「10代目、ご飯できましたよー」
キッチンからひょいと顔を出してツナに声をかけるが返事がない。 起こそうとベッドに近付くと寝返りをうったせいかブランケットはすでにかかってなく、シャツが捲れて白い肌が目に映る。
「ん…やぁ…」
妙に鼻にかかったような色っぽい声がツナの口から洩れ、獄寺は反射的に手を退ける。 獄寺はツナの事を慕っていた。10代目としても、一人の人間としても。
10代目の夢を見て起きた朝。爽やかな天気とは裏腹に獄寺は呆然としていた。
夢の中でのツナは一糸纏わぬ姿で獄寺に組み敷かれていて、頬を桃色に染め獄寺を求めてきていた。
男同士だから報われる事はないとわかっている。けれど、成長してしまった想いは簡単に消せない。
そんな状態の自分に今のツナは目の毒以外の何者でもない。変な気を起こす前に起こさなければ。 標準より小柄なツナだったが、触ると程よく柔らかく、そしてとても滑らかな触り心地だった。 シャツのボタンを一つ一つ外していくと、白い肌に淡く桜色に色付く胸が目に入る。 ピンと勃った胸に調子に乗り、右手をツナの股間へと這わせる。布越しに輪郭をなぞるようにゆるりと撫でる。
「んっ…あ、れ…ごくでら、くん…」 「!」
獄寺の動きが固まる。
「…なに、これ」
嫌われる、軽蔑される。何か言い訳はないかと探すが、勉強はよくできるはずの頭はちっとも働かない。
「10代目、あの、オレ…!」
どうしようとしたのかは自分でもよくわからないが、とにかく何か言わなければと思ってツナの両肩を掴む。
「やぁっ、ん…」
何とも艶めかしい声がツナの口から聞こえた。様子が何やらおかしい。獄寺が触れた両肩を自分で抱くようにして俯いている。
「10代目…?」 「ご、獄寺君。どうしよ、オレ、オレの身体なんか変だ…」
泣きそうな顔で獄寺を見上げてくる。
「…変ってどういう風にですか?」 「身体が熱くて…その、あの…」
もじもじと両足を擦り合わせるようにして、言い難そうに俯いていく。
「…10代目は、その…自慰とかしたことないんですか?」 「じ、い…?なにそれ?」
初めて聞いたとばかりの顔をしているツナ。
「ここを触ったりしたことはないんですか…?」 「ひゃっ!や、ん…何するの?!」
獄寺は不意にツナの股間に触れたのだ。
「気持ち良いでしょ?」 「わっ、わかんなぃ…止めて…!」 「止めても良いんですか?」 「え?」
ツナの言ったとおり手を離す獄寺。ツナは獄寺を見つめるが、やがて赤面してまた足をもじもじと擦り合わせ始める。
「辛いでしょ?10代目、ここがこんなになるのはおかしな事ではないんですよ。二次成長を迎えた男なら皆なりますから」 「そうなの?獄寺君も??」 「えぇ。ですから、何もおかしくはないんですよ」
ホッとした表情を浮かべるツナだが、すぐに困惑したように視線で問いかけてくる。
「あ、の…これ、どうしたら元に戻るの…?」 「簡単ですよ」
そう言うとまた手をツナの股間へと伸ばす。今度は先程よりも激しく動かす。
「あっ…あ、やぁっ…」
獄寺の手の動きに合わせて、ツナの口から切なげな声が洩れる。
「えっ?ちょっ、獄寺君…!あっ、だ、めぇ…!」 「直に触れる方が気持ち良いでしょ?すぐ楽になりますから…」
獄寺が言ったとおり、すぐにツナは獄寺の手の中で達する。
「…それ、オレが出したの?」 「そうです。気持ち良いと出るんですよ。それにしても…学校の保健の授業で習いませんでした?」 「保健の授業の時、骨折して入院してたから…」 「そうだったんですか…」
暫く沈黙が流れるが、獄寺の頭は今までにないくらいフル回転をしていた。 獄寺の予想通り、ツナには性的な知識が全く無かった。
「10代目、もし…宜しければ、オレがこれからも保健教えて差し上げましょうか?」 「え…?」 「今回みたいになった時、どうすれば良いかとか…知りたくないですか?」 「でも…迷惑じゃないの?オレの…その、…触ったりとかして…」 「いえ、全然。むしろオレは10代目に教える事ができて嬉しいですよ。
確かにツナのクラスでもたまに猥談とかを言ってる男子が居るが、ツナはその会話のほとんどをわかってはいなかった。 今でこそ皆と普通に話しているけど、少し前まではダメツナと呼ばれ皆に敬遠されていたのだ。 ツナはこくんと頭を縦に振る。
「じゃあ…お願いしても、いいかな…?」 「もちろん良いですよ、10代目…」
叶わないと思った願いだった。 こうして、暗く思い詰めた獄寺と、何も知らない無垢なツナとの奇妙な関係が始まった。 反省 |