もうすぐ。

あの扉が開いたら、あの人が来る。

どうしよう……。

今日はこの前よりも、もっと………?








Arpeggio










3歳の頃からずっとピアノを習っていて、特に他にやることも思いつかずに、音大に進んだけれど。

目的も情熱もなくやっていくには、あの世界は厳しすぎる。

ちょっとだけ名の知れた音大を、結局途中で辞めてしまったわたしが、

今現在勤めているのは、音楽に詳しくない人にもその名まえを知られているような、

様々な楽器のコースがある上に、全国展開している音楽教室で。

そこの、ピアノ科の音大受験コースの講師というのが今のわたしの職業。




ピアノは趣味でいいじゃん…と思っているわたしがどうしてこのコース担当になってしまったのか

謎な上に、ストレスもたまるし、正直不満なんだけど、まあ、それなりにやりがいもあったりして、

なんとなく…ってこの辺がまた適当だけど、頑張ってきた。



そんなある日、突然ひとりの生徒さんを押し付けられた。

いや、正確に言うと、どうやらとっても多忙な生徒さんらしく、教室に来ることができる時間に、

空いている講師がわたししかいなかったということで、コースが違うのに、わたしが担当になったわけだけど。

大人の、趣味のためのピアノというコースを受講する人だから、その人に教える時間は、

日頃のピリピリしたムードとは違って、わたしにとっては、休憩時間のようにまったりしていて、

結構嬉しかったりもした。



しかも。

その人が、もう、貴方、それ、犯罪でしょうよ…と思わずツッコミを入れたくなるほどに美しい方で。

男の人にしては長すぎるその髪も、ちっともイヤミがなくて。

まあ、見ているだけでもうっとりと言うか幸せな気分になれるほど素敵な人なところが

また、わたしの癒しタイムに拍車を掛けているわけで。




本来担当する可能性があった人たちが、恨みがましい目つきで教えてくれた所によると、

名まえは橘友雅さんといって、年齢は30代前半(しかも独身)でどこかの会社の社長さんらしい。

どんな会社なのかとかは、聞かなかったけれど、ラフと言うか、柔らかい雰囲気の服装から言って、

どう見てもお堅いカンジではなさそうだ。



ピアノの腕前は、昔少し習っていたとかで、なかなか上達も早い。

そして何より、その、指の美しさに、わたしはどこまでもうっとりさせられてしまって、

レッスンの最中だというのにうっかり見惚れてしまって、肝心の音の方を聞き逃してしまうほどで。


いつの間にか、その人が来る、月曜の夜を楽しみにしている自分がいた。







そして、5月最後の月曜の夜。

その人のレッスンの時は、他の時と違ってわりと自由な流れで、

いつも、練習曲を済ませた後、リクエストに応えてわたしが何か演奏するというのが

習慣になっているのだけれど、その日彼が選んだ曲は、ドビュッシーの『月の光』。

わたしも、大好きな曲だったから、楽しみながら弾いた。



演奏が終わるといつも、拍手をしてくれるのに、その日はそれがなくて。




その美しすぎな指は、なぜかわたしの手を握っていた。






「た////////橘さん……?」




恐る恐る問い掛けると、彼は小さく笑ってから、わたしの指先に軽くちゅっと口づけた。



─────な、ななな、///////////なんでっっ!?



焦りまくったわたしは、椅子から転げ落ちそうになりながら後退って、

派手な音を立てて、防音完璧な分厚い壁に背中を打ち付けたところで、止まった。






「うっ……痛いかも……」



涙目になりながら、背中をさすっていると、なんだか腹が立つほどに楽しげな表情で

彼はわたしに近づいてきた。






「ふふ。凄い音だったね。大丈夫かい?」




─────アンタがそれを聞くかーーーっっ!!つーか、笑うなーーーっっ!!



などと心で叫んでいる間に、わたしの身体は彼の腕の中にぽすっと収まっていて、

まるで、「よし、よし」とでも言うように、背中を優しくさすさすされていた。




─────ちょ///////ちょっとこの状況は嬉し恥ずかしで困っちゃうのですが…。



オズオズと見上げると彼は不思議そうに首を傾げている。






「ん?」



─────いや、『ん?』とかじゃなくて。




早く─────。

すぐにでもその腕を外して……と言わなければいけないような、でも言いたくないような、

自分でも良くわからない感情に、わたしはグルグルと振り回されていて、

言葉を紡ごうと中途半端に開いた唇は、気がついた時には─────。






─────キ/////////キスされて、る………?




なんで?とか、どうして?とか。

いや、「なんで」と「どうして」は言い方が違うだけで内容は同じだとか。

キスってこんなに…………?とか。

意味のわからないことをわたしは考えていたのだけれど、そのナケナシの思考もあっさり奪われて。

彼の手が不穏な(?)動きをしていることにもまったく気づかずに、

頭の芯が痺れるようなキスに、ただ、酔っていた。




鎖骨のすぐ下の、下着で隠しきれていない膨らみを跡がつくほど強く吸われて初めて、

自分のブラウスのボタンが全開になっていることに気づいて。

急に我に返って彼から離れようとしたけれど、後ろは壁で。

両脇を見ると彼の腕でしっかり塞がれていて。


改めてどうしてこんなことになってるんだろう…と今更ながら考えた。






「橘さん……あの……」



問い掛けると、一瞬彼は目線を上げて、すぐにわたしの胸元に顔を埋めた。






「そのままで、聞いてくれないだろうか。先生」



そう言った彼の声が、なんだかあまりにも切なげで。








「…………はい……なんでしょうか…?」



どちらかと言うと、雰囲気に飲まれた感じで、状況にあまりにもそぐわないような、

間の抜けた返事を思わずしてしまったわたしに、彼は少し笑って、なぜか行為を再開した。

下着をずらして、その綺麗な指でふわりと膨らみに触れながら、またわたしの唇を塞ぐ。




─────!!!!い、今、何か聞いて欲しいようなことを言われた気がしたんですけど…?



浮かび上がる疑問を口にすることも許されずに、舌を絡め取られて。

胸元を刺激する指はそのままに、空いている方の手が、スカートの中にいつの間にか入っていて、

湿った場所を下着の上からすっとなぞった。



力が抜け切っていた身体が不意に強張ったのを認めると、彼は、わたしの目をジッと見つめて。

そのなぞった場所に、触れるか触れないかの微妙すぎる強さで緩々と繰り返し指を往復させる。

目を見られながらそんなところを触られるのは耐えられそうになくて、思わず顔を背けると、






先生に、お願いがあるのだけれど。聞いてくれるかい?」



その言葉と一緒に、下着の脇から指が入ってきて、いやらしい水音が響いた。






「んっ……な……なんですか……?」




どうしてされるがままになってるのかとか、どうして真面目に質問に応えようとしているのかとか。

色んなことが頭の中をグルグルと回っていたけれど。

わたしは、彼の言葉にも、指にもひとつも逆らえなくて。




いつも。

鍵盤の上を滑る彼の指に見惚れていたのは、彼にこんな風にされたいと、

どこかで思っていたのかもしれないと、ぼんやり考えていた。






「次の月曜の夜、レッスンの後の時間を、私のために空けてはくれないだろうか」



そう言った彼は、わたしの前に跪いて、下着を引き下ろすと、唇でその場所に触れた。






「あっ……いやっっ!!!」




「嫌…?本当に?」





思わず身を捩ると、彼は私の腰を強く掴んで、膨らみ始めた場所を口の中に含んだ。

口の中で転がすように舐められたり吸い上げられたりして、わたしは立っているのもやっとだったし、

息も絶え絶えで。






「空けてくれるね?」



と、もう1度聞かれた時は、声も出ずにただコクコクと何度も頷いていた。






「良かった。それから……」



彼の言葉に、まだ何かあるの!?と焦りまくるわたしのことはまるで無視で、

くちゅくちゅと舌で刺激することを止めずに、彼はわたしの内側に指を突き入れる。






「名まえを、呼びたいのだけれど。構わないかい?」



内側にある指のあまりに的確すぎる動きで、わたしは最早何も考えられなくなっていて、

やっぱりまた、ただ、頷くことしかできなかった。


彼は立ち上がって、片手でぎゅっとわたしを抱きしめて。

内側を2本の指、外側を親指で追い立てるように刺激する。







……」



耳元で囁く彼の掠れた声は、うっとりするほど色っぽくて、背筋を急速に快感の波が駆け上がる。



─────あ……もう……っっ



達しそうになったその時、ズルリと指は引き抜かれた。

あまりのことに呆然としていると、彼は両腕でぎゅっとわたしを抱きしめて。




も。……呼んでくれないか」



わたしの肩に顔を埋めて切なげに囁いた。


─────呼ぶって……





「と……友雅さん……?」



以前仕事仲間から聞いて知っていた名まえを口にすると、彼はふわりと微笑んで、

それと同時にまた指を突き入れられて、限界まで追い上げられていたわたしは、

彼が耳元で、何度もわたしを呼ぶ声を聞きながら、そのまま達してしまった。



ふにゃりと崩れ落ちそうになったわたしを、彼はピアノの前の椅子に座らせて。

腕時計に視線を移す。





「どうやら、時間切れのようだね。来週、楽しみにしているよ。





そんな言葉と、ふにゃふにゃになったわたしを残して、彼はあっさり帰ってしまって。

なにかもう、わけのわからないまま、壁に掛かったカレンダーに目をやると、

次の月曜日というのは、わたしの誕生日だった。




■ ■ ■






もうすぐ。

あの扉が開いたら、あの人が来る。

どうしよう……。

今日はこの前よりも、もっと………?






Happy Birthday〜♪




────────────────────────────

くうっ……滑り込み……アウト?(汗)

いや、時間的にはギリギリだけど、内容がアウトだろうよ、柴咲さんよお…(ToT)

微エロ…つーか、微エロ的にも無理?

さすらいの旅人様。

誕生日だというのにこげなものしか書けなかった俺を見捨てないでくれーーー!!!

愛はあるの!!愛は!!でも、ほら。愛があるからって書けるもんでもないっつーか…。

そんなわけで、ゴメンなさい!!

でも、おめでとーなりよーーーーーーーーvvv

*Arpeggio:和音の各音を、急速に連続して弾くカンジだったと思います…なんのことだよ…(涙)

 

 

 

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