■ 109

首の痛みで葛城の意識は覚醒した、仰向けに寝かされているせいか角が地面にあたって肩から上が不自然な体勢になっている。
目の前をちらちら青い布のような物が横切り、何だろうと思い葛城は手を伸ばそうとしたが腕は痺れていて動かない。
代々木公園で魔人との激しい戦いを終えて渋谷の回復の泉に向かっている途中だったはずだ、それなのにちらつく青い布の隙間から見える空は公園の見晴台から見た空よりも近い。
側に誰かいるようで、意識が戻ってからずっと囁き声が耳をくすぐるがそれが仲魔のものか他の悪魔のものかは分からなかった。
「ん…?」
違和感を感じるものの、自分がどんな状況に置かれているのか見当がつかずもつれる舌を動かしてみると渇いたのどから小さな声が漏れ、その声に気付いた誰かが軽い笑い声をたて、汗の浮かんだ葛城の額をくすぐるように指先で撫でる。
「お目覚めですか人修羅よ」
どこかで聞いたことのあるような声だと葛城は思った、そういえば目の前で揺れる青い色にも見覚えがあった、綺麗な髪の色だと感心しながら眺めていたからだ。
そんな反応に対するものなのか額を撫でる指先が動きを止め、柔かい笑みを浮かべた白い顔が葛城の目に映りこむ。
「ドミニオン」
名前を呼ぶといっそう嬉しそうに目を細める。
「あなたの仲魔だったドミニオンです、実はパワーも一緒なのですよ」
視界から小奇麗な顔が消え、少し間を置いてから鉄仮面をつけたような顔が葛城を無表情で見下ろす。
懐かしいとは全く思わなかった、なぜこの悪魔たちが何のために自分のそばにいるのかそれだけが気になって訝しげな眼差しを向ける。
どちらの天使とも意見が合わないという理由で別れたわけではなかった、魔人に対抗するための技能を持つ悪魔を会話で仲魔にしたかったが、連れていける仲魔の数が限界を迎えていてその空を作るためにもうこれ以上の成長を見込めないドミニオンとパワーを解雇したのだ。
長い間ありがとうと礼を言う葛城に天使たちは名残惜しそうな様子も見せずに飛び去っていったはずだった。
「ここはどこなんだ?」
葛城の質問には答えず、ドミニオンが逆に訊ねてくる
「体が痺れませんか、あなたが私に継承させた麻痺針を使ってみたんですよ」
その言葉の通り葛城の体は腕だけでなく足も首も一切の動きを封じられていた、何のためにそんな事をしたのだと聞きだす前にパワーが前の質問に答えた
「ここは渋谷にあるビルの屋上だ、苦労しましたよ仲魔の隙をついて貴方をここまで運ぶのは」
「仲魔だって…お前たち僕の仲魔に何をしたんだ!」
パワーの言葉を聞いた葛城が不安を感じて声を荒げる、代々木公園の魔人との戦いで自分も疲労していたが仲魔たちはもう限界だった。
主力メンバーは瀕死の状態で、控えの回復要員も主力メンバーのサポートをするために魔力を使い果たしてしまっていた。
あの状態の仲魔たちに万全の天使2体が襲いかかったとしたら勝ち目は無いだろう。
「さぁ…貴方を連れ去る時に暴れていたので少し大人しくなってもらいましたが、その後のことは分かりませんね」
ドミニオンの返答に言葉を無くした葛城を覆い隠すように2体の天使の影が力なく光を発する小柄な体を包み込む。
「ご自身より仲魔の安否を気遣うところは相変わらずですね、ですがこういう時はまず自分がこれからどうなるのかという事を心配された方がよろしいですよ」
呆れ果てたドミニオンの忠告に改めて自分が何のためにこんな所に連れて来られたのか葛城は疑問に思ったが時遅く、2体の天使はそれぞれの目的を果たすためにかつての主人の体に手をのばした。

「苦しいですか、それとも気持ち良いですか?」
気味が悪くなるほど優しいドミニオンの声に口を塞がれた葛城は返事をすることさえ出来ずに目を固く閉じる。
ドミニオンの形の良い指先が探る様に一張羅の黒ズボンの上から葛城自身を撫でている。
麻痺しているもののわずかな動きの自由は許されているのか、嫌悪感と悔しさから反応を拒んでいた体が細かく震え、葛城の口に昂ぶりを咥えさせていたパワーが低い声で笑う。
「お強い人修羅様もこういう行為には慣れていないようだな、もっと我らを満足させていただかないと…」
ぐいっとパワーが首の黒い角を掴んで顔を上下に激しく揺さぶり、喉の奥を付かれた葛城がえずいて眉間に皺を寄せて苦しがる。
口の端から飲み込めない唾液がこぼれ、パワーによって顔の角度を変えられるたびに飛び散って一部は葛城の顎や頬を濡らした。
「さぁ、目を開けて我らの姿を見て下さい」
閉じたまぶたを角を解放したパワーが強引にこじ開ける、瞬時に映るモノの奥でドミニオンが何の躊躇いも無く葛城のズボンと下着を膝の辺りまで脱がせる光景が見えた。
外気が悪魔化してからも辛うじて隠されていた自身に直接触れ、そこだけ感覚が鋭敏になったように感じられた。
脱ぐ前から弄られてすでに勃ち上がりかけているモノをドミニオンは両手を使って何度も擦り上げる。
裏筋をなぞり、先端の窪みを突付く様に指先で刺激されると葛城の体に麻痺とは違う種類の痺れがはしり、その痺れに囚われ動きを止めた口を見逃さないパワーがまた角を掴んで揺さぶりだす。
身を捩ればドミニオンの執拗な手の動きからいくらか気を逸らせることもできただろうが葛城の体を支配する針はいまだその効力を失わず、もうこじ開ける指がなくてもぼんやり見開かれたままの目に生理的な涙が浮かぶ。
「分かりますか、貴方のこことても固くなっていますよ」
嬉しそうに状況を伝えるドミニオンの手の動きが速度を増し、追い詰められるたびに高まっていく制御できない熱と射精を求める感覚に浮かされながら、葛城の早く熱を吐き出したいという気持ちは頂点を迎えようとしていた。
しかし葛城に刺激を与え昂ぶらせていた手は張り詰めて勃ち上がったたままのモノから離れ、放置された先端が射精寸前のもどかしさからひくりと震える。
「ムグっ…!」
代わりに意識しなくても昂ぶりに絡みつくようになった葛城の舌に刺激されたパワーが口の中に精を吐き出し、くぐもった叫びを上げて葛城の喉が嘔吐感を示す。
「くっ、さぁ吐き出さずに飲んでもらおうか」
自分のモノを葛城の口から引き抜き、意地悪そうな表情を浮かべたパワーは溜まった物を吐き出そうと大きく開いた葛城の口を手で押さえ込む。
その手を振り払おうと動く限りの範囲で葛城は首を振ったがその抵抗も虚しく震える喉が大きく上下し、飲み込まれたのを確認したパワーは満足げに笑った。
「う…ぅえ…っ」
あまりの気持ち悪さにパワーの手から解放されても吐き気を催していた葛城の体を2体の悪魔はうつ伏せにさせる。
冷たく固い床にまだ射精を許されていなかったモノが擦れ吐き気に代わりまた感覚を支配し始めたもどかしさに溜まっていた涙がこぼれ落ちる。
「パワーは満足してもまだ私は満足していませんので、もう少しお付き合い願いましょうか」
人差し指を口に含んで唾液で濡らしたドミニオンは自分の感覚の処理だけでいっぱいいっぱいな葛城の脹脛の辺りで屈み込むとわき腹をくすぐる様に撫で、わずかに緊張の解れた中心に濡らした指を挿入する。
「あっ…?」
突然の異物感に奇妙な声を上げて驚いた葛城は慣らすように少しずつ奥へ進んでいくドミニオンの指が与える圧迫感に耐えながら、自分が天使にどのような行為をされているのか理解してあまりの恥ずかしさに体を強張らせる。
「怖いことは何もありませんよ、我が主」
途中まで埋め込まれた人差し指が少し抜かれ、何の滑りも付けていない細い中指が人差し指を受け入れるので精一杯の中にむりやり捻り込まれる。
「や…痛いっ!」
即座に悲鳴が上がりドミニオンの口元がわずかに吊り上がる、麻痺の効果がようやく薄れてきたのか腰を捻って抵抗を示し始めた葛城の肩を手の空いているパワーが床に押さえつけた。
ドミニオンの指は浸入を拒んできつく締め付ける葛城の中を円を描く様に解しながら躊躇うことなく進み、葛城はその度に悲鳴を上げていたがある一点を指が探り当てると叫びは痛みだけからくるものとは違う甘さを帯びたものへと変化する。
「んんっ…」
ドミニオンはその一点を集中して責めたて、葛城の悲鳴は隠しきれ無い嬌声に変わっていく。
同時に昂ぶりをパワーが握って先端を爪で刺激すると葛城は体を痙攣させてぎりぎりの所でせき止められていた熱を吐き出した。
「はぁっ…あぁ…!」
射精感に息を荒げていたが、後ろから与えられ続ける刺激にかすれた声を上げて自ら腰を揺らし始めた葛城の様子を愛しげに見詰めていたドミニオンは、2本の指をずるりと中から抜き取ると白衣の裾をたくし上げ、すでに熱く勃ち上がった自身を指が抜けてほっと一息ついた葛城の中に挿れる。
「な、い、イヤだ!」
指とは違って明らかに質量の大きい異物の挿入に葛城の表情が強張ってもうほとんど麻痺が解けた足をじたばたさせる。
「パワー、しっかり押さえていて下さいね」
「やめろ、やめてくれっ!」
必死な葛城の願いを無視してドミニオンは一気に昂ぶりを奥へ押し込んだ。
強烈な圧迫感に息を詰まらせた葛城の乾ききらない頬にまた涙がつたっていく。
腰を掴むドミニオンの手に力が入って肌が赤く染まる、葛城は何度目かまでは最奥まで押し込まれ引き抜かれるたびに全身を使って拒否感を表していたが、徐々に抵抗する力と声を失い自分が出来るだけ楽になるようドミニオンの動きに合わせるようになった。
「あぁ、素晴らしい、さすが我らが主人に選んだ御方だ」
夢中になって挿入を繰り返し悦びの声を上げていたドミニオンはそう叫びながら絶頂を迎えた。

葛城は熱のさめやらない身を横たえていた。
かつて彼の仲魔であった2体の天使たちはことを終えた後、涙と精液で汚れた顔を拭いたりと処理を済ませ、渋谷の目立たない一角にぐったりとした人修羅を運ぶと満足したような表情で飛び去っていった。
なぜ別れた仲魔に襲われたのか今になっても葛城には分からなかった。
ただ全身に残る痛みと気だるさ、そして混乱と悔しい気持ちのみが彼に残された。
立ち上がらなければと彼は思ったがこれから先のことを考えるとどうして良いのか分からず地面に拳を叩きつける。
「ぼくが…僕が何をしたっていうんだ、長い時間共に戦ってきた、ただそれだけじゃないか!」
叫びにも似た問いかけはすでに飛び去ってしまった2体の天使には届かない。
仲魔の安否を心配する気持ちと、信頼してきた友人に裏切られた想いで狂いそうになりながら葛城は手に血が滲むまで何度も拳を叩きつけた。



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