僕の下で目を閉じている彼女。 彼女とこうするのは、今日が初めてではないけれど。 何度抱きしめても、何度繋がっても。 僕は不安になる。 あなたは、僕のことが、本当に好きですか……? 僕よりももっと、あなたに相応しい人が、傍にいませんか? 『続・テストの後は。』 深く求めるように口付けながら、彼女を包む全てのものを剥ぎ取っていく。 恥ずかしそうに身を捩る彼女に。 「の全部、ちゃんと僕に見せてください」 僕はわざと、彼女が嫌がるような言い方をしてしまう。 「……ダメ……」 思った通り彼女は僕の視線から逃れようとする。 今日、偶然あなたを街で見かけました。 あなたの隣には。 僕がどう足掻いても適わないような、大人で理知的な男性が優しく微笑んでいて。 2人があまりにも自然に見えて。 黙って立ち去ることしか、僕にはできませんでした。 あの人になら、全てを見せられますか。 あなたと一緒にいた、あの人になら……。 逃れようとする両腕を、彼女の頭上に片手で絡めとって。 空いている手で、やわらかな膨らみの片方を、指先が食い込むほど乱暴に鷲掴む。 「うっっ……ち、はる、くん……?」 僕の少し強引な行為に、彼女の瞳が揺らぐ。 その視線に。 なぜか苛立ちすら覚えて。 僕だけを感じて欲しくて。 他のことは何も考えて欲しくなくて。 膨らみの先端の、淡く色付いた場所を口に含んで、いつもより酷く乱暴に強く吸い上げた。 「んんっっ………」 彼女の顔が苦痛に歪む。 こんな風にしたら、痛いだけだということぐらい、わかっていた。 それでも僕は。 自分の中の醜い感情を、ただぶつけることしかできなくて。 労わるように愛することなどできなくて。 彼女の両腕を、片手で強く押さえつけたまま、口の中のその場所に歯を立てる。 「いたっ……千晴、くん……?……怖い、よ……」 力なく彼女が呟く。 こんな僕は見たくないですか。 あなたの知っている僕は、もっと優しいですか。 だとしたら。 僕は、嘘つきです。 優しくしたいと思う一方で、 あなたを。 壊したいと思ってしまうのです。 脱ぎ捨てた自分のシャツで、彼女の両腕を縛り上げて、動けないようにベッドに括り付けると。 彼女はまるで、見たことのない人物を目の前にしているかのように、 怯えに瞳を揺らした。 脇の下から、胸の膨らみにかけて、掠めるように撫で上げて。 「このライン、いやらしいですね。こんな姿で、あなたは男性を誘うんですか?」 笑みを含みつつ、責めるような口調で言うと。 「なっ……千晴くん……?どうしてそんなこと言うの……?」 驚きに瞳を大きくして彼女は尋ねてきたけれど、僕は構わず彼女の膝の裏に手を差し入れた。 目の前で両足を大きく広げて、彼女からもはっきり見える位置までその腰を持ち上げてから、 わざと音を立てて中心に強く口付けて、 剥き出しになった蕾をきつく吸い上げた。 「んっ……やぁぁぁ………」 目を固く閉じて顔を背ける彼女は。 逃れようと身を捩っているわりに、ひくついて潤って、溢れ出しそうになっていて。 そんな身体の反応が、余計に僕を苛立たせた。 今まで乱暴にしたことなど一度も無いその内側に、躊躇無く指を突き入れて、 無遠慮に激しく掻き回しながら、 「、目を、開けてください」 自分でも驚くほど、抑揚の無い声で言ってから、更に指を増やして彼女を追い詰める。 唇を切れそうなほど強く噛んだ彼女は、左右に激しく首を振って、固く閉じられた瞼から、 涙が零れ落ちるのが見えた。 あなたを。 誰にも渡したくないのです。 僕だけのものでいて欲しいのです。 そんな風に思うのは、僕の我が儘ですか。 「。目を、開けてください」 僕はもう一度。 同じ言葉を、有無を言わせない強い意志を込めて言う。 「を愛している僕と、僕に愛されているを。ちゃんと見ていてください」 僕の言葉に、怯えながらもゆっくりと目を開ける彼女を確認して。 その腰を、高く持ち上げて、濡れそぼった中心を彼女に見せ付けてから。 僕の行為の全てを見てもらうために、視線を合わせたまま。 これ以上無いほど存在を主張しきっている場所に、ゆっくりと、味わうように、舌を這わせた。 「あっ……いや……」 彼女は顔を背ける。 「駄目です。目を逸らさないで。あなたのここ、とても綺麗です。こんなに溢れさせて、 僕を煽っているのは、ですよ?」 彼女の内側の。 僕が良く知っている、いちばん敏感な場所。 そこだけを正確に、執拗なまでに捏ね回しながら、すぐ上にあるもうひとつの酷く敏感な場所を 大げさに音を立てて口に含んで、舌で転がし、吸い上げる。 「はぅっ…いや……やめ、て……あっ……んんん」 内側がひくついて、僕の指を逃さないとでも言うように、きつく絡みつく。 見たこともないほどに、怯えの色を瞳に宿しながらも、瀬戸際に追い詰められているのがわかる。 「こんな風にされても、感じるんですか?は、本当に、いやらしいですね」 意地悪く微笑んで、彼女の身体を反転させてから。 後ろから捩じ込んだ指で急速に攻め立てて、彼女の熱を一度放出させた。 くたりと崩れ落ちた腰を、休ませる隙など与えずに持ち上げて。 両手を拘束されたままで酷く不安定な彼女を、押さえつけ、後ろから強引に腰を繋げた。 「いやああああああ……ああっ……んんん……」 性急に最奥まで突き入れると、悲鳴に混じって、甘い声が彼女の口から漏れる。 その声に苛立って。 絡みつく彼女の熱くなった場所に、欲望のまま、ただ激しく腰を打ちつけた。 ベッドが軋む音と、粘膜が擦れあう音しかしない静かな部屋で。 僕を締めつける彼女が、達して脱力しても許すことなく、 何度も……何度も。 苦しげにしていても、暫くするとまた嬌声を上げる彼女を、壊してしまいたくて。 繋がったまま彼女のわき腹の辺りから腕を差し込んで、 いつもより膨らんでいる蕾を中指の腹で擦り上げながら、ひたすらに、腰を打ちつけた。 彼女の全身が殊更激しくびくついて、僕に絡みつく熱がこれ以上ないほどに増す。 「いやあああああああ…………」 ぐちゅりっ…… 酷く淫猥で、一際大きな水音が響いた瞬間。 自分の中にある、醜い欲望の全てを、僕はその中に吐き出した。 両腕を縛っていたシャツを外すと、彼女の白い手首が、痛々しく赤味を帯びていた。 脱力しきって、足を閉じることすら忘れている姿は、とても直視できなくて、 僕は彼女に背を向けてベッドの縁に腰掛けた。 やっぱり僕は。 あなたには相応しくないと思います。 わかっていても離れることは難しいから。 こんなやり方で感情を曝け出して、嫌われてしまった方が、楽になれるかもしれない。 そんな風に思ってしまうのです。 不意に背後で小さく風が起きて、気がつくと僕は、後ろから彼女に抱きしめられていた。 「……?」 呼びかけても彼女は何も答えずに、ただ僕を、震える腕で緩く抱きしめている。 「……」 もう一度呼ぶと、彼女は僅かに身動ぎして、僕の背中に頬を寄せた。 「……わたし。気づかないうちに、千晴くんを怒らせるようなこと、しちゃったのかな……」 躊躇いがちに小さな声で問い掛けてくる。 「僕が、怒っているように、見えましたか」 振り向くことができずに、背を向けたまま聞くと。 「……怖かった……。千晴くんじゃないみたいで……。でも。何かしちゃったのなら、 謝りたいから、教えてくれない?」 そんな風に言われても、何をどう言えばいいのかわからなかった。 今日、偶然見かけた光景のせいで、自信をなくした自分に苛ついていただけで、 彼女は何も悪くない。 言葉が見つからずに俯いていると、彼女は僕を包んでいた腕をゆっくりと外して、 消え入りそうな声で、呟いた。 「もう、嫌われちゃったのかな……」 言われた意味がすぐには理解できなかった。 頭の中で反芻して、漸く気づく。 そんなことがあるはずもないのに。 嫌われて当然なのは、僕の方なのに。 振り返ると彼女は、さっきまでの僕の行為を責める様子など微塵も無くて、 嫌われたくないとでも訴えかけるように、縋るような瞳で僕を見つめていて。 言いようの無い罪悪感と、自分への嫌悪感で、胃の辺りが鷲掴みにされたように苦しくなって、 吐きそうだった。 「ごめんなさい……」 僕は彼女の目を見ることもできなくて、下を向いて何度も、 まるで、その言葉以外知らない子どものように、謝罪の言葉を繰り返した。 強く握りしめた僕の右手に、彼女の手がやわらかく重なる。 「千晴くん……?」 優しく、でもどこか儚げな彼女の声に顔を上げると、瞳にいっぱいの涙を浮かべていた。 「そんなに謝るのって、わたしのこと、嫌になったってこと……なのかな」 零れる音がしそうなほど大粒の涙が、彼女の頬を伝う。 言われたことを理解しきれていなかったけれど、僕はほとんど無自覚に手を伸ばし、 彼女の頬を濡らすそれを指で拭った。 「あの……どうして、そうなるんですか?」 僕の言葉に彼女は目を大きく見開いて、 「違う、の……?」 信じられないとでも言いたげな顔をしている。 「違います。嫌いになるはずなんてありません。そんな風に言った覚えもないです」 きっぱりと言うと、少しシュンとしたような表情になる。 「そっか……。行間、読み間違ったかな……」 「行間を読む……?」 首を傾げて僕が尋ねると、彼女は小さく笑った。 「表現されていない、隠された真意を読み取るってことだよ」 「隠された真意……本当の意味、ということですか?日本語の情緒ですね。 やっぱり僕にはまだ難しいです。本当にごめんなさい」 僕はもう一度、謝罪の言葉を述べてから、自分のあまりに酷すぎる行動の理由というより、 言い訳をした。 今日偶然見てしまったことや、不安になった気持ちも、情けないけれど隠さずに全部を。 彼女は終始無言だったけれど。 「だから、嫌われるとしたら、僕のほうです。僕はに、相応しくないです」 僕の最後の言葉を聞いて、ふわりと微笑んだ。 「それはわたしが決めることでしょ?」 頬を濡らしていた涙はすっかり渇いて、彼女はきっぱりと言う。 「わたしは千晴くんが好き。隣にいて欲しいのは、千晴くんだけ。 だから、相応しくないとか言われても、困る」 最後の方は頬を膨らませて、怒っているような表情だった。 あんなに酷い抱き方をしてしまったのに、それを咎めることもしないで、 少しふて腐れたような彼女の態度は、この上なくかわいらしくて。 僕はそれまで味わったことの無いような、幸せな胸の痛みを覚えた。 無性に彼女を抱きしめたくなったけれど、乱暴にしてしまった感触がまだどこか抜けなくて、 躊躇いながら手を伸ばし、できる限り優しく、そっと腕の中に彼女を閉じ込める。 ビクリと一瞬彼女は震えたけれど、すぐに僕の胸に頭をあずけてきて、 自分の中に渦巻く醜い感情が、ゆっくりと薄れていくのを感じた。 「は……かわいいですね」 僕が笑うと。 「なんか、それ、ヤダ」 彼女は顔を真っ赤にして、抗議するように握った手で僕の胸を叩く。 「行間を、読んでください」 もう一度僕が笑うと、少しの間考え込むように首を傾げたけれど、 「今度は、たぶん、大丈夫……だと、思う」 そう言って、やわらかく微笑んだ。 僕は、あなたを愛しています。 誰にも、渡したくないと、いつも思っています。 今日は酷いことをしてしまったけれど。 あなたがかわいくて、壊したいほど愛おしくて、どうしようもないんです。 end ──────────────────────── ちょっとどうかとも思ったのですが、数ヶ月前に書いたものを、放置(苦笑) 表の、『テストの後は。』の続きなので、「ちは」が嫉妬している相手は、 大人で、理知的な男性……(笑)私の愛する零一さんはそんな人じゃないわ! もっと、イッちゃってるぶっ壊れてだいぶ裏返った男よ!(マイ設定) いや、でも改めて読み返してみても、やっぱ、描写、ぬるいですね。 でも、直す力量もないし、メンドクサイからそのままup(苦笑) 萌えなくてもスルーしてね。 しかし、「ちは」よ。キティになりたければもっと激しくいかないと。(←どこに?) |