| 出逢った瞬間、嫌な予感がした。 過去にも覚えのある、胸がざわざわする感覚に戸惑った。 ─────思った以上に守備範囲、広いな……。 自嘲気味な感想を自分自身に抱きつつも、 不器用で生真面目で、ある種融通の利かない友人を あの手この手で捩じ伏せて、なんとか聞き出してはみたけれど。 ─────明日、か。どうする………? |
Unexpected turn U
| 簡単に言ってしまえば、俗に言う、ひと目惚れとかいうヤツなんだろうけど。 子どもの頃からの友人で、教師をしている氷室零一という男がある日突然俺の店に連れてきた、 ひとりの高校生のことが、近頃気になってしょうがない。 零一と一緒に店に来たのは1度きりで、その後逢ったのは、3度ほど。 まだ開店前の時間に、なぜか彼女が店の前に居たりして。 まあ、店に入りたいと言うよりは、俺に逢いに来ているのはその表情から明らかだったけど。 ジャズバーなんて高校生には早いとか、それを許したら、俺が零一に殺されるとか、 適当なことを言って追い返した。 嫌な予感の正体なんて自覚したくなかった。 この年で、高校生に惚れるなんて、あり得ない。 そんな風に思っていた。 なのに。 彼女のことがやけに頭から離れない。 ふと、気づくとあの無防備すぎる笑顔を思い浮かべて、 なにやら暖かい気持ちになっているらしい自分に辟易したりして。 結局。 あの手この手で彼女のことを零一に探りを入れるなどという、 アホ臭いことまでやってのけた。 ─────病気か……?それも、かなり悪質の。 そんなことをグルグルと考える暇があるほどに、日曜の夜という、 平日と比べると客が少ない気だるげな営業時間は、ゆっくり流れていた。 ちょうど客足が途絶えて、あと1時間で日曜も終わりという時間になって、 「今日はそろそろ閉めよう」などと従業員達に声を掛けた瞬間。 店の入り口の扉が開く音がして、いつものように反射的に振り返ると、扉はそのまま閉まった。 確かに扉は開いたはずなのに、店の中に人が入った気配はない。 不審に思いつつゆっくり近づいて扉を開くと、そこに立っていたのは、彼女だった。 俺が、さっきからグルグルと考えていた、高校生。 いつもみたいな制服姿ではなかったから、一瞬見違えたけれど、 頭を抱えてそこに佇んでいるのは、間違いなく、彼女だった。 「あれ……?ひとり……?危ないよ?こんな時間に」 俺が声を掛けると頬を真っ赤に染めた彼女は、 ─────この顔見たら、俺じゃなくても勘違いするよな……。 と、思わずにはいられないほどに、『あなたが好きです』って顔をしてて。 そのあまりの可愛さにちょっと笑いそうになったけれど、平静を装って、彼女を促した。 「とりあえず、おいで?変なヤツに連れて行かれても困るし」 ■ ■ ■ 従業員達に先に帰るように声を掛けてから、彼女をボックス席のひとつに促して。 「ちょうど、閉めようと思ってたんだ。少しそこで待っててよ。こんな時間に放り出したのが 零一にバレたら、殺されかねない。まあ、もっとも?キミを放り出すつもりなんかないけどね」 いつもの、営業用の顔を崩さないようにしつつも、多少妙な本音も込めてみたりして言うと、 彼女は俺が何も聞かないことに納得がいかない、とでも言いたげな表情でその場所に腰掛けた。 俺は残っていた片づけを手早く済ませながら、思考を巡らせる。 時計は23:00を回ったところだった。 あと少しで6月2日。つまり、彼女の誕生日なわけで。 そんな時間にこの場所に、特に遊んでるってタイプでもない、 高校生の彼女がいる意味って言ったら普通は……。 ─────目的地はここ、……て言うより、俺、だよな。 明日なんらかのアクションを起こそうとは思っていたけれど。 ─────まさか、彼女の方から来るなんて、ね。 予定は狂ったけど。 こんな裏切りなら悪くない。 急速に。 彼女に触れたいという感情が、内側から湧き上がる。 従業員が帰るのを見届けて、彼女の正面に座ってから、 俺は確かめるようにジッと彼女の瞳を見つめた。 「……俺にどうして欲しい?」 唐突で、しかも意地の悪い俺の質問に困惑する彼女の表情は、この上なく可愛らしくて。 そんなことを自ら考えるなんて、アホだとか、変だとか、誰に言われようと、 彼女の全身から、「あなたが好きです」ってオーラが出まくっているように俺には見えて。 集まる熱に突き動かされている自分は隠したまま。 「じゃあ、俺がしたいように、しちゃおうか」 からかい気味にそんなことを口走る。 彼女の隣に移動して、抵抗する隙を与えないように腕の中に閉じ込めて、 その頬に唇で軽く、触れた。 驚いて目を見開く彼女に思わず笑みを零して。 今度は唇に。 下唇を甘く噛むようにして、何度も角度を変えて。 無理に抉じ開けたりしないで、徐々に彼女の唇が薄く開くのを待ってから その内側に舌を滑り込ませた。 流石に舌が入ってきたことに焦ったのか、急に抵抗する様子を見せる彼女に、 ─────今なら、まだ止められなくもないけど……。 そんな思いで、聞いた。 「……嫌?」 俺の言葉に彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめて。 暫く躊躇ったあとに、質問とは一見関係のないようなことを言った。 「あの、名まえ……教えてください」 一瞬真意を量りかねたけれど。 つまりそれは、嫌とも、嫌じゃないとも答えにくいという意味で。 俺の名まえを知りたいってことは、やっぱりそういう意味で。 彼女が怖がるならここで止めてあげなくもないとか、初めからそんな程度だったけれど。 ほんのわずかな俺の理性を吹き飛ばすには十分だった。 「……内緒」 素直に、「嫌じゃない」と言わない彼女に仕返しの一言を言ってから、また唇を重ねて。 彼女を包むものを剥ぎ取っていった。 下着だけ残した彼女を抱き上げて、自分の膝の上に乗せて、思考を奪う目的のようなキスをする。 少しずつ彼女の唇や舌が、俺に応えるようになった隙を見計らって、 背中にある邪魔な金具を左手で外した。 それを取り外さないまま、できた隙間から右手を差し込んで片方の膨らみに柔らかく触れると。 「……んっっ……」 息を飲むような声を彼女が零す。抱き上げていた彼女をそのまま俺の脚の上に横たえさせて、 下着を捲り上げて現れた膨らみを片方の手で揉みしだきながら、もう片方の手を、 首筋、鎖骨、腕、わき腹と、徐々にその場所に向かって俺は指を滑らせた。 淡く色付いた膨らみの先端に軽く触れながら、もう片方で手を彼女の秘所を下着の上から そっとなぞると、彼女はビクリと震えるのと同時に、両手で顔を覆って、 「やっっ……ダメ……」 言葉とは裏腹にやけに艶っぽい声を漏らした。 顔を隠そうとしている彼女の手を、羞恥を煽るために、わざと外す。 「ホントに?」 俺は意地悪い笑みを浮かべて、下着の隙間から彼女の秘裂に指を滑り込ませた。 思いの外その場所は既に潤っていて、くちゅっ…と卑猥な音を立てる。 「…いやっっ………!!」 音に動揺したのか、一瞬彼女は身を捩ったけれど、それに紛れて残っていた下着を取り去って、 ゆっくりとその潤った場所に指を這わせた。 緩々と秘裂に添って滑らせるように触れて、少しずつ零れる蜜を指に馴染ませながら、 すぐ傍にある小さく、それでいて存在を主張し始めた突起に優しく触れると、 彼女は白い喉を反らす。 「あっ……んんっっ……」 内側に指を入れると、熱を持ったその場所は俺の指に絡み付いてきて、 探るようにしばらく動かすことで、彼女の弱い場所はすぐにみつかった。 その場所を指の腹で弾くようにして抜き差しを繰り返しながら、外側にある小さな蕾も 一緒に擦り上げると、 「……っっ……やっ……はぁ…あああっ!!」 ひと際高い声を上げて、彼女は俺の脚の上から崩れ落ちそうになる。 「ここじゃ、ツライかな」 かなり無理な体勢の彼女が、ちょっと可哀相になって、俺はそのまま彼女を抱き上げて、 店の奥にある事務所の仮眠用のベッドに横たえた。 店内と比べると明るい場所で見る彼女が、身に付けているものはすでに左手の腕時計だけで。 ─────裸に腕時計ってのも、結構エロいよな…。 こんなにも年が離れた相手にそんな感情になるなんて、自分でもどうかしてると思う。 それでも。 明るい場所に放り出された羞恥のためか、目の前で小さくなっている彼女は、 子どもではなく確かに女で。 うんざりするほど目が離せなくなっていることを自覚させられて。 俺は自分の内側から湧き上がる熱の抑え方もわからなくなる。 「恥ずかしくなっちゃった?」 抑制の効かない自分を誤魔化すために、意味のない質問をして、 更に彼女を困らせてみたりして。 けれど、あんまり苛めるとあとが大変そうだ…などと思い直して、間接照明に切り替えた。 こんな発想さえ、すでに惚れた弱みとかそういう類なんだろう。 俺がシャツを脱ぎ捨てると、彼女は驚いたような目で俺をジッと見ていて。 そんな表情も。 俺がこれまで彼女について知っている、数は少ないけれど、どんな表情も。 すべてが俺を捕らえて離さなくて。 そのことを改めて自覚したら思わず笑みが零れた。 でも。 そんな俺の気持ちを、簡単に教えるつもりは、ない。 俺が彼女に捕らわれていることなんて、彼女は知らなくていい。 もう少し。 自分の想いに戸惑いがなくなるまで、余裕ある大人の振りでいさせてもらいたい。 少しの中断の所為か、躊躇っている様子の彼女の髪に優しく触れて。 ゆっくりと深く口付けて。 身体の強張りが解けるのを待ってから、唇を少しずつずらした。 触れるたびに小さく揺れる彼女の反応を楽しみながら、下へ下へ…。 いちばん敏感な場所に口付けた瞬間、彼女は拒むように身を捩ったけれど。 ゆっくりと解すようにその襞に添って舌を這わせているうちに、抵抗もなくなる。 尖らせた舌で膨らんだ場所を優しく舐め上げながら指を内側に突き入れると、 誘うような甘い声を零す。 彼女が躊躇っている様子はもう、なかった。 甘い声も、蜜も止め処なく零れて。 意識的なのかはわからなかったけれど、より快感を増幅させるように彼女の腰は自ら動く。 強張った太股が小刻みに震えて、内側の収縮も限界が近いことを物語っていた。 それを感じ取ることで、自分の中で急速に血が集まる感覚が高まる。 ─────見てるだけでも、結構くる、よな…。 ふと目に入った彼女の腕時計を見ると、ちょうど2本の針が12の位置を指していた。 「誕生日、おめでとう。ちゃん」 耳元に唇を寄せて囁くと、これ以上ないくらいに彼女は目を見開く。 何か言わせる前に俺は彼女の内側に自分の熱を埋めた。 「あっ…!!!んんっっ……」 入り口付近で多少の違和感はあったものの、十分すぎるほどそこは潤っていて、 まるで逃さないとでも言うように、俺に絡み付いてくる。 単純に、肌を重ねることで得られる、感触という意味での快感とは別の種類の。 彼女だから─────。 そのひと言でしか説明がつかない、満たされるような感情に身体ごと支配された。 ゆっくりと腰を進めて、深く繋げると、切なげに俺を見上げる彼女と目が合う。 「ちょっと…予定外だったかな…」 軽く口付けてから照れ隠しにそんなことを呟いて。 内側の締め付けに持っていかれそうになりながらも、彼女の弱い場所を執拗に攻め立てる。 自分の熱の高まりと、彼女の内側の収縮が限界に近づいた時、俺は動きを早めた。 彼女はひと足先に意識を手放したようだったけれど。 ─────聞かれないほうが都合がいい……。 そんなことを思いながら俺は、彼女の中に自分の熱を投げ打った。 「好き……だよ?キミのこと。初めて逢った時から」 ■ ■ ■ 頬を膨らませて抗議する彼女には、適当に説明して。 それでも。 その場のノリとか、そういうものじゃないってことだけは、とりあえず伝えて。 まあ、そんなことは、伝わっても伝わらなくてもどうでもいいけれど。 予定を狂わせた責任は、彼女自身に取ってもらおうと、 そのまま眠ってしまっていた彼女を、明け方無理やり家まで送り届けた。 「今日、学校に行かなかったら、もう、逢わないよ?」 そんなことは、思ってもいない。 本当は。 このまま持ち帰りたいぐらいだったけど。 脅すようなことを言って、意地悪な大人を装ってみる。 ─────振り回されているのが、本当は俺の方だとバラすのは、 初めての誕生日プレゼントとしては、豪華すぎ、だろ? そして、数時間後。 まだ日没前の明るい時間。 今の俺にはどう考えても似合わない、やけに懐かしい場所で。 ポケットの中に、グランサンボンを忍ばせて、相当恥ずかしい思いをしながら、 その時を待つ。 もうすぐ。 あの門の向こうから、俺が初めて見る、夏の制服で身を包んだ彼女が出てくるはずだ。 end ──────────────────────────────── 旅人さん、ゴメンにょーーーーーー(ToT) 6月と言えば、衣替えなのでね……(最後の一行の言い訳(笑)) 多少カットした部分や変なオマケがございますが、とりあえず、マスタ視点でございます。 カットの所為で名まえを1度しか呼んでないことに触れてはダメです(ヲイ) 初めてのプレゼントは、そこはかとなくエロを込めて香水にしてみました。 そのくせあんまりセクスィーにしたくなかったので、あえて銘柄まで出してみたりして。 プチサンボンではなくグランサンボンにしたところがまた、よくわかりません。 本気でそろそろ表ごと廃業した方が良さそうです。 またまたゴメンなさいですよーーーーーーー(ToT) |