「っ・・・やっ、あっ・・・コ、コウメイさっ」
「コラコラ。逃げるなんて卑怯ですよ、さん」
「でもっ・・・ぁんっ!」
学校から敢助君の家に行く予定だったが
急遽進路変更をし、さんを私の自宅に連れて帰り
そのままベッドに向かい、二人で体を重ねあっていた。
「か、敢助さんに・・・言われて・・・」
「えぇ、連れて来いと言われましたが・・・まずは消毒が先です」
「しょ、消毒?!」
「はい。他の男に告白されておいて、放置というわけには行かないでしょう」
「え?え??」
私の言葉に彼女の顔は困惑の表情を浮かべていた。
「他の男の言葉を残しておけば、そのまま君の体を侵食してしまう。
その言葉を消す意味で・・・私が君にたくさんの愛の言葉を囁いてあげようと思いまして」
「だっ、だからって・・・あの、これは・・・」
「営みは、シルシを残しておかなければなりません。君が私のモノだという・・・ね、」
「っ!?・・・ぁっ、あぁん!・・・んぅう」
動きを加えると、彼女は甘い声で啼き始める。
私はそっと彼女の耳元で――――。
「可愛いですよ、」
「っは・・・あっ・・・あぁっ、た・・・高明さっ、高明さん」
私が彼女の名前を呼び捨てをすると
彼女も自然と私の本当の名前を呼び始める。
「はい、何ですか?」
「ゎ、私・・・高明さんだけが、好きです」
「私だけが・・・ですか?」
そう低い声で問いかけると、彼女は頬を染め――。
「高明さんじゃなきゃ・・・・・・ダメです」
小さく呟かれた言葉に、私の心は思わず締め付けられ
止めていた律動を動かし彼女を求めた。
「ぁっ!・・・あぁあんっ・・・た、かぁき・・・さっ!」
「。・・・。可愛い・・・私の」
「ンッ!・・・あっ、あぁ!・・・そんな、激しくっ・・・死んじゃぅ!」
「死にはしませんよ。少々、壊れるかもしれませんが・・・大丈夫です。ちゃんと私が優しく介抱してあげますから」
「はっ、はぅ・・・んぅう!・・・」
「他の男に見向きもできない程、壊れるまで愛してあげますよ・・・」
そう言って、強く彼女を抱きしめ
最奥を突き上げる。
その度に愛しい彼女は甘美な声を上げる。
耳に入れると、それはまるで優しい単調な音楽を聴いているかのように
私の心は、耳は、彼女を求めて動きを止めない。
PRRRRRRRR・・・・・!!!
「んぅ・・・ん・・・た、高明さ」
「はい?」
「でん、ゎ」
すると、突然部屋の電話が鳴り出した。
彼女がそれに気づいたのか、意識が
快楽の底から現実に戻りかけていた。
「えぇ、そうですね」
「えっ?ぁ、あのぅ」
「何か?」
「で、出ないんですか?」
彼女にそう言われ、動きを一旦止めたが。
「君との大切な愛の時間を、電話ごときに邪魔されては不愉快です。
すぐに留守電に切り替わりますから、気にしないで下さい」
「で、でもっ・・・」
「」
「・・・は、はぃ」
私がまっすぐ彼女を見つめると
彼女は顔を真っ赤にして私を見ていた。
「今は消毒中です。片時も、今は君から離れたくありません」
「高明さん」
「黙って感じればいいんです。それ以外は何も考えないで」
「・・・は、はぃ」
そう言って深くキスを交わして、体を重ね合わせていた。
そして、電話は機械の着信音から留守番電話のメッセージを入れる前置きの言葉が鳴り響き―――。
『コウメイ!てめぇ何してんだ!!!』
「・・・っ」
「か、敢助さん」
留守電から酷いまでの怒鳴り声が聞こえてきた。
声の主はもちろん、敢助君だった。
あまりに突然過ぎる声に私も彼女も、現実に無理やり引っ張り戻された。
『てめぇ何してんだ!!居るんだろ、さっさと出ろ!!』
『ちょっと、敢ちゃん』
『うるせぇ!連れて来いって言っただろ!何時間待たせてんだお前は早く連れてk―――プッ!』
−メッセージを終了します−
「はぁ・・・・・ムードの欠片もないですね彼には」
「アハハハ」
留守電の声に、私もさんも二人の世界から
現実に戻ってきてしまい、せっかくのいいところが台無しになってしまった。
「仕方ありませんね。・・・一旦お開きにしましょうか、さん」
「ぇっ?」
「はい?」
私の言葉に彼女は思わず寂しそうな顔をする。
呼び方をいつも通りに戻したからといって、寂しそうな顔をする理由にはならない。
「あっ・・・す、すいません」
「いいえ。一旦終えるのは、何か不都合なことでも?」
「その・・・別に、そういうわけじゃ・・・っ」
彼女は顔を赤らめながら横に背けた。
私はしばらく見つめ、もしやと思い・・・―――。
「もう少し、続けて欲しいですか?」
「っ?!」
耳元で囁くと、体がビクッと小さく跳ね上がった。
「図星ですね、さん」
「ズ、ズルイです・・・コウメイさん」
「我慢してください。私だってこのような形で終えるのは些(いささ)か不服です。
ですがこれ以上、敢助君を待たせてしまえば留守電だけでは済まなくなってきますから」
「コウメイさん」
「この続きはまた今度ということで。我慢してください」
そう言って私はさんのおでこにキスを落とし
情事を一旦終え、彼女をバスルームへと向かわせ
一方の私は、脱ぎ散らかした衣服を身に纏いながら
先ほど留守電に怒鳴り声を残した張本人へと電話をかけた。
「もしもし、敢助君ですか?」
『てめぇ、コウメイ!何時間待たせてんだ!さっさと連れて来いって言っただろ!!』
電話を掛けなおすや否や、受話器越しの怒鳴り声が
私の耳に入ってきた。
私はあまりの大声に、思わず受話器を耳から離した。
「じゃあ、上原君にでも頼んでさんを迎えに行けばよかったでしょう」
『おめぇが丁度のところに行くって言ったから、頼んだんだろうが!』
「だったら遅くなろうが、どうしようが私の勝手だと思いますが?」
『ヘリクツ抜かしてんじゃねぇよ。連絡くらい寄越せ!』
「そうですね。今度からそのようにします」
私がそう言うと向こうはようやく落ち着いたのかため息を零した。
「とにかく、さんがお風呂から上がり次第そちらにお連れします」
『おう、そうして・・・・って、おい』
「はい?」
『てめぇ、に何してんだ!!』
しまった。
自分の性格に似合わず、余計なことを口走ってしまい
さらに敢助君の逆鱗に触れてしまった。
受話器から再び大声が聞こえてきた。
『お前っ・・・そんなことするために』
「馬鹿なこと言わないでください。少々彼女がおてんば過ぎるので、お仕置きをしてただけですよ」
『おし・・・おめぇ、連れてウチに上がれ。一発殴ってやるからよぉ』
「殴られる理由はないと思いますが?」
『遠慮はするな、半殺しで終わらせてやる』
「ほぉ、敢助君のぼた餅があるんですか。これは楽しみですね、ではお言葉に甘えて上がらせていただきます」
『話勘違いするなよ、コウメイ!』
そう言って彼は勢いよく電話を切った。
私も受話器を置いてシャツのボタンを留め、ネクタイを締めた。
「コウメイさん、上がりました」
「あぁ、お待ちしてましたよさん」
電話を終えたと同時にさんが制服に着替えて
お風呂から上がってきた。
髪の毛も十分に乾かされ、元の柔らかい髪質に戻っていた。
「さん」
「はい、何でしょう・・・きゃっ!?」
私の声に彼女が近づいたと同時に
腕を引っ張り、自分の元へと引き寄せ首筋に噛み付いた。
「・・・っん、コウメイ・・・さっ」
「お守りです。有効活用してくださいね」
さんの首筋にキスマークをくっきりと残し
彼女の首にマフラーを巻いた。
「あの、何に使えるんですか?」
「お分かりになりませんか?首にそれが残っていたら――」
「はい?」
「いえ、何でもないです」
少々恋愛に無頓着なのが可愛いところなんだが
こうも無自覚に問いかけられると、答える側としてはどう説明していいのやら困る。
「とにかく、参りましょう。敢助君が待ってます」
「はい」
そう言ってさんの手を握り
部屋を後にして、敢助君の待つ彼の家へと向かうのだった。
首に印を残すということは
君が”私のモノ“という証なんですよ。
それさえ見せれば、きっと誰も――君に近づかないだろう。
年上恋人の攻撃
首筋のシルシ=恋人が居るというサイン
(だから、彼の前で絶対隠したりしないでくださいね)