最近、獄寺君の事を見るとドキドキする。
原因は獄寺君がオレにした『治療』だ。
獄寺君にとってはただの治療だったんだろうけどオレにとってはあれは衝撃的な事件として記憶に残った。

だって、あんなに他人と接触したことなんてなかったしそれに・・・
それに、体の奥からジリジリ熱くなるようなフワフワと体が浮くような不思議な感覚を覚えたのは生まれて初めてだったから。

しかも、自分の意思に反して出た女の子のような甲高い声。
ただ『治療』してくれただけだったのに一人で変な声をあげて
あまつさえ、ほんの少し、本当に少しだけ気持ち良いと思っていたとは獄寺君には絶対に言えない。

『治療』の為とは言え、同性に首筋舐められて気持ち良いと思ってしまうなんて。
獄寺君の優しさを踏みにじるようで、自己嫌悪に陥る。

・・・でも、今のこのドキドキする気持ちはそんな自己嫌悪や羞恥心だけではないような気がする。

もう少しで何かがわかりそうなんだけど・・・でも、気付いてはいけないことのような気がした。

 

 

 

 

「それじゃあ、10代目遅くまでお邪魔しました」

「ううん、こっちこそいつも勉強教えてくれてありがとう」

「いえ!10代目の為ならこれくらいどうってことないっスよ! ではまた明日お迎えに上がりますね」

「うん、気をつけて帰ってね」

「はい!じゃあ失礼します」

 

今日は大量に宿題を出されて一人ではとても終わらない量だったので獄寺に手伝ってもらうことにしたのだ。

おかげで、何とか8時くらいに終わった。獄寺が居なかったら、きっともっともっとかかっただろう。
というか、今日中に終わらなかったに違いない。

遅めの夕食を食べる前に、一度部屋に戻って今日やった宿題をカバンに詰め込む。せっかくやって明日忘れたら困るし。

その時、部屋の片隅に何か光る物が見えた。

 

「あれ・・・?何だろう」

 

それは指輪だった。

そういえば宿題をやっているときに、ランボがまたリボーンを殺しに来てリボーンに相手にされなかったもんだから獄寺に絡んできてたっけ。
獄寺には部屋でダイナマイトを使わないようきつく言ってあったので彼はそれを忠実に実行して、違う物を投げたんだ。
手近にあった硬い物・・・つまり指輪を。どうやらそのまま忘れていったみたいだ。

その指輪を拾って、何気なく自分の指にはめてみる。どの指にはめてみてもブカブカで、獄寺が付けているように様にならない。
黙っていれば格好良く、ファンクラブまで出来ている獄寺がつけると様になるのに自分がするとまるで子供が玩具で遊んでいるような感じに見えて仕方ない。
同じ年のはずなのになぁと思いながら、それでもまだ諦めずに違う指にはめてはため息をつく。

神様は不公平だ。
片や何をやっても出来ない人間。片や何でも出来てしまう人間。
勉強、運動、それに男のオレからみても綺麗な顔をしている。
『治療』してもらった時、唇を舐める仕草をしたがあれは今思い出しても胸がソワソワと落ちつかなくなるほど獄寺に似合っていて格好良かった。

転校してきた時は、みんなあまりの恐さにビクビクしてたけど暫く経ったら慣れていった。
というのも、オレに対してはとても優しかったから。
それを見て話しかける人(主に女子だけど)が少数ではあるが増えてきた。たまに女子がしつこく話しかけてキレるけど。
自分やオレにとって害がなければ割りと普通の態度で接するのをみてオレをバカにしない限り、危険は無いというのがクラスでの暗黙の了解だ。

そう。獄寺君はオレだけに優しいんだ。
自惚れている訳ではないけど、獄寺君がオレ以外に笑顔で接しているのを見たことがない。
オレ以外に対しては、睨み付けているか全くの無関心だ。

クラスメートに話しかけられて答えはするが、たいして記憶には留めていないようで実はいまだにクラスメートの名前を覚えていなかったりする。

そんなことを知っているのはオレだけだし、オレにしか笑顔を見せないということに優越感を覚えてしまう。

その時、指から指に移動させていた指輪からフッと匂いがした。
嗅ぎなれた火薬とタバコの匂い。獄寺の匂いが。

瞬間、獄寺の膝に抱きかかえられた事を思い出し心臓が煩いくらいになり始める。どうしてこんなにドキドキするんだろう?
何故同性にあんなことをされて嫌だと思わなかったのだろう?
そして獄寺にただの治療と言われた事が、胸にチクリ刺さり何とも言えない気分になったのはどうしてだろう?

 

そうか、オレ、獄寺君のことが好きなんだ。

 

どうしてこんな簡単な事に気付かなかったのだろう。
獄寺君が笑顔をオレだけに向けてくれることに優越感を感じたり首筋にキスされても気持ち悪いと思わず、逆に気持ち良いと思ったりしてたのは好きだったから。

だって、もしこれが違う人だったら?それこそ死ぬ気で逃げる。

だが、獄寺は男だ。もちろん自分も男。同性相手に好きなんて言われたら、普通気味悪がるだろう。
いや、優しい彼の事だから、例え嫌でもボスだからと普通どおりに接してくれるかもしれない。
けど、それは彼に負担をかけてしまう。好きな人に迷惑をかけるような事は絶対にしたくない。
だから考えないようにしていたのに、あんな事するから・・・。

気付いてしまったけど、この想いは胸の奥底に閉まっておこう。言ってしまえば気味悪がって離れていってしまうかもしれない。
それは、それだけは嫌だった。自分の気持ちを隠すだけで、今まで通りの付き合いができるならいくらでも自分の気持ちを隠し続けよう。

だから、隠し続けるから最後に、これぐらいは許されるよね・・・?

獄寺の匂いがするその指輪を、大事に両手で持って神聖な儀式を行うかのように指輪にソッと口付ける。
静かに一筋の涙を流しながら・・・。

 

「さて、さっさと夕食食べに・・・」

 

涙を拭って、部屋を出ようとしたそのとき

 

ドタ!ガタガタガタン!

 

階段のほうから凄い音が聞こえた。ドアを開けて、階段の下を見ると・・・。

 

「ご、獄寺君?!」

 

そう、階段下に獄寺君が居たのだ。正しくは落ちていたのだが。

まずい!まさか今の見られたかも。そう思うと一気に血の気が引いていく。
せっかく気持ちを隠し続けようと決心したばかりなのに最初で最後の想いを込めたその行為でばれてしまっては悔やんでも悔やみきれない。

 

「獄寺君、帰ったんじゃなかったの」

 

努めて平静を装って聞く。階段から落ちたのが恥ずかしかったのか少し顔を赤くしながら答える。

 

「あ、えっと・・・実は指輪を忘れたことに気付いて・・・。明日でも良かったんですが、もし10代目が届けにきてくれたりしたら手間をかけさせてしまうと思って。」

「そう・・・。あの、さ。ごくで・・・」

 

そこまで言いかけたときに、大音量に驚いた母さんが来た。

 

「どうしたの?今の音。あら、獄寺君じゃない。どうしたの?」

「えぇ、忘れ物をして、それを取りに来たのは良いんですけどちょっとドジって階段から落ちてしまったんです」

「あらあら大丈夫だった?」

「大丈夫です!大したことはありませんよ」

「ふふふ、やっぱり男の子は逞しいわねぇ」

「いえ、階段から落ちるようじゃまだまだです」

 

はははと笑いながら、呑気に会話をしている二人。でも、今のオレはそれどころじゃなくて・・・。
どうやって聞こうかと迷っていたら

 

「10代目のお部屋に、あのアホ牛に投げつけた指輪落ちてませんでしたか?」

「うん、あったよ。・・・これでしょ?」

「あ、どうもすいません、10代目。」

 

オレが指輪を持っている事を知っていた素振りはないし指輪を渡す時も、至って普通の態度だ。もしかしたら見てなかったのか。

玄関まで見送りに行き、そこに行くまでもいつもと変わらない態度。大丈夫だったみたいだ・・・。

そしてドアを開けてバイバイと別れを告げてドアを閉めようとした瞬間、獄寺君が10代目と呼ぶ。

獄寺君の方を見ると、真剣な表情をしている。駄目だ!やっぱり見られていたんだ。
この綺麗な目が、一瞬後には軽蔑の眼差しに変わるんだ。絶望的な思いで、獄寺君を見つめていると予想していたような事は起こらず
代わりに獄寺君は指輪をまるで壊れ物を扱うかのようにソッと持って唇まで運んで口付けた・・・。

そして一言

 

「10代目、好きです」

 

と。

これは夢だ、こんな自分に都合の良い展開になるわけがない。それか、優しい獄寺君がオレを気遣って嘘をついているんだ。

 

「10代目もオレの事好きなんですよね?」

「ちがっ・・・!」

「それなら何故、先ほど指輪にキスしてたんですか?」

「!そ、それは・・・。」

 

返答に詰まっていると、獄寺君はオレを家の外まで引っ張っていく。

 

「10代目は、オレの事嫌いですか?」

「嫌いじゃないよ!」

「じゃあ、好きなんですね?」

「っ・・・!」

 

押し問答を繰り返しているうちに獄寺がキレた。
オレの事を玄関の戸に押し付けると、端正な顔が近づいてくる。唇に柔らかい感触が触れる。
今の状態がどういうことなのか必至に考えようとするが頭の中が真っ白になって何も考えられなくなる。

 

「貴方はどうして、本当のことを仰ってくれないんですか?!オレが勘違いしただけで貴方はオレのことを好きでもなんでもないんですか?!
それとも、やっぱり男同士で気持ち悪いと・・・!!

 

眉根を寄せて泣きそうな、切なそうな表情で叫んでいる獄寺を見て正気に返る。

 

「違う!気持ち悪いだなんて思わないよ!オレだって、獄寺君のこと・・・す、好きだから!
ただ、幸せすぎて夢なんじゃないかと思って・・・。」

そう言い静かに嗚咽を漏らし、泣き出すツナ。その涙を唇で拭っていく。

 

「夢なんかじゃありませんよ、10代目。だから、泣き止んでください・・・」

 

しかし安心してしまったせいでなかなか涙が止まらない。
獄寺はツナが泣き止むまで抱きしめながらキスをしてくれた。ツナも泣きながらも応えて、縋りつく。

 

ツナが泣き止んだ後、リボーンが声をかけるまで二人して真っ赤になって立ち尽くしていたのもとても幸せな話。

 

 

 

反省
自分の文才の無さに脱帽(使い方違うよ)途中凄い中だるみしてるの自分でもわかる。
オチも困って無やり終わらせたのバレバレ。終わり方も強引すぎ・・・(死)
長くてどうもすいません!

 

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