少ないがツナの魅力に気が付いている者はすでに数人いる。

オレはキャバッローネのボスである為、おいそれと日本にずっと在住しているわけにはいかない。
情報やデータのやりとりはパソコンを使えばできるので、その間は日本に居られるのだが、
抗争やボス同士の対談となるとオレが直接現地にいかなければならない。
しかも数日で終わるものではないので、暫くはイタリアから離れることができない。

だから、ちょっとしか会えない時間でツナに甘えたり、甘えられたりしたいと願うのは当然の欲求だろう。

けれど、可愛いツナは極度の照れ屋。日本人の多くがそうであるように、感情の表現は外国人に比べて大人しい。

 

(まぁ、そんなツナも可愛いけど)

 

だが、オレとしては自分の感情に素直なツナを見てみたい!
できることなら、ツナがオレをどう思っているか率直も意見を聞きたい。

そんな理由から土産は酒となったのだ。
ツナにも飲みやすいように、甘い果実酒を土産にいざ沢田家へ。

 

 

 

その日は珍しく、ツナの家にツナ以外居なかった。だから久々のツナとの再開を、誰に邪魔されることなく堪能できた。

 

「ツナ〜元気にしてたか?何か変わったことはなかったか?」

 

そう言いながらも、頭を撫でたり抱きしめたりのスキンシップも忘れない。

 

「いつも通りですよ。リボーンに死ぬ気弾撃たれたり、獄寺君がダイナマイト爆発させたり・・・。ディーノさんこそ怪我はしてませんか?」

「一応これでもマフィアのボスだからな。そう簡単に怪我することはないぜ?」

「でも、ディーノさんすぐ転んだり階段から落ちたりするし・・・」

「ツ〜ナ〜。」

「あはは、すいません。・・・ホント怪我がなくて良かったです」

「心配してくれてありがとな。あ、そうだ今日はツナに土産持ってきたぞー」

「?何ですか・・・って、これお酒じゃ・・・オレまだ中学生ですよ」

「まぁまぁ、固いこと言うなって。社会勉強だと思って」

「でも、オレ酒なんて飲んだことないし・・・」

「・・・せっかくツナの為に色々探してきたのに・・・飲んでくれないのか?」

 

とても大人(そしてマフィアのボス)とは思えないような、拗ねた顔で言ってくる。
そんな表情をされてしまっては、ノーと元からあまり言えないツナには更に言えなくなってしまう。

 

「それじゃあ、ちょっとだけなら・・・」

「よっし!じゃあ、台所行ってグラスとってくるな!」

 

パーっと明るい顔になったかと思うと、グラスをとりに階下へ行くディーノ。
久々に会ったけど、やっぱりディーノのペースに振り回され、そして振り回されるのを心地良いと感じてしまう自分にツナは自分の気持ちを再確認する。

 

『やっぱり、ディーノさんの事…好きだなぁ』

 

出会ってそう経たない内に、憧れから好意に変わった。そして少し前に、寝ているディーノさんに抱きしめられて、額にキスされてから
…想いは一気に膨れ上がっていった。
だが、ディーノの自分に対する想いは可愛い弟分に対する想いであって、恋愛対象のそれではない。
ディーノはスキンシップが激しいので、うっかりと勘違いしてしまいそうなる。そうこう考えているうちにディーノが戻ってくる。

 

「待たせたな!さて、んじゃ早速飲むか!」

 

ツナにグラスを持たせると底に少し貯まる程度に注ぐ。
注がれたお酒を、暫くは匂いを嗅いでみたりしていたが、意を決したように舌先でチロリと舐める様に飲む。

 

「あ・・・、甘くて美味しいかも・・・」

「良かった、ツナに飲めそうなの探してきた甲斐があったぜ」

「ん、これならまだ飲めそうです」

「おっ、ならもうちょっと注いでやる」

「ディーノさんもどうぞ」

「わりぃな、サンキュー」

 

そんな感じで、少しずつだがそれなりの量を飲んだ頃、異変は起きた。

 

「っはぁ・・・何か熱いですね」

「何だ?もうこれくらいで酔ったのか?」

「酔ってはいませんよ〜。でも、熱い・・・喉が凄く乾いて・・・ん〜水」

 

微妙に呂律が回らない口調で話し始めたかと思うと、水と言ってグラスに残っていた酒を一気に飲み干す。

 

「!!おい、ツナ!それ酒だぞ?!」

「う〜熱い・・・」

 

只でさえ軽く酔っていたのに、一気飲みしたことで急激に回ったようだ。
紅潮した顔に、潤んだ瞳で、身体がゆらゆらと揺れている。そのままパタリと倒れそうになるのを、寸前のところでディーノが自分のほうへ抱き寄せる。

 

「ツナ、大丈夫か?」

「ん〜?あーディーノさんだぁ。お久しぶりですー」

 

いや、オレさっきから居たから。
そんなツッコミを入れつつ、ツナの酒の弱さを知る。

不意に、ディーノの頬に柔らかい感触が伝わる。何と、酔ったツナがディーノの頬にキスをしたのだ。
しかも、それは頬だけには終わらず、目尻や額にまで及ぶ。そのまま口に向かってきたツナの唇を塞いで心行くまで堪能したいのが本心だが、
酔った勢いで初めてのキスをしたとあっては後でツナが後悔してしまうかもしれない。
そしてその後悔するようなことの原因を作ったのは紛れもなく自分になってしまう。
そんなことになってしまっては、ツナに嫌われるかも。
そこまで考え、自分の欲望を何とかなけなしの理性で押さえ込み、ツナの口を手で遮る。

 

(うわっ、やわらけー!・・・ちょっとだけなら・・・いやダメだ、あ〜でも・・・)

 

などと、ディーノの理性がが早くも欲望に負けそうになっていると、ツナが手で塞がれたままでむ〜と不満気に抗議する。

 

「なんで、邪魔するんですかぁ」

「あのなぁ、ツナ。ファーストキスは好きな人とした方がいいだろう?」

 

確かに、今すでにもの凄くキスしてやりたいが、こんな、酔った勢いとかではなくもっとしっかりと気持ちの確認をした上でしたい。
まぁ、近いうちにオレを好きにさせて、オレが貰う予定だけど。

ん〜と唸って、何やら思案顔だったツナだが、やがてニッコリと笑顔でわかりました!と言う。
残念に思いつつも、近い将来ツナのファーストキスの相手になってやると心に固く誓うディーノ。
が、視界が翳ってきたので意識を浮上させると、眼前にツナの可愛い顔がアップになっていた。
考える前に咄嗟に顔を少し引くと、柔らかく甘いツナの唇が、ディーノの唇に近くに触れる。

 

「!ツナ、お前人の話聞いてたか?」

 

それとも酔っ払っていて既に、自分が何をしているかもわからないほど泥酔しているのか。

「ちゃんと、聞いてましたよー」

「だったら、なんで・・・」

「・・・ディーノさんはオレのこと嫌いですかぁ?」

「嫌いなわけないだろ!」

「じゃあ、オレのこと好き?」

「・・・あぁ!」

「それは恋愛対象として・・・って意味でですか?」

 

酔いながらも真剣に話してくるツナの、真意を測りかねて詰まると

 

「前に、オレの額にキスしたのはどうして?」

「!っ、起きてたのか?!」

「どうしてしたんですか?」

 

もう一度、静かに質問をする。

 

「それともあれは単なる挨拶程度のものだったんですか・・・?」

「・・・違う。オレはツナを・・・そういう対象として見てたし、それはこれからも変わらない」

「だったら、どうして唇に、キスさせてくれないんですか?」

 

だんだんと泣きそうな表情になっていくツナ。

 

「いや、だってツナはクラスに・・・好きな女の子が居るってリボーンが言ってたぞ?その子としたい・・・とかって思ってるんじゃないのか?」

「京子ちゃんはオレに初めて話しかけてくれた女の子だから他の人より特別で・・・。優しいし可愛いし憧れてるっていうのもあります。
けど、ディーノさんはもっと・・・特別なんです」

「!!!それって、オレの事、特別に、恋愛対象として好きってことか?!」

「さっきからそう言ってるじゃないですか・・・」

 

いや、言ってないから!

 

「って、事は・・・ツナはオレを好きだし、オレもツナの事大好きだから・・・両想いってことだな!」

「そうですねー」

 

へらりと笑って相槌をうつツナ。
何だかいまいち締まらない感じだが贅沢は言っていられない。こんなことなら酒なんて飲ませないで、直球で言えば良かった・・・!

ディーノが悶々と考えていると、ツナが

 

「じゃあ、ディーノさんにキスしていい??」

 

と、何とも可愛らしい事を聞いてくれる。
オレの方から顔を近づけていくと、ツナはソッと瞳を閉じる。そしてオレの唇はツナの唇のすぐ近くへと・・・。
閉じていた瞳が開くと、そこには不満気な色が見える。

 

「・・・ディーノさん、どうして?」

「ん〜、ホントならしたいんだけどな。けど、ツナから告白させちまったし、それに、ツナ少し酔っ払ってるだろ?
だから、酔っていない時に改めてオレから告白させてほしいんだ。」

「・・・ディーノさんが、してくれるの?」

「あぁ、オレがどれくらいツナのこと好きか教えてやるよ。・・・それまでお預けってことで良いか?」

「・・・うん!」

 

花が綻ぶような微笑みで返事をする。

 

 

 

翌日。
仕切りなおしてディーノから告白したのだが…
ディーノが緊張して、思い描いていたような告白をすることができなかったのはディーノとツナだけの秘密である。
どうやらディーノも酒のおかげで、普段より大胆になっていたらしい。

 

 

 

 

 

反省
わーなんだろう・・・この小説は。
ところどころギャグに走ったり、文章に統一感がありませんねー。
まぁ、雀が鳴き始めている時間まで頑張って書いたのを言い訳に、近いうちに修正いたします><
あー何かうちのディノツナ、ディーノがへたれ属性かもしれないです。
へたれは獄寺だと思ってたのに・・・!

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